カテゴリー「中国の物価」の記事

2008年8月13日 (水)

メダル・ラッシュ報道の裏の不気味な地鳴り

 オリンピックが始まってから、電子メールなどで中国国内旅行の宣伝がよく入るようになりました。「航空賃が安くなりましたので、著名観光地宿泊パックでたった○○○○元!」とか、「観光地近くの豪華ホテル、1泊△△△元で提供しております。御利用ください。」といった調子です。実際ネット上の航空会社の中国激安国内運賃の欄には16%、17%の激安チケットなどが載っています(16%引き、17%引きではない)。

 私は6月23日付けのこのブログで6月時点での中国国内航空賃が暴落していることに関連して「7月になってオリンピックが近くなると人の移動が多くなって国内航空賃も高くなると思うので、今の状況は一時的な現象だと思いますが・・・」と書きました。

(参考1)このブログの2008年6月23日付け記事
「中国国内航空:便によっては激安?」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2008/06/post_2490.html

 しかし、この中国国内航空賃激安状態は、オリンピックが始まった今も変わっていないようです。というかオリンピック景気の当てが外れた分、さらに国内航空賃は安くなっているのかもしれません。チベット自治区、四川省、新疆ウィグル自治区といった日本の外務省が「渡航の是非検討」以上の渡航情報(危険情報)を出している場所(2008年8月12日現在)は観光客が減ってもやむを得ないかなぁ、と思いますが、上記の「豪華ホテルをお安く提供しております」というのは、上記の渡航情報(危険情報)が出ていない(通常の状態の)場所にあります。中国全土に渡って、旅行者数が減っているのだと思います。

 8月12日夕方に配信された新華社電(英語版)によると、新疆ウィグル自治区の先日武装警察国境警備支部隊が襲撃されて16名が死亡(16名が負傷)したカシュガルの近くで、また、検問に当たっていた警備員3名が何者かに刺殺される事件(1名が負傷)が起きた、とのことです。

(参考2)「新華社」ホームページ英語版2008年8月12日16:32アップ
「新疆ウィグル自治区の道路の検問所で治安要員3人が襲撃されて殺された」
http://news.xinhuanet.com/english/2008-08/12/content_9214741.htm

 上記の新華社の英語の記事は見ることができますが、私は今(8月13日0時過ぎ)の時点では、新華社の中国語のホームページでこのニュースを見つけることができません。中国語の掲示板に「英語版新華社電によれば・・・」という書き出しでこの記事の内容を紹介する書き込みは見付けることができたので、たぶんまだ中国語ではこのニュースは配信していないのだろうと思います。一方、7月末から見ることができるようになったBBCのホームページ中国語版では、上記の新華社電英語版を元にした中国語の記事を見ることができます。たぶん、新華社が既に外国へ向けて配信しているので、中国の明日の朝発売の新聞には、この記事は載るでしょう。

 しかし、国営新華社通信が英語で配信し、外国のテレビ局が既に中国語で伝えているニュースを新華社自身が中国語で自国民に伝えていないこの状況を中国の人々はどう感じているのでしょうか。

 こういった報道のされ方も、対外的に「情報を隠したと言われたくない」という配慮と、自国民に対してはあまり刺激したくない、という複雑で困惑した当局の考え方を表していると思います。それにしても、これだけ立て続けて事件が起こるとさすがにちょっと不安になります。新疆ウィグル自治区は、警備上の重点区域であるはずですが、北京オリンピックの警備のために北京の警備も厳重にしなければならないために、警備の面でも人海戦術を採ることができる中国でも警備の人手が足りなくなっているのでしょうか。

 経済面でもここのところ中国の株価はオリンピックが始まる前には「ご祝儀相場」で少し株価が上がるのではないか、という期待もあったようですが、現実にはそういったものはなく、株価はここのところずっと低下傾向にあります。オリンピック関連の「景気のいい材料」はほぼ出尽くしたので、「オリンピック後」に対する警戒感が一気に出た形になっています。

 今のところ新聞紙面はオリンピック関連の中国のメダル・ラッシュに関する記事ばかりなので、治安面の経済面も「マイナスの話」は新聞紙上では全然目立っていない(ちゃんと報じられてはいる)のですが、「マイナスのニュース」が紙面上目立っていない分だけ逆にちょっと不気味な底流が見えないところで動き出し始めているような気がしてしかたがありません。

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2008年7月28日 (月)

中国経済は既に「オリンピック後」に突入

 オリンピックまであと11日にせまり「いよいよ」の感じが強まってきています。オリンピック直前になったのに、まだ「きれいな青空」が出現しないのが気になりますが、中国政府にとっては「オリンピック後」の経済等の急激な落ち込みが気になるところです。

 今日(7月28日)、新華社通信は、最近、党中央と政府が相次いで最近の経済情勢に関する会議を開催したことを伝えています。

(参考1)「新華社」ホームページ2008年7月28日
「中国共産党中央、目下の経済情勢を深く検討~科学的発展の堅持は揺るぎだにしない~」
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2008-07/28/content_8783721.htm

 この記事によると、7月8日~11日に、中国政府の国務院は連続して3つの経済情勢に関する検討会を開催した、とのことです。一つ目は7月8日に開催した地方の責任者からの報告と意見を聞く討論会、二つ目は7月10日に開かれた経済学の専門家によるマクロ経済情勢に関する検討会、三つ目は7月11日に開催された専門家による金融及び不動産情勢に関する検討会です。

 これらの会議で、温家宝総理は、厳しさを増す国際的な経済情勢と甚大な自然災害によっても中国の経済発展のファンダメンタルズ(基本的な状況)は変わらない、としながらも、体制上・構造上の矛盾は依然として存在しており、インフレ圧力が大きくなっている等の新しい問題が生じている、と指摘しています。

 引き続いて7月15日と16日の二日間、半日づつかけて温家宝総理は、国務院常務会議を開き、2008年上半期の経済情勢の分析と下半期の経済政策について議論を行った、とのことで、この席で、温家宝総理は次のように強調したとのことです。

・直面する困難と問題を高度に重要視し、危機意識と憂慮の意識を強め、各項目の業務をしっかり行う自信を持たなければならない。
・中国は、今、戦略的に重要な時期に直面している、という認識は変えてはならない。
・企業の競争力と活力を絶え間なく向上させ、市場の変化に対応する能力を増強しなければならない。
・マクロ経済の調整能力は実践の中でこそ、さらなる改善と向上が図られるのである。
・2008年下半期における経済政策においては、安定的で比較的スピードのある経済発展を保持するとともに、マクロ経済調整のために最初にやるべき任務として物価の急激な上昇を抑制させ、真っ先に取り組むべき課題としてインフレを抑制することを位置付けなければならない。

 これらの発言は、株価の暴落や不動産価格の低迷によって多くの投資家たちが政府によるマクロ経済調整政策(景気の引き締め政策)に批判的になっているのに対して、温家宝総理は、今はインフレ懸念がありマクロ経済調整政策の基調は今後も継続させると宣言した、と取ってよいと思います。

 これらの会議と相前後して、この7月は、実に多くの国家指導者たちが、沿岸部等の中国経済の「機関車」となっている地区を相次いで訪問しています。列記すると以下のとおりです。

・陳徳銘商務部長:7月第1週、浙江省(温州、台州等)
・温家宝総理:7月4日~の6日、江蘇省蘇州、上海
・習近平政治局常務委員:7月4日~5日、広東省(深セン、東莞)
※この訪問は香港訪問の途上に行ったもの
・王岐山副総理:7月3日~5日、山東省(烟台、威海)
・李克強政治局常務委員・副総理:7月6日~8日、浙江省(温州、杭州等)
・呉邦国政治局常務委員・全国人民代表大会常務委員会委員長:7月7日~10日、内モンゴル自治区(フルンベル、満州里、オルドス、フフホト等)
・温家宝総理:7月19日~20日:広東省(広州、東莞、深セン)
・胡錦濤主席:7月20日、山東省青島
・賈慶林政治局常務委員・全国政治協商会議主席:7月21日~23日:天津

 これだけそうそうたるメンバーの国家指導者の方々がほぼ時期を同じくして各地を視察するのは極めて異例のことだと思います。行き先は呉邦国氏が行った内モンゴル自治区以外は、全て沿岸部の輸出型製造業の中心となっている地域です。オリンピックやオリンピックに対するテロへの警戒が話題になっていますが、現実世界の問題としては、中国経済が今曲がり角に来ていることの方が重要だと私は思います。

 2008年前半は、中国経済は人民元レートの上昇(ドル安と表裏一体の現象ですが)、原油価格の急騰による原材料コストの上昇、労働契約法の施行(2008年1月1日)に伴う労働コストの上昇、安全性の問題に対する各国からの懸念等が重なって、中国の輸出産業には大きなブレーキが掛かったことが上記の国家指導者の沿岸地域での視察に繋がっていると思います。上に述べたように温家宝総理がその講話の中で「直面する困難と問題を高度に重要視し、危機意識と憂慮の意識を強め」といった緊迫感を持った表現を使っていることからも国家指導者の中国輸出産業に対する危機意識が窺えると思います。

 7月17日に発表された国家統計局の数字によると、2008年上半期の中国経済は、GDPは対前年比10.4%の伸びを示しましたが、その伸び率は前年を1.8ポイント下回った、とのことです。また、2008年上半期の輸出額は6,666億ドル、対前年同時期比21.9%の増でしたが、この伸び率は前年に比べて5.7ポイント下落しているとのことです(輸入額は5,676億ドル、対前年同時期比30.6%の増で、逆に伸び率は前年を12.4ポイント上回った)。安い労働力による労働集約型輸出産業に頼って急成長してきた中国経済が、今、曲がり角に来ていることは間違いないと思います。

 それに加えて、昨年秋にピークに達した後、ピーク時の半分以下に落ち込んでしまった株価や昨年暮頃から見え始めていたマンション等の不動産販売の低迷が「株や不動産に投資していた金持ち層が消費を手控える」という形で実態経済にも影響し始めているのではないかと思われます。今年1月の寒波・大雪被害や5月の四川大地震は、自然災害としての被害は甚大でしたが、大きな中国経済全体から見れば、経済の基本を動揺させるほどのものではないとは見られています。しかし、特に四川大地震については、無駄な出費を控えるという形で、心理的な消費抑制効果の面で中国経済に影響を与えている可能性があります。

 最後の追い打ちが「期待していたオリンピック景気が実際はそれほどでもないらしい。」ということを多くの人が感じるようになったことだと思います。北京市内のホテルは、かなり高めの価格設定をしたこともあり、一部の高級ホテルを除いて、まだかなり予約が入っていないところが多いようです。7月11日の時点で北京市旅遊局の熊玉梅副局長が述べたところによると、この時点でオリンピック期間中の5つ星級ホテルの予約率は78%、四つ星級ホテルは48.5%、三つ星級、二つ星級でも予約が入っているのは半分以下だ、とのことです。

(参考2)「新京報」2008年7月12日付け記事
「オリンピック期間中のホテルの宿泊代は最高で4倍近くに高騰」
http://www.thebeijingnews.com/news/olympic/2008/07-12/011@025743.htm

 前々からオリンピックが終わった後は「オリンピック・バブル」が崩壊する、といった心配はなされてきましたが、それが現実のものになりそうな気配があることと、それに加えて中国経済の根本を支えている輸出産業にかげりが見え始めてきたことに対して、党と政府の指導者の方々はかなりの危機意識を持っているようです。上記のような国家指導者による輸出産業地域の視察と相次ぐ会議を踏まえ、(参考1)に掲げた新華社の記事によれば、まず7月21日に胡錦濤総書記は中国共産党以外の民主党派の幹部や無党派の知識人を招いた会議を開いて検討会が開催されたとのことです。胡錦濤総書記・国家主席は、この席で、次の6つのポイントを指摘したとのことです。

(1) 安定的で比較的スピードの速い経済発展を全力を持って維持すること。そのためには内需を拡大するとともに、対外貿易を安定的に発展させて、国際及び国内の両方の市場を十分に活用すること。

(2) 物価上昇のスピードを抑制すること。経済的な政策と法律による行政手段の両方を使って、供給量を増加させ、不合理な需要を抑制すること。特に食糧・食糧油・肉・野菜等の生活必需品の生産の増強に努めるとともに、市場の監視・監督を強化すること。

(3) 農業生産を着実に発展させること。品種のバランスに注意しながら、穀物の安定的な増産に努力すること。さらに一歩農業優遇政策を進めて、農業に対する補助金制度を強化し、農業生産コスト削減のための政策を採り、食糧生産農民の意欲を維持すること。

(4) 経済発展方式の転換を図ること。産業構造を変化させ、科学技術の進歩とイノベーションを積極的に推進し、全力で省エネ・汚染物質排出削減を図ること。

(5) 改革開放政策を継続すること。資本市場体系の整備を急ぎ、行政管理体制改革をより前に進め、対外開放を拡大すること。

(6) 人民生活を保障する業務を誠心誠意行うこと。地震災害に対する救援・復旧作業をしっかり行い、困窮する大衆と大学卒業生の就業対策をしっかり進め(注)、自然災害被災地区の労働者に就業機会を与えること。特に物価の上昇が低収入の大衆の生活レベルに影響していることに関心を払い、財政支出をもって人民生活を支え、低収入の大衆の生活レベルがこれ以上低下しないように努力すること。

(注)中国では2000年代初頭から大学生の数が急速に伸びたのに対し、中国の多くの企業は低賃金労働者を大量に雇用する経営形態から脱しておらず、大学卒業以上の高学歴者に対する求人はあまり多くないのが実態です。高学歴化は進んだのに、産業構造の変化がそれに追い付いていない、という人材の需給の面でのミスマッチが中国では問題になっているのです。

 これらの胡錦濤主席の指摘は、そのまま現在直面している問題点のポイントを突いていると思います。

 こういった認識に基づき、胡錦濤総書記は、7月25日、中国共産党中央政治局会議を開き、上記の認識に基づく現在の経済政策と今後の経済政策についての議論が行われました。そしてこの会議でこの10月に第17期中国共産党中央委員会第三回全体会議(第17期三中全会)を開いて、農村改革問題について検討を進めることが決められました。

 今年は、1978年にトウ小平氏が、それまでの「文化大革命」路線から大きく舵を切って改革開放路線を始めてから30年目に当たります。改革開放路線への転換を決めた会議が第11期三中全会だったのですが、この10月に開催が決まった第17期の三中全会も重要な会議になりそうです。オリンピックが終わったのを受けて、オリンピック後の次のステップの中国の歩むべき道を議論する会議になるだろうと思われるからです。

 中国経済が曲がり角を迎えた今、新しい時代を乗り切るには科学技術の面での「創新」(「より新しいもの・システム・制度を作る」という意味で技術的な「イノベーション」よりも幅の広い言葉)が必要である、という点について、最近、人民日報でもいくつかの論評が掲載されました。この点については、このブログに書かれていることと重複する部分もありますが、下記のページも御参照ください(下記の文章を書いたのはこのブログの筆者です)。

(参考3)科学技術振興機構(JST)中国総合研究センター
「JST北京事務所快報:2008年第7号」(2008年7月23日)
「2008年上半期の中国経済とイノベーション」
http://crds.jst.go.jp/CRC/newsflash/beijing/b080723.html

 今、世界のトップ・アスリートたちは、本番のオリンピックへ向けて、集中力を高めつつある時期だと思いますが、中国経済の実態と、それにうまく対処しようと考えている中国の国家指導者の方々の頭の中は、既に「オリンピック後」へ向けて始動し始めているようです。

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2008年7月26日 (土)

北京地下鉄空港線に乗ってみました

 昨日(7月25日)、北京空港から市内まで、7月19日に開通したばかりの北京地下鉄空港線(北京首都空港鉄道)に乗ってみました。

 北京地下鉄空港線は、通常の鉄の線路の上を走り、電源は第三軌道から取ります(パンタグラフからではなく軌道脇の第三のレールから電源を取る方式:東京の地下鉄でいうと東京メトロの銀座線と丸ノ内線と同じ形式)。車輪で車体を支えていますが、2本のレールの真ん中に金属板が設置されているリニア・モーターカーです(この方式は東京の地下鉄でいうと都営地下鉄の大江戸線と同じ形式)。4両編成で、車内は向かい合わせの座席が着いているモダンなデザインです。運転士のいない自動運転で運行を行っています。

 北京首都空港は、北京市市街地の北東にありますが、この空港線の路線は、北京市内の第二環状路の下を通っている地下鉄2号線の東北部にある「東直門駅」を乗り換え駅としてこの駅を出発点とし、第三環状路付近を通っているこれも7月19日に開通したばかりの地下鉄10号線との乗換駅である「三元橋駅」に停車し、その後は地上に出て北京空港へ向かいます。まず、国際線や一部国内線が発着する世界最大級といわれる巨大な「第3ターミナル駅」(これは地上にあります)に到着します。その後、進行方向を変えて(後ろ向きに出発し)、「第1・第2ターミナル駅」(これは地下にあります)へ向かいます。第1ターミナルは最も古いターミナルで一部の国内線が運航しています。第2ターミナルは、この3月まで国際線などが使っていたターミナルです(今は一部の国内線のみが使っています)。第1ターミナルと第2ターミナルは比較的近いので、地下鉄空港線の駅は共通でひとつの駅を使っています。

※第3ターミナルはほとんどの国際線(日本航空と全日空を含む)と一部の国内線が利用しています。

 「第1・第2ターミナル駅」でのお客の乗降が終わると、今度は再び進行方向を変えて(後ろ向きに出発し)市内へ向かい「三元橋駅」「東直門駅」の順に止まります。運行の順序は「東直門駅」→「三元橋駅」→「第3ターミナル駅」→「第1・第2ターミナル駅」→「三元橋駅」→「東直門駅」の順番で、「第1・第2ターミナル駅」から「第3ターミナル」へ向かう便はありません。従って、国際線で第3ターミナルに到着し、第1または第2ターミナル発の国内線に乗り換える時は便利ですが、逆に国内線で第1または第2ターミナルに到着し、第3ターミナルから国際線に乗り換えて外国へ出る場合には、この地下鉄空港線は使えません。別途、ターミナル間を運行しているシャトルバスを使う必要があります。地下鉄空港線の空港←→市内(三元橋駅または東直門駅)間は統一料金で25元(約375円)です。

 飛行機を降りてから、まず、第3ターミナルを出てターミナル前の道路の上を通っている橋を渡ると、巨大な亀の甲羅上の半透明な屋根の付いた「第3ターミナル駅」に出ます(この第3ターミナル駅の地下が巨大な駐車場になっているので、車を止めている人は、ここからエスカレーターで地下へ降ります)。屋根が半透明なので、自然光が入って明るいのですが、今のような夏の時期は「巨大な温室」になってしまい、空調は入れているのでしょうがほとんど効いておらず、非常に蒸し暑く感じました。

 切符の自動販売機は2台ありましたが、1台は停止中でした。稼働中の1台も、100元札を入れたら「現在、お取り扱いしておりません」の表示(中国語)が出ました。20元札を入れたら、また「現在、お取り扱いしておりません」の表示が出ました。10元札と5元札は受け付けたので、10元札1枚と5元札3枚で切符を買いました。100元札の場合は「おつりがない」場合には「お取り扱いできない」のはわかるのですが、おつりを必要としない20元札も受け付けなかった理由は不明です。外国から来たお客さんは、普通は細かいお金は持っていないと思うので、100元札、20元札が使えないと不便だと思いました。ただし、自動販売機のすぐ隣に係員のいる窓口があるので、窓口に行けば切符を買えます(ただし、窓口ではお客が並んでいるので、少し時間が掛かります)。

 切符は名刺大のICカードタイプで、記念に持って帰りたかったのですが、降りた駅で自動改札機に回収されてしまい、手元に残りませんでした。改札は自動改札機で、切符を挿入するか、感知部分に切符をタッチすることで中に入れます。

 ホームと列車はホームドアと列車ドアの2重ドア方式です(東京の地下鉄でいうと東京メトロ南北線と同じ形式)。列車が入線して右側が降車専用ホーム、右側が乗車専用ホームとなっています。右側からお客の降車が終わると乗車側のドアが開きます。

 ドアが閉まって、列車が発車すると「第1・第2ターミナル駅」へ向かいます。途中で地下に潜ります。「第1・第2ターミナル駅」は地下にあります。「第3ターミナル駅」から「第1・第2ターミナル駅」までは、8分程度かかります。同じ北京空港ですが、第3ターミナルは第1・第2ターミナルからかなり離れていますので、国際線と国内線を乗り換える際には、自分の乗る国内線航空会社がどこのターミナルを使っているか注意する必要があります。航空会社によって、第1・第2ターミナルと第3ターミナルとで乗り換える必要がある場合には、移動のために十分な時間的余裕を持った便を予約しておく必要があります。

 「第1・第2ターミナル駅」で乗客の乗降が終わると、列車は来た方向に後戻りして、今度は市内へ向かう路線に入ります。途中で地上に出て、空港へ向かう高速道路とほぼ並行して走ります。途中、ほぼ中間点の第五環状路と交差するあたりで、上り線と下り線を入れ替えるポイントがあります(中国の鉄道は基本的に日本と逆の右側通行です)。第四環状路を越え、第三環状路が近づくと、列車は再び地下に潜ります。そして「三元橋駅」に付きます。「第1・第2ターミナル駅」から「三元橋駅」までは20分です(「第3ターミナル駅」を出発してからは約30分です)。

 「三元橋駅」も列車ドアとホームドアの二重ドア方式です。「三元橋駅」のホームから1階上がると改札口で、一度改札を出ます。連絡通路を100メートルくらい歩くと、地下鉄10号線「三元橋駅」に出ます。改札を入って階段を下りると地下鉄10号線のホームです。地下鉄10号線も空港線と同じようにホームドアがあります。乗り換えは階段の脇に上りエスカレーターがあるので、荷物を持っていても楽です。空港線も10号線もホームと改札階との間にはエレベーターもありますが、身障者マークが付いていたので私は使うのは遠慮しました。地下鉄10号線の駅の切符自動販売機では北京地下鉄共用ICカード「イーカートン」のチャージができましたので、次に載るときのためにチャージをしました(「イーカートン」は新たに買うときは窓口で買う必要があります。いくらかディポジットを取られます)。市内の地下鉄は、何回乗り換えても2元(約30円)単一料金です。

 空港の「第3ターミナル駅」は「温室効果」で非常に暑かったのですが、空港線、地下鉄10号線とも車両の中は冷房が効いており、快適でした。混雑が心配されたのですが、空港線は座席の数に対して乗車率が80%程度でした。地下鉄10号線も「立っている人がちらほら」という程度で全く問題ありませんでした(私が乗ったのが平日の昼間だったからだと思います。地下鉄10号線は6両編成なので朝夕のラッシュ時はもっと混むと思います)。

 ということで、空港から市内へ地下鉄を乗り継ぎましたが、「第3ターミナル駅」が暑かったことを除いては、非常に快適でした。心配された保安検査ですが、空港で飛行機を降りて荷物を受け取って出るところで、荷物をレントゲン検査機に通すように言われましたが、地下鉄空港線への乗車、10号線への乗り換えについては、保安検査はありませんでした(ただし、レントゲン検査装置は置いてありましたので、必要に応じ、随時、地下鉄の乗り換え時点でも保安検査が実施される可能性があります)。

 下記の「新京報」の記事によると、7月19日の開業当日には、いろいろトラブルがあったようですが、少なくとも私が乗った7月25日は、トラブルもなく順調に運行されていました。「新京報」の記事では、7月19日の開業当日に記者が乗った時には、空港線では加速・減速時にかなりの揺れがあった、とされていますが、私が乗ったときは、空港線も10号線も揺れについては全く問題ありませんでした(日本の地下鉄と同じ程度です)。

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(参考)「新京報」2008年7月20日付け記事
「地下鉄空港線、初日から故障」
http://www.thebeijingnews.com/news/beijing/2008/07-20/018@075421.htm

 上記の「新京報」の試乗体験記事のポイントは以下の通りです(運転開始は7月19日14:00でした)。

○14:50、3番列車が出発した。列車や240人ほどの乗客で満員だった。列車が第三ターミナルに入り、乗客が乗ってドアが閉まったが、列車は動かない。約15分後、「ブレーキ系統に故障が生じたたため、乗客の皆様、下車をお願いします」とのアナウンス。ホームの反対側に乗り換え用の列車が入ってきて、乗客はそちらに乗り換えた。故障した列車は車庫へ回送された。

○地下鉄10号線との乗り換え駅「三元橋駅」に着いた時と、地下鉄2号線との乗り換え駅(=空港線の終着駅)「東直門駅」に着いた時、短い臨時停車があった。列車は、急停車した後、1~2秒してからゆっくり動き出した。地下鉄会社の担当者によると、1回は信号系統の故障で、1回は車両の連結器の故障、とのことだった。安全の観点から列車を停止させてから、調整を行った、とのことだった。

○地下鉄空港線では、設計の段階から、車両故障対策が施してある。車両故障が起きても運行に支障が出ないように、予備の軌道を作ってある。例え1台車両が故障して立ち往生しても、予備用軌道を使うことにより、他の列車に遅延を来さないようにしている。

○北京市地下鉄運営公司のスポークスマンの話:「開通当初は、どうしても不具合が出てしまう。これはある意味で正常な現象である。我々は正式開通前に、お客を乗せない試運転を3か月間実施したが、やはりお客を乗せると試運転とは異なるので、どうしても初期の段階では故障が出てしまう。オリンピック開始までには調整可能なので、オリンピック期間の正常な運行は保証できる。」

○記者が感じた問題点は以下のとおり。

【問題点1】空港線はかなり揺れる。加速時、減速時は立っている客は「あっちによろめき、こっちによろめき状態」だった。イスに座っている必要がある。地下鉄会社の人は「最初の段階は『摺り合わせ』が必要ですから」と言っていた。

【問題点2】待ってる場所が狭い。東直門駅では1列に並ぶのがやっとの場所がある。ある女性は「開通初日でこんなに混んでるのだったら、今後お客が増えたらどうなるのかしら。」と言っていた。

【問題点3】第3ターミナルの待合い場所が暑過ぎ。亀の甲羅のようなガラス張りの屋根の下、ほとんど風が通らないので「悶熱的温室」になっている。ある客は「太陽の光を遮るとか、空調を強くしなくちゃダメだよ。設計思想がよくわからん。エネルギーの無駄だ。」と言っていた(筆者注:北京オリンピックのために作った世界に誇る第三ターミナルについて、中国の新聞がここまで書くとはちょっと驚きです)。

【問題点4】7月20日から空港施設内に入る時に保安検査を実施することになるが、地下鉄空港線では地下鉄に乗るときにまた保安検査がある。これは無駄ではないか。

○北京大学で中国を勉強しているアメリカ人のマイクは「ニューヨークにも飛行場から市街地へ一本で行ける地下鉄はないよ」と地下鉄空港線を絶賛していた(筆者注:「新京報」としても、ひとことぐらい「お褒めの言葉」を入れないとまずい、と思ったのでしょう)。
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 上記のように運行初日はいろいろトラブルがあったようですが、少なくとも私が乗った時は何の問題もありませんでした。

 ただ、「新京報」の記事の中で地下鉄会社の担当者が言っていた「車両故障が起きても運行に支障が出ないように、予備の軌道を作ってある。」という部分は不可解です。「予備の軌道」なんてありませんでしたから。もしかしたら、「中間の地点で上り下りの軌道の相互乗り入れができるようになっており、片方の軌道で故障して立ち往生しても、もう一方の軌道に乗り入れることにより正常運行が続けられるようになっている」という意味なのかもしれません。もしそうだとすると、運転士のいない自動運転で、上り下りを同じ軌道で運行する、というような事態を想定しているのだとしたら、ちょっと「怖い」ような気もします。

 また、「新京報」の記事の【問題点4】で指摘している「保安検査が多すぎ」という点については、地下鉄会社の方も気にしているようで、少なくとも私が乗った時には、空港での保安検査はありましたが、地下鉄の乗り降り時の検査はありませんでした(保安検査は、必要な時に随時やるのだと思います)。

 なお、意外にお客が少なかったことについては、日本的感覚だと、空港線の25元(約375円)は非常に安いのですが、ほぼ同じ路線も走っている空港シャトルバス(リムジンバス)は16元(約240円)、市内の地下鉄は乗り換え自由で2元(約30円)なので、中国の多くの人にとっては「地下鉄空港線は高い」と思っているのでしょう。バスはターミナルの入り口まで乗り付けてくれるので、大きな荷物を持った人はバスの方が便利かもしれません。

 御参考までに私が撮した写真が見られるように下記にリンクを張っておきます。

北京地下鉄空港線・第3ターミナル駅
http://homepage3.nifty.com/itaru_watanabe/HEX/daisanterminaleki.jpg

北京地下鉄空港線・第3ターミナル駅に入る列車
http://homepage3.nifty.com/itaru_watanabe/HEX/ekinihairuressha.jpg

北京地下鉄空港線・車内の様子
http://homepage3.nifty.com/itaru_watanabe/HEX/shanainoyousu.jpg

北京地下鉄空港線・軌道の様子
http://homepage3.nifty.com/itaru_watanabe/HEX/kidounoyousu.jpg

北京地下鉄空港線から見た空港高速道路料金所
http://homepage3.nifty.com/itaru_watanabe/HEX/kosokuryoukinjo.jpg
※このあたりの写真では、北京の大気の雰囲気がわかると思います

北京地下鉄空港線の車両基地
http://homepage3.nifty.com/itaru_watanabe/HEX/sharyoukichi.jpg

北京地下鉄空港線・三元橋駅のホーム
http://homepage3.nifty.com/itaru_watanabe/HEX/sangenkyouhomu.jpg

北京地下鉄10号線・三元橋駅改札口
http://homepage3.nifty.com/itaru_watanabe/HEX/jugousenkaisatu.jpg

 いずれにせよ、私が「新京報」の記事を見て想像していたよりも、地下鉄空港線は格段に快適でした(これはお世辞ではありません。実感です)。これからも、安全で快適な運行が続くことを願いたいと思います。

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2008年7月19日 (土)

北京地下鉄10号線・空港線開通

 報道によると、北京地下鉄10号線(第一期)、オリンピック公園支線、北京首都空港鉄道線が7月19日開通したとのことです。まだ私自身は乗っていないので「したとのことです」と書いておきます。

 これらの路線については、昨日(7月18日)の段階では、「週末に開通」とだけ発表されており、19日(土)に開通するのか、20日(日)に開通するのか、わかりませんでした。ところが19日(土)朝になってから、「新京報」などで「今日(19日(土))開通する」というニュースが報じられました。

(参考)「新京報」2008年7月19日付け記事
「地下鉄3路線、今日14時に開通」
http://www.thebeijingnews.com/news/olympic/2008/07-19/018@074440.htm

 この「新京報」の記事でも、開通式は19日の「だいたい午前10時頃」にやる、と書いてありました。空港線の運賃が25元(約375円)になった、と発表になったのは昨日(18日)です(それまでは「25元にするか、30元にするか、どちらかの案で検討中」ということでした。7月2日にこの運賃に関する公聴会があったのですが、その後、昨日(18日)まで、料金は決まっていませんでした)。

 どうして、ここまでギリギリまで何も決まらないのか、その背景がさっぱりわかりません。中国の新聞は、「なぜギリギリまで決まらないのか」といった関係者が困るような案件を突っ込んで取材して報道するようなことはしないので、「なぜギリギリまで決まらなかったのか」は最後まで「ナゾ」として残ると思います。それにしても、開通式をやる時刻が「だいたい午前10時頃」という発表も何となく変です。関係者や報道陣は、いったい何時に開通式場に行けばよいのでしょうか。

 今日、お昼過ぎに、たまたま北京空港から飛行機に乗ったのですが、北京空港へ行く途中で、空港線が走っているのを見ました(地下鉄の路線のひとつということになっていますが、空港線はほとんどの区間、地上を走っています)。赤い色のモダンな車両でした。ただ、ちょっと気になるのは、4両編成なので、これでお客をさばききれるのかなぁ、という点です。第2ターミナル発の便、第3ターミナル発の便が、それぞれ別個に運転間隔15分で運航するのだそうです。それで4両編成だと相当に混雑するのじゃないかなぁ、と思います。混むのがイヤな人は、高いけれどもタクシーを使う、ということになるのかもしれません。また市内と空港を結ぶリムジンバス(地下鉄空港線の市内側のターミナルの「東直門」と空港の間は16元(約240円))の値段と比較すると、この地下鉄空港線の値段は意外に高い感じがするので、そんなにお客は多く乗らないのかもしれません。

 オリンピック公園支線は、8月7日までは一般客は乗せずに、選手やオリンピック関係者だけを運ぶ、とのことです。8月8日以降も、オリンピック、パラリンピックの当日のチケットを持っている人だけが乗れる、ということで、誰でも自由に乗れるようになるのはパラリンピック終了後の9月20日以降だそうです。8月7日までは一般客を乗せずに営業して、8月8日の開会式当日にいきなり何万人もの開会式に出る観客を運ぶようにする、という計画になっているのですが、係員の慣熟などの点で大丈夫なのかなぁ、とちょっと心配です。地下鉄10号線とオリンピック支線の乗り換え駅の「北土城駅」では、地下鉄10号線から乗り換える人は、いったん改札を出て、オリンピックのチケットを持っていることを係員に確認してもらって、飛行機に乗るときと同じような保安検査を受けてから、オリンピック支線に乗り換えるのだそうです。乗り換え客がどのくらいの数いると想定しているのかわかりませんが、この乗り換え駅で観客の乗り換えがスムーズにできるのか、というのもちょっと心配です。

 北京空港では明日(7月20日)から、出迎え見送りの人も含めて、空港に入る人は全て入り口で保安検査(ボディチェック)を受けることになります。従って、飛行機で出発する人は2回保安検査を受けることになります。そのため、空港では、時間に十分に余裕を見て空港に来るように呼び掛けています。

 今日(7月19日)はまだ空港入口での保安検査はやっていませんでしたが、飛行機に乗るときの保安検査はいつもより相当に念入りにやられました。ノート・パソコンは「バックから出して開いて見せろ」と言われ、ポケットにハンカチやちり紙を入れている場合も「出して見せろ」と言われました。いつもより1.5倍くらいは時間が掛かったような気がします。

 ただ、今、空港の利用客はかなり減っています。原油価格の高騰により、燃油サーチャージが高くなったせいか、外国から来る観光客も中国国内の観光客もかなり減っているようです。さらに、中国国内では、四川大地震の影響で、ちょっと気分的に観光旅行をする雰囲気ではない、と感じている人が多いせいか、中国国内の観光客はいつもの年よりかなり少ないようです。また、中国の政府関係機関では、四川大地震の復興を最優先にするため、予算を一律5%カットして復興支援に回すように指示されているそうで、そのために業務上の海外出張案件は相当の数がキャンセルになっているそうです。そのため、オリンピック期間中も含めて、開会式・閉会式の前後のごく短期間を除いては、例えば日中間の航空便は(特にエコノミークラスは)まだ相当空席がある、とのことです。あまり観客が多いと保安検査場が混雑したりするので、原油高や四川地震の影響で飛行場の利用者が少なくなったというのは、むしろ幸いなのかもしれません。

 いよいよ明日(7月20日)から北京市内でのナンバープレート偶数・奇数による交通規制が始まります。7月21日から始まる平日、朝夕のラッシュ時に道路の状況がどうなるか、地下鉄の混雑がどの程度になるのか、空港線がどのくらい混雑することになるのか、しばらくは様子を見る必要があると思います。

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2008年7月 6日 (日)

「中国の不動産市場:急を告げる」との記事

 経済専門週刊紙「経済観察報」の2008年7月7日号(7月5日発売)の1面トップに「中国の不動産市場:急を告げる~開発業者が2つの大きな意見を提出、発展改革委員会は衰退のリスクに警戒~」と題する記事が載っていました。最近の中国の不動産市場の冷え込みに対して、開発業者が政府の関係機関が不動産市場に存在するリスクに対して関心を持ち、これを解決するよう希望する、との意見を出した、とのことです。意見の中身は具体的には「資金金融関係に対して下支えを提供できるかどうか」ということと「市場の需要に対して下支えを提供できるかどうか」ということ、とのことです。

 関連記事によると、今年1月~5月の全国の部屋の販売価格は対前年同月比の平均で11.2%上昇しているが、上昇幅は縮小傾向にある、広州、深セン等珠江デルタ地帯の都市においては価格は下降傾向にある、5月の新築住宅価格について見れば四川省の成都は0.4%、重慶は0.1%のマイナスだった、とのことです。また、今年1月~4月に販売された部屋の面積は対前年比4.9%の減少、そのうち住居用部屋の販売面積は対前年比0.4%減少だった、とのことです。その一方で、同じ時期に竣工した販売用の部屋の面積は19.5%の増加、うち住居用部屋の竣工面積は20.2%の増加で、供給量は依然として増えている、とのことです。

 こういった状況に対して、「中国の不動産市場が衰退するリスクがあるのか」「リスクがあるとして、それに対して政府が何らかの措置を取るのか、措置を取るとしてどのような措置をどのようなタイミングで行うのか」といった問題があります。「政府による市場を救済する措置」については、どういった措置が可能なのかは難しい問題です。

 北京地区においては、以前から、オリンピックを境にして建築ブームは一段落するのではないかと言われていました。それに加えて、5月12日に起きた四川大地震で、投機目的でマンションを買おうとしていた層が、資産としてマンションを購入することに対するリスクを強く意識するようになり、マンション購入を控える心理が働いているのではないか、とも言われています。

 ネット上で見られる「経済観察報」のページには、「部屋の価格は下がらないという神話は終わった~或いは理性へ回帰するのかもしれない」と題する宋清華という人の書いた記事が載っています。

(参考)「経済観察報」ホームページ2008年7月4日付け記事
「部屋の価格は下がらないという神話は終わった~或いは理性へ回帰するのかもしれない」
http://www.eeo.com.cn/Politics/beijing_news/2008/07/04/105347.html

 この記事では、住宅・都市農村建設部が発表した最新のデータとして、今年1月~5月に40の主要都市において売り出された新築の部屋と中古の部屋の累計の契約成立面積は、それぞれ24.9%、20.9%の比率で減少している、という数字を紹介しています。2007年の暮れから土地売買市場が冷え込み、多くの開発業者が大量の物件を抱えることに対するリスクを感じているとも指摘しています。

 原油価格の急騰に伴う影響など、今後の中国経済には、様々な要素が絡んで来ており、先行きを予測することが難しい状況になってきています。今後どのような変化が起こるにせよ、政府による適切な対処と市場関係者の冷静な対応により、その変化がマイルドでソフトなものになることを願いたいと思います。

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2008年7月 1日 (火)

北京オリンピック観戦時の注意事項

 北京オリンピックの観戦を楽しみにしておられる方、行きたいのだけどチケットが手に入らなくてイライラしている方、などいろいろおられると思います。今回のオリンピックは中国で行われるということで、観戦するにもいろいろ「ルール」がありますので、現地で観戦される方は「ルール」を守って観戦するようにいたしましょう。

 在北京日本大使館のホームページに北京オリンピック委員会のホームページに出ている注意事項の日本語訳が掲載されていますので、現地で観戦される方は、御一読されてはいかがかと思います。

(参考)在北京日本大使館のホームページ
「北京2008年オリンピック入場チケット取り扱い注意事項」
~北京オリンピック組織委員会ホームページより~
http://www.cn.emb-japan.go.jp/olympic_j/ticket_j080529.htm

 中でも注意しなければいけないのは、持ち込み制限品目が結構多いということです。缶やボトル入り飲料などは、日本でも多くのスポーツ観戦で持ち込み禁止のケースが多いので慣れている方も多いと思いますが、特に下記のようなものは持ち込み禁止だと思っていない人も多い可能性があるので要注意です。

<競技会場に持ち込み禁止の物品の例>

○ドラ、太鼓、ラッパ等の各種楽器
○広げた時の面積が2m×1mを超える旗

【筆者のコメント】
 日本のプロ野球の応援と同じことを考えているとまずいですね。

○オリンピック非参加国である国または地域の旗

【筆者のコメント】
 これは昨今の事情を考えればすぐにわかると思います。

○全ての横断幕、スローガン、ビラ

【筆者のコメント】
 「がんばれ!ニッポン!」と日本語で書いた横断幕や、応援する選手の名前を書いた横断幕もダメ、というのは、多くの人にとっては、ちょっと欲求不満が溜まるかもしれません。

○長柄傘、カメラやビデオカメラの三脚等の先のとがった物品

【筆者のコメント】
 刃物やバットが持ち込み禁止なのはすぐにわかると思いますが、長柄傘などはちょっと盲点で持っていってしまいそうなので要注意ですね。要するに、これらの品々はケンカなどが起こった時に凶器になりかねないからです。

 あとは、「フラッシュを焚いて撮影しない」など常識の範囲でわかるものがほとんどですが、いろんなスポーツ応援に慣れている人でも「あれ?」と思うところがあると思うので、現地で観戦される方は上記の日本大使館のページは事前にお読みになっておいた方がよいと思います。

 規定に違反している物品は競技場に持ち込めませんが、入り口のところで持ち込み制限品を預かるサービスはやらないそうなので、持ち込み禁止品持っていってしまった場合には、その持ち込み禁止品を手放すか、そうでなければ観戦をあきらめるしかないようです。

 オリンピック競技場では、テロ防止のため、入るときにセキュリティ・チェックがありますので、協議の開始時間間際に行くと、観客がセキュリティ・チェックのところで列を作っていて待たされて、試合開始までに会場に入れない、というおそれがあるので、できるだけ時間に余裕を持って会場に来るように呼びかけが行われています。

 また、オリンピックのチケットを持っている人は、その試合当日の地下鉄とバス(長距離バスや北京空港鉄道は除く)は無料で乗れるのだそうです。これは便利で、よいサービスだと思うのですが、オリンピック・スタジアム(通称「鳥巣」)へ行く地下鉄は1本しかないし、この無料サービスのために、試合を見る前に買い物をしよう、などという観客も出ると思うので、北京市内の地下鉄やバスにお客が殺到して、一般市民はオリンピック開催期間中はほとんど地下鉄やバスを使えないのじゃないかなぁ、と心配性の私は今からちょっと心配しています。

 北京のタクシーは初乗り(2km)10元(約150円)で、その後500mごとに1元(約15円)づつ上がる、という料金体系で、全てメーター制です。日本人的感覚だと比較的安いと思うので、移動にはタクシーを使うのが便利かもしれません。ただし、北京のタクシーの運転手さんの収入は歩合制なので、運転は相当に荒いです。オリンピックを前にして、かなり厳しく指導がなされていることもあり、北京では、そんなにあくどい感じのタクシーの運転手さんに出会ったことはありませんが、地理を知らない外国人だと気付くとわざと遠回りするような運転手さんも中にはいるかもしれません。でも、基本的に、私は北京のタクシーは諸外国の中ではかなり安全だと思っています(世界的標準からすると、日本のタクシーは安全過ぎるので、日本のタクシーに慣れている方にとっては要注意かもしれませんが)。なお、北京のタクシーでは英語は通じないと思った方が無難です。日本人の場合は最後の最後は「筆談」という手がありますが。

 なお、タクシーを使う場合、競技場へ行くときは便利ですが、帰りは一度にどっとお客が帰ることになりますので、タクシーをつかまえることはまず無理でしょう。白タク(中国語では「黒車」と言います)が出る可能性大ですが、当然、白タクは違法行為ですから、気を付けましょう。試合を見た帰りは、北京の街を眺めながらのんびり歩いて帰る、といった心のゆとりが必要だと思います。

 そんなこんなを考え、しかも北京の8月の気候を考えると、屋外競技の場合は結構暑さが厳しいと思うので、やはりテレビ観戦が一番楽だろうなぁ、などと思っております。

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2008年6月27日 (金)

北京首都空港鉄道の料金や開通予定

 オリンピック開幕へ向けて、北京首都空港と北京市内を結ぶ北京首都空港鉄道がほぼ完成しました。6月25日には試運転車両に胡錦濤主席が乗り込み、進捗状況を視察しました。この北京首都空港鉄道についての今後の予定等が、胡錦濤主席の試乗に合わせて6月25日に発表になりました。

(参考)「新京報」2008年6月26日付け
「空港鉄道の料金、7月2日に公聴会で意見を聴取」
http://www.thebeijingnews.com/news/beijing/2008/06-26/021@072208.htm

 北京首都空港鉄道の駅は、地下鉄2号線(1980年代に開通済み)との乗り換え駅になる東直門駅、地下鉄10号線(まもなく開通予定)の乗り換え駅になる三元橋駅、それに空港第三ターミナル駅(国際線と一部の国内線)、空港第二ターミナル駅(一部の国内線)の4つになる予定です(最も古い第一ターミナルはごく少数の国内線用の航空会社しか利用しないため駅はない)。4駅約28.5km間を運行時間16分で結ぶ、とのことです。

 運行開始の日は「7月上旬」とのことで、まだ何日なのか確定した発表はされていません。しかも「7月上旬」に始まるのは「試験営業運転」なのだそうです。昨年10月に開通した地下鉄5号線でも「最初の1年間は『試験営業運転』」と銘打って開通しました。「試験営業運転期間」は10分間隔、2010年からは5分間隔、2017年からは4分間隔で運転する予定、とのことです。

 乗車料金は、どこで乗ってどこで降りても同じ統一料金で、1人25元(約375円)にするか1人30元(約450円)にするか検討中で、この料金体系は7月2日に行われる公聴会で意見を聞いてから決定する、とのことです。この料金は、北京首都空港鉄道の市内の始発駅である東直門駅を起点とすると、空港と市内を結ぶリムジンバスが1人16元(約240円)、タクシーだと高速道路料金も入れて67元(約1,005円)、自家用車を使った場合に掛かる費用(高速道路料金込み)で40元(約600円)以上なので、これらほかの手段との比較で、空港鉄道を使う人の数が、料金を25元の場合に年間1,220万人(空港利用者の16.1%)、30元にした場合は年間1,032万人と見積もって試算したもの、とのことです。

 私の感覚だと、市内の地下鉄の統一料金2元(約30円)、リムジンバスの料金16元(約240円)に比べると、この空港鉄道の料金はちょっと高過ぎると思います。「25元か30元かの案を提示して、公聴会を開いてから決める」ということになっていますが、30元を支持する理由はないので、たぶん最初から「25元ありき」で、形式的に公聴会を開くということなのでしょう(昨年の地下鉄料金改定の時も「客観的に見て片方の案しか選ぶ人がいないような二つの案を提示して公聴会をやるのは、結論ありきで、公聴会は形式的な意味しかない」と「新京報」の社説で批判されたことがありました。今回も同じような感じのようです)。

 「公聴会」の参加者は、北京市人民代表大会、北京市政治協商会議、北京市人民政府の関係部門、専門の大学などから選ばれた価格公聴会の常任の代表10人、消費者協会が推薦した消費者の代表11人、経営者代表4人からなる、とのことです。

 そもそも地下鉄統一料金の2元というのは、建設費用と比べたら安過ぎる値段であって、地下鉄の運営に当たっては政府が相当の資金補助をしていると思います。上のような料金の決め方は、市場原理に基づくものではなく、政府が政策的意図を持って決めたのは明らかです。大幅に市場原理を導入している、とは言いながら、公共部門においては政府が価格を決める、という現在の「中国の特色のある社会主義」の一端がわかる料金の決め方だと思います。この期に及んでまだ開通日が「7月上旬」とだけ示されて、何日かを確定して発表しない、というのも「中国的」と言えるかもしれません。

 私は、地下鉄乗り換え駅での「乗り換え勝手のよさ」がポイントだと思っています。飛行機で旅行に行く人は大きな荷物を抱えている人が多いので、乗り換え駅でエレベーターやエスカレーターが便利でないと、使い勝手が良くないからです。北京の地下鉄では、十字路の交差点の地下に作られた駅でも出口が3つしかない(ひとつのブロックには出口がない)といったふうに「使い勝手」が今ひとつよくないところが多いので、空港鉄道がどのような「使い勝手」なのか、ちょっと気になります。

 3月に開業した北京首都空港の第三ターミナルは、建物の長さが3kmに及ぶ、という世界でも最大級の巨大ターミナルですが、何回か使ってみて「使い勝手」は悪くない、という印象を私は持っています。空港鉄道も、「使い勝手」の良さを考慮した「お客に優しい」作りになっていることを期待したいと思います。 

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2008年2月 5日 (火)

雑誌「タイム」も中国の寒波を特集

 アメリカのニュース週刊誌「タイム」の最新号(2008年2月11日号)では、表紙に "China's Big Chill" というタイトルを掲げた中国中南部を襲った寒波を特集しています。記事の内容はあまり多くはありませんが、ポイントとして以下の点を掲げています。

○ある経済専門家は、今回の寒波は2008年の中国のGDPの成長(2007年は11.4%の伸び)の何割かの程度に影響を与える可能性があると述べている。

○ただでさえ急激な消費者物価の上昇を示している中国で、今回の寒波被害がインフレをもたらすおそれがあり、それを政府がどのようにコントロールできるかがポイントである。

○ある専門家は今の中国の政権は、過去の政権よりも危機に対する対応の仕方は優れているように思われる、と言っているが(アメリカのG.W.ブッシュ政権は2005年のハリケーン・カトリーナの襲来に対する対応で批判を受けたように)今、中国政府の危機管理能力が問われている。

 まさにこの中国を襲った寒波の重大性に関するポイントを衝いた記事だと思います。私も、この寒波は、中国経済及び中国の政権に取って、極めて重大な「危機」だと認識しています。この号の「タイム」は、雪に覆われた線路を見て回る鉄道労働者の写真を表紙に掲げて、世界中で売られているはずですから購入されてお読みになってはいかがでしょうか(中国で買うと1冊40元(約600円)とちょっと高いのですが、私はこの問題に着目して素早く特集記事にしたタイム誌に敬意を表して購入しました)。

 被災人口が約1億人を超えた(2月4日時点での中国新聞網(ネット)の報道)、国家電力網公司が管轄する電力ネットワークのうち9,527基の鉄塔が倒壊、1,633万戸が停電、うち2月3日までに1,006万戸が復旧(以上2月4日付け「新京報」記事)、1月31日時点での被害を被った耕地面積が727万ヘクタール(2月1日の中国政府民生部の発表)といった数字を見れば、今回の寒波・大雪・着氷被害の大きさがハンパじゃないことがわかると思います。

(参考)被害を被った面積の727万ヘクタールという数字は、中国の全耕地面積の約6%に当たり、日本で言えば、関東7都県に新潟、山梨、長野、静岡の各県を合わせたよりも広い面積に相当します)。

 私は、今、北京にいますがNHK-BS放送やNHKのテレビの国際放送が見られるので、毎日NHKのテレビを見ていますが、毒物入り冷凍ギョーザ事件発生以降、日本のNHKのニュースでは、今回の中国中南部の寒波について伝えるのを見たことがありません。現在の日本経済は中国と極めて密接に関係しており、中国の危機は日本経済の危機でもあるはずです。それなのにも係わらず日本のマスコミと世論がこの中国の寒波に対する危機感を全く持っていない、ということに対して、私は非常に危機感を持っています。「外国のメディアが取り上げているのだから重要なのだ」と主張するような「ガイアツ」的な考え方は私は本来は好きではありませんが、日本の皆様に警告を発する意味で、世界的なニュース雑誌「タイム」も、この中国の寒波を特集としてしたんだぞ、ということをこのブログで強調させていただきたいと思い、取り上げさせていただきました。

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2008年1月26日 (土)

中国経済の成長を支えるものは何か

 1月24日、中国の国家統計局は2007年の経済状況について発表しました。それによると、2007年の中国の国内総生産(GDP)は、24兆3,619億元(約370兆円)で、対前年比(名目)11.4%の増でした。一方、消費者物価指数は、近年になく大きく上がって+4.8%でした。

 中国は2007年も引き続き相変わらず急速な成長が続いたわけですが、中国の経済成長を支えているものを大きく分けると次の3つになると思います。

○輸出の伸び

 食品や玩具の問題でいろいろ騒がれましたが、中国製品の輸出が伸びているのは間違いない事実です。つまりは世界各国で中国の製品が売れているということです。危険なものや品質の悪いものばかりだったら、世界の消費者は買わないわけですから、一部に問題のあるものはあるとはいうものの、総体的に見れば、やはり中国製品は、安さと品質をてんびんに掛けると「売れる」製品なのだと思います。問題は、いつまでも「安さ」にばかり頼ってはいられない、ということです。これからは、中国は、人件費が少々高くなっても国際競争力を維持できるしっかりとした品質をもった製品を多く作れるように脱皮できるかがカギだと思います。

○投資

 「不動産バブルはピークを越えたのではないか」と言われますが、少なくとも2007年いっぱいは中国全国での建設ラッシュはまだまだ続いていた、ということなのでしょう。この部分が2008年以降、どの程度継続的に中国経済を支えていけるのか、が今後の中国経済を占う上での大きなカギになると思います。

○内需

 中国は2006年に自動車の販売台数で日本を抜き、アメリカに次ぐ第2位となりました。インターネット人口も2007年末で2.1億人に達し、既に世界第2位になっていますが、一位のアメリカとの差はわずかなので、2008年の早い時期にアメリカを抜いて中国は世界最大のネット人口を抱える国になるだろう、と言われています。日本をはじめ、各国企業は、中国市場での販売競争に負けると生き残れない、と言われるほど、中国の消費市場としての比重は大きくなっています。問題は、上記の輸出や投資の部門に「かげり」が見え始めた場合、内需が引き続き底固く推移するのか、それとも尻つぼみになってしまうのか、だと思います。

 あと、私が中国独自の「経済発展を支えるもの」として着目しているのが「土地マジック」です。1月14日付けで紹介した「経済観察報」に載っていた蔡継明清華大学教授のインタービュー記事でも指摘されていたように、中国では、社会主義的な発想による安い評価価格で農民から土地を収用し、それを住宅地や工業開発区として市場経済に売り出す、ということが大々的に行われています。いわば「公有」の農地を市場的価値のある土地として市場に出すわけですので、地下から石油がわき出るように「土地」という形の「天然資源」を中国は毎年大量に市場に送り出し、それが中国の経済成長の大きな推進力になっているのではないか、と私は思っているのです。

(参考1)このブログの2008年1月14日付け記事
「ついに出た『土地私有制』の提案」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2008/01/post_6f24.html

 国土資源部の「中国国土資源公報」によると、2004~2006年の3年間で、5,428平方キロの耕地が都市用地や工場建設用地に変えられていまるとのことです。

(参考2)中国国土資源部ホームページの「統計情報」のページ
http://www.mlr.gov.cn/zwgk/tjxx/index_883.htm

 5,428平方キロとは、日本で言えば愛知県よりちょっと広く、三重県よりちょっと狭い面積です。これだけの面積の土地が3年間に工業用地などの形で経済市場に売りに出されたことによる経済全体への影響はかなり大きいのではないかと思います。もともと土地に価格が付いている資本主義国とは異なり、値段のついていない土地が突如として値段付きの形で経済のマーケットに登場することのインパクトは大きいと私は思います。

 土地が石油と違うところは、買い手が付かなければ土地は途端に何の価値も無くなってしまう、ということです。耕地をつぶしている分、もしその土地が売れなかったら、むしろ経済的にはマイナスになるでしょう。社会主義体制というポケットから土地を取りだして市場経済に売りに出すことは、いわば中国が自分の体を切り売りしてるのと同じことになりますから、もしこれらの土地に買い手が付かなかったら大変なことになると思います。

 中国製品がなんだかんだと言われつつ世界のマーケットでしっかり売れていること、日本をはじめとする各国の企業が中国の消費市場に殺到して実際にいろんな製品が中国国内で売れていることは、中国経済の「底固い」部分を示していると思います。この「底固い」部分の比重がどれくらいで、上に述べた「自分の体を切り売りしているような部分」の比重がどれくらいなのか、は、私にはよくわかりません。今年2008年は、この「中国経済の成長をささえるもの」のどの部分の比重がより大きいのか、がある程度はっきりしてくる年になるのではないかと私は思っています。

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2008年1月21日 (月)

物価対策として小売価格に直接政府が介入

 2007年後半以降、中国の食料品等の消費者物価は急激な上昇を示しています。CPI(Consumer Price Index :消費者物価指数)という言葉が中国での2007年の「流行語」として認定されたほどです。1月17日付けの「京華時報」の記事によれば、2007年8月以降、中国の消費者物価指数は5か月連続で対前年比6%以上の上昇を示している、とのことです。また、この記事によれば、2008年1月上旬の時点での全国36の大中都市における物価の上昇率は、対前年比、豆油で58%、豚肉で43%、牛肉で46%、羊肉で51%になっている、とのことです。

 近年、中国の経済成長により、人々の所得も上昇していますが、これら生活に直結する食料品のこれだけ急激な上昇に対しては焼け石に水です。このままでは、人々の間に不満がうっ積することを懸念したからだと思いますが、国家発展改革委員会は、1月15日「一部の重要な商品・サービスに関する臨時的価格干渉措置の実施方法」という通知を発しました。

(参考1)「京華時報」2008年1月17日付け記事
「国家発展改革委員会、食糧油と肉類の値上げに対して臨時的価格干渉措置を発動」
http://china.jinghua.cn/c/200801/17/n651332.shtml

(参考2)「新京報」2008年1月17日付け記事
「食糧油等の価格に対する臨時的干渉措置を発動」
http://www.thebeijingnews.com/news/guonei/2008/01-17/018@074321.htm

 この措置の概要は次の通りです。

○カップ麺業界4社、食用植物油業界4社、乳製品業界4社の合計12社(具体的会社名を列記している)が製品価格を値上げする場合には、事前に国家発展改革委員会に申請し許可を得ること。

○主要商品(食糧、食糧製品、食用植物油、豚肉・牛肉・羊肉及びその調整品、鶏卵、謬乳及び粉ミルク、液化天然ガス)について小売店が値上げをする場合、1回の値上げが4%以上となる場合、10日間の累積値上げ率が6%以上になる場合、30日間の累積値上げ率が10%以上になる場合については、その事実が発生した時点から24時間以内に政府関係部門に届け出ること。

○上記を守らない企業、小売店は、法律により処罰される。

 この措置に対して、「計画経済時代じゃあるまいし、これだけ市場経済が導入された現在の中国において、このような形で政府が小売価格に直接介入するのは、時代錯誤で非現実的だ」という批判が起きています。例えば、2008年1月21日付け(1月19日発売)の「経済観察報」では、1面の社説で「政府は物価に対してはマクロ経済的手法で対処すべきであり、もし低所得者の生活が危機に瀕するのを心配するのであれば必要な生活保護費を付与すべきであって、企業や小売店の価格に政府が直接介入することはすべきでない」と主張しています。

 実際、昨年の夏、甘粛省蘭州市政府が、蘭州市民の常食である「蘭州牛肉麺」について、「小売り価格は1杯2.5元(約38円)以下にせよ」と小売店に命じた時には、国家発展改革委員会自身が「地方政府は小売価格を指示するようなことをしてはならない」という指示を出しています。

(参考3)このブログの2007年8月1日付け記事
「小売価格を政府がコントロールしないようにとの通知」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/08/post_08c4.html

 政府が「小売価格を抑えろ。従わなければ罰則だ。」と言った場合、コスト価格が上昇している中では企業は赤字を出すわけにはいきませんから、値上げできないのであれば、品質を落とす方向に動きます。従って、政府による強制的な価格抑制が消費者の利益にならないのは火をみるより明らかです。

 これらの反対論に対して、国家発展改革委員会は、ポイントとして次のように反論しています(下記の反論は、2008年1月20日(日)夜に中国中央電視台第1チャンネルで放送された「焦点訪談」の中で国家発展改革委員会の担当者が語っていたもの)。

○今回の措置は「価格凍結」をしようというものではなく、各企業の価格決定権を侵害する考えはない。今回の措置はあくまで(便乗値上げなど)不合理で不当な価格上昇を抑えようとするものである。

○「市場経済においては、政府が価格に介入すべきでない」と主張する人が多いが、そもそも市場経済とは、市場における「見えざる手」(中国語で「看不見的手」)と政府による「見えざる手」が共同して安定した市場を形作っているものである。今回の措置もその一環である。

 ただ、上記に述べた「経済観察報」の社説では、実際の価格の上昇は、コストの上昇に起因して各企業がやむを得ずに行っているものであって、便乗値上げなどが仮にあったのだとしてもその割合はごく微々たるものに過ぎず、もし国家発展改革委員会が説明しているように「不当な値上げを排除するだけ」なのであれば、物価の値上がりに対して効果を上げることはできないだろう、と主張しています。

 「価格を抑えると、企業は品質を落とすだけ」という議論に関連して、人民代表(国会議員)の中には「糧票制」(食糧配給制)を復活させよ、と主張している人も出てきているそうです。「糧票制」は、食糧生産が少なかった時代にあった制度で、食料品を買う時に政府が配給する「糧票」を持っていかないと買えない制度です。第二次世界大戦後の日本にも同様の制度がありましたし、私が前回に北京に駐在していた1980年代後半の中国でも制度としては一部残っていました。しかし、既に「世界の工場」と呼ばれるまでになって久しい現在の中国では、とっくの昔に「過去の遺物」となった制度です。

 国家発展改革委員会が今回の措置を発表したのは、「政府も消費者物価高騰に対してまじめに取り組んでいる」という姿勢を見せたかったからだと思います。国家発展改革委員会は、自分で言っているように、「価格凍結」をするような運用の仕方はしないと思います。しかしながら、これだけ華やかに経済発展を続ける現在の中国において、食料品の価格を政府が統制しようという発想が出てきたこと自体に驚かされました。また、それに加えて「糧票制を復活させよ」などとまじめに言い出す人が出てくるとは信じられませんでした。たぶん、中国国内には、まだまだ「今の経済発展は歪みが大き過ぎる。昔の計画経済時代に戻るべきだ。」という「超保守派」の勢力が私たちが思っている以上に強いので、それら「超保守派」に対して「あなた方のような考え方も含めて、政府はいろいろ検討して、対策を考えています。」というメッセージを出したかったのかもしれません。

 いずれにせよ、肉類や食糧油の物価上昇率が対前年比40~60%という現在の水準は、既に「危険水域」に入りつつあるような気がします。

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2007年10月 9日 (火)

安全設備とコスト

 国慶節連休の最後の日曜日、街を歩いていたら、路線バスが別のバスに追突した交通事故の現場の前を通りかかりました。後ろから追突したバスの前方の乗降口の部分が完全につぶれて、乗客が降りられないような状態になっていました。このバスの乗客は、駆けつけた警察官などの助けを借りながら、窓から一人づつ脱出していました。翌日の新聞での報道によると、この事故では、双方のバスの乗客25人がケガをしたそうです。

(参考1)「新京報」2007年10月8日付け記事
「二台のバスが追突、25人の乗客が負傷」
http://www.thebeijingnews.com/news/beijing/2007/10-08/014@083940.htm

 後方から追突したバスには「非常口」がなかったために、前方の乗降口が衝突でつぶれて使えなくなると、乗客がバスの中に閉じこめられてしまって、外に出られなくなっていたのでした。

 中国では、非常口のないバスは、数多く走っています。このブログの10月3日付け記事で書いたバス火災のケースでも、バスに非常口がなく、乗客の乗り降りは前方のドア1つしかありませんでした。出火したのが運転席のすぐ後ろの座席にあったに荷物だったことから、後方座席の乗客はバスの前方のドアから外に脱出することができず、結果的に死者27名という大惨事になってしまったのです。

(参考2)このブログの2007年10月3日付け記事
「重慶でバス火災27人死亡・放火か?」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/10/27_7d11_1.html

 詳しい統計を見たわけではありませんが、中国では「いざというときのための安全設備」が付いていないために、大事故になってしまうケースが結構多いのではないかと思います。「いざというときのための安全設備」は、「いざというとき」にならなければ不必要な設備ですので、コストダウンの対象となりやすく、きちんと設置されていないケースがあるからです。中国では、一般に物価は安いですが、一方では「安全設備が十分に備わっていないために起こるリスク」は常に覚悟しておかなければならない、と私は思っています。

 昨日は、私の勤務先の隣のビルでボヤがあり、数百人が避難する騒ぎがありました。実際に火の手が上がったわけではなく、新聞の報道によると、原因は調査中だが、排煙筒の中に溜まった油分が過熱して煙を出したのではないかと考えられているようです。このビルのボヤ騒ぎが、ビルの安全設備に関係があるのかどうかはわかりませんが、二日連続で新聞ネタになるような交通事故やビルの火事騒ぎに遭遇したので、私は、中国にいると、交通事故や火事の現場に自分が居合わせる確率が日本にいるときよりもかなり高いような気分になりました。中国では、もともと、自分の安全は自分で守る、というドライな考え方の人が多いので、使うことがあるかどうかわからない安全設備にコストを掛けたものを高い料金を払って利用するよりも、安全設備は十分ではないかもしれないけれども、安い料金で利用することの方を選択する人が多いのかもしれません。これも文化の違いのひとつだと思いますが、中国で生活するためには、そういったリスクがあることを覚悟した上で生活する必要があるのだと思っています。

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2007年10月 8日 (月)

集中する連休を今後どうするのか

 今日10月8日の月曜日から中国は国慶節の連休明けで再び始動しました。中国の法定休日は、春節(旧正月)、労働節(メーデー)、国慶節と新暦の正月元旦の4回しかありせん。このうち、春節、労働節、国慶節は、基本的に1週間ぶっ通しで休む大型連休となります。春節はかなり以前から1週間程度休む人が多かったのですが、労働節と国慶節は、もともとは3日程度の連休でした。しかし、ここ10年くらいの経済発展の中で、前後に代替出勤日を入れたりして、労働節、国慶節についても土日と合わせて1週間程度続けて休むことが多くなったのです。

 日本や欧米のようにいろいろな月に三連休が分散している、というスタイルではないので、中国の場合、この三つの大型連休(黄金週)に旅行する人が集中し、鉄道や飛行機、各地の観光地は、どこも満杯になります。特に労働節と国慶節は、春と秋の気候のいい時期なので、多くの人が観光地に遊びに行くため、この期間に中国で観光をしようと思う人は、かなりの覚悟が必要となります。

 今日(10月8日)行われた全国休日観光関連部署連絡会議で報告された統計によると、今年の国慶節の連休(10月1日~7日)に繰り出した観光客は延べ1億4,600万人日で対前年比9.6%増、このうちホテル等の宿泊施設に宿泊したのは延べ3,761万人日で対前年比14.8%増、とのことです。この数字は、広範な中国人民が経済的に余裕ができ、連休中に観光に繰り出す人が多くなってきていることを現していると思います。

(参考1)中国旅遊局のホームページ「中国旅遊網」の「ニュース動向」2007年10月8日付け
「10月1日の国慶節週間の観光客は延べ1.46億人日」
http://jp.cnta.gov.cn/news_detail/newsshow.asp?id=A20071081725596275908

 休みが年3回の大型連休に集中していることについては、中国国内でも問題視する声が以前からあります。ただでさえ人口の多い中国で、休みの日を年3回の大型連休にまとめてしまうと、旅行に行こうと思う人が3回の連休の時にだけに集中してしまい、連休期間中は、鉄道・飛行機等の輸送手段、ホテル等の確保が非常に難しくなるほか、多くの観光地では「連休特別料金」として、普段より高い入場料を設定したりするケースが多くなるからです。10月7日付けの「新京報」に掲載されていた論評で、旅行学者の呉琦幸氏は、中国の有名な観光地の入場料の例として、武夷山ではいつもは220元(約3,300円)のところが連休中は250元(約3,750円)に、五台山ではいつもは90元(1,350円)のところが連休中は168元(2,520円)に値上がりしていた、という新華社の報道を引用して、「本来、広く民衆に提供すべき国家的な自然資源を金を作り出す器械にしていいのだろうか。」として、こういった傾向を批判しています。

(参考2)「新京報」2007年10月7日付け評論「一家之言」
「黄金週には、そんなに大きな存在価値があるのだろうか?」(呉琦幸)
http://www.thebeijingnews.com/comment/zonghe/1044/2007/10-07/014@080555.htm

 1年間の休みの日数は変えないままで、小さな連休に分散すれば、旅行するチャンスも分散され、こうした弊害は防げる、というのが、大型連休解体論者の言い分です。ただ、呉琦幸氏は、大型連休解体の最大のネックは、多くの地方の観光地や地方政府にとって、大型連休期間中の収入の魅力が大きくなってしまっていることだろう、と指摘しています。地方にとって、一種の既得権益と化した今の大型連休制度は、変える場合にはかなりの抵抗が予想されるので、今さら変えるのはかなり難しいかもしれません。

 今、中国では、「お金持ち」と言われている人たちは、大型連休中は、だいたいは海外旅行に行くそうです。従って、中国の大型連休をこのままにするのか、いくつかの小さな連休に分散するのか、ということは、最近、中国からの観光客を当てにし始めている日本の観光地にも影響がある話だと思います。

 私の個人的な感覚から言えば、日本のように1か月に1度くらい三連休があった方が便利だと思います。疲れた時は休めるし、元気がある時は遊びに行けるからです。「祝日」がなく、5か月間も一週間の休みは土日だけ、という週が続くのは、結構、疲れます(しかも、駐在員の場合、土日に自分の出張や日本からの出張者の対応があるので、土日がつぶれるケースが結構あるので、その意味でも、祝日が分散していた方がありがたいです)。

 どういった休みの取り方が社会にとって最も効率的か、といった議論をしている、ということは、余暇の過ごし方を議論している、ということですから、中国人民の経済レベルが既に一定のところにまで達している証拠だ、ということはできると思います。ただ、ほかのいろいろな社会システムと同じように、中国の休日の取り方は「世界標準」とは、ずれている感じがするので、中国が世界の国々の中に同じような形で溶け込んで行くためには、大型連休のあり方も、今後、どこかの時点で調整をしていく必要があるのではないか、と私は思っています。

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2007年10月 6日 (土)

北京地下鉄:5号線開通と運賃値下げ

 現在、北京には、天安門前の長安街の下を東西に走る1号線、第二環状路(昔の城壁の跡)の下を走る環状の2号線、1号線の東の端から東郊外へ延びる八通線、2号線の北東・北西の部分から、北の郊外を逆U字型に結ぶ13号線の4つの地下鉄があります。明日(10月7日)、それに加えて、環状の2号線の東3分の1くらいのところを南北に貫く地下鉄5号線が開通します。それにあわせるように、北京地下鉄の値段は、今は1号線、2号線内は3元(約45円)、13号線に乗り換えると乗り換え料金が必要だったものを、どの路線にどれだけ乗っても一律2元(約30円)に値下げになります。

(参考1)「新京報」2007年10月1日付け記事
「地下鉄10月7日から、一律料金2元に」
http://www.thebeijingnews.com/news/beijing/2007/10-01/021@075111.htm

 当初、地下鉄5号線の開業は、9月20日に、とアナウンスされていたのですが、国慶節連休の最終日である10月7日(日)に延期になりました。開業延期の理由はよくわかりません。また、5号線は、開業するけれども1年間は試運転期間なのだそうで、その間、不具合が生じた場合には、必要に応じて改善していくので、その点、利用者の皆様の御理解を御願いします、と北京市当局は言っています。

 料金値下げの理由もよくわかりません。9月後半頃から、地下鉄料金を値下げする、という案が出され、公聴会なども開かれていました(注)。その結果、9月30日に急きょ、5号線を10月7日に開業すると同時に、料金の値下げを実施する、との発表がなされました。今回は、新路線の開通と料金の値下げの発表なので誰も文句は言っていませんが、中国の場合、こういった市民生活に大きな影響のある事項が、1週間くらい前に急に発表になることがあるので要注意です(8月に行われたナンバープレートの奇数・偶数による自動車の北京市内での通行制限も、実施の1週間前に実施が発表されたのでした)。

(注)この地下鉄料金に関する公聴会については、市当局からは「一律2元にする案」「初乗り料金を2元とし、距離によって料金を加算していく案」が提示されて議論がなされました。「新京報」の10月1日付け2面の「観察家」という欄で、北京大学社会学教授の鄭也夫氏は、この二つの案は不均衡であり、誰でも「一律2元の案」を指示するはずだから議論になるはずがない、これは最初から「1律2元にする案」ありきで公聴会が行われたのではないか、と、市当局の案の提示の仕方を批判する意見を書いていました。

(参考2)「新京報」2007年10月1日付け論評欄「観察家」
北京大学社会学教授鄭也夫氏の評論
「地下鉄運賃制度と公聴会」
http://www.thebeijingnews.com/comment/guanchajia/2007/10-01/021@080146.htm

 北京のバスや地下鉄は北京市の財政的支援の下で運営されていますので、赤字になったら市から財政的に補填すればよいので、料金はいかようにも設定できるのですが、今回の料金の値下げは、原油価格の高騰をはじめとする諸物価上昇という周辺状況を考えれば、かなり思い切った措置だと思います。値下げの理由は発表になっていないので、よくわかりませんが、ひとつはバス料金(原則1元、ICカード割引を使うと0.4元)との価格差を小さくして、地下鉄を使える人にはできるだけ地下鉄を利用してもらおう、という方針から来ているのだと思います。また、最近のいろいろな物価上昇に対する市民の不満を少しでも和らげるため、という考えもあるのかもしれません。今回の値下げで、北京の地下鉄料金は、中国全土の中でも地下鉄料金としては最低水準になる、とのことです。

 明日開通する5号線に加えて、現在、北京では、環状線の西側3分の1くらいのところを南北に走る4号線、第三環状路の下付近を北京市の東側から北西部まで走る10号線、10号線から乗り換えてオリンピック・メインスタジアムへ行けるようにする8号線、飛行場と現在運転中の2号線を繋げる飛行場線、の4つの路線で建設が進められています。飛行場線やオリンピック・メインスタジアムへ直結する8号線など主要なところは、来年のオリンピックの前までに開通することになるでしょう(公式な開通予定日時は伝えられていないし、今回の5号線のように、開通日時が一度アナウンスされた後で変更される可能性もあるので、いつ開通するのか、ということについては断定的なことは言えません)。地下鉄の開通は、バスの利用者が地下鉄に回るだけで、マイカー族は地下鉄は使わないので、交通渋滞の改善にはあまり効果はないのではないかと言われています。

 北京の地下鉄は、1971年に1号線が開通し、1987年に2号線が環状線としてつながった後、この20年間で、1号線の東側への延長、八通線の開通、13号線の開通があっただけですので、地上部分でのビル群の建設ラッシュに比べると、かなり整備のペースは遅いと言わざるを得ません。私が19年前の1988年7月に書いた文章に以下のような部分があります。

「・・・新聞報道によれば、現在、東西線を東へ延長して天安門前を横断して東郊外まで伸ばす線と、西北の頤和園付近から環状線の北半分を串差しにして東へ抜けて東北郊外にある北京空港までを結ぶ線、天安門を中心に北京を南北に縦断する線の3つの新しい地下鉄路線が計画されているという。新聞には『1990年代内の完成を目指す』と書いてあった。中国の人に言わせると『つまり完成は20年後でしょうね』ということになるが、・・・」

(参考3)このブログの筆者のホームページ「北京よもやま話」にある
「地下鉄に乗って」(1988年7月8日)
http://homepage3.nifty.com/itaru_watanabe/beijing/chikatet.html

 新聞に載っていた公式の見通しを無視して「完成は20年後でしょうね」と言っていた、当時の中国人の達見には恐れ入ります。地下鉄の路線計画も20年前にされたものと今とではだいぶ違っていることがわかります。オリンピックがなければ、多くの地下鉄の開業時期はもっと先に延びたでしょう。北京オリンピックが、少なくとも北京の公共施設に関して言えば、大きな促進要因になっていることは間違いないと言えると思います。北京オリンピックに対しては、いろいろな意見がありますが、オリンピックを契機に、こういった市民生活を支えるインフラが整備されていることは、よいことだと思います。

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2007年9月30日 (日)

月探査ロケット打ち上げ見学費用が1000元?

 日本の月探査機「かぐや」は、今、月へ向かって飛行中ですが、中国の月探査機「嫦娥1号」も順調に行けば年内にも打ち上げられる予定なので、中国では、月探査計画についての関心が高まっています。

(参考1)このブログの9月15日付け記事
「『新京報』1面トップ写真は日本の月探査機」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/09/post_7cb6.html

 その関連で、9月28日、「西昌嫦娥奔月旅遊開発公司」という旅行会社が「嫦娥1号」の打ち上げが見られる場所の入場料を800元~1,100元(12,000円~16,500円)にすると発表しました(「西昌」はロケット発射場がある場所の地名)。この値段について「高すぎる」「高すぎない」とけんけんがくがく議論になっています。2006年の都市部の給与所得者の平均年収が21,000元(約315,000円)、北京のタクシーの初乗り料金が10元(約150円)ですから、800元~1,100元という額は相当に高い値段です。

(参考2)新華社のホームページに2007年9月30日にアップされた掲示板
「衛星発射場の入場料として1,000元は必要なのだろうか」
http://news.xinhuanet.com/forum/2007-09/30/content_6810886.htm

 上記の新華社のネットの掲示板では、「これだけの国家プロジェクトが現場で見られるのだから800元は高くない」という賛成論、「そもそもなんで『西昌嫦娥奔月旅遊開発公司』なんていう会社が設立されているわけ? これって『不当な独占』(中国語で「壟断」)じゃないの?」という反対論、「もし入場料収入が中国の宇宙開発に使われるのなら800元は寄付だと思えば払ってもいいと思うけど、入場料収入がどこへ行くのかわからない。」という疑問、などが交わされています。

 中国では明日(10月1日)から国慶節の連休です。最近は、中国の人々の中にもかなり経済的に豊かな人が多くなったので、この連休中、大勢の人々が国内旅行を楽しみます。そうした中で、最近、有名な観光地の入場料が高すぎる、という不満の声が上がるようになってきています。例えば、北京の故宮博物館の入場料は60元します。故宮は、明・清時代の皇帝の宮殿で、明や清の時代には一般の人々はとても入れるところではなかったので「紫禁城」とも呼ばれています。それが20世紀の革命を通じて、今は、一般の人民でも自由に見学できるようになりました。そういった歴史的意味を考えれば、「入場料が高くて、やっぱり一般人民は入れない」というのではまずいと思います。企業や財団などの寄付によって運営されていて入場料をタダにしているアメリカ・ワシントンD.C.のスミソニアン博物館やロンドンの大英博物館などのことを考えると、「人民の国」中国の故宮博物館の入場料が「人民」にとっては高すぎるというのも、おかしな話です。

 北京にいる農民工の人たちなどは、初乗り10元のタクシーなどには絶対乗りません。彼らは市内の移動には、自転車か、そうでなければ、ICカードを使うと割引料金の0.4元で乗れるバスを利用します。そういった感覚からすれば故宮博物館の入場料の60元はかなり高いし、ましてやロケット打ち上げ現場の800元~1,100元などという入場料は別世界の話のように見えると思います。

 故宮博物館などは、施設や展示品の保管管理や補修にお金が掛かるので、ある程度の入場料を徴収することは理解はできます。しかし、ロケット打ち上げ現場の見学コースは、維持管理にそんなにコストが掛かるとは思えません。ロケット打ち上げ現場の入場料を取ろうという「西昌嫦娥奔月旅遊開発公司」という会社がどういう会社なのか、どういう経緯で国が管理している打ち上げ現場にお客を入れる許可を得たのか、入場料収入のうちどのくらいの額がこの会社にいくのか、などはよくわかりません。今の中国では、なんでもかんでも「お金儲け」の道具にしよう、という空気が蔓延(まんえん)しています。また、「からくりはよくわからないけど、うまくやってお金を儲けている会社」もたくさんあります。この「ロケット打ち上げ見学場所」の入場料の話も、そういった現在の中国の雰囲気を表すひとつのエピソードだと思います。 

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2007年9月 6日 (木)

中国における「発表」の読み方

 9月4日に行われた国家発展改革委員会の記者会見で、同委員会の卒井泉副主任から、この秋の食糧作物の収穫については楽観視している、との発言がありました。この問題については、一週間前、同委員会の馬凱主任が、全国人民代表大会(日本の国会に相当)の常務委員会で「洪水や干ばつの影響で、今年の秋の食糧作物の情勢は厳しい」と発言していたことから、発展改革委員会の見方はいったいどちらなのだ、といったとまどいが中国の新聞記者の間にも広まったようです。

 記者のとまどいを伝える記事が載っている「新京報」2007年9月5日付けA05面の記事「記者会見の焦点1:発展改革委員会は、秋の食糧作物生産の情勢は楽観視している」がネット上で見つからないので、同じ発展改革委員会卒井泉副主任の発言を記事にしている新華社の記事のアドレスを下記に掲げておきます。

(参考1)「新華社」2007年9月4日付け記事
「発展改革委員会、中国ではまだ重大なインフレは出現していない」
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-09/04/content_6663489.htm

(参考2)このブログの2007年8月30日付け記事
「この秋の中国の食糧生産は減収か?」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/08/post_2840.html

 主任と副主任の発言の内容がかなり違うため「どちらが本当の国家発展改革委員会の見方なのか」という疑問が湧くわけです。どうも、この手の経済関係の将来予測に関する発言には、市場や物価などの様子を見るためにわざと言っている、という意味合いもありそうです。日本でも、市場の相場を見ながら、政治家がわざと「こうなるんじゃないかなぁ」などという思わせぶりな発言をする、いわゆる「口先介入」をすることがありますが、中国における要人の発言は、それと同じで、自分の発言と世間の反応とを推し量った上での意図的な発言である可能性がありますので、その辺は認識しておく必要があると思います。

 また、中国における発表は、同じ内容でも、発言する場所や場面、伝えられる言語によって微妙にニュアンスを変えて伝えられる場合があることも要注意です。英語では伝えられているのに、中国語では伝えられていない情報というものもあります。

 ひとつの例として、先日、新華社で配信されたニュースに、大成功だったとされている中国初の有人宇宙船「神舟5号」の飛行は、実は大気圏突入時にレーダーで捕捉ができなくなり一時的に危機的状況があった、という報道がありました。このニュースは日本の新聞にも載ったので、御存じの方も多いと思います。中国国内でも英字紙「チャイナ・ディリー」には載っていました。でも、私が知る限り中国語の新聞やネット上のニュースでは見ませんでした。

(参考3)「チャイナ・ディリー」2007年8月14日付け記事
"Moment of fear for first astronaut"
http://www.chinadaily.com.cn/china/2007-08/14/content_6025089.htm

 また、韓国の在北京大使館の公使が病院でなくなった件について、9月6日、衛生部の陳竺部長は「死因は直前に食べたサンドイッチではない」と発言しているのですが、この発言の内容を伝えるニュースのうち、チャイナ・ディリーでは病院名が明記されているのですが、中国語の「新京報」では明記されていません。

(参考4)このブログの2007年8月4日付け記事
「在北京韓国大使館公使の死去」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/08/post_cfae.html

(参考5)「チャイナ・ディリー」2007年9月6日付け記事
"Death of ROK diplomat 'not food-related'"
http://www.chinadaily.com.cn/cndy/2007-09/06/content_6084107.htm

(参考6)「新京報」2007年9月6日付け記事(ネット上へは9月5日15:14アップ)
「衛生部:韓国公使の突然の死は、食べ物が原因ではない、と発言」
http://www.thebeijingnews.com/news/intime/2007/09-05/018@151417.htm

 陳竺衛生部長の発言では、病院名については触れていないのですが、多くの読者の関心事項である病院名を補足して伝えている「チャイナ・ディリー」の方が報道の仕方としては自然だと思います。

 さらに、ちょっと古いニュースですが、今年6月に人民解放軍の士官が鳥インフルエンザで亡くなった時、「新華社」は、亡くなった時期は「最近」、亡くなったのは「人民解放軍の某部隊の士官」とだけ伝え、亡くなった正確な時期と場所については伝えていません。

(参考7)「新華社」2007年6月5日18:45アップ
「解放軍某部隊で鳥インフルエンザで1人死亡」
http://politics.people.com.cn/GB/1027/5825732.html

 一方、この情報は世界保健機関(WHO)に伝えられ、WHOの英語のホームページには、死んだのが19歳の男性、死んだ時期は6月3日、場所は福建省ということが載っています。

(参考8)世界保健機関(WHO)ホームページ
「感染症に関する警告と対応」鳥インフルエンザ~中国の状況~最新情報3:2007年6月4日付け
http://www.who.int/csr/don/2007_06_04a/en/index.html

 このケースは、亡くなったのが軍の士官だったための特殊ケースだと思います。ただ、WHO経由で英語で世界中に発信されている情報が、中国語で中国国内には伝えられていなかったのは事実です。

 このように中国では、発表される場所、発表される場面、発表される言語によって、微妙にニュアンスが違ったり、一部の情報が伝えられなかったりすることがあるので、要注意です。例えば、「この場にいる人なら伝えてもいいだろう」「英語がわかる人には伝わっても大丈夫だろう」というような考え方から、場所、場面、言語によって、発表する内容を微妙にコントロールしているのではないか、と私は思っています。

 そういったやり方が正しいことなのかどうかは別として、情報を受け取る側としては、その辺も頭に入れておく必要があると思います。

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2007年8月30日 (木)

この秋の中国の食糧生産は減収か?

 8月30日の中国での新聞報道によれば、発展改革委員会の馬凱主任が、29日、開会中の第10期全国人民代表大会第29回会議(日本の国会にあたる)で、一部の地域の洪水や干ばつ、病害やイナゴの害の影響で、今年の秋の中国の食糧生産は減収となる見通しであることを示しました。

(参考1)「新京報」2007年8月30日付け記事
「発展改革委員会によれば、秋の食糧生産の情勢は厳しい見通し」
http://news.thebeijingnews.com/0546/2007/0830/011@287236.htm

(参考2)チャイナ・ディリー2007年8月30日付け記事
"Autumn harvest under severe threat"
http://www.chinadaily.com.cn/china/2007-08/30/content_6066944.htm

 中国では6月頃収穫となる冬小麦と秋に収穫される稲などが主な食糧作物です。今年夏期の食糧の収穫は比較的順調だったのですが、秋期に収穫される食糧作物については、中部から南部地域に掛けての洪水や大雨、北西部地域の干ばつ、それに病害やイナゴの害が加わって減収の見通しなのだそうです。チャイナ・ディリーの記事によれば、1年を通じた食糧生産の約70%が秋期に収穫されるものなので、夏期の生産が順調だったことを考えても、今年1年をトータルすれば、減収になる見込み、とのことです。上記の記事によれば、食糧の減産は、秋へ向けての物価の上昇に懸念材料とされる、とのことです。

 チャイナ・ディリーの記事によれば、今年、洪水の被害にあった地域の面積は非常に広範囲にわたっており、被害にあった面積は中国の全耕地面積の6分の1以上に相当する、と伝えています。中国では、大躍進時代(1958年~60年頃)には、農村地区の急激な人民公社化に自然災害が重なって食糧生産が激減し、数千万人の餓死者が出たと言われています。今の中国は、その頃とは全く違って大きな経済力を持っていますので(例えば、現在、中国の外貨準備高は1兆3,000億ドル以上ある)、中国人民が飢えに苦しむことになるようなことはない、と多くの人は思っているようで、基本的に中国の新聞の論調は落ち着いています。例えば、「新京報」の記事では、この時期に発展改革委員会が秋の食糧生産の減収の見通しを発表したことは、むしろ物価の上昇に対して各方面に警告を発したものと捉えるべきだ、との見方を示しています。

 中国では、いつの時代でも、どこかの地域で毎年何がしかの洪水や干ばつに見舞われ、食糧生産は増えたり減ったりしていますが、現在の中国の全体的な経済力を持ってすれば、私も少々食糧の生産が減ったからと言ってすぐに人民が飢えに苦しむような事態にはなることはないと思います。しかし、中国の食糧生産が極端に落ちると、13億人の食糧のうち足りない分を国際市場から購入することになりますので、国際穀物市場での価格の高騰を招く可能性があります。その意味では、中国の国会でのこういった報告は、日本など外国のメディアでももっと重要視して報道して欲しいものだと、私は思います。

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2007年8月26日 (日)

農民の住宅の土地の権利に関する問題

 農村の村所有の土地(集団所有の土地)の上に建てられた住宅(いわゆる「小産権」「郷産権」と呼ばれるもの)の取り扱いをどうするかが今中国で社会問題になっていることは、これまでもこのブログで何回か書いてきました。法律上のタテマエでは、集団所有の土地に建てられた住宅は、その集団のメンバー(つまりその村の村民)しか使えないはずなのですが、実際には、村の外部の市街地の住民などに貸し出されたり、売られたりしているのです。

(参考1)このブログの2007年6月26日付け記事
「北京では耕地などに作ったマンションの売買を停止」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/06/post_94bc.html

(参考2)このブログの2007年8月5日付け記事
「ある北京近郊の村の『別荘商売』」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/08/post_2eab.html

(参考3)このブログの2007年8月6日付け記事
「『小産権房』(集団所有地上の住宅)をどうする?」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/08/post_e6d8_1.html

 この問題について、2007年8月27日号(8月25日発売)の経済専門週刊紙「経済観察報」の「観察家(オブザーバー)」の欄で、北京大学・長江商学院教授の周其仁氏が「小産権、大きな機会~農村建設用地譲渡の制度的変遷~」という論文を書いています(この文章は、北京大学中国経済研究センター第10回中国経済観察シンポジウム(2007年7月29日)における発言を一部修正補充して文字化したものです)。周其仁教授は、法律の規定を杓子定規に当てはめず、経済の実態を見て、むしろこの「小産権」問題をひとつのチャンスと捉えて土地制度改革のきっかけとすべき、と主張しています。

 この「小産権」の問題は、農村における土地所有権をどうするのか、という問題であり、「社会主義の原則」と「市場経済」をどう溶け合わせるか、という現在の中国が直面する最も重要な問題に関係するため、多くの関係者が真剣に議論をしているのです。

 周教授の論文によれば、農民が住んでいる住居とその住居が建っている土地の所有権についての歴史的経緯と問題の所在はポイントとして以下のとおりです。

○「人民公社」時代の1962年の中国共産党第8期第10回中央委員会全体会議で採択された「農村人民公社耕作条例修正草案」には次のような条文がある。

<第21条>生産隊(人民公社の中の単位)の範囲内の土地は、生産隊の所有とする。生産隊が所有する土地は、人民公社の社員(=村民)が自分で管理している「自留地」「自留山」及び宅地が建っている土地も含めて、貸し出したり売買したりすることは認めない。

<第45条>人民公社の社員(=村民)の住宅については、永久にその社員による所有を認める。社員は、住宅を貸したり、売ったりする権利を有する。

 つまり、人民公社時代の規定では、村民は、自分の家を貸したり売ったりする権利を持つが、その住宅が建っている土地を貸したり売ったりする権利は持っていない、ということである。従って、Aさんが自分の家をBさんに売った後、Bさんのものになった家が火事で焼けて何もなくなってしまった場合、その土地に新しく家を建てる権利を持っているのは誰か、という問題が生じる。この人民公社時代の規定では、法律上、この点が明確ではなかった。建前上は、土地は生産隊の所有だから、Bさんは勝手にその上に新しい家を建てられないはずである。ただ、現実的には、習慣法的に、このような場合、家を買ったBさんが新しく家を建てる権利を持っている、という解釈で運用が行われてきた。

○「人民公社」時代は、就業など生活の全てがその土地に縛られていたので、問題はほとんど表面化しなかった。しかし、改革開放後、土地を離れる農民が増えたため、土地に対する権利の問題が表面化してきたのである。

○統計によれば、現在、中国全国の農村戸籍人口は9.4億人である。しかし、実際にそこに常住している人は7.4億人である(2005年の数字)。つまり、2億人以上の人が自分の戸籍がある土地に住んでいないので、農村住宅の貸し借り、売買が多数行われるようになったのである。

○現在、法律上「農地を非農地として転用するのは国の許可に基づき国により利用される場合のみ」「(都市部の土地などの)国有地の土地使用権は、貸し借り、売買が可能」となっているが、「農民が住んでいる住宅が建っている土地を別の用途で使う場合」の規定がない。

(このブログの筆者注:法律のタテマエ上は「農地を非農地として転用するのは国の許可に基づき国により利用される場合のみ」なのだが、実際は「上部機関の許可を得た上で農地の土地使用権が開発業者に売られて別荘などの開発が行われているケース」や「村当局が上部機関の許可を得ないで勝手に開発業者に農地の土地使用権を売って開発業者による別荘開発が行われているケース」などがあり、問題を複雑にしている)。

○「土地使用権」は、今は、通常70年の年限を持って貸し借り、売買が行われているが、「土地使用権」は、その期限が長くなればなるほど、「土地所有権」と実態上の差がなくなってしまう。特に2007年10月1日施行の「物権法」によれば、住宅用土地の使用権は、一定の条件を満たせば、期限が来ても期限の「自動延長」が可能なので、「土地使用権」を買うことは「永久土地所有権」を買うことと同じになるのであろうか?

○農民の住宅用地の面積は、全部合わせると16.4万平方キロに及び、その面積は河南省全体の面積に近く、全ての都市部の面積の4.6倍に当たる。これだけ膨大な土地の貸し借り、売買を法律上どのように扱うかは、土地政策上極めて大きな影響を持つ。

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 資本主義社会においても、自由に使ったり、貸したり、売ったりできる一般の動産に対する所有権と異なり、土地に対する所有権は結構難しい問題を含んでいます。特に農地の場合はそうです。日本の場合も、戦前、大地主の土地所有の下で多くの小作農が苦しんでいた経験を踏まえ、戦後、農地改革により「耕作者が土地を所有すること」が大原則となりました。現在の日本の農地法では、農地の所有権が耕作者以外の者に移転されることについては、様々な制限が設けられています。戦後の日本の農地改革は、アメリカ軍を主体とする進駐軍の指導により行われたのですが、その内容は、大地主から土地を取り上げて実際の耕作者である小作農に分け与えるという極めて社会主義的なものだったのです。

 今、中国では、日本の戦後の農地改革とは全く逆に、「人民公社時代」に一端純粋に社会主義化した農民の土地(農地と農民の住宅地)の権利関係を市場経済化した現在の中国の経済実態にどのように合わせて行くのか、という苦労が試行錯誤的に行われているのです。

 上記の周其仁教授の文章によれば、現在、北京の「小産権」の物件は、80か所あり、これは市場に出回っているマンションの数で言うと20%、売買されている部屋の数でいうと30%に当たる、とのことです。一般に「小産権」の物件は、北京市の中心街からは遠いのですが、村が自分の持っている土地を切り売りしているため値段を安くすることができます。このため、市街地のマンションを買えない人たちが数多く購入しています。周教授によれば、「小産権」の物件を買っているのは、退職後に住むことを念頭においた中高齢者、中心街の値段の高いマンションが買えない若年層、投機目的で買っている人、の3種類いるとのことです。「小産権」の物件は「安い」とは言っても1平方メートルあたり2,000~3,000元(30,000~45,000円)、70平米の物件で14~21万元(210~315万円)します。下記の「新京報」の記事によれば、今年の北京市新卒者(大卒・高卒・中卒全体)の中位クラスの初任給が月給2,000元弱(約3万円)ですから、相当に高い買い物であることには違いありません(北京市街地でのマンション価格は、今は、上記の4~6倍の1平方メートルあたり12,000元以上します)。

(参考4)「新京報」2007年8月15日付け記事
「大学卒初任給、高いレベルの者は月収6,450元」
~500余の職業について月給の標準価格が確定、社長クラスの平均年収は25万元(約375万円)~
http://news.thebeijingnews.com/0553/2007/08-15/021@283649.htm

 これら「小産権」を既に購入している人たちが多数いる、ということを踏まえて、現実的な土地政策を採らないと大変なことになると思います。ただ、ここは、まさに「社会主義の原則」と「市場経済の現実」とが真っ正面からぶつかり合うところですので、中国政府も慎重の上にも慎重な議論を重ねて、政策を決定していくことになると思います。

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2007年7月25日 (水)

北京オリンピック期間中ホテル代は8倍以上に

 オリンピックの期間中、北京のホテル代等は高騰するだろうと言われていますが、北京の大衆紙「新京報」が調査した結果によると、現時点で予約を取っているホテルでは、通常の価格の8倍以上の値段で予約を受け付けているところがあるそうです。

(参考)「新京報」2007年7月24日付け記事
「240元の客室がオリンピック期間中は2000元に」
http://news.thebeijingnews.com/0558/2007/07-24/021@278414.htm

 北京オリンピックの開幕(2008年8月8日)まで、まだ1年以上あるので、お客がどれくらいくるのかまだ見えてきていないところがありますが、「新京報」が現時点で聞き取り調査をした結果、回答が得られた37のホテルのうち17のホテルでは、既にオリンピック期間中の予約を受け付けている、とのことです。北京のホテルは星の数で一つ星級から五つ星級までの5段階にランク付けされていますが、三つ星級ホテルで標準的な値段が1泊240元(約3,840円)の客室がオリンピック期間中は1泊2,000元(32,000円)にまで値上がりしていることろがあるそうです。五つ星クラスだと、オリンピック期間中は通常の約3倍を超える1泊4,000元(64,000円)~5,000元(80,000円)程度の値段がついている、とのことです。

 また、新京報が調査した既に予約を始めているホテルの過半は、予約時に宿泊費の一部又は全部の支払いを要求しており、キャンセルした場合は、既に支払った料金は返さない、といった契約にしているところもあるそうです。

 上記の記事には書いてありませんが、私が聞いた範囲では、1年契約のアパートなどでも、オリンピック期間中を含む契約期間で契約する場合は、通常より高い特別料金の家賃を要求されたり、オリンピック観戦等にとって交通の便利な場所のアパートについては、オリンピック期間中を含む場合は契約更新そのものをしない(オリンピック期間中は特別料金で別の人に貸すため)といったケースも出てきているようです。

 オリンピックは、本来は現地に住んでいる人にとっては、胸の沸き立つ、楽しい、うきうきしたイベントのはずなんですが、そういった「盛り上がる雰囲気」より(これは外国人である私が勝手にそう思っているだけですが)「ちょっと勘弁して欲しいなぁ」という気分の方が大きくなっている今日この頃です。

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2007年7月16日 (月)

中国で豚肉の価格が高騰

 最近、中国では豚肉の価格が高騰しています。商務部による中国全国主要36都市における物価調査によれば、豚肉の価格は、5月下旬には5月11日に比べて16%上昇して1kgあたり16.53元(約265円)になり、その後しばらくは落ち着いていたが、6月末頃からまた急騰し、7月4日には17.83元(約285円)(6月20日の時点と比較して7.2%上昇)、7月11日には18.57元(約297円)になった、とのことです。この価格は1kgあたりの値段ですから、日本に比べると安い感じがするかもしれませんが、北京では地下鉄が3元、タクシーの初乗り(2kmまで)が10元という物価水準ですので、この豚肉の値段は、やはりかなり割高な感じがします。また、中国の食生活において、豚肉は基本中の基本の食材ですから、その価格の急騰は庶民生活を結構直撃しているようです。

(参考1)「新華社」2007年7月14日22:57アップ
「商務部:中国政府は、豚肉市場への供給能力を保障すると述べた」
http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-07/14/content_6376293.htm

 豚肉価格の急騰の原因としては、は国際的な飼料価格の高騰などの豚肉生産コストの上昇、豚肉生産地域での豚の疫病(中国語で「猪藍耳病」)の蔓延などが挙げられています。「猪藍耳病」は人間には感染しない豚だけの病気とのことです。農業部が7月14日に出した「『猪藍耳病』に関する緊急通知」によれば、「猪藍耳病」は今年に入って25の省で発生しており、7月10日の時点では、586個所で143,221頭が発病し、39,455頭が死んだ、とのことです。

(参考2)中国農業部のホームページ2007年7月14日発表
「農業部の再度の緊急通知:流行性の『猪藍耳病』に関し、疫病の情勢を正確に把握し、防疫措置を全力を挙げて実施し、継続して防疫能力を強化するよう要請する」
http://www.agri.gov.cn/xxlb/t20070714_852724.htm

 実際、私の個人的な感覚としても、この豚肉価格の上昇は感じます。職場のオフィスビルの一般職員用食堂では、最近、鶏肉や魚、豆腐が多く出てくるように感じています(中国の庶民的な料理では、魚ももちろん食べますが、あまりメインの食材というイメージではありません)。先日は、久しぶりで餃子がたっぷり出たので「おぉ、豚肉がたっぷり食べられる」と思ったら野菜餃子だった、ということもありました。別の場所で「餃子麺」を頼んだら、出てきた餃子はエビ餃子でがっかりした、ということも経験しています。やはり餃子は、豚肉のものがメインじゃないと物足りないと感じてしまいます。

 豚肉がなくても、鶏肉や牛肉、魚、豆腐、羊肉など中国には食材は多種多様なものが豊富にありますから、食事に困る、などということはないのですが、やはり豚肉は中華料理にとって「王道」の食材ですので、豚肉がないと、何となく食べた気がしない、という感じになります。

 毎年の気候の状況などによって、中国では「大豆が高くて豆腐が買えない!」「今年は鶏肉が高い!」などということはしょっちゅうあるので、今回の豚肉の高騰も「いつものこと」と言えば「いつものこと」なのですが、過剰流動性に基づくバブルの心配もあり、党と政府は消費者物価の高騰にかなり神経を使っているようです。今年に入ってからの一連の豚肉の価格の高騰に対しても、5月末には温家宝総理自らセン西省の豚肉生産現場を視察して、状況把握に努めたりしています。

(参考3)ネット版人民日報「人民網」2007年5月27日(情報源は新華社)
温家宝、セン西省で、豚肉生産と豚肉供給の状況を視察
http://politics.people.com.cn/GB/1024/5784789.html

※「セン西省」の「セン」は「『こざとへん』に「狭」の右側」

 これは5年に一度の秋の中国共産党大会へ向けて、党・政府が世論の動きをかなり気にしていることの表れであり、その意味で、私は、今年の中国の経済、政治を見る際には、豚肉の値段にも着目すべきだ、と思っています。

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