カテゴリー「日中関係」の記事

2009年2月12日 (木)

中国中央電視台新社屋敷地内ビル火災組写真

 2月9日に起きた中国中央電視台新社屋建設現場の敷地内にある北配楼と呼ばれる建設中のビルが全焼した火災を、火災発生前から撮影していた一連(40枚)の連続写真が、「人民日報」のホームページ「人民網」に掲載されています。ビルに着火した様子がよくわかります。この写真は、現場の北西側のかなり離れた場所にあるビルの上などの高いところから望遠レンズで撮影したもののようです。

(参考)「人民日報」ホームページ「人民網」2009年2月12日アップ組写真
「中央電視台新社屋ビル火災発火の全過程」
http://pic.people.com.cn/GB/8229/145866/index.html

 最初の頃に掲載されている打ち上げ花火は、延焼したビルの向こう側(即ち西側)で打ち上げられていますが、延焼したビルの西側には第三環状路が通っており、この打ち上げ花火を上げた人たちは、延焼したビルと第三環状路の間の空き地(延焼したビルと第三環状路は100メートル程度しか離れていない)で花火を打ち上げていたことになり、かなり危険な状態で打ち上げ花火を上げていたことがわかると思います。

 こういった花火の打ち上げ方は、木造家屋が多い日本では考えられないことです。少々危険があっても面白いこと、儲かることはどんどんやろう、という考え方に基づくエネルギーが今の急速な中国の中国経済を支えているのですが、そういった気質が現れているようにも思えます。日本の場合は、危険がないように、安全に、無難に、とばかり考えるので、思い切ったことができない、というのが弱点なのかもしれません。でも、大きなことを思い切って決断してやることは苦手だけれども、小さなことをコツコツと着実に積み重ねていくことを得意とする日本のやり方も、それはそれで大事にすべきことなのだと思います。

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2008年11月10日 (月)

中国の景気刺激策は世界を救うのか

 11月9日(日)、中国でも世界的経済危機の影響により輸出企業に対する影響が大きいことから、中国の温家宝総理は、かなり思い切った(世界恐慌の後にアメリカのルーズベルト大統領が採ったニューディール政策を思わせるような)景気刺激策を発表しました。

(参考1)「人民日報」2008年11月10日付け1面
「十項目の内需拡大促進策が打ち出された~積極的な財政政策と貨幣政策の適度な緩和~」
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2008-11/10/content_135966.htm

 この景気刺激策は、下記の十項目について実施するもので、2010年末までの間に総額4兆元(約60兆円)に達するものだ、とのことです。

(1) 安全に暮らせる住居を建設するプロジェクトの加速

(2) 農村インフラ建設(メタンガス利用、飲用水プロジェクト、農業用道路、農村電力網、「南水北調」(揚子江水系の水を北方の乾燥地域へ導くプロジェクト)、危険なダムの撤去や補強など。

(3) 鉄道、道路等の重要インフラ整備の加速(旅客用線路、石炭運搬用線路、西部幹線鉄道、道路、中西部の飛行場及び地方飛行場の整備、都市電力網の改造)

(4) 医療衛生、文化教育事業の推進(医療サービス体系の確立、中西部農村の小中学校の校舎の改造など)

(5) 生態環境インフラの整備(都市汚水・ゴミ処理上の建設と河川汚染防止、保護林・天然林の保護プロジェクト、省エネ・排出減少プロジェクトの推進)

(6) 自主的イノベーション及び経済構造改革の加速(ハイテク技術の産業化と産業技術進展、サービス産業発展への支援)

(7) 地震被災地区の復旧プロジェクト

(8) 都市及び農村の住民の収入の向上(食糧最低購入価格の値上げ(2009年)、農業補助金の増加、社会保障レベルの向上など)

(9) 増値税(日本の消費税に相当)の改革と企業の技術改造促進のために1,200億元(約1兆8,000億円)相当の減税の実施

(10)「農業・農村・農民」支援のため及び中小企業の記述改造のための金融規模の合理的な拡大など。

 この発表を世界各国のマーケットはかなり好意的に受け取ったようで、11月10日のアジア、ヨーロッパの株式市場は軒並み上昇し、先ほど始まったばかりのニューヨーク市場も上昇傾向で始まりました。

 ここのところ、中国の新聞では、かなり正直に、世界的経済危機の影響で沿岸地域を中心とする輸出産業がかなりの打撃を受け、多くの企業が操業を停止して、農村から出稼ぎに出てきている農民工が職を失いつつある、という報道を流していました。

(参考2)このブログの2008年11月7日付け記事
「農民工の失業ショックには政府の支援が必要」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2008/11/post-ce6e.html

(参考3)「人民日報」2008年11月8日付け記事
「珠江デルタ地帯の出稼ぎ労働者の群像~最近、外国の経済環境の影響を受けて、広東省の一部の企業は困難に直面しており、農民工の影響もまた影響を受けている~」
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2008-11/09/content_135128.htm

 中国経済は、2007年までは北京オリンピックを前にして「バブル」と言えるほどに過熱気味でしたが、2008年7月頃から、ブレーキから足を離して、ごく軽くアクセルに足を掛ける程度に経済政策を転換してきていました。

(参考4)このブログの2008年8月18日付け記事
「発展改革委『オリンピック後の後退はない』」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2008/08/post_189d.html

 それが9月以降の米国発の金融危機を踏まえて、今回はアクセルをぐっと踏み込む政策にまた一歩進んだと言えるでしょう。

 実は、私は、中国の景気刺激策を伝える今朝(11月10日朝)の人民日報を見て、この報道が世界のマーケットにどれくらい影響を与えるのだろうか、と関心を持って見守っていました。アメリカ市場はまだ開いたばかりですが、現在のところ、今回の中国の景気刺激策は、相当程度に世界のマーケットに影響を与えたようです。先ほど見たCNNのニュースでは、今回の中国の景気刺激策が世界のマーケットにプラスに作用したことをトップニュースで伝えていました。「世界の工場」と呼ばれる中国は、もはや世界の経済全体の動向を左右する相当に大きなプレーヤーに成長したと見るべきでしょう。

 問題は、そういった中国で、今後、政治的な動きも含めて、社会的な変動が起こった場合には、世界全体に対する影響は20年前とは比べものにならないくらい大きくなっている、ということです。中国で社会的な混乱が起きたら、近くにいる日本が大きな影響を被ることはもちろん、世界全体に大きな影響を与えることになります。そういったことを考えると、今、中国はいろいろな国内問題を抱えていますが、それは単に中国国内だけに関係する問題ではなく、世界全体に影響する大きな問題として、世界全体が解決へ向けてみんなで協力して対処していくことが必要なのだと強く感じました。 

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2008年8月23日 (土)

中国の人々が世界を見る目

 オリンピック期間中、北京の街中に置かれているテレビの前では多くの人が試合に見入っていました。今日(8月23日)は、男子サッカーの決勝「アルゼンチン対ナイジェリア」の試合をやっていたのですが、ショッピング・モールにある街頭テレビの前では多くの人がこの中継を見ていました。サッカーは中国でも人気なぁ、と私は思いました。今回のオリンピックを通じて、中国の人々は、中国が関係しないところでも、いろいろな競技のいろいろな国の試合を見たのではないかと思います。

 もちろん、中国選手の活躍が一番関心事項だったと思いますが、中国選手が出る以外の試合もテレビでは随分放送していたので、多くの人々が中国とは関係のない試合を見たと思います。今年の4月頃、世界を回る聖火リレーが妨害される事件があった頃、中国のメディアは「西側の報道の仕方はおかしい」といったキャンペーンを張り、中国の人々の間では異様なナショナリズムが盛り上がりました。特にフランスでの聖火リレーに対する妨害が大きかったこともあり、フランス系スーパーマーケット「カルフール」に対する不買運動が各地で広がりました。こういった「反外国」の雰囲気のままでオリンピックを迎えたらどうなるんだろうか、とそのころはちょっと心配していました。

 ところがその後5月12日に発生した四川大地震により雰囲気は一変しました。中国全体が団結して被災地を支援しよう、という雰囲気になりました。各国から救援隊や医療隊が駆け付け、中国の人々は素直にそれに対する感謝の意を表していました。「カルフール」に対する不買運動のようなちょっと歪んだナショナリズムはかなり影を潜めました。

 そういうこともあり、北京オリンピックの期間中は、外国に対する反発のようなものが目立って表に出ることはありませんでした。サッカーの試合では、日本が出場した際にはブーイングなどもまだあったようですが、数年前に比べれば、いくぶんかは良くなったのではないでしょうか。

 今回の北京オリンピックが中国の人々の世界を見る目をかなりソフトにしたのは間違いないと思います。コントロールされた官製メディアを通じてではなく、直接、多くの外国の人と接する機会があったのはよかったと思います。

 後は、今、大幅に緩和されているインターネット規制がオリンピック終了後も継続されて、中国大陸部の人々もネットを通じて常時世界の他の人々が享受しているのと同じような情報交換の自由さを享受でき続けるのか、ということがポイントになると思います。イベントの運営という面では、北京オリンピックは大成功だったと思います。中国の人々に対して、世界を見る窓が開いた、という意味でも、現時点では成功だったと言えるでしょう。今後、オリンピックをきっかけにして開いた世界に対する窓が閉じられるようなことがなければ、北京オリンピックは「真に成功だった」として歴史的にも評価を受けることができるようになるでしょう。

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2008年7月24日 (木)

青空はすばらしい

 夏休みで、今、一時的に日本にいます。今日は、長野県から東京へ移動しました。「梅雨明け十日」ですばらしい青空でした。長野から東京へ移動しても、青空はほとんど変化しませんでした。北京だと、こういう青空は1年に3日あるかどうか、という感じです。北京は降水量が少ないので、雲のない日は多いのですが、「空が白い日」が多いのです。北京では空気汚染係数が100以下の日を「青空の日」としていますが、実際は50以下にならないと「すっきり青空」という感じにはなりません。

 北京で「空が白い日」が多いのは、もちろん大気汚染が大きな原因であるのは間違いないのですが、そのほかに自然条件も大きいと思います。日本は島国であるところが非常に有利に働いています。海の上は人間活動による汚染や砂ぼこりがありませんから、日本の場合、日本列島である程度汚染が生じても、どちらかの方向から少し風が吹けば、海の上のきれいな空気が日本列島の上空を「掃除」してくれるのです。北京の場合、西から風が吹けば河北省や山西省の汚染が、南東から風が吹けば天津の汚染が北京に流れてきますから、少しくらい風が吹いても北京の空はきれいになりません(北京でも、雨が降ると次の日はかなりすっきりとした空気になります)。

 それから地表面の状況もだいぶ違います。今日、長野県へ行って改めて思いましたが、日本は山々はびっしりと緑に覆われ、平地には水田の緑が広がっています。この日本の夏の緑と青空のコントラストは非常にすばらしいです。北京から来た私は「白黒テレビの世界からカラーテレビの世界に入った」ような気がしました。日本にいる人たちは、そういった日本の美しさに気が付いていないのです。

 一方、中国大陸の自然はそんなに甘くありません。北京周辺の地方は、降水量が少ないので、山々は緑の少ない岩山がほとんどです。平地の農業地帯も冬小麦が栽培されている地域は6月の刈り取りが終わると、乾いた地面がむき出しになります。そもそも河北省あたりの小麦の大穀倉地帯は、小麦の生長に必要な水のうち、降水でまかなわれるのは3割程度で、後は地下水を汲み上げることによるかんがいに頼っています。従って、作物が栽培されていない時期の畑は表面は常に乾燥しており、風が吹けば砂塵が舞い上がりやすい状態です。水を張った状態の期間の長い水田が主体となっている日本では、農村部では砂塵がほとんど舞い上がらないのです。

 北京地方の場合は、さらに北西方向には砂漠地帯があり、気象条件によっては、砂漠地帯で舞い上がった砂塵が運ばれてくることがあります(春の黄砂は日本まで飛んできます)。このように人工的な大気汚染がなくても、中国の大気は日本の大気に比べると、ただでさえ浮遊微粒子が多い状態なのです。

 北京の大気汚染の主要原因は「可吸入顆粒物」ですが、この「可吸入顆粒物」を構成しているのが何なのか(自然に発生する砂塵の類なのか、自動車から発生する「スス」の類なのか、建物解体作業等に伴うコンクリートの粉塵なのか)は分析すればすぐわかると思うのですが、こうった分析結果が発表されたのは見たことがありません。北京オリンピックのために、汚染物質を多く出す工場を停止させ、建設・解体工事も停止させ、車の運行もナンバープレート偶数奇数規制で減らす、ということをやっているわけですから、当局としては、大気汚染の原因となっている「可吸入顆粒物」が何なのかはわかっているのでしょう。

 国家環境保護部のホームページによると今日(7月24日)の北京の大気汚染指数は113で「軽微汚染」だそうです。

(参考)国家環境保護部ホームページ
「重点都市大気汚染指数日報」
http://www.mep.gov.cn/quality/air.php3

 7月20日から「オリンピック・モード」に入って、工場の操業停止や建設・解体工事の停止、車の運行制限も始まったのに、まだそれほど「劇的」には改善していないようです。たぶん、一度雨が降って空気中に舞い上がっている汚染物質が一度地面に落ちれば、あとはいろいろな規制により汚染物質の「発生」は押さえられているので、たぶん、オリンピック期間中は、北京でも「青空」が見られると思います。

 それにしても、いくら島国とは言え、降水量が多く都市部以外はほとんど緑で覆われているという好条件があるとは言え、日本の青空は掛け値なしにすばらしいと思います。日本に住んでいる人たちは、1970年代の「公害列島」と言われた時代をいかにして克服してきたか、を忘れずに、現在の日本の青空の大事さを再認識し、しっかり守っていって欲しいと思います。

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2008年7月18日 (金)

活動の場を与える場所としての日本

 7月15日に日本に滞在している中国人女流作家の楊逸氏が芥川賞を獲ったことについて、日本での報道の中に「日本は多くの中国人に対して表現の場を提供している」という趣旨のものがありました。楊逸氏について、そういった指摘が当たっているのかどうかは私にはわかりません。楊逸氏の芥川賞受賞作「時が滲(にじ)む朝」についても「1989年の事件」が時代背景として出てきているとは言え、楊逸氏はこの事件について書きたかったわけではなく、単にいろいろな運命の中を生きる若者の生き方を描きたかっただけかもしれないからです。

 これとは別の話ですが、昨年4月、NHKのハイビジョンで中国人ディレクターに中国を描くドキュメンタリー作品を作らせる「新的中国人」というシリーズがありました。

(参考)NHKホームページ平成19年(2007年)3月22日付け「報道資料」
シリーズ「新的中国人」~若き4監督が撮るディープな今~
2007年4月23日(月)~4夜連続 BS-hi午後10:00~
http://www3.nhk.or.jp/pr/keiei/shiryou/soukyoku/2007/03/004.pdf

 先日再放送されたので、その一部を見ました。私が見たのは「上海シティボーイの憂鬱」(監督:郭静、柯丁丁)でした。旅行社でツアーのアレンジをしながら都会に生きる若者と、小さな料理店を営む年老いた両親の話で、激変する中国社会の中で不安を抱えながら何とか生きていく人たちの現実を描いていました。秀作です。体制批判でもなんでもないので、こういったドキュメンタリー番組は中国国内でも作れるとは思うのですが、たぶん、実際にはかなり難しいのでしょう。

 7月15日(日)の最終回の放送で終了したNHKスペシャルのシリーズ「激流中国」でも、番組の終わりのタイトルバックを見ると、中国人らしいスタッフの名前が大勢出てきていました。中国に住む中国人がNHKに協力しているのか、もともと日本に住んでいるNHKの中国人スタッフなのかはわかりませんが、いずれにせよ、番組を作っているのはNHKという日本のテレビ局で、放送されるエリアも日本国内ですが、取材している場所は中国であり、番組を作っているスタッフの一部に中国の人がいる、という意味では、この「激流中国」も上記の「新的中国人」と同じようなところがあると思います。

 「激流中国」は、現代中国の課題を鋭く突いた歴史に残るドキュメンタリーの名シリーズでしたが、中国人スタッフの参画なしでは、これだけすごい番組は作れなかったでしょう。ある意味では、この「激流中国」は、番組の制作に参加した中国人スタッフに活動の場、表現の場を与えた、と言ってよいかもしれません。中国には優秀な人がたくさんいるので、活躍の場を与えるとものすごい力を発揮します。アメリカの大学の優れた研究論文に Liu さんとか、Wang さんとか、明らかに中国系と思われる人の名前が多いことでもそれはわかります。

 「激流中国」は、もちろん日本向けの番組で、ナレーションなどは全て日本語ですが、中国国内でも相当に話題になったようです。中国国内では、新聞などのオモテのメディアで「激流中国」について議論することはできませんが、ネットの掲示板などでは、かなり話題になったようです。詳しくは、日本語ウィキペディアの「激流中国」の項目を御覧下さい(ウィキペディアですので、私が今見ている内容は、今後変更される可能性がありますけど)。

 「激流中国」は、NHKの国際テレビ放送のNHKワールド・プレミアムでも放送されていましたので、私は北京で見ていました。「激流中国」の放送中は、チベット騒乱や海外でのオリンピック聖火リレーの時にあったような検閲によるブラック・アウトはなかったので、この番組の内容は中国当局にとっても「許せる範囲内」(かなりギリギリの線だとは思いますが)に収まっていたようです。でも、「激流中国」の制作に携わったスタッフが、中国国内のテレビ局で同じような番組を作ることは、現状ではとても無理でしょう。香港や台湾のテレビ局には、西側的な「報道の自由」がありますから、香港や台湾のテレビ局がこういった番組を企画することも可能だと思いますが、いろいろ政治的なしがらみを考えると、取材と放送が実現するのはやはり難しいと思います。日本のNHKという、ちょっと第三者的に離れた存在のテレビ局だからこそ、こういった番組が作れたのだと思います。

 NHKの放送は、もちろん日本の国内向け放送ですが、実はBS放送(ハイビジョンも含む)は、中国沿岸部では大きなパラボラを設置すれば受信できます。NHK-BSを受信できる衛星テレビ受信設備を付けるには当局の許可が必要ですので、そんなに多くの人は見ていないと思いますが、少なくともネットで話題になる程度には見ている人がいた、ということだと思います。

 そもそも、中国革命の初期の段階において、中国革命の父・孫文は、日本に留学し、日本で革命組織を立ち上げました。日本は、孫文以外の多くの中国革命の推進者にも、活躍の場を提供していたのです。中国共産党の創始者である陳独秀と李大釗に中国共産党の設立を決定した第1回全国代表大会(1921年7月)に出席した12名の合わせて14名のうち、日本留学帰国者は6名いました。国民党側では、孫文の跡を継いだ蒋介石も日本の陸軍士官学校の出身です。その後、日本の軍国主義は、中国革命に大きく干渉して行きますが、日本が中国の歴史を進める多くの人々に活躍の場を与えたのは事実であり、そのことは中国の人々もよく知っています(中国近代化に大きな足跡のあった文豪・魯迅が東北大学に留学していた話は、中国の中学校の教科書に出てくるそうです)。

 作家や映像作品の監督など「表現する者」は、今の中国は活動しにくい場所です。例え政治的なことや体制批判などをするつもりが全くなくても、やはり活動しにくいと思いいます。外国人の私ですら、こうして自分のブログを書くときでも「1989年の事件」と書いたり、「その年の6月第一週の出来事」などとぼかした表現を使っているのは、そのことズバリの言葉を書くと、キーワード検閲に引っかかる恐れがあると思って自己規制しているからです。ネット上でデモの呼び掛けをする、などということをしなければ、公安当局に引っ張って行かれることはないはずなのですが、インターネットの接続を切られたりするのではないか、といった恐怖感はやはりぬぐい去れないのです(実際、日本語ウィキペディアで上記の「事件」のそのものズバリを検索すると一時的にウィキペディアへのアクセスを遮断されます(ほかの項目も検索できなくなる))。そのような状況に置かれているので、知らず知らずのうちに表現上の自己規制をしてしまうのです。プロの「表現者」にとっては、これはかなりつらいことだろうと思います。

 そういった「表現者」の人たちにとって、もし、日本が活動しやすい場所なのだったら、活動の場を提供することは日本としても悪いことではないと思います。中国の内政に干渉するようなことは厳に慎まなければなりませんが、中国の人々が中国のために活動する場として、日本が活動しやすいのならば、孫文の場合がそうであったように、活動の場を提供することも日本としてのひとつの役割でしょう。NHKの「激流中国」や「新的中国人」のシリーズは、その意味でもひとつの記念碑的なシリーズだったのかもしれません。

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2008年6月16日 (月)

一時中国から日本のヤフーにアクセス不可

 先週の金曜日(6月13日)の午後から今日(6月16日(月))の17時過ぎ(日本時間18時過ぎ)まで、中国大陸部から Yahoo! Japan へのアクセスが全面的にできない事態が続いていました。金曜日の午後、私のいる北京からいつも使っている日本のヤフーにアクセスできないので、北京や日本にいる複数の知人にメールで知らせて、アクセスしてもらって、日本では閲覧できるけれども、中国では閲覧できない状態になっていることを確認しました。

 最初は、何かのシステムのトラブルだろうから、数時間か長くても1日程度経てば回復すると思っていたのですが、週末はずっとアクセスできず、今日(月曜日)の昼間もアクセスできませんでした。ところが、今日(16日)北京時間17時過ぎに突然元のようにつながるようになりました。

 この間、中国のヤフーやアメリカのヤフー、日本のグーグルには通常通りアクセスできたので、日本のヤフーにつながらない理由が全くわかりませんでした。

 中国大陸部から「中国にとってよろしくないサイト」につながらなくなることはよくあるのですが、大手検索サイトのヤフーにつながらないことはやはり影響が相当に大きいと見えて、16日(月)になって、時事通信や産経新聞のネットニュースが「中国から日本のヤフーにアクセスできない」ことを報じました。人によっては、ヤフーのメールを使っている人もいるので、そういう人がヤフーにアクセスできないとメールも使えなくなるので、社会的な影響は相当大きいと考えて、通信社や新聞社も報道しないわけにはいかない、と思ったのでしょう。これらの報道によると、日本のヤフーも「問い合わせが来ているが原因はわからない」と言っているし、中国政府の関係者も「中国政府は特定のサイトにアクセスできないようにするようなことはしない。原因はヤフー・ジャパンに聞いて欲しい。」と言っている、ということで、原因は「ナゾ」のままです。

 日本にいる人に聞いてみたら、その間、日本のヤフーに「中国にとってよろしくない情報」が載せられた形跡はない、とのことだし、新聞社などのニュース・サイトにはアクセス制限は掛かりませんでしたから、何かのニュースが原因で中国側がアクセスを禁止した、とは考えにくいと思います。

 考えられる理由としては、先週尖閣諸島周辺で日本の海上保安庁の巡視船と台湾の船舶が衝突して台湾の船舶が沈没した事件に関連して、ヤフーの中の掲示板かブログに日本側の主張をする人たちと中国側の主張をする人たちが殺到して「炎上」状態になり、ヤフー側が過重な負荷が掛かることを心配してアクセス規制を行った、とか、中国当局側が日中関係の悪化に配慮して議論が白熱化するのを防ぐためにアクセス規制を行ったか、とか、ぐらいしか、私には思い浮かびません。上記の事件が原因ならば、そういった掲示板は、今日(6月16日)の時点では、まだまだ「炎上中」だと思うので、今日の夕方の時点で正常に復帰した、ということは、上記の事件は関係ないのかもしれません。

 いずれにせよ、ヤフー・ジャパン側が規制を掛けたのだとしても、中国側がアクセス規制を掛けたのだとしても、それぞれの当事者が規制を掛けた理由を公表するとは考えにくいので、この件は、ナゾのまま解明されずに残ることになるのでしょう。

 今、この発言を書いているニフティ社のブログである「ココログ」も昨年(2007年)の5月初め頃までは、中国国内からアクセスできませんでした。その理由は今もわかりません。幸いにして、昨年5月にアクセスできるようになってから、ココログに中国国内からアクセスできない、という事態は発生していないので、こうして文章をアップすることができています。ただ、ある特定のブログ・サイトに中国からアクセスできなくなる、という事態は、今までも、いろいろなブログ・サイトに対して起きていたし、これからも起きるかもしれませんので、ある日を境に、私のこのココログのサイトも更新ができなくなる事態も起こるかもしれません。その点は、この私のブログを御覧の皆様には御承知置きいただきたいと思います。

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2008年5月10日 (土)

日本をプラスに評価する評論

 昨日のこのブログの記事で5月8日付けの「新京報」の社説を紹介した際、「日本について中国の新聞がここまで前向きな表現を使ったことを少なくとも私は見たことはなかったように思います」と書きました。ところが、今日(5月10日(土))、改めて今週の「新京報」を読み返してみたら、昨日紹介した社説の出る前日の5月7日付けの「時事評論:国際観察」の欄に、北京の学者・劉檸氏という方の個人の見解としてではありますが、もっと日本をプラスに評価する評論が載っていました。

(参考)「新京報」2008年5月7日付け「時事評論:国際観察」欄の評論
「『日本を師として』中国の改革を推進する助けとすべき」
http://www.thebeijingnews.com/comment/zonghe/1044/2008/05-07/018@080158.htm

 この評論のタイトルは中国語で書くと「『以日為師』助推中国改革」です。この評論のポイントは以下のとおりです。

----(評論のポイント:始まり)----

○中国の改革開放の30年の歴史を振り返ると、日本は日中平和友好条約が発効した翌年の1979年以来、少なくない額の政府開発援助(ODA)を中国の経済建設の推進剤として提供した。このことを中国人は忘れてはならない。

○1980年代末までの中国の現代化にあっては、日本は中国人の心の中の「現代化」のモデルの一つであり、日本を師とすることを少しもおかしいとは思っていなかった。

○日本の中国の現代化に対する支援は、資金や技術に限ったものではない。その経済の飛躍的発展の成功の経験それ自体が、中国にとって不可欠な重要な手本だからである。

○1964年の東京オリンピックの後4年で日本は西ドイツを抜いて世界第二の経済大国となった。それから既に40年が経つ。その間、日本は産業構造改革に成功し、国際競争力を高い水準で維持し続けている。日本は、この間、経済の持続的発展の過程で、「公害列島」と言われた環境問題の悪夢を克服し、世界に誇る環境保護天国を作り上げた。

○中国は改革開放の30年で人目を驚かすほどの経済大国になったが、同時に「遅れた改革者」としての課題に直面する時代に入ってきている。今後の中国の発展のロードマップを考えるに当たっては、東の隣国を他山の石とすべきことは論を待たない。

○やがてくる「オリンピック後」の時代にあっては、中日間の「戦略的互恵関係」に基づく絆は、両国関係を発展させることを通じて中国の建設と改革の推進を後押しすることになるだろう。今はまさに日本を師とすることを再び論ずる時なのである。

----(評論のポイント:終わり)----

 この評論は、昨日付のこのブログで解説した5月8日付けの「新京報」の社説のバックグラウンドとなっている考え方だと思います。誇り高き中国の人に「日本を師とする」とまで言われると、「過奨了」(褒めすぎですよ)と言いたくなって、ちょっと「くすぐったい」気分になります。しかし、この評論は、日本人向けの単なる外交辞令ではなく、一般の中国人向けの新聞に掲載された評論ですから、ここまで突っ込んだ表現を使ったことについて、我々日本人はこの筆者の気持ちをしっかりと受け止める必要があると思います。

 これほどまでに日本を「持ち上げた」評論をしたのは、前日(5月6日)から始まった胡錦濤主席の日本訪問に当たって日中友好ムードを盛り上げたい、という当局の意向が背景にあると思いますが、「新京報」は当局の意向を素直に受け入れる系統の新聞ではありませんので、この評論はそれなりに素直に受け取ってよいと思います。日本は、こういうふうに「持ち上げ」られると、すぐに頭に乗って「天狗」になる傾向があるので気を付けないといけないと思うので、その点には注意した上で、こういった中国国内の考え方を重要視する必要があると思います。

 上記の評論の中でもう一つ着目すべき点は「1980年代末までの中国の現代化にあたっては、日本は中国人の心の中の『現代化』のモデルの一つであり、日本を師とすることを少しもおかしいとは思っていなかった。」と述べている点です。ここの部分は、1990年代に入って、中国は「歴史問題」などを強調し、中国国内で反日感情が高まったことを暗に批判しているのです。

 現在の党・中央の公式見解は、「1978年の改革開放の開始以来、党・中央の政策は一貫している」というものですが、私はこの改革開放の30年の歴史の中で1989年の前と後とでは断絶があると考えています。上記の評論は、そういった私の考え方と軌道を同じくするものです。

 1989年以降、中国共産党は国内での思想的引き締めを強化する一方、経済的には、国有企業も含めた株式市場の開設、「土地は公有」という原則は維持しつつも「土地使用権は売買できる」という考え方に基づいた土地の売買の事実上の解禁、といった改革を進め、「社会主義市場経済」の名のもとに「共産主義」からはどんどん離れていく政策を採っていきます。そうなると中国の人々の間に「我々はなぜ今も中国共産党の指導の下に政策を進めなければならないのか」との疑問が生じかねません。そこで、抗日戦争を勝ち抜いてきた中国共産党の歴史を振り返り、その歴史があるからこそ中国共産党が中国の中核とならなければならないのだ、というメッセージを中国の人々に訴える必要があったのです。つまり1989年以降の日本に対する「歴史問題」とは、実は「中国共産党だけが中国の中核になりうるのだ」ということを訴える中国国内向けのメッセージでもあったのです。

 上記の評論は、1989年以降の「歴史問題」に基づく「反日」の考え方から決別すべきだ、と表明したものであり、その意味で非常に画期的だと思います。上記の評論は劉檸という方の個人的見解として掲載されているものですが、翌日、同じ論調の論文が「新京報」の社説として掲載されたことは意義が大きいと思います。

 今回の胡錦濤主席の日本訪問は、日本側では、ギョーザ問題や東シナ海ガス田問題などの課題を先送りしただけで、具体的な成果はなかった、としてあまり高く評価しない傾向があるようですが、私は中国側から見た場合、今回の胡錦濤主席の訪日は、中国自身の政策運営に関して、画期的な歴史的転換点だと思っています。胡錦濤主席は、「反日」を乗り越えて前へ進む、というメッセージを表すことによって、1980年代への回帰、別の言い方をすると1989年以降の政策への決別を表明したからです。

 中国の1980年代は、1981年6月の「建国以来の党の若干の歴史的問題に関する決議」(いわゆる「歴史決議」)において、文化大革命を批判し、偉大な毛沢東主席もその生涯の一部においては誤りを犯した、と指摘したところから出発しています。「中国共産党も誤りを犯すことがあるのだ」「大事なのは誤りを誤りと認めた上で、前へ進むためにそれを改革することである」という点から出発した1980年代に回帰する、ということは、極めて重要な意味を持つと私は思っています。

 北京オリンピックの聖火リレーは、欧米各国で抗議行動を引き起こし、それが中国国内におけるナショナリズムの高まりを引き起こしましたが、中国の指導部や知識人(「新京報」の論説陣も含む)の間に「中華ナショナリズムの過度の高揚は、国際社会における中国の孤立化を招く」という危機感を引き起こしたのではないかと思います。今までの流れからは考えられない日本への急接近は、こういった危機感が背景にある、と私は思っています。

 私は昨年4月に20年振りに北京に駐在するようになり、この20年間、中国は経済的に飛躍的に発展したものの、様々な面でほとんど前進していない(一部については後退している)と感じて若干落胆していたのですが、今回の胡錦濤主席の訪日によって、歴史は大きく前に前進した、と感じています。今回の胡錦濤主席の訪日は、中国が国際社会の中で高い地位を占めていくには、国際的に共有できる認識に立ち、国際的理解を勝ち得なければならないことを中国の指導部や知識人たちが再認識するきっかけになったと思うからです。

 行きつ戻りつしつつも、やはり歴史は確実に前に進んでいくものなのだ、今、私はそう感じています。

(以下は、2008年5月10日夕方に追記)

 上記に紹介した「新京報」5月7日付けに掲載されていた評論『日本を師として』中国の改革を推進する助けとすべき」については、上記に「新京報」のホームページの中に掲載されているURLを載せてありますが、5月10日の午後になってから、この評論文は削除された模様です。5月10日の午前中に確認したときは、確かに「新京報」のホームページ上でも見ることができましたが、午後に確認してみると掲載されていません。「日本を師として」という表現が、自尊心あふれる中国の若者たちの心の琴線に触れ、「新京報」に抗議が殺到したからかもしれません。

 「新京報」のホームページからは削除されてしまいましたが、この評論文は、既に多くのブログや掲示板に転載されています。中国では、ネット上では著作権はないのに等しい状況ですので、一度発表された評論文などは、筆者に無断でブログや掲示板にどんどん転載されます。従って「以日為師」「助推中国改革」といったキーワードを使って検索エンジンで検索すると、この評論の原文の載ったサイトが山のように出てきます。

 それらの掲示板に載っている議論を読むと、この評論の筆者に賛同する人もいますが、やはり「一体、日本に何を学ぶというのか?」といった反発する記載が圧倒的に多いようです。

 「新京報」は、今日(5月10日)付けの紙面から、1週間に一度「評論週刊」(サブタイトル:公民読本を作る(中国語で「建設公民読本」))という時事問題に対する評論の特集を始めました。この中に、新聞各紙に掲載された評論文に対してコメントする欄があるのですが、今月の担当者・余世存氏は、この5月7日付け「新京報」の「『日本を師として』中国の改革を推進する助けとすべき」という評論を取り上げ、「現在のこのような『中国の決起』が起きている雰囲気のなかで、このような見識は発表することだけで大胆と言うべきである。」とコメントしています。

 この今日付の「評論週刊」の創刊号のタイトルは「愛国と民族主義」です。5月7日に「日本を師として」と題する評論を掲げたのは、「新京報」が若い人たちから反発が出ることを承知の上で、問題提起をしたかったからだと思います。この論文に対してはネット上のあちこちの掲示板で熱い論戦が起きていますが、むしろこれはいいことだと私は思います。敢えてこの問題を提起した「新京報」に私は敬意を表したいと思います(ただ、それならば「日本を師として」の評論をホームページ上から削除して欲しくなかったと思います)。

 これからは、中国の中で、「愛国」「民族主義」「言論・表現の自由」といった問題について、多くの人がいろいろな議論をするようになるのではないかと私は思います。

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2008年5月 9日 (金)

日中関係で一歩踏み込んだ社説

 訪日中の胡錦濤主席と福田総理との間で首脳会談が行われ、日中共同声明が発表された翌日の5月8日、北京の大衆紙「新京報」は、「中日の戦略的互恵関係:改革の中に発展を探る」と題する社説を掲載しました。日中首脳会談の翌日の新聞が日中関係に関する社説を掲載するのは当然と言えば当然ですが、私は、この「新京報」の社説の内容は、少なくとも私が見た中国の新聞に掲載された日中関係に関する論評の中では飛び抜けて踏み込んだ内容になっていると感じました。

(参考)「新京報」2008年5月8日付け社説
「中日の戦略的互恵関係:改革の中に発展を探る」
http://www.thebeijingnews.com/comment/shelun/2008/05-08/018@075847.htm

 この社説の中で私が新しい視点だと感じたポイントは以下の点です。

----(社説のポイント:始まり)----

○我々は今回の共同声明の中で、歴史問題について日本の戦略戦争に対する「反省」や「謝罪」が盛り込まれず、その代わりに「歴史を正視し、未来へ向かう」という中立的な表現になっていることに特に注目したい。中日両国がアジアにおける二大大国として、共に「戦略互恵関係」に則って21世紀を切り開いていくことを中国側が決心したことを明確に表しているからである。またこのことは同時に、日本が戦後60年以上にわたり平和的発展の道を歩んできたことを正面から評価し、肯定していることを意味しているからである。

○具体的な係争問題を棚上げにしてでも、地球規模の課題に取り組むことが歴史と世界が中日両大国に与えた使命である。中日両国は、国際社会における「責任を負った大国」として共に手を取り大きな目標を目指さなければならないのである。

○今回の共同声明では、原則として隔年ごとに首脳が相互訪問することを確認している。これまで両国は、共通に持つ東洋的性格から、両国首脳の個人的考え方が両国関係に色濃く反映されてきた。両国首脳の相互訪問を決めたことは、こういった問題を回避する「安全ネット」の役割を果たすだろう。

○もちろん、我々には「毒ギョーザ事件」によって起きた相互の信頼関係の問題や食品貿易への影響を回復させる必要があるし、東シナ海ガス田問題に関してはまだ話し合う必要がある、といった問題が残されている。しかし、双方は戦略的観点から前向きに問題解決へ向けて努力することができるし、協力と戦略的信頼関係を強化することもできるのである。

○日本は、中国の改革開放政策を進めるに当たって有効な支援をしてくれた隣国として、また、中国の人々の心の中にとっての現代化の「手本」として、中国が「遅れた改革者」としての変革の道を歩み終わることに対し、寛容と理解を持った視線を投げ掛ける必要がある。

○21世紀の中日関係が新しい未来を切り開けるかどうかは、両国が真の協和した大国同士として「君子の交わり」を結び、中国の改革(中国語では「転型」)の成功が大きく、深く行われることに対して妨害がなされることがないようにできるかどうか、に掛かっている。この意味で言えば、中国の改革は、日本にとっても「他人事」ではないのである。

----(社説のポイント:終わり)----

 「新京報」は、中央政府の基本的な方針に大きく反対することはしないものの、「人民日報」や「新華社」とはひと味違った、党・政府の公式な方針から一歩離れた独自の立ち位置から論説を展開するのが普通です。上記の社説は、基本的には5月7日に出された日中共同声明を肯定的に受け止めるとともに、歴史問題などに関しては5月8日に胡錦濤が早稲田大学で行った講演と同じ路線の論調ですが、私は以下の点で特筆すべき点があると思います。

・共同声明の中で日本による侵略戦争について「反省」や「謝罪」について触れられていないことをプラスに評価していること。

・「日本が戦後60年以上にわたり平和的発展の道を歩んできたことを正面から評価し、肯定している」として、中国の新聞としては今までになく日本の戦後の歩みを真正面からプラスに評価していること。

・日中両国を「アジアにおける二つの大国」と位置付け、「中国がアジアの中心になるべき」という発想に立っていないこと。

・「毒ギョーザ事件」「東シナ海ガス田問題」等、胡錦濤主席の訪日で「友好ムード」を盛り上げる努力をしている党・中央の方針の中にあって、日中間の問題となるべき点はきちんと指摘していること。

・日本を「改革開放を支援してくれた隣国」「現代化の『手本』」と表現したこと(日本について中国の新聞がここまで前向きな表現を使ったことを少なくとも私は見たことはなかったように思います)。

・この社説の筆者が「改革を進めていく過程で、中国はこれからいろいろ困難な局面に立ち向かうことになると思うが、そういう中国を『寛容と理解をもって』見ていて欲しい」と考えているとともに、中国の改革が失敗することは日本にも大きな影響を与えることを指摘して、中国の「正しい改革」に対する日本の支持と支援を期待していることが窺えること。

 最後に挙げた「正しい改革」とは、「新京報」はあからさまには表現しませんが、これまでの論調を踏まえれば、「政治の民主化」であり「政府の情報の公開」であり「表現や報道の自由」であり「社会的安定の中での格差の是正」であり「社会の底辺を支える人々に対する民生の向上」であると思われます。

 「新京報」の論説を書く人々は、政治の民主化の問題、人権の問題、政治に関する情報の公開性の問題、表現や報道の自由の問題、農村と都市との格差の問題など中国が抱える様々な問題があることはよく理解しています。一方で、社会の安定を維持し、経済的な混乱が起こるようなことのないようにしながらそれらの問題を解決することは非常に難しいこともよくわかっています。

 世界各地を回った聖火リレーへの対応において、欧米各国では、人権の問題などに対して批判が相次ぎましたが、批判した人たちが言うとおりに変えれば問題が解決するほど中国が抱える問題は単純ではありません。社会や経済を安定させた状態を維持しつつ、これらの問題を解決していくためには、まさに「寛容と理解をもって」中国の改革を辛抱強く支持することが必要なのです。この社説の筆者は、その役割を、中国との間で不可分の利害関係を持つ日本に果たして欲しい、と思っているのだと思います。

 胡錦濤主席と福田総理は、大陸においても台湾においても、現在でも「中国革命の父」と慕われる孫文ゆかりのレストランで会食をしました。胡錦濤主席は早稲田大学の講演の中で中国共産党の創始者である陳独秀、李大釗の名前を挙げ、彼らが早稲田大学に留学していたことを指摘していました。日本は、20世紀初頭、中国革命の指導者たちが育つ場を提供していたのです。胡錦濤主席は、そのことを改めて思い起こさせようとしたのだと思います。従って、日本が「寛容と理解をもって」中国の改革を支持する、というこの「新京報」の社説は、胡錦濤主席が言わんとしたことと相通じるものだと思います。

 今回の「新京報」の社説は、21世紀の日中関係を考える上で、非常に重要なポイントを突いており、私も大いに共感するところがありましたので、このブログで取り上げさせていただきました。

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2008年2月23日 (土)

農薬汚染食品事件:日系企業が原因との報道

 10人の中毒患者を出した殺虫剤の成分が混入した中国製冷凍ギョーザの事件に関連して、日本では、今、中国で加工されたいろいろな食品に対する検査が行われているため、最初に中毒患者を出した冷凍ギョーザとは別の中国製の加工食品から、微量の農薬が検出されるケースが相次いで報道されています。これら10人の中毒患者を出したケースとは別のケースのいくつかについて、今日(2月23日)付けの人民日報は、中国国家品質検査検疫総局の発表として以下のような報道しています。

○中国国家品質検査検疫総局は、日本側関係機関から、中国から日本に輸出されたニラ肉まんとニラエビ揚げ肉まんから、それぞれ0.45ppm~0.66ppmと0.04ppm~0.08ppmのメタミドホスが検出され、アスパラガスの肉巻き揚げから1.2ppmのホレートが検出されたとの通報を受けた。中国側はこの件を非常に重視し、直ちに調査を行った。

○国家品質検査検疫総局が現在までに得た調査結果によると、上記のニラ肉まんとニラエビ揚げ肉まんを作った会社及びアスパラガスの肉巻き揚げを作った会社は、両方とも中国国内に設立された日本資本100%の日系企業(日系独資企業)で、生産工程は日本の基準で管理され、日本側の会社の職員が工場に駐在して監督を行っていた。

○この事件は、上記の日系独資企業による原材料の野菜を購入する際のチェックが不十分だったことが原因であった。

○従来、日本側は、肉まんやギョーザなどの製品に関しては、残留農薬量の量に対する制限や検査実施を要求していなかったが、今回、初めて検査を行ったものである。国家品質検査検疫総局は、検討を行い、日本側関係機関と技術基準について情報交換を行い、検査作業を行っていく方針である。

○冷凍ギョウザ中毒事件に関しては、中国公安部が20日、担当官を日本に派遣して、日本の警察当局と、情報交換等を行った。中国政府としては、冷凍ギョウザ中毒事件に関しては、徹底的に捜査する決意である。

(参考)「人民日報」2008年2月23日付け記事
「日本に輸出した肉まんについては、日系独資本企業の検査が不十分だったことが原因」
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2008-02/23/content_44973086.htm

 この記事に書かれていることは間違いではないし、中国側もこの記事で言及しているケースについては、中国における残留農薬が原因であることを認めているわけですが、見出しや書きぶりからすると、「日系企業とそれを監督していた日本の企業が悪い」という印象を強く受ける記事です。こういうふうな書きぶりをされると、ウラの意味として「中国側当局は全く責任はない」ことをこの記事は主張したかったのだ、と感じてしまいます。有毒な農薬に汚染されている野菜などが流通していることに対する中国当局としての反省が全く感じられない記事だと私は思います。

 また、最後の項目は、今回の騒ぎの発端となった10人の中毒患者を出したケースについて述べたものであるのだけれど、一読した読者からすると、異なるケースについて述べたのかどうかわかりにくい書きぶりになっています。こうやって並べて記述されると、意地悪く解釈すれば、最後の部分は、「中国公安部が日本へ行って日本の警察と情報交換を行った」のは日本の企業が悪いから中国の公安部がわざわざ日本へ行ったのだ、との印象を読者に与える意図があるのではないか、とも思えてしまいます。

 もともと中国共産党の機関誌であり、「党の舌と喉」の本家本元である「人民日報」に客観的で公平な報道を期待すること自体無理なのはわかっているのですが、どうも「みんな日本が悪い、中国は悪くない」という方向に中国人民の世論を誘導しようとしているように見えて、私は釈然としません。

 それは置いておくとしても、上記の記事は、やはり残留農薬に汚染された野菜が中国国内に出回っていることを中国国家品質検査検疫局が認めたことを意味しますので、毎日、中国産の野菜しか食べることができない北京に住む私にとっては、気の重い記事であることは確かです。この間、春節で日本に帰ったときに人間ドックを受けてきましたが、変な結果が出ていないことを祈るばかりです。

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2008年2月16日 (土)

ギョーザ事件:選択的報道は世論操作か?

 私は、このブログでは、これまで「毒物入り冷凍ギョーザ事件」については、「日本のマスコミが騒ぎすぎでは?」「ギョーザ事件を報道するのも重要だが、中国中南部の寒波被害について深刻さを持って報道しない日本のマスコミはおかしい」と繰り返し述べてきました。しかし、昨日と今日のギョーザ事件に関する中国の報道振りを見て「中国での報道のされ方もおかしい」と思ったので、ひとこと言わせていただきたいと思います。

 今回の「毒物入り冷凍ギョーザ事件」については、誰かが故意に農薬の成分である毒物を冷凍ギョーザに混入した可能性もあるので、この事件については、原因が特定できない段階で「だから中国製の食品は危ないのだ」といった議論に結びつけるのは正しくありません。従って、中国の政府関係者が、記者会見で「日本の報道機関は事実に基づき冷静に報道してほしい」と繰り返し述べている理由も理解ができるところです。

 一方、中国では春節(旧正月:2月7日)頃までは、この事件については、あまり報道されていませんでした。中南部での寒波被害が甚大なので、そういった自然災害による混乱の中、旧暦の大晦日(2月6日)の夜に親族が揃ってギョウザを食べる習慣がある中国において、あまり不安を抱かせるような報道をしたくない、という中国当局の考え方もわかるなぁ、と私はある程度の同情の念を持っていました。

 春節以降は、この冷凍ギョウザ事件に関しては、中国の新聞やテレビでも中国側の記者会見の様子などで示された事実関係を淡々とではありますが、かなり詳しく報ずるようになりました。これらの報道は、基本的には、中国国内で行われた記者会見で発表された情報をを報ずるものでしたので、袋の外側や内側でメタミドホスが検出された、とか、検出されたメタミドホスには不純物が多く含まれており研究用として日本にあるメタミドホスとは異なり中国で農薬として使われているものである可能性が高い、とか、メタミドホス以外にも農薬成分ジクロルボスが検出されたケースもあった、とか、いう日本で伝えられているもろもろの事実関係は、中国ではほとんど報道されていません。

 そうした中、徳島県で冷凍ギョウザの袋からジクロルボスが検出された件について調べた結果、この徳島県のケースでは、ギョーザが売られていた店の店内の別の場所でもジクロルボスが検出されたことから、店内で殺虫剤を噴霧したことにより付着したと判断される、と徳島県が発表しました。

(参考1)徳島県庁ホームページ2008年2月14日報道発表
「危機管理会議の開催結果について」
http://www1.pref.tokushima.jp/001/01/shoku/cs/H20021419.pdf

 これを受けて、新華社通信は「徳島県庁が『問題のギョウザ』は店内で殺虫剤を用いたことにより汚染されたものであることを認めた」という見出しの記事を流しました。

(参考2)「新華社」2008年2月15日18:26アップ
「日本の徳島県庁が『問題の餃子』は店内で殺虫剤を用いたことにより汚染されたものであることを認めた」
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2008-02/15/content_7610764.htm

 この新華社の報道は、2月15日22:00からの中国中央電視台第1チャンネルの「夜間新聞」(夜のニュース)、2月16日付けの「新京報」でも伝えられました。また、このニュースについては、2月16日付けの人民日報でも報じられました。

(参考3)「人民日報」2008年2月16日付け記事
「日本の公的機関は徳島県の『問題の餃子』は店内での殺虫剤使用により汚染されたことが原因であることを認めた」
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2008-02/16/content_43856285.htm

 いずれも記事も文章をよく読むと「徳島県で問題となったギョーザについては、店内での殺虫剤使用が原因であることを徳島県当局が発表した」と書いてあるのであり、千葉県や兵庫県で中毒者を出したギョーザについては、この記事では何も言っていないので、記事の内容自体は間違いではありません。人民日報の見出しでも「徳島県の『問題のギョウザ』は・・」と、きちんと「徳島県の」という修飾語が付いています。しかし『問題のギョーザ』と『 』付きで書かれていることと、新華社の記事では見出しに「徳島県の」とうい修飾語が付いていないので、見出しだけ見ると、問題となった一連のギョーザの全てが日本の店内での殺虫剤使用により汚染されたものであるかのような誤解を読者に与えかねない見出しの付け方になっています。

 中国国内では中国国内での記者会見で発表される情報以外の情報がほとんど報道されない中、この徳島県のケースだけが選択的に報道されると、「今回のギョーザ事件は、日本国内で殺虫剤を使用したことが原因だ。それなのに日本のマスコミは中国製品が悪いといって騒いでいる。これはおかしい。」という印象を多くの中国人民に与えることになると思います。そもそも中国のマスコミが当局の指導の下で報道していることと、今回の徳島のケースを中央電視台と人民日報という「本家本元の公式メディア」が率先してこれを伝えていることを考えると、中国当局が中国は悪くない(悪いのは日本だ)という方向に世論を誘導しているのではないか、との意図を感じます。

 しかし、そういう世論誘導を中国当局がしようとしているのは、中国当局にとって何のプラスにもならない、と私は思います。中国当局が仮に中国国内の世論コントロールに成功したとしても、中国当局は国際世論をコントロールすることはできないからです。むしろそういった世論操作は、国際世論に対しては中国当局に対するよくない印象を与えます。オリンピックを控えている今年、これは中国当局に得となるはずはありません。

 私は、今回、日本で見つかった毒物入り冷凍ギョーザ事件に対しては、中国当局の内部でも対応方針が一枚岩になっていないのではないか、という気がしています。というのは、徳島県のケースを特出しにして報じることは、中国の一般市民の間でようやく好転しつつあった反日感情をまた悪化させてしまうことになりかねず、4月頃に予定されている胡錦濤主席の訪日にマイナスになってしまうからです。これは党中央の意図するところとは異なると思います。

 中国当局が、寒波被害という国家レベルの自然災害の中で、日本のマスコミによるギョーザ事件に関する「メディア・スクラム」に大いに辟易しているのは理解できますが、今回の徳島県のケースを特出しで選択的に報道したことは、中国当局にとって「失策」だったと私は思います。その背景には、そもそも新華社、中央電視台、人民日報といった「本家本元の公式メディア」を使えば世論操作が可能である、という中国当局の意識があると思います。もし中国当局が意図するのと違う方向に反日感情が盛り上がった場合は、また別の方法で世論操作すればよい、と考えている可能性があるからです。しかし、こういった世論操作は、結局は、国内世論と国際世論とのギャップを産むことになります。国内世論と国際世論とのギャップは、オリンピックの場において表面化する可能性があります。それは中国当局にとって好ましくないはずで、その意味でも、中国当局は、世論は操作しようと思えばできるもの、といった思い上がった考えからそろそろ脱却する必要があると思います。

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2008年1月31日 (木)

毒物入り冷凍ギョーザ事件

 昨日(1月30日)以来報道されている中国製冷凍餃子から農薬や殺虫剤に使われるメタミドホスという有毒物質が検出され、これを食べた10人が中毒症状を訴えた事件については、日本のメディアでは、詳しく報道されているので、皆様よく御存じのことと思います。

 各種の報道によると、この事件の時系列は以下のとおりです。

1月30日(水)
日本時間16時頃(北京時間15時頃):千葉県警が被害について発表
北京時間夕方:(新華社電によれば)在北京大使館から中国国家品質検査総局に対して事件について通報。日本からの通報を受けて、国家品質検査総局が河北省の天洋食品加工工場の調査を実施。

1月31日(木)
北京時間午前3時頃(日本時間午前4時頃):国家品質検査総局が、問題となった2007年10月1日と10月20日に製造された餃子についての検査記録を確認したところ、ショウガ、白菜に対して原料への残留農薬検査が行われていたが、メタミドホスは検出されておらず、検査には合格していたことが確認された。また、工場に残されていた餃子のサンプル及び現在使われている原材料を検査したところ、メタミドホスは検出されず、工場の加工記録にも問題となるような部分は見つからなかった。

(1月31日(木)お昼頃までの時点で、の中国のテレビや新聞では、ごく一部の新聞で日本における報道を引用する形で事実を伝える記事が載った以外、本件に関するニュースは流されませんでした)

午後:中国国家品質検査総局が記者会見し、天洋食品加工工場から出荷された製品の回収を行っていることと、上記のこれまでの検査の状況を説明

北京時間16:58(日本時間17:58)これに関して新華社通信が自国内発の情報としては、本件について(おそらく)初めて報道

(参考)「新華社」ホームページ2008年1月31日16:58アップ記事
「中国国家品質検査総局、日本の食物中毒事件に対して、既に調査を開始」
http://news.xinhuanet.com/fortune/2008-01/31/content_7535106.htm

※新華社のニュースの見出しが「日本の食物中毒事件に対して・・・」となっているのは、中国国内に対するインパクトをできるだけやわらげたいという意図が見え隠れしています。

北京時間22:00(日本時間23:00):中国中央電視台第一チャンネルの「晩間新聞」(夜のニュース)で、上記の国家品質検査総局の記者会見の模様を報道(おそらく中国国内のテレビが本件について報道するのはこれが初めて)

 31日夕方までは中国におけるメディアでは本件についての報道はありませんでしたが、日本政府からの情報提供を受けて、国家品質検査総局が直ちに動き出し、30日深夜から31日未明に掛けて調査を行い、その日の午後に記者会見を行う、という中国政府のスピードは、中国の対応としては極めて異例のものです。中国は、現在、南半分で寒波と大雪・氷雨による電力網の寸断、交通網のマヒ、燃料の石炭が運べないことと送電線が切れていることによる大規模な停電の発生しているなど、国として緊急事態と言ってもいい状況にあります(胡錦濤主席、温家宝総理をはじめ幹部が現地へ行って陣頭指揮を取らなければならない状況)。そういった状況の中での今回の農薬入り冷凍ギョウザ事件への対応は極めて異例です。食品の安全に関する問題が、寒波・雪害による被害にも劣らないほど重大な問題であることを中国政府自身がよく認識している証拠だと思います。

 これら二つの全く関係のない案件が重なって発生してしまったのはアン・ラッキーでしたが、中国としては、この危機を何としても乗り切らなければならないと思います。食の安全の問題は重要な問題ですが、日本としても、中国製品は何でもかんでもストップさせる、というような極端な対応に走るのではなく、きちんと安全性を確認した上で冷静に対処することが重要だと思います。

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2008年1月 4日 (金)

スプートニク50周年テレビでやった?

 私が、

http://folomy.jp/heart/

の「テレビフォーラム」に2007年10月6日にアップした文章をこちらのココログにも掲載します。

 folomyは、かつての@ニフティのフォーラムを運営していた人たちが集まって運営しているサイトで、メールアドレスを持っている方ならば誰でも無料で登録できます。私がfolomyに書いたものの再アップは、折りを見て時間のあるときに行います。従って、例えばfolomyに掲げた文章のアップは1か月以上遅れると思います。最新の文章を御覧になりたい方は、ぜひ、御自分で上記のアドレスからfolomyに登録して、御覧いただくよう御願いします。

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アップ場所: http://folomy.jp/heart/

フォロ「テレビフォーラム(ftv)」-会議室「喫茶室『エフ』」-トピック「北京の白い空の下で」

記載日時:2007年10月6日

【スプートニク50周年テレビでやった?】

 今年の10月4日は、旧ソ連が人類初の人工衛星「スプートニク」を打ち上げてから50周年の記念日でした。今、私は日本のテレビを全て見られる環境にはないのですが、少なくとも私は気が付いた範囲では、日本のテレビのニュースでは「スプートニク50周年」に関する話は伝えていませんでした。私は中国のテレビを見て初めて、今年がスプートニク50周年に当たることを思い出したのでした。

 1957年当時、旧ソ連がアメリカより先に人工衛星の打ち上げに成功したという事実は、世界中に「スプートニク・ショック」を与えました。今はソ連という国もなくなってしまったし、人工衛星を打ち上げること自体「普通のこと」になったしまったので、「スプートニク」50周年の記念日は、日本ではあまり人々の関心事項にはならなかったのだと思います。それは放送衛星・通信衛星、気象衛星、カーナビなど人工衛星を使った測位システムなどが既に日常的なものになったことの証拠でしょう。

 くしくも同じ10月4日、日本の月探査機「かぐや」が月周回軌道に入りました。科学探査のひとつ、ということで、テレビを含め、報道振りは地味なものでした。1960年代の米ソ宇宙競争時代のように、宇宙における科学探査を「国家の威信を賭けて」といった形で仰々しく宣伝に使うのは時代錯誤だと思いますが、もう少し大きく取り扱ってもよいのではないか、というのが私の率直な感想でした。

 中国では、宇宙開発に関する報道機関の関心は高く、日本の「かぐや」に関する最新情報も逐次報道しています。中国の場合は、有人宇宙計画については、内外に対して「国家の威信を示す」目的も持っていることは明らかですので、報道機関が宇宙開発関連のニュースを取り上げる頻度も高くなるのは、ある意味では当然なのですが、別の見方として、急速に成長を続ける中国経済の中で、中国では宇宙開発が今でも「未来を開く象徴的存在」であることを示していると言えるでしょう。

 映画「アポロ13」の中で、月へ向かうアポロ宇宙船の中の宇宙飛行士の様子をアメリカの4大テレビ・ネットワークが生放送では中継しないことになった、という場面が出てきました。アポロ13号は3回目の月着陸を目指していたのですが、テレビにとっては月着陸も「3回目」では新味に欠けている、と判断されたからでしょう。テレビは常に「新鮮味やハデさ」を求めますが、既に普通になってしまったこと、地味なことでもきちんと伝えることも重要だと思います。日本のテレビにとっては、人類初の人工衛星「スプートニク」は、過去のものだったのかもしれませんが、少なくとも歴史の一コマとしてきちんと伝えてほしかったと思います。

(2007年10月6日、北京にて記す)

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2007年12月27日 (木)

大気汚染V級「重汚染」が「熱烈歓迎」

 今日(2007年12月27日)夕方、福田総理が北京に到着しました。日中両国の首脳が直接話をして、意見を交換し合う、ということは、何にしてもいいことだと思います。

 ところで今日の北京は朝からスモッグがすごく、300メートル先も見えないという状況でした。発表された国家環境保護総局の今日の北京の「空気質量」(大気汚染の状況)は、汚染指数(API)が421で、7つある等級のうち最も汚染がひどい「V級(重汚染)」でした。

(参考1)国家環境保護総局のホームページ
「重点都市大気汚染状況」
http://www.sepa.gov.cn/quality/air.php3

※下の方の欄で「都市」(中国語で「城市」)を選択し、希望の日付を入れて「査詢」というボタンをクリックすると希望する期間の過去の大気汚染の状況が検索できます。

 「重汚染」(汚染級数V級)は「健康な人々に対しても運動に対する抵抗力を弱める。強い症状を発現させたり、何らかの疾病の発現を促進する可能性がある。老人及び病人は室内に留まり、体力の消耗を避ける必要がある。一般人も戸外での活動を避ける必要がある。」とされています。しかも、汚染指数(API)が251~300がIV(2)級の「中度重汚染」ですから、今日の汚染指数421はとんでもなく高い値であることがわかります(たぶん今年最悪の値です)。少なくとも、今日のような大気の状況では、マラソンをやることは無理だと思います。もっとも、来年の北京オリンピックは8月なので、暖房用燃料の煙などが加わる冬のスモッグと同じような状態にはならないと思いますが。

※「汚染指数」(API)や汚染級数についてはこのブログの下記の記事を参照。

(参考2)このブログの2007年6月19日付け記事
「北京の今日の大気汚染度はIII(1)級(軽微汚染)」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/06/iii1_5bc5.html

 最悪の大気汚染の日に北京に来た福田総理は「運が悪かった」と言うべきなのでしょうか、それとも総理に同行してきた日本の報道関係者がこの大気汚染を実感して日本に報道してくれる、という意味では「運がよかった」と言うべきなのでしょうか。

 私は20年前にも2回北京の冬を経験していますが、当時は暖房の主体が練炭だったので、冬の間の大気汚染にはかなりひどいものがありました。しかし、今年12月までを経験したところでは、思っていたよりは、すっきりと晴れた青空の日が多かった、という印象でした。去年から都心部での練炭の使用が制限され、暖房用の燃料には天然ガスが使われるようになったこともあり、20年前に比べれば、暖房用燃料による北京の大気汚染はだいぶ改善されたようです(その代わり自動車の台数が増えたので、自動車の排ガスによる汚染は増えましたが)。少なくとも、中国でも、大気汚染対策の努力はしているし、その効果が上がりつつあることは確かだと思います。でもやっぱり気象条件によっては、今日のようなひどいスモッグの日が出現するのが現実です。

 天気予報によれば、明日(12月28日)は、気温が下がって少し雪が降り、風も吹くようなので、汚染は少しは改善されるでしょう。今回の総理訪中に同行した日本の報道関係者が、この北京の大気汚染についてどのように報道するか、注目したいと思います(今日の夜のNHKのニュースなどを見ると、北京特派員が北京の夜景を背景にリポートしていましたので、特派員がレポートする背景に映っている街の様子を見ればテレビの画面からも、大気汚染の状況はある程度は伝わると思います)。

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2007年12月25日 (火)

テレビニュースには国境を作らないで欲しい

 私が、

http://folomy.jp/heart/

の「テレビフォーラム」に9月29日にアップした文章をこちらのココログにも掲載します。

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「テレビフォーラム(ftv)」-「喫茶室『エフ』」-「『ドナウ川の蚊柱』の続き」

記載日時:2007年9月29日

【テレビニュースには国境を作らないで欲しい】

 今日、9月29日は日中国交正常化35周年の記念日です。昨日の28日(金)、北京の日本大使公邸では、二人の元総理(森喜朗氏、村山富市氏)も出席して記念祝賀会が開かれました。中国側要人や北京に駐在する日本人も含めて大勢が参加しました。私も参加させていただきました。日本のテレビ局も取材に来ていたので、日本でどのように報道されたのだろう、とインターネットでYahooの動画ニュースで見ようとしたら「Yahoo!動画は日本国内でのみ視聴できます。」との表示が出て見ることができませんでした。以前は中国からもYahoo!動画ニュースは見られたので、たぶん最近新たに掛かった規制だと思います。

 中国関係のニュースを中国から見られない、というのは理不尽です。ドラマや音楽番組、スポーツ中継などは著作権の関係で、インターネット上も国内のIPアドレスしか見られないように規制を掛けることはわらなくはないのですが、ニュースは多くの人に見てもらいたいからこそネット上にアップしているはずで、国外から見られないのだったら、ネットに載せる意味が半減してしまいます。ちなみにNHKについては、中国からでもインターネット上でニュースの動画を見ることができます。

 今、中国では、外国のサイトに際して様々なアクセス制限を掛けており、例えば、中国(大陸部)からは、ウィキペディアの日本語版やイギリスBBCのホームページの内容を見ることができません。インターネットという国境を越えることのできる技術ができているのに、わざわざそれを制限するのはケシカランと私は日頃から思っています。ところが、上記のYahoo!動画上の日本のテレビニュースの動画の配信制限は日本側が掛けているものです。もし日本が「報道の自由」を標榜する国ならば、インターネット上のテレビニュースの配信に国境を作ることはやめて欲しいと思います。中国にも日本語のできる人はたくさんいます。日本のテレビニュースがインターネット経由で見られる、ということは、日本語のできる中国人にとっては貴重な情報源のはずです。

 ドラマや音楽、スポーツ中継など、著作権の関係で配信を国別にコントロールする必要のあるコンテンツとテレビニュースとを区別することは、技術的には簡単なはずです。

 知的財産権は、本来、コンテンツ制作者の権利を守り、よりよいコンテンツを作り出すことによって、社会の進歩に資するために守られるべきものです。私は、以前から、その知的財産権が、むしろ社会の進歩の足を引っ張る役割も果たしていることに対して危惧を抱いています。Yahoo!動画が設けた規制のように、インターネット上でのテレビニュースの国境を越えた配信を制限することは、私は、グローバル化が進む現代にあっては「社会の進歩の足を引っ張る」行為だと思います。関係者に再考を御願いしたいと思います。

(2007年9月29日、北京にて記す)

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(以下、2007年12月28日追記)

 上記の文章を書いた後、事情の変更があったようで、今はYahoo!動画ニュースは私のいる北京からも見ることができるようになっています。今日、日中首脳会談を行った福田総理関連の日本で放映されたニュースも北京からこのYahoo!動画ニュースで見ることができます。

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2007年12月14日 (金)

世界の中の日本の比重

 私が、

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の「テレビフォーラム」に9月16日にアップした文章をこちらのココログにも掲載します。

 folomyは、かつての@ニフティのフォーラムを運営していた人たちが集まって運営しているサイトで、メールアドレスを持っている方ならば誰でも無料で登録できます。私がfolomyに書いたものの再アップは、折りを見て時間のあるときに行います。従って、例えばfolomyに掲げた文章のアップは1か月以上遅れると思います。最新の文章を御覧になりたい方は、ぜひ、御自分で上記のアドレスからfolomyに登録して、御覧いただくよう御願いします。

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「テレビフォーラム(ftv)」-「喫茶室『エフ』」-「『ドナウ川の蚊柱』の続き」

記載日時:2007年9月16日

【世界の中の日本の比重】

 昨日(9月15日)午前、NHK-BS1では、大リーグのボストン・レッドソックス対ニューヨーク・ヤンキースの試合を生中継していました。松坂大輔と松井秀喜の直接対決がある、ということでNHKは中継したいたのだと思います。実は、この試合は、香港に拠点があるスポーツ専門衛星テレビのESPN-StarSportsも生中継をやっていました。私が住んでいるアパートメントでは、NHK-BS1とESPN-StarSportsは隣のチャンネルなので、両方を切り替えながら見ていました。

 ESPN-StarSportsの方は日本人向けのチャンネルではないので、特に松坂と松井が出るから中継をしていたわけではなく、レッドソックス対ヤンキーズの試合が大リーグの中でも黄金カードだから放送していたのです。そういう黄金カードのゲームで、先発ピッチャー、主力打者として活躍している松坂、松井はやはりすごいと思います。

 国際政治の面では、日本はあんまり主導的な役割を果たしていないので目立たないのですが、国際政治以外の面では、日本は、世界の中では結構重要な役割を果たしています。GDPの大きさなどから、経済の面で世界の中で日本の比重はかなり大きいという自覚を持っている人は多いと思いますが、経済の面だけではなく、日本は意外にかなり幅広い分野で世界に影響を与えていると思います。

 私が今いる中国においても、改革開放後の中国の経済発展の背景として日本企業のバックアップがあったことはもちろんですが、そのほかの面においても日本は中国に対していろいろな影響を与えています。「スターバックスは故宮から出て行くべき」と主張して注目を集めた中央電視台のテレビ司会者、ルイ成鋼氏のブログの2006年9月30日の記事で、ルイ氏は、「組織」「政治」「革命」「政策」「経済」「科学」「社会主義」「共和」など重要な単語は日本人が発明した単語だ、として、中国人は、もっと日本のことをよく知らなければならない、と主張しています。

 日本が中心となってアジアや世界をリードすべきだ、とする戦前的考え方は一種の妄想だと思いますが、かと言って、日本は極東の小国で世界を動かせる力はない、と考えるのも卑下しすぎで日本の存在を過小評価し過ぎています。昔、野球マンガの「巨人の星」では、「大リーグ・ボール」というのが登場し、アメリカの大リーグは日本の野球にとっては及びも付かない遠い存在として描いていましたが、野茂を皮切りにしたイチロー、松井、松坂らの活躍は、日本人でも大リーグで活躍できることを証明しました。日本は、自らを過大評価することも過小評価することもなく、等身大の比重を担っているとの自覚を持って、世界の中で活躍する必要があると思います。

(参考)中国中央電視台のテレビ司会者・ルイ成鋼(ルイは「くさかんむり」に「内」)氏のブログの2006年9月30日付け記事
「中国人ひとりひとりが読むべき日本に関する文章」
http://blog.sina.com.cn/s/blog_4adabe2701000797.html

(2007年9月16日、北京にて記す)

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2007年11月12日 (月)

日本と比べて中国の教育を見てみると

 11月8日付けの「新京報」の論評の欄に「日本と比べてもう一度我が国の教育をじっくり見直してみよう」と題する文章が載っていました。

(参考1)「新京報」2007年11月8日付け論評
「日本と比べてもう一度我が国の教育をじっくり見直してみよう」(王錦思)
http://www.thebeijingnews.com/comment/zonghe/1044/2007/11-08/014@073854.htm

 筆者は中国日本史学会会員の王錦思氏という方です。日本のNPOや企業の中には、中国の貧しい地区の小学校を支援する活動をしているグループがいますが、先日「南方都市報」という新聞に、こういった日本の支援者が安徽省のある貧困地区を訪れたとき、政府の庁舎は立派なのに、農村の小学校は一校に改善されない、それどころか小学校を取り壊して政府の庁舎を作ったために、児童らは古い校舎で勉強せざるを得ない状況だった、という話が報道されていたとのことです。上記の評論文の筆者は、この報道に対し、ポイントとして次のような指摘をしています。

○GDP世界第三位にまでなった中国において、教育経費が十分に充足されていない実態については、我々は考え直さなければならない。

○ここ百年以上にわたる日中関係の間には、恩義も怨みもあるが、教育の問題は動かざる大山のごとく、両国の存亡に係わってきた。日清戦争時代の清の進歩派官僚・康有為は、日清戦争での敗北は、清朝政府が教育を重視していなかったからだ、と言っている。

○よく中国は人口が多くて日本のように教育にお金を投入できない、と言う人がいるが、明治維新の頃や戦後直後は、日本は中国の現在の状況よりも貧しかったけれども現在の中国よりはるかに多くの割合のお金を教育に投入していた。

○日本は1886年に近代学校制度を確立して4年制の義務教育を普及させ、1907年には世界に先駆けて6年制の義務教育を普及させた。戦後の1949年には9年制の無償の義務教育を開始した。

○新中国成立以来、中国の教育は著しく進歩し、識字率は大幅に向上したが、中国にはまだ多くの問題が残っている。多くの農村では、地域で最も貧弱な建物は学校であり、最も立派な建物は政府の庁舎である。日本の農村では、最も立派な建物は学校であり、自然災害が発生した時、村民は自然と学校に避難して集まってくる。

○(南方都市報の報道にあるような)日本の友人の善意が我々に気付かさせてくれたことについて、我々は深く考える必要がある。

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 王錦思氏の指摘のように、明治維新以降、日本が教育を非常に重要視してきたことは事実だと思いますが、以下の点も考慮する必要があると思います。

○日本政府の戦後の教育に対する取り組みに対しては、例えば、学校給食に対する進駐軍からの脱脂粉乳の提供など、アメリカの強力なバックアップがあった。

○新中国成立以前は、列強各国による半植民地支配、抗日戦争、国民党との間での内戦を通じ、多くの一般庶民に対して十分な教育がなされていなかったのだが、現在の中国は、そういった状況から出発して、現在は、新中国成立前に成人していた高齢者も含めた数字としての識字率が90%、高校進学率59.2%、大学進学率約22%(いずれも2006年の数字)に達している。これは新中国成立以降の中国の教育への力の入れ方が並々ならぬものであったことを示している(13億人の人口を抱えている中国におけるこれらの数字は、むしろ驚異的なものである、と私は思っています)。

 中国における問題の根元は、一部の地方政府が教育にお金を回さずに資金を浪費していることにあります。

(参考2)このブログの2007年7月14日付け記事
「『富める政府』『貧しい庶民』」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/07/post_25a6.html

(参考3)このブログの2007年8月15日付け記事
「昼間の接待酒をやめたら半年で4300万元浮いた」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/08/4300_27f3.html

 王錦思氏が指摘している問題点は、中国において政策として教育を重要視していないのではなく、中国の地方政府がやるべきことをやっていない、ということが問題なのだと思います(結果的には同じことですが)。

 中国の多くの人の日本に対する感覚は、王錦思氏が文章の中で書いているように「恩義もあるし怨みもある」という認識が基本だと思います。戦争の時に日本が中国においてしたこととともに、孫文や魯迅など中国の近代化を推し進めた人々が日本で学んでいた、ということも中国の人々はよく知っているからです。そのためか、中国が抱える様々な問題に関して、日本はよく比較の対象とされます。特に19世紀後半の日中の歩みの違いは、なぜこの間に日中の国力の差が逆転してしまったのか、という点で、中国の人々に深刻な問題提起をしています。背景には「なぜ世界の大国である中国が、日本のような小さな国に負けてしまったのか」といった自負心の裏返しの感情があるのだと思いますが、こういった感情は、よい意味でのライバル意識と捉えれば、悪いことではない、と私は思っています。

 上記の評論の筆者の王錦思氏は、中国の日本史学会会員ですので、中国の中でも「知日派」の方だと思います。いわゆる「知日派」と呼ばれる人々以外でも、中国では、多くの人が日本が経てきたいろいろな経験についてよく勉強して知っています。日中間の問題を考える場合には、中国にとって、日本は、よい意味でも悪い意味でも、そういったいろいろな経験を教えてくれる存在でもあることを念頭に置いておく必要があると思います。

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2007年10月25日 (木)

中国の月探査機「嫦娥1号」の打ち上げ

 10月24日18:05(北京時間)の中国初の月探査機「嫦娥1号」の打ち上げは、私は、中央電視台の生中継のテレビで見ました。この日は18:30から始まる仕事関係の宴会があったのですが、たまたま宴会会場の部屋にテレビがあり、三々五々集まる中国側の出席者と一緒にテレビの生中継を見ていました。

(注)「嫦娥」(Chang'e:日本語読みでは「ジョウガ」)は、中国の伝説に出てくる月に住むという仙女のこと。

 日本やアメリカの場合、カウントダウン(3・2・1・0)の「ゼロ」はリフトオフ(ロケットが上昇し始める瞬間)なのですが、中国の場合は、カウントダウンの「ゼロ」は「点火するタイミング」のようです。大型ロケットは、点火してから推力が大きくなりロケットが浮き上がる(リフトオフ)まで数秒掛かるので、中国語のカウントダウンが「ゼロ」になってもロケットが浮き上がらなかったので、一瞬ひやりとしました。あとでテレビのニュースで見たのですが、中国の場合、カウントダウンが「ゼロ」になった時の「点火」は、担当者が赤い点火ボタンを押すことによって点火されるような仕組みになっているようです。日本やアメリカのロケットの場合は、点火シーケンスはコンピューターの指令により自動で開始されるので、ニュースでボタンを押すシーンを見て、「へぇ、中国ではそうなのかぁ」と思いました。

 あと、思ったのは、ロケットの上昇するスピードが意外にゆっくりだなぁ、ということです。人間が乗った宇宙船を打ち上げる時は宇宙船自体がかなり重いのでロケットがゆっくり上昇する感じがするのですが、無人の探査機の場合は、比較的軽いし、大きな加速度が付いても問題がないので、もっと早く加速してもいいのになぁ、と思いながらテレビの中継を見ていました。

 日本の「かぐや」を載せたH-IIAロケットの打ち上げと「嫦娥1号」を載せた長征3Aロケットの打ち上げをインターネット上の動画で比較して見る、というのも一興かと思います(日本から中国へアクセスする場合、通信回線が細くて動画がうまく再生されない場合がありますので、その点は御了承ください)。

(参考1)日本の宇宙航空研究開発機構ホームページ
「かぐや/H-IIA13号機打ち上げ特設サイト」-JAXA放送-ライブ中継打ち上げリピート映像
http://www.jaxa.jp/countdown/f13/live/index_j.html

(参考2)中国中央電視台ホームページ
「嫦娥1号」打ち上げ
http://www.cctv.com/video/wwwwxinwen/2007/10/wwwwxinwen_300_20071024_17.shtml

 その後、「嫦娥1号」は、指定された軌道に乗り、太陽電池パネルも開いて、今のところ飛行は順調のようです。

 中国のメディアはこの打ち上げのニュースを大きく報道しています。まず一番目立ったのは、英字紙「チャイナ・ディリー」で、10月25日付け紙面は、1面の4分の3を占める巨大な長征3号Aロケットの打ち上げ写真を掲げて報じています。

(参考3)「チャイナ・ディリー」中国の月探査プロジェクト特集ページ
"China's Moon Exploration Program"
http://www.chinadaily.com.cn/china/china_moon_page.html

 人民日報の10月25日付け紙面の1面では、「嫦娥1号」打ち上げ成功の記事は、右下の小さな記事でした。ただ、後ろの方の「科学・教育」のページ(1週間に一度4ページにわたって組まれる特集枠)では4ページ全部が「嫦娥1号」の打ち上げと関連する月探査プロジェクト関連の記事でした。

(参考4)「人民日報」2007年10月25日付け紙面
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2007-10/25/node_17.htm

 一方、国営通信社の新華社では特設ページを設けて、「嫦娥1号」プロジェクト関連の現場実況記事、写真、解説記事などを多数掲載しています。

(参考5)「新華社」の「嫦娥1号」プロジェクト特集ページ
http://www.xinhuanet.com/tech/tywx/

 一方、北京の大衆紙「新京報」(タブロイド判)は、全88ページのうち、8ページが「嫦娥1号」打ち上げ関連の記事でした。「新京報」では「月探査プロジェクトは、科学探査でもあり、産業のイノベーションでもある」と題する社説を掲載し、その中で宇宙開発と国全体の社会・経済とのバランスの重要性を指摘した冷静な論評をしています。「月ロケットの打ち上げに成功した!中国万歳!」と大喜びしている感じのある他の中国のメディアとは一線を画した「新京報」ならではの社説だと思いました。

(参考6)「新京報」2007年10月25日付け社説
「月探査プロジェクトは、科学探査でもあり、産業のイノベーション(創新)でもある」
http://www.thebeijingnews.com/comment/shelun/2007/10-25/018@075616.htm

 打ち上げ後の中国のメディアの報道ぶりの中では、日本の月探査機「かぐや」との関係では、他の国の月探査計画の例、として淡々と紹介されており、ことさら日本との競争意識を煽るような記事はなかった、と私は感じています。最近はアメリカすらやっていない月探査に中国が一歩を踏み出したのだ、という意味で、日本との関係というよりは、世界の中における中国の位置付けを意識した報道ぶりだったように思います。

 なお、このブログの上記の記事と一部ダブりますが、このブログの筆者の「本業」のひとつとして、下記のページに文章を掲げておりますので、御関心のある方は御覧下さい。

(参考7)科学技術振興機構(JST)中国総合研究センター
【JST北京事務所快報】第9号「中国初の月探査機『嫦娥1号』打ち上げ成功」
http://crds.jst.go.jp/CRC/

 それにしてもちょっと気になるのは、発射されたのが四川省の西昌という内陸部にある発射場だったため、第1段ロケットは、中国国内のどこかに落下しているということです。今ある中国のロケット発射場は全て内陸部にあります。ロケットの打ち上げに際しては、ロケットの残骸は人のいない山の中に落ちるように計算して打ち上げるのですが、中国はかなり多くの人が住んでいるので、時々、人里の近くに落ちることもあるらしいです。今回の「嫦娥1号」打ち上げについては、かなりオープンに新聞記者に取材させたり、一般の人に打ち上げの見学を認めたりしていますので、そういった「気になる部分」もちゃんと新聞に載るようにして欲しいなぁ、と思います。

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2007年9月15日 (土)

「新京報」1面トップ写真は日本の月探査機

 今日(9月15日)付けの北京の大衆紙「新京報」の1面に日本の月周回探査機「かぐや」の打ち上げの様子の写真がデカデカと掲載されています。

(参考1)「新京報」2007年9月15日付け記事
「日本の月の『女神』宇宙へ」
http://www.thebeijingnews.com/news/guoji/2007/09-15/014@021544.htm

 「新京報」は、いつも、1面にその日の大きなニュースの見出しと、人目を引くような写真を大きく載せて、読者の目を引きつける紙面構成を取っています。時には、土地開発を巡る土地収容問題で、開発業者に雇われた「地上げ屋」が住民に殴り掛かるところを住民が撮影したショッキングな写真を1面トップに掲載したりします。その意味で若干センセーショナリズム的な部分もあるのですが、「政府公報」的な色彩の強い新聞が数多くある中国の新聞の中では、読者の興味をうまく引きつけることに成功していると私は思っています。

 そういった「新京報」の今日(9月15日)付けの1面の写真は、昨日、種子島宇宙センターから打ち上げられた日本の月周回探査機「かぐや」を搭載したH-IIA13号機の打ち上げの写真(カラー)でした(上記のページに掲載されている3つめの写真です)。

 実際の記事は、国際面のA18-A19の2面にわたって掲載されています(記事の内容は新華社電を転載したものです)。今回の「かぐや」探査計画の内容や日本の宇宙開発の経緯を図面や写真を多く使用して詳しく解説しています(「かぐや」は、中国語では「月亮女神」と表記されています)。

 中国も初めての月周回探査機「嫦娥1号」の打ち上げを今年秋に予定しています(打ち上げ期日は未発表:「嫦娥=チャンア(日本語読みでは『ジョウガ』)」は、中国の伝説上の月に住むという仙女」)。上記の記事では日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の岩田隆浩博士が「一般の人は日中で競争をしているように見えるかもしれないが、科学者の立場からすると競争ではない。お互いを信頼するという基礎の上に立って、データを交換することは非常によいことなのだ。」「中国が打ち上げを計画している『嫦娥』と『かぐや』は志を同じくする仲間であり、我々はこれら2つの探査機に対して大いに期待している。」と語っていることを紹介しています。

 日本の科学者はいくつかの挫折を乗り越えて「かぐや」の計画を進めている、と解説するなど、記事の内容は非常に好意的です。中国は、有人宇宙飛行に関しては、日本よりずっと前を行っているという自信があることも背景にあるのだと思いますが、宇宙科学探査においても、日本に負けないように中国も頑張ろう、という良い意味でのライバル意識のようなものを感じます。

※なお、この日の「新京報」の国際面での自民党総裁選挙のニュースは、A20面の半分くらいのスペースで「党内で多数派が福田氏を支持、麻生氏劣勢」という記事を伝えています。

 今回の「かぐや」の打ち上げは、日本時間9月14日10:31でしたが、新華社は、打ち上げの直後、即座にニュースを配信しました(日本と中国の時差は1時間)。

(参考2)「新華社」ホームページ2007年9月14日10:18アップ
「日本の『月亮女神』衛星、月の探査計画開始」
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-09/14/content_6721853.htm

 また、中央電視台(CCTV)のニュース専門チャンネルでは、この打ち上げの様子を生中継していたようです。下記の中央電視台のホームページから打ち上げ時の生中継の様子を見ることができます。画面の右上の「現場直播」は「生中継」の意味です。

(参考3)中央電視台(CCTV)ホームページ2007年9月14日9:52アップ
「動画:日本初の月探査衛星『月亮女神』打ち上げ」
http://news.cctv.com/science/20070914/102821.shtml

※このページの上の方の「視頻」というボタンをクリックすると(通信状態がよければ)CCTVの生放送時の動画を見ることができます。日本の映像に中国語の同時通訳をかぶせています。最後の方では、スタジオの解説陣の解説もちょっとですが見ることができます。

 この打ち上げのニュースは、9月14日12時(日本時間13時)からの中央電視台第一チャンネル(総合チャンネル)の「新聞30分」(お昼のニュース)で、国内ニュースに続く国際ニュースのトップで伝えられていました。

 中国が日本をどう見ているか、のひとつの参考になると思うので、御紹介させていただきました。

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