カテゴリー「北京オリンピック」の記事

2008年10月 7日 (火)

北京で新たな交通規制実施へ

 北京市人民政府は9月28日、オリンピック期間中のナンバープレートの偶数・奇数による交通規制が大気汚染改善に一定の効果があった、として、10月11日以降、新たな交通規制を行うことした、と発表しました。その内容は以下のとおりです。

(1)平日は5分の1の車の通行を規制する。車のナンバープレートの末尾の番号が、月曜日は1と6、火曜日は2と7、水曜日は3と8、木曜日は4と9、金曜日は5と0の車の通行を禁止する(バスやタクシーなどの公共交通機関、緊急車両や大使館車など特殊な車両は除く)。

(2)気象条件などにより大気汚染がひどくなることが予想される場合には上記の交通規制に代えて、偶数・奇数による緊急交通規制を実施する(この緊急交通規制の実施は48時間前に発表する)。

 これらの規制は2008年10月11日から2009年4月10日までの間実施するとのことです。

(参考1)北京市人民政府ホームページ
「北京市人民政府の交通管理措置に関する通告」(2008年9月28日)
http://zhengwu.beijing.gov.cn/gzdt/gggs/t994741.htm

(参考2)北京市人民政府ホームページ
「極端に不利な気象条件の下では、政府部門は48時間前に偶数・奇数制限に関する情報を発表する予定」(2008年9月28日)
http://zhengwu.beijing.gov.cn/gzdt/bmdt/t994848.htm

 この冬にはオリンピックのようなイベントは予定されていないので、この措置がうまく機能すれば、来年4月以降も定常的にこういった措置が続く可能性があります。オリンピック期間中の規制は、みんな「オリンピックだからしかたがない」と思っていましたが、特別のイベントの予定がないこの冬の規制に規制を行うとは、私には意外でした。オリンピックが終わった後、偶数・奇数による交通規制が大気汚染や渋滞の緩和に効果があったことから、こういった交通規制はもっと続けるべきだ、という議論があったのは確かですが、経済面等への影響が大きいことから、私はホントにやるとは思っていませんでした。

 車を持っていない人はこの規制は歓迎だと思いますが、車を持っている人や会社、商店などでは、困っているところが多いと思います。車をビジネスの道具に使っている人にとっては、これは死活問題です。オリンピック、パラリンピック期間中の規制は、ずっと前からやることが決まっていたし、パラリンピックが終われば規制は終わる、と考えて我慢していた人が多かったと思います。それより、オリンピックのような国家的イベントやるのだから我慢しよう、と思っていた人が多いと思います。しかし、こういった規制が定常的に続いて経済活動に実際的な影響が出てくるようになると、話は違ってくると思います。

 特に(2)の「大気汚染がひどくなりそうな時は、規制を強化して偶数・奇数による制限とし、それを48時間前に発表する」との措置については、直前の発表では代わりの車を用意することができないので、車を使ったビジネス活動に実質的な経済的影響が出る可能性があります。

 今回の措置が発表された9月28日というタイミングも、たぶんこの規制に反対の立場にある人々にとってはかなり不満だと思います。今年は9月27日(土)、28日(日)は出勤日とし、29日(月)、30日(火)を振り替え休日として、10月1日(水)~3日(金)の法定休日と合わせて、10月5日(日)までの7連休にする、というのが、今年初めに出された政府の「お達し」でした。その国慶節の連休前の最終日にこの発表があったわけです。実施まで2週間の期間がある、とは言いながら、営業日としては実質1週間もないわけで、多くの会社などでは代車の確保などが間に合わないのではないかと思います。

 オリンピック期間中は、偶数・奇数の規制がありましたが、車の量は半分にはなりませんでした。おそらく友だち同士で車での貸し借りをやって、普段はあまり使われていない時間帯にも車が街へ出て、全体の車の稼働率が上がった、のではないかと思います。私の感覚では、偶数・奇数の規制で車の量は確かに減りましたが、半分までは減っておらず、7割程度になっただけだと思います。また、オリンピック、パラリンピック期間中に北京の空気がきれいになったことは事実ですが、それは車の交通規制と同時に建設工事の中止や周辺の工場の操業中止などを行ったからだと思います。今回の交通規制は、建設工事や工場の操業中止を伴わないし、規制する量も「半減」ではなく「2割減」の規制ですから、「大気汚染対策」という点ではあまり効果はないと思います(「渋滞の緩和」という点では一定の効果があると思いますが)。

 中国の場合、あまり準備期間をおかずに「おかみ」からドンと規制が降りてくることが多く、多くの中国の人々はそれにかなり慣れていますが、今回の北京市当局の措置については、ちょっとあまりに唐突過ぎる感じがします。また「オリンピックがある」というような特別の理由も存在しないことから、実際、かなり不満の意見も出ているようです。最近は、中国の人々も「権利意識」がだいぶ高くなってきていますから、特に経済活動に直接の影響が出るような会社などからの不満の声が今後高まってくる可能性もあります。

 「環境や渋滞の緩和のために車の通行を制限する」という方策はあってもいいと思いますが、もっといろいろな人の意見を聞いた上で、ある程度の時間的余裕を持って発表して欲しいと北京で生活している私としては思っています。こういう法運用の仕方を続けていると、「中国は突然法律の規定が変わってしまうかもしれない」という「リスク感覚」を外国の企業に与えることも中国にとってマイナスだと思います。

 一方で、もしかすると、この車の交通規制は、これまで「とにかく経済成長を最優先にする」という方針だった中国の政策が「経済成長を少し犠牲にしてもいいから、人々の生活のしやすさを優先させる」という方向へ転換した、ということを意味するのかもしれません。もし、そうなのだったら、少々生活や仕事の面では不便になりますが、それはそれで仕方がないかなぁ、という気もします。でも、もしそうなのだったら、「政策全体の変更である」とちゃんと説明して欲しいと思います。今回の新しい交通規制の発表では、そういった説明がなく、いきなり規制の追加だけが発表されたので、私の素直な感覚で言わせてもらえれば、規則やルールがしょっちゅう変わって、中国はやはり生活する上ではストレスの掛かるところだなぁ、と改めて感じてしまったのでした。

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2008年10月 4日 (土)

元に戻りつつある北京

 北京の大気汚染指数は9月30日~10月3日の4日連続で100を超える「軽微汚染」でした。オリンピック、パラリンピックが終わり、ナンバープレートの偶数・奇数による自動車の通行規制が9月20日を最後に終了し、工場の運転や各地の工事現場でも作業を開始したことが効いているようです。

 これに対して、今日の北京の新聞「新京報」は「『オリンピック大気』を保つには、まだ共同努力が必要だ」と題する社説を掲げています。

(参考)「新京報」2008年10月4日付け社説
「『オリンピック大気』を保つには、まだ共同努力が必要だ」
http://www.thebeijingnews.com/comment/shelun/2008/10-04/008@020548.htm

 中国では、明日(10月5日)までは国慶節の連休なのですが、今年は、国慶節の連休期間中も工事現場での作業などが行われています。オリンピック、パラリンピックの期間中、約2か月、作業を中断せざるを得なかったので、施工主にとっても、働く労働者にとっても、「休みは既に繰り上げて取ってしまった」ということなのでしょう。そういった活動が大気汚染指数にすぐに反映されたことを考えると、やはり北京の大気汚染は人為的な原因の寄与度が大きいと考えられます。

 建設現場の工事も元に戻りましたし、残念なことですが、今日あたり街を歩くと、地下道にこどもの乞食(こじき)も戻ってきていました。アメリカや日本にもホームレスの人々はたくさんいるので、経済発展を遂げる中国であれば、そういった貧しい人々がいるのは仕方がない、と言えばそれまでですが、私の知る限り、少なくとも日本にはこどもの乞食はいないと思います。1980年代の中国にもこどもの乞食はいませんでした。1980年代の中国には、大人の「よくない人たち」はいましたが、こどもの乞食はいませんでした。今、中国にいるこどもの乞食は、大人が組織的に「やらせている」のだ、と言われています。オリンピックの期間中、取り締まりでそういう人たちを北京からなくすことができたのだとするならば、オリンピック期間が終わっても、そういう人たちをなくすことはできるのではないか、と私は思います。

 北京オリンピックは、中国に「やればできる」という自信を付けたと思います。ですから、オリンピックが終わったとしても、「やる」必要がある部分については「やればできる」と思います。このことは中国の人々も同じように考えていると思います。メラミン入り粉ミルク事件に見られるように「やれるのにやらない」ことについては、中国の人々は「物を言う」ようになってきています。「新京報」の大気汚染に関する社説もその一環ですが、この社説が言っているようにオリンピックが終わっても続けるべき「一つの世界の一つの夢」はまだまだあると思います。

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2008年10月 2日 (木)

温家宝総理の人気が支える中国政府

 2008年、中国はいろいろな問題に直面していますが、中国のテレビや新聞を見る限り、それらの様々な問題に対して、温家宝総理が現場に出向いて現場で指揮を取ったり、人々の意見を聞いたりする様子が頻繁に出てきます。1月末から2月初旬に掛けての中国南部を襲った寒波・大雪・着氷被害の時もそうでしたし、四川大地震の時もそうでした。温家宝総理は、オリンピック、パラリンピックの時には中国に来た要人との会見をこなし、9月の国連総会での演説もしました。メラミン入り粉ミルク事件が起こると、病院に入院したこどもたちを見舞ったり、街のスーパーへ出掛けて問題の商品が回収される様子を視察したりしました。国連総会から帰国後は、有人宇宙船「神舟7号」の帰還の時にコントロール・センターでこれを見守りました。

 こういった多忙な日程の合間を縫って、7月には複数回に渡って転換期を迎えた輸出産業の状況を視察するため、他の国家指導者たちと手分けして沿岸部を視察しています。また、オリンピックのために全国ベースのニュースではあまり取り上げられませんでしたが、8月には寧夏回族自治区の最も貧しい地域の視察へ行くなど、地味な活動もしています。こういったすぐ現場へ行く行動力とソフトな人当たりで、温家宝総理は中国の人々の敬愛を集めています。中国では客観的な世論調査は行われませんが、もし世論調査を行ったら、各国の政治指導者を尻目にして、圧倒的な支持率を獲得すると思います。

 ということもあり、最近、何か問題が起こるとすぐに温家宝総理が現場へ駆け付ける、というパターンが多くて、ちょっと忙し過ぎではないかと心配です。現在66歳で、まだ老け込むお年ではないと思いますが、胡錦濤主席とのペアの任期は次の党大会(2012年)までと言われており、そろそろ時々は後継者となるべき次の世代の人に任せた方がいいなぁ、と思います。四川大地震の時は、李克強氏と交代で現場指揮に当たりましたが、実際にテレビカメラの前で何かを話す、というような場面では、やはりまだ温家宝総理が話すケースが多く、人々に人気のある温家宝総理に頼らざるを得ない、という現在の中国指導部の状況を感じさせます。

 その温家宝総理が国連総会のために訪米した際にCNNの単独インタビューに答えました。CNNのインタビューに答えるのは5年ぶりだとのことですが、CNNと言えば、この4月、北京オリンピック聖火リレー問題が起きた時、CNNのコメンテーターが中国製品を「ジャンク」と表現し、中国をならず者(goons and thugs)と表現したことから、中国国内のネットで怒りの声が沸騰したテレビ局です。CNN側は、さらに「『ならず者(goons and thugs)』と表現したのは、中国政府のことであって、中国人民のことではない」という挑発的なコメントを発表したことは記憶に新しいところです。

(参考1)このブログの2008年4月18日付け記事
「自信を失ったように見える中国」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2008/04/post_31ea.html

 温家宝総理がこういったCNNの単独インタビューを受けることにしたのも、もの柔らかな温家宝総理の人柄を利用して、オリンピックを成功させつつも、乳製品へのメラミン混入事件などでイメージが悪化してしまった中国に対する世界的なイメージをいくらかでも回復させようという中国政府の狙いがあったものと思われます。

 予想されたことですが、インタビューしたCNNの Fareed Zakaria 氏は、いくつかの質問の中で、1989年5月、天安門前広場に集まる学生たちに呼び掛ける趙紫陽総書記の隣に写っている温家宝氏(当時、趙紫陽総書記の秘書官だった)の写真を示して、「この時のことがどういう教訓になっているのか」と質問しました。温家宝総理は、下唇を振るわせて非常に困ったような顔をしていました。その画面を見て、私は素直に「これだけ人民と国家のために尽力している温家宝総理をあまり困らせるような質問はしないで欲しいなぁ」と思いました。でも、CNNとしては、これはこういう機会があれば避けることができない質問だったと思います。

 温家宝総理は、CNNの英語の通訳では「これ(1989年の経験)は中国の民主主義が前進させることになると信ずる」と言っていましたが、温家宝総理が中国語で本当にそういったのかどうかは、私には聞き取れませんでした。私には温家宝総理は単に「中国の民主主義が前進することを信じている」とだけ言ったのではないか、と思えました。いずれにしても、こういう極めて「敏感な」質問に対して、温家宝総理が答えたこと自体、画期的なことだと私は思います。

 このインタビュー映像は、北京でCNNのページから動画として見ることができました。このインタービュー映像では、学生たちにハンドマイクを持って呼び掛ける趙紫陽総書記の隣に温家宝氏がいる写真や、1989年当時の、長安街で戦車の前に立ちはだかる青年、逃げまどう人々の映像が流れました。私は、北京に来てから、この種の写真や映像に制限なしでアクセスできたのは初めてでした。中国当局としても、さすがに温家宝総理の単独インタビューの映像に対してアクセス制限を掛けることはできなかったのでしょう。CNNの単独インタビューを受けることにOKを出した時点で、こういう映像が作られることは容易に想像できたはずですので、温家宝総理がCNNの単独インタビューを受けたこと自体、ひとつの前進の「サイン」かもしれません。

 一方、昨日(2008年10月1日)の国慶節の日の午前中、中国共産党政治局常務委員の9人の国家指導者(胡錦濤総書記や温家宝総理も含む)が全員そろって、天安門前広場の中心にある人民英雄記念碑に花輪を捧げました。国慶節に行われる儀式として、不自然なものではありませんが、去年はこのような行事はありませんでした。「人民英雄記念碑に花輪を捧げる」という行為は、私には、1976年と1989年の二つの天安門広場での「できごと」の始まりを想起させます。多くの中国の人々もそうだと思います。今年は「改革開放30周年」の年であり、「改革開放政策」が1976年の天安門事件をきっかけにして動き始めたことを考えれば、昨日の9人の国家指導者たちが人民英雄記念碑に花輪を捧げたことは、これも不自然ではないのですが、私には「何かが変わりつつあるのではないか」ということを感じさせるできごとでした。

 さらに、これは単なる偶然なのかもしれませんが、今日(10月2日)発売の週刊紙「南方周末」(日本語表記は「南方週末」)の1面記事は、胡徳平氏の署名入りの「民主法制を提唱し、封建主義に反対する~葉剣英の30年前の講話を再び考える~」と題する評論でした。

(参考2)「南方周末」2008年10月2月号
「民主法制を提唱し、封建主義に反対する~葉剣英の30年前の講話を再び考える~」
http://www.infzm.com/content/18042

 この評論は、30年前に「改革開放政策」を決定した第11期中国共産党中央委員会第3回全体会議(第11期三中全会)の直前に行われた中央工作会議の閉会式で行われた葉剣英氏(文化大革命を主導した「四人組」の逮捕に貢献した軍人の一人)の講話を思い起こして、改革開放について語った論評です。

 改革開放30周年の今年、こういった論文が出るのは別に不自然ではないのですが、この論評には葉剣英氏と胡耀邦氏ががっちりと握手としている1980年1月の写真がくっついています。胡耀邦氏も改革開放路線をスタートさせた時の重要人物ですので、こういった写真が載ることもまた別に不自然ではないのですが、胡耀邦氏は、1980年1月当時は中国共産党中央秘書長であり、その後、中国共産党総書記になり、1986年の学生デモをきっかけにして1987年1月に失脚した人です。しかも、胡耀邦氏が亡くなったのがきっかけで起きたのが1989年の事件でした。

 これらを合わせて考えると、改革開放30年を振り返ることになる今年12月までの動きの中で、1989年の「政治風波」も「目をそらす」のではなく、きちんとどういう意味付けだったのか、考えてみよう、という動きが出始めているのではないかと、私には思えます。

 温家宝総理が1989年5月に、直後に失脚する趙紫陽総書記の傍らにいたにも係わらず、その後も指導部の中枢部に居続けて、国務院総理にまでなっているのは、1989年の行動を「自己批判」したからだ、と言われています。しかし、温家宝総理が多くの中国の人々から慕われているのは、「自己批判したから」ではなく、むしろ「メシが食いたければ趙紫陽のところへ行け」と言われていた改革開放政策初期のリーダー趙紫陽氏の流れを汲んでいるからではないか、と私は思っています。今の中国政府がその温家宝総理に対する人々の敬愛がなければ成り立たなくなっている以上、1989年の「政治風波」に対しても、もっと客観的な見方をせざるを得なくなるのではないか、と私は考えています。

 オリンピック、パラリンピック、神舟7号による有人宇宙飛行が、全て順調に成功裏に終わりました。「お祭り」的なイベントは全て終わったので、10月以降は、地道な日々の「お仕事」が始まります。その中で、胡錦濤主席のリーダーシップの下、新しい明るい動きが始まることを私は期待したいと思います。(その大前提は、温家宝総理が今後も活躍をし続けることです。温家宝総理はあまりにも多忙が続いているので、是非とも健康にだけはお気を付けいただきたいと思います)。

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2008年9月21日 (日)

中国の乳製品パニック

 日本でも報道されているとおり、中国の粉ミルクに有害物質メラミンが混入していた事件で、18日夜に放送された中国中央電視台の7時のニュース「新聞聯播」で、液体の牛乳、しかも大手メーカーが販売している牛乳の一部からもメラミンが検出された、との発表がありました。概要は以下のとおりです。

蒙乳:121サンプルのうち11サンプルからメラミンを検出。検出値は1kgあたり0.7~8ミリグラム

伊利:81サンプルのうち7サンプルからメラミンを検出。検出値は1kgあたり0.7~8.4ミリグラム

光明:93サンプルのうち6サンプルからメラミンを検出。検出値は1kgあたり0.6~8.6ミリグラム

三元:53サンプルのうちメラミンを検出したサンプルはなし。

雀巣(ネスレ):7サンプルのうちメラミンを検出したサンプルはなし。

※雀巣(ネスレ)は、スイスのネスレ社のブランドですが、中国国内で生産されている牛乳です。

(参考1)「人民日報」2008年9月19日付け記事
「全国液体牛乳に対するメラミン検査の結果が発表」
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2008-09/19/content_105492.htm

(参考2)中国国家品質監督検査検疫総局ホームページ2008年9月19日発表
「全国液体牛乳に対するメラミン検査の結果発表」
http://www.aqsiq.gov.cn/zjxw/zjxw/zjftpxw/200809/t20080919_90325.htm

 最初に問題になった三鹿集団の粉ミルクで検出されたメラミンの最高濃度は最高1kgあたり2,563ミリグラムですから、それに比べれば上記の牛乳での検出値はだいぶ低いと言えます。報道では、体重60kgの大人ならば毎日2リットル以上飲まなければ大丈夫、と伝えられています。しかし、メラミンが検出された、ということは、チェックをしていない、ということですから、やはりショックです。私も上記のメーカーの牛乳を毎日飲んでいましたから。

(注)粉ミルクの場合、水に溶いて飲むので、液体の牛乳と比較する場合には粉ミルクの検出値は10分の1くらいなると考えた上で比較する必要があります。

 上記に掲げた5つのメーカーは中国は最大手の乳業メーカーで、毎日、テレビでのコマーシャルをやったりしています。伊利は、北京オリンピックの食品提供メーカーでしたが、北京オリンピック、パラリンピックで提供された乳製品では、メラミンは検出されなかった、と報道されています。

 昨日(9月19日)時点で、私が行ったスーパーでは、蒙乳、伊利、光明の製品は牛乳、ヨーグルト、チーズも含めて全ての乳製品が撤去され、三元、雀巣と外国から輸入された乳製品だけが売られていました。少なくとも私が行ったスーパーでは、三元、雀巣と輸入ものは売られており品切れ状態にはなっていなかったので、乳製品が手に入らない、という状況にはなっていません。中国では、放牧などが盛んな地方を除いて、一般には、多くの人が乳製品を消費するようになったのは、最近、経済レベルが向上してからのことであって、中国の食生活は「乳製品がないと成り立たない」というわけではないので、乳製品全体の消費量が一時的に落ち込んでいるのだと思います。豆乳など代用になりうる商品もあるので、普通の大人の場合は、そんなに「パニック」にはなっていません。しかし、ミルクを与えなければならない赤ちゃんがいる家庭は大変だろうと思います。

 ニュージーランドの牛乳やヨーロッパから輸入したチーズは、中国産のものに比べて2倍~3倍程度の値段するので、普通の人が簡単に「輸入品に切り替える」というわけにはいきません。

 中国は食材が豊富なので、乳製品がなくても、しばらくは都会の消費者も我慢できると思いますが、牛乳生産農家はかなりパニック状態になっているのではないかと思います。日本の乳製品を原料として扱っている食品メーカーも問題となった中国の乳製品メーカーの製品を使っていないかどうかの確認に追われている、と報道されています。

 今回の調査結果を見ると、多くのメーカーの数多くの種類の製品からメラミンが検出されていることから、乳製品製造メーカーではなく、源乳納入業者のレベルでメラミンが混入された可能性が高いと思います。しかも、乳製品製造メーカーが多岐にわたり、地域的にも全国に散らばっているので、おそらくは、ひとつふたつの源乳納入業者がメラミンを混入したのではなく、中国全土に渡って、源乳量の「水増し」を図るために、幅広くメラミンの混入が日常的に行われていた可能性があります。その点で、日本で問題になった農薬入りギョーザ事件とは異なり、今回の乳製品へのメラミンの混入事件は、中国の食品産業の構造的問題に立脚した、相当に根が深い問題である可能性があります。

 もし今回の問題が、業者のモラルの欠如、行政による安全検査体制の不備(もう一歩突っ込んで言えば地方の業者と取り締まる立場の地方政府との癒着)など中国の食品産業の構造的問題に根ざしているのだとしたら、単に特定のメーカーの乳製品という特定分野に限った問題ではなくなります。特にメラミンについては、昨年、アメリカ等へ輸出されたペットフードへの混入が問題となりましたから、それを全く教訓としておらず、問題に真剣に取り組んで来なかった、という点で、中国国内でも行政当局への批判も高まっています。今回の乳製品へのメラミン混入事件については、中国政府も相当深刻に受け止めているようで、連日のように対策会議を開き、迅速な検査と結果の発表、問題のある製品の撤去を徹底しています。

 今日、9月21日から、北京では、オリンピック、パラリンピック期間中に続けられていた車のナンバー・プレートの偶数・奇数による通行制限がなくなりました。そのせいかどうかしりませんが、今日(21日)の北京には、また以前のようなひどい大気汚染が戻ってきています。国際的な経済環境も厳しさを増す中、オリンピック、パラリンピックで目立たなかった多くの問題がこれから次々に出てくる可能性があります。これから中国政府にとって正念場が続くと思います(今月25日には、中国で3回目の有人宇宙飛行(今回は中国で初めての宇宙遊泳の実施が予定されている)が予定され、テレビや新聞でもそのことが盛んに報道されているのですが、一般に生活している感覚からすると「それどころじゃない」という雰囲気です)。

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2008年9月17日 (水)

北京パラリンピック閉幕

 今、中国中央電視台のテレビでは、北京パラリンピックの閉会式を生中継で放送しています。パラリンピックの選手の皆さんの活躍には、「人間にはこんな能力もあるのか」と驚かされました。

 思えば8月8日に北京オリンピックの開会式が行われたのが、はるか昔のように思えます。まずはオリンピック及びパラリンピックが無事に終了したことに対して、関係者の皆様にお祝いを申し上げたいと思います。

 オリンピックが始まった頃は、新疆ウィグル自治区でテロ事件のようなものが起きたりして、ちょっと心配していたのですが、結局は、オリンピック及びパラリンピックの期間を通じて、これらのイベントの運行に影響を与えるような大きな事件・事故は起きませんでした。これも警備・警戒に当たった多くの関係者の努力によるものだと思います。

 ところが、パラリンピックが終盤を迎えつつあるここ数日、段々と社会を騒がすような大きな事件が起きるようになってきています。

○鉱山鉱滓堆積場での土石流の発生

 9月8日:山西省臨汾市襄汾県の違法操業していた鉱山の鉱滓(こうさい)堆積場で、大雨による土石流が発生し、多くの人々が飲み込まれました。9月10日付けのこのブログを書いた時点では「34名が死亡」と書きましたが、その後調査が進んで今日(9月17日)の報道の時点では、259名の死亡が確認されています。この事故に関する行政の監督責任を取る形で、山西省長が9月14日に辞任しています。こういった事故によって、省長(日本で言えば県知事に当たる)が引責辞任するのは極めて異例のことです。

○メラミン入り粉ミルク事件

 9月11日:甘粛省衛生庁が最近甘粛省で多発しているこどもの腎臓結石について、赤ちゃんが1名死亡したこと、この腎臓結石の多発はあるブランドの粉ミルクが原因であることがわかったことを発表しました。その後、これが粉ミルクに有害物質のメラミンが含まれていたことがわかったのでした。この件については、昨日(9月16日付け)のこのブログの記事で書きました。昨日のブログでも書いたように、国家品質監督検査検疫総局が全国調査を行った結果、最初に見つかった社も含めて全部で22社、69の製品の粉ミルクでメラミンが検出され、これらの製品は市場から回収・撤去されることになりました。これだけ多数の製品でメラミンが検出されたことと、メラミンが検出されたとして掲げられたメーカーの中にテレビでコマーシャルをやっているような有名メーカーも複数含まれていたこと、などから、中国では粉ミルクを巡ってちょっとしたパニック状態になっています。

 温家宝総理は今日(9月17日)午前、国務院常務委員会を開催して、乳製品と乳製品製造業者に対する全面的な検査を行うことを決めました。国務院常務委員会は、その時々の経済情勢などを踏まえて、経済対策などを決める会議ですが、こういった特定の事件に対処するための緊急対策を決めるために開催されるのは極めて異例のことです。しかも、温家宝総理は、今日はパラリンピック閉会式の当日のため、外国要人との会見のスケジュールも立て込んでいる日でしたが、そういったスケジュールを押しのけてまで、国務院常務委員会を開き「政府全体として取り組んでいる」という姿勢を示す必要があったのでしょう。

(参考1)「新華社」ホームページ2008年9月17日19:12アップ記事
「国務院常務委員会、乳製品の全面的な検査と乳製品業者の整頓を決定」
http://politics.people.com.cn/GB/1026/8066877.html

○51人が死亡するバス転落事故 

 9月13日:四川省巴中市発で浙江省寧波行きの長距離バスが巴中市内の山道を走行中、ガードレールと衝突し、ガードレールを突き破って谷底に転落し、乗っていた51人全員の死亡が確認される、という事故が起きました。この事故は山奥で発生したためか、あまり迅速には報道されませんでした。今日(9月17日)付けの人民日報で、国務院がこの事故を「特別重大道路交通事故」として調査グループを設置したことを報じています。

(参考2)「人民日報」2008年9月17日付け記事
「国務院『9・13』特別重大交通事項調査グループを設置」
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2008-09/17/content_103878.htm

 これらに加えて、昨日(9月16日)、リーマン・ブラザーズの破綻で世界同時株安を受けて中国の株価も大幅に下落しました。今日(9月17日)は、東京市場などが下げ止まって少し戻したのと対照的に、中国の株価は今日も下げ止まりませんでした。土石流やバス転落事故は、この時期に起こったことは単なる偶然に過ぎないし、ここ数日の株安の原因はアメリカにあるのであって中国のせいではないのですが、こういった事項を並べてみると、なんだか、オリンピックとパラリンピックの開催のために、我慢してきたいろいろなことがパラリンピックの閉幕を待つことができずに、いっぺんに吹き出してきた、というような印象を受けてしまいます。

 この文章を書いている間に、北京パラリンピックの閉会式は、何発もの花火とともに終了しました。9月も中旬を過ぎ、北京では、朝晩はかなり気温が下がり、明らかに秋風が吹いています。そういった秋の気配からも「終わったなぁ」という感じを強く受けてしまいます。

 今度は、9月25日に中国で3回目の有人宇宙飛行である「神舟7号」の打ち上げが予定されています。なんとなく「これでもか、これでもか」というふうに「国家的イベント」が続く感じです。こういったいろいろな「国家的イベント」は、それぞれ順調に行って欲しいと思いますが、それとは別に日常の世界でも世の中全体が落ち着けるような雰囲気になって欲しいと思います。

 日本は、今、福田総理が辞任を表明して次の総理が決まらない状態で、総選挙が近くあるかもしれない、という不安定な雰囲気ですし、アメリカも大統領選まであと1月半に迫っており、経済的な状況も「どうなるかわからない」という雰囲気です。そういった世界の雰囲気に惑わされないように、中国は落ち着いた安定的な発展を続けて欲しいものだと思います(現在のような世界の状況の中で、今、中国の「安定団結局面」が乱れるようになることは、世界にとってタイミング的に非常に良くないからです)。

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2008年9月16日 (火)

有害物質入り粉ミルクで乳児に腎臓結石

 日本でも報道されていますが、中国の河北省石家庄にある三鹿集団有限公司が製造した粉ミルクに有害物質のメラミンが含まれており、この粉ミルクを飲んだ多数の乳児が腎臓結石になり、一部は死亡した例も出ていることがこのほど明らかになりました。メラミンの化学的性質は私もよく知らないのですが、メラミンは食品に入れると分量が増えるが、タンパク質と同じ窒素有機化合物なので、タンパク質含有量検査ではタンパク質として判定されることがあり、過去にも食品の「水増し」に使われて問題になったことがあったそうです。メラミンを含んだ食品を食べると、体内で化学反応が起き、腎臓結石が生じることがあるのだそうです。昨年、メラミンが含まれているペットフードが中国からアメリカ等に輸出されて、多くの犬や猫が死ぬ事件がありました。

 今日(9月16日)付けの北京の新聞「新京報」の記事によると、昨日(9月15日)衛生部が発表したところによると、昨日午前8時の時点で、この会社の粉ミルクを飲んだことにより病院で検診を受けた乳児は1万人近くに上り、腎臓結石と診断された乳児は1,253名、そのうち53名は重症で、今までに2名が死亡している、とのことです。

(参考1)「新京報」2008年9月16日付け記事
「全国の診察により『三鹿による結石の赤ちゃん』は1,253名に上った」
http://www.thebeijingnews.com/news/guonei/2008/09-16/008@021544.htm

 今日の「新京報」の1面トップは、昨日の記者会見で頭を下げる三鹿有限公司の幹部の写真が載っていました。

(参考2)「新京報」2008年9月16日付け1面トップ写真の記事
「三鹿集団が消費者に対して謝罪」
http://www.thebeijingnews.com/news/guonei/2008/09-16/008@021535.htm

 こういった事件の記者会見で会社の幹部が深々と頭を下げて謝罪するのは、日本では見飽きるほど見ていますが、中国では、こういったふうに「日本式」に頭を下げて謝罪するというのは今までなかったことです(少なくともこうした写真は私は初めて見ました)。こういった「異例の謝罪」があったのも、この有害物質粉ミルク事件が中国社会に大きな衝撃を与え、社会的に大きな反響を呼んでいる証拠だと思います。

 さらに今日(9月16日)夜7時から中国中央電視台で放送されたニュース「新聞聯播」では、このメラミン入り粉ミルク事件に関する最新情報を伝えた際に、アナウンサーが「たった今入ってきた情報です」と言った後、国家品質監督検査検疫総局が行った全国調査の結果、ほかの多数の会社のメーカーの粉ミルクからもメラミンが検出された、として、製品名と企業名のリストを放送しました。メラミンが検出されたのは三鹿集団も含めて22社、とのことです。おそらくこのニュースが「突っ込み」で入ってきたために、通常は7時30分で終わる「新聞聯播」が、今日は7時35分まで延長して放送していました。

 中央電視台の「新聞聯播」は、放送後1時間くらいすると、その放送内容がネット上にアップされてネット上でも見られるようになっています。今日放送の分を見ると、今までのところの調査では109社の491品目について調査を行い、その結果、今回問題となった三鹿集団の製品も含めて、22社、69品目の製品からメラミンが検出された、とのことです。22社のリストは下記の中央電視台「新聞聯播」のページに載っています。

(参考3)中国中央電視台「新聞聯播」2008年9月16日放送分
「中国国家品質監督検査検疫総局、乳児用粉ミルクにメラミンが含まれているかどうかについての検査の現段階での検査結果を発表」
http://news.cctv.com/xwlb/20080916/107382.shtml

 これだけ多くのメーカーの粉ミルクに有毒物質メラミンが含まれていた、ということは、今後、中国の国内における食品安全に関する大問題に発展する可能性があります。輸出されたペットフードの事件や日本のメタミドホス(農薬)入りギョーザ事件の場合には、中国の人々の中には「また外国が中国の悪口を言っている」というふうに捉えた人も多かったと思いますが、今回の粉ミルク事件は自分たちの問題として、真剣に取り組む(取り組まざるを得ない)と思います。有害物質入り粉ミルクが販売され、乳児に犠牲者が出る事件は過去にもありましたので、今回の事件は、有害物質入り粉ミルクを製造したメーカーが批判されるのは当然として、その上に、それを防げなかった政府に対する批判も高まるのではないかと思います。

 たまたま9月16日は、アメリカの金融大手リーマン・ブラザーズの経営破綻で、世界同時株安現象がおき、中国でも上海総合指数が終値で2000ポイントの大台を割り込んだ(昨年(2007年)10月の最高値6000ポイントの3分の1以下になった)、という別の大きな経済ニュースもありました。この世界同時株安は、中国に原因があるわけではなく、中国も一種の「被害者」なのですが、それと有害物質入り粉ミルク事件が重なって起こったことは、タイミング的に中国にとっては不運なことだと思います。

 ちょうど明日、北京パラリンピックが終わり、北京はオリンピックから続いていた「お祭り」の期間が終わって、現実の世界へ引き戻されることになります。アメリカの金融危機も大きな問題であり、アメリカにしっかり対応して欲しいと思いますが、いろいろな問題が悪い方向に重ならないように、粉ミルク事件のように中国国内で対処できる問題については、中国の関係当局には適切に対応して欲しいと思います。

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2008年9月 7日 (日)

偶数・奇数ナンバー規制続行論争

 北京では、現在、パラリンピックが終わった後の9月20日まで、自動車のナンバープレートの末尾番号が偶数か奇数かで北京市内での通行を制限する規制が続行中です(始まったのは7月20日)。この交通規制は、オリンピックとパラリンピック期間中の北京市内の交通渋滞の緩和と大気汚染の緩和のために行われている措置です。オリンピック期間の後半(特に8月15日)以降、大気汚染の状況が格段に改善されていることと、実際に北京市内の交通渋滞がかなり改善されていることから、この偶数・奇数制限をパラリンピックが終了した後も長期的に継続してもよいのではないか、との意見が多くの北京市民から出されています。新聞紙上でも、交通渋滞と大気汚染の緩和に効果があったのだから制限を継続すべし、という意見と、オリンピック・パラリンピックという国家的イベントがあったから特別に実施された措置であって、これを継続することは、社会生活や経済活動に影響があるから反対だ、という意見と両方が出されています。

 北京市当局は、9月5日の記者会見で、パラリンピック終了後の交通規制のあり方については、まもなく発表するが、9月20日以降にも偶数・奇数制限を延長するかどうかは現時点では未定である、と発表しました。

(参考)「新京報」2008年9月6日付け記事
「オリンピック後の交通規制緩和については、まもなく発表」
~北京市交通委員会によれば、9月20日以降の偶数・奇数制限をどうするかは未確定~
http://www.thebeijingnews.com/news/beijing/2008/09-06/008@015534.htm

 当然ですが、これは自家用車を持っている人と持っていない人では、全く意見が異なります。自家用車を持っている人の中には、2か月間の限定だから、ということで、無理をして車を1台余計に借りて通勤している人もいます。会社などでは、余分な出費をして、業務用の車を調達しているところもあると思います。車を持っていない人は、交通渋滞もないし、大気汚染も改善したのだから、偶数・奇数制限は続けるべき、と主張しています。

 9月6日に発売された「経済観察報」では、中国では自家用車は高い買い物であり、その自家用車を1日おきにしか使えない、というのは、一種の財産権の侵害なのだから、これを継続するなどということはあり得ない、例えば家を買った人に「自分の家に泊まるのは1日おきに」などと言えるわけがないのと同じことだ、といった主張の投書が載っていました。「経済観察報」は、お金持ち層が買う新聞ですので、そういった主張の投書が載るのは、ある意味では当然のことだと思います。

 いろいろ論争をするのは結構なことですが、北京で経済活動をしている企業にとっては、9月20日まで、という期間限定という前提で対応してきた車の偶数・奇数制限が、もしかすると延長されるかもしれない、期限が切れる2週間前の9月5日の段階になっても、「その先どうなるか未定」としか発表されない、というのは困ったことだと思います。中国では、常に、こういった規則や規定が時間的余裕なく突然に決まったり変更したりすることが多いので、中国で経済活動を行う企業は、常にそうった「リスク」を頭に入れなければならないのです。これは一種の「チャイナ・リスク」のひとつであり、外国企業による中国投資にとってはマイナス要因のひとつなのですが、中国側はこういったことをあまり「マイナスだ」とは考えていないようです。本来ならば、9月20日まで、という期間限定の約束で始めた偶数・奇数規制は、ちゃんと9月20日に終了すべきなのが本来の姿だと思います。

 昨日、パラリンピックが始まったばかりで、少なくとも9月20日までは「スペシャル期間」が続きますが、それが終わった後、「オリンピック・パラリンピックのスペシャル期間」の最中にいろいろと我慢をしてきた人たちが活動を再開しますので、あちこちでいろんな意見が出てきそうです。ここのところ株価も不動産価格も低迷状態が続いているので、特に経済活動の中心を担っている「お金持ち層」の不満は結構溜まっていると思います。車の偶数・奇数制限をどうするかの判断も、そういった「お金持ち層」の不満と、「お金持ちでない層」の多くの市民の希望との間で、政府にとっては、ひとつの試金石的な判断になると思います。

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2008年9月 2日 (火)

華国鋒氏の葬儀に関する報道

 このブログの8月22日付け記事で、8月20日になくなった華国鋒氏が死去したニュースの報道の仕方が簡潔過ぎる(元中国共産党主席・元国務院総理であったことを明記せず「かつて党と国家の重要な指導的職務に就いていた」としか書かれていなかった)ことについて書きました。

(参考1)このブログの2008年8月22日付け記事
「華国鋒氏がオリンピックに沸く北京で死去」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2008/08/post_fa9c.html

 ところが、華国鋒氏の葬儀が8月31日に行われましたが、この葬儀には胡錦濤主席、江沢民前主席、ほか中国共産党政治局常務委員全員を含めた国家指導者が参列し、そのことは翌9月1日付けの「人民日報」の1面トップで伝えられました。

(参考2)「人民日報」2008年9月1日付け1面トップ記事
「華国鋒同志、北京において荼毘(だび)に付される」
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2008-09/01/content_93899.htm

※この「人民日報」の記事では、胡錦濤主席と江沢民前主席の写真が同じ大きさで掲載されています。これはオリンピック開会式・閉会式の時の席順にも示されていたように、江沢民氏が公職を引退した後の現在でも大きな力を持っていることを示している、と日本での多くの報道が指摘しています。

 また、この日の「人民日報」4面では「華国鋒同志の生涯」と題して、革命運動における活躍から始まって「四人組」逮捕の際の詳細ないきさつ、周恩来総理死去の後、国務院総理になったこと、毛沢東主席死去の後「四人組」を追放した後で中国共産党主席になったことなど、経歴が事細かに紹介されています。

(参考3)「人民日報」2008年9月1日付け4面記事
「華国鋒同志の生涯」
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2008-09/01/content_93903.htm

 これらの扱いは功績ある国家指導者としての第一級の扱いです。8月20日に死去した直後での報道のされ方扱いとはえらい違いです。(参考1)のブログで華国鋒氏が「文化大革命」の継続を主張していたたために1981年6月の段階で中国共産党主席の座から退いた、即ち、華国鋒氏は現在の改革開放路線とは異なる立場を取った人であるので、そのことにより、「人民日報」などでは華国鋒氏の経歴について詳細な報道がなされなかったのだ、という趣旨のことを書きました。ところが、葬儀の段階での報道を見ると、実はそうではなく、死去した時がたまたま北京オリンピックの最中であり、故人の業績を偲ぶというような雰囲気ではなかったことから、簡潔な報道しかしなかったのだ、という事情が伺えます。

 ただ、「オリンピックの最中なので重要な国家指導者の死去のニュースを簡潔に済ませた」というのは亡くなった方に対しては失礼な気もします。北京オリンピックはそれだけ中国にとって大事なイベントだったということなのでしょう。

 上記の人民日報の「華国鋒同志の生涯」の記事(もともとは新華社電です)は、「華国鋒同志は永遠に不滅です!」という文章で締めくくられています。これは毛沢東主席が亡くなった時に出された「全党・全軍・全国各民族人民に告ぐる書」の「毛沢東同志は永遠に不滅です」という締めくくりの表現と同じであり、最大級の賛辞です。これだけ最大級の賛辞を送るのだったら、いくらオリンピック期間中とは言え、亡くなった時の「人民日報」の報道でも、もう少し業績について記述してもよかったのになぁ、と思いました。

 もしかすると、亡くなった時の「人民日報」の報道の仕方があまりに簡潔に過ぎたため、党内の一部から「四人組の追放に功績があり、改革開放路線への道を開いた人に対して失礼だ」との声が挙がったため、お葬式の方の報道では大きな賛辞が送られたのかもしれません。華国鋒氏の業績の扱い方について、党内にいろいろな考え方の人が存在し、いろいろな論争があった、そのために死去した直後と葬儀の後では扱いがかなり異なる結果となった、と考えるのは「うがち過ぎ」でしょうか。

 華国鋒氏の葬儀の報道については、いつもは独自の記事で読者を楽しませてくれる「新京報」「京華時報」も新華社電の文章をそのまま掲載しており、華国鋒氏の業績については、独自の評価は敢えて書いていません。各新聞が自由な立場で華国鋒氏の業績について論じる、というのはやはりなかなか難しいのでしょうか。

 なお、華国鋒氏の葬儀が8月31日に行われたのは、8月24日まではオリンピックが開催中であり、8月25日~30日は胡錦濤主席が韓国やタジキスタン等への訪問のため北京にいなかったから、という事情があるためと思われます。その意味では、この葬儀のスケジューリングは、北京オリンピックや胡錦濤主席の外国訪問よりはプライオリティは低かったことを表しています。私はそれはそれで妥当なことだと思います。華国鋒氏は既に過去の人であり、その業績は評価すべきですが、華国鋒氏の死去により、現在行われている様々な政治日程を変更してまで葬儀等を行う必要はないと思うからです。

 いずれにしても、華国鋒氏の業績が無視されずに、きちんと評価されたことに、私は一種の安堵感を覚えています。現在の政権は過去の歴史を消し去るようなことはしないことを表しているからです。これからも、いいことも、悪いことも、過去の歴史は客観的に評価する視点を維持して欲しいと思います。

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2008年8月31日 (日)

「素晴らしい青空が残った」ならいいなぁ

 昨日(8月30日)、東京から北京に戻りました。北京空港は、パラリンピック選手団の入国ラッシュで、各国の選手団でごった返していました。北京の街中でも、車イスに乗った外国人を見掛けます。パラリンピック選手村も昨日開村したそうです。

(参考)「新京報」2008年8月31日付け記事
「パラリンピック村、開村」
http://www.thebeijingnews.com/news/olympic/2008/08-31/011@072719.htm

 今日(8月31日)の北京は、抜けるような素晴らしい青空です。オリンピック閉会式翌日の8月25日は、午前中から大気汚染が戻ってきた感じで、「オリンピックが終わったらやっぱり元に戻るのか」とがっかりしたのですが、先週は後半に雨が降ったこともあり、「北京秋天」の名の通り、素晴らしい青空が戻ってきました。閉会式翌日の汚染は、私は、雨を降らせないように打ち込んだ「消雨ロケット」でばらまいたヨウ化銀が大気中を漂って汚染状態を引き起こしたのではないかと疑っています(開会式の翌日も大気汚染の状態は悪かったですから)。私は個人的には、自然をコントロールしようとする中国の考え方には、あんまり賛成しません。

 オリンピックは終わったけれども、今度はパラリンピックが始まるので、まだ「お祭り気分」は続いているようです。街のボランティア・ステーションも活動を続けています。ボランティアは、今までと同じように青いユニフォームを着ているのですが、よく見ると、オリンピックとパラリンピックではユニフォームのデザインがちょっと違います。オリンピックのボランティアが着ているユニフォームは、青を基調にして、肩のところにちょっと黄色と赤が入ったデザインなのでしたが、パラリンピックのボランティアのユニフォームは基調となっている青のほかは黄色や赤のアクセントが入っていません。染め抜きになっているマークも当然違っています。よく見ると街に掲げられている看板もオリンピック用のものからパラリンピック用のものに取り替えられています。パラリンピックが終わるまでは、北京の街は「特別イベント・モード」が続きそうです。

 ただ、パラリンピックの場合は、「国の威信を掛けてメダルを取る」といった「ギスギスした感じ」がないことと、まさかパラリンピックを狙ったテロなどは起きないだろう、といった安心感があることで、多くの人がリラックスして、やさしい気持ちで臨むことができるのではないかと思っています。

 今日の北京の青空は、北京市民に「オリンピックとパラリンピックで、やはり何かが変わったのだ」という実感を与えたと思います。逆に、パラリンピックが終わった後に大気汚染が戻ってきたら、「やればできるのだから、青空を返せ」と思うようになると思います。

 今のところ、オリンピックをきっかけにかなりオープンになったインターネット規制はオリンピック期間中の状態を維持し続けています(一時アクセス可能になったBBCホームページ中国語版の中にある掲示板は、オリンピック期間中にアクセス禁止になり、禁止の状態が今でも続いていますが)。そういったこともあり、現在の時点では、「オリンピック前とは変わった」という雰囲気は続いています。パラリンピックが終わっても、この状態が続いて、「オリンピックとパラリンピックは、北京に青空を残した」というふうになればいいなぁ、と思っています。

 なお、昨日(8月30日)の成田-北京便の飛行機もかなり空席が多く、乗客の占有率は5割~6割程度でした。日本側の不景気のせいなのか、中国国内の経済活動が不活発になっているからなのか、燃料費の高騰で観光客が減ったからなのか、原因はよくわかりません。「青空を残すこと」と「経済活動を依然と同じように活発なまま維持すること」を同時に達成するのは難しい課題です。「オリンピック、パラリンピック後の中国」を見るためには、まだしばらく状況を見守る必要がありそうです。

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2008年8月28日 (木)

日中航空便の空席状況

 北京オリンピック閉会式のあった翌日(8月25日)、私は北京から関西空港経由で羽田まで移動しました。北京・成田便が満席で予約が取れなかったからです。北京空港からは、オリンピック関係者や報道陣などが大量に帰国したと思われますので、それも私が予約を取れなかったのも無理からぬことだと思いました(日本の選手団は、8月25日、別途チャーター便で北京空港から羽田は帰ったそうです)。

 ところが、北京発関西空港行きの私が乗った便は、予想に反してガラガラでした。私は当初通路側の席だったのですが、窓際の席に誰も来なかったので、窓際の席に座りました。客室乗務員は「今日は半分もお客さんが入らないので、窓際に座っていただいても結構です」と言っていましたが、見た感じ、半分どころか2割程度しか乗っていない感じでした。

 関西空港便が人気がないからなのか、多くの観光客やビジネスマンがオリンピック閉会式の翌日は混雑するだろうと避けたために逆にお客が少なかったからなのか、理由はよくわかりません。オリンピックとパラリンピックが行われる期間中、北京では国際会議の開催が禁止されています。通常なら初秋の北京は1年のうちで一番気候がよい季節なので、いろんな国際会議が開かれるのですが、今年はそういう国際会議がなくて、北京を出入りするお客が少ないことが、ガラガラの理由かもしれません。燃料サーチャージが高くなっているのも大きな原因のひとつだと思います。「とにもかくにもオリンピックの成功が最優先」という政策を取ったために、オリンピックは大成功でしたが、オリンピック以外の活動はほとんど停止状態だった、というのが、2008年8月の北京の状況だと思います。

 日中間の航空便でお客が少ないのは、中国を巡る経済活動が全体的に停滞しているからかもしれません。しかし、それが単にオリンピック・パラリンピック期間中だからビジネス上の出張も控えているためなのか、不況により経済活動全体が低迷しているからなのか、はよくわかりません。オリンピックとパラリンピックで、様々な規制が掛けられていますので、本来の経済の姿が目に見えるようになるのは、やはりパラリンピックが終わってからになるのでしょう。

 現在、世界経済全体が変調を来していますので、ここで中国経済が大きく動くことは、世界全体にとってマイナスです。中国経済には、今後とも、安定的な成長が続き、安定成長の中で格差が是正されるような方向での経済運営が図られることを望みたいと思います。

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