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2024年1月27日 (土)

具体的な経済対応策が見えない習近平政権

 先週(2024年1月20日)のこのブログで、「人民日報」が連日「金融」に関する評論を掲載していることを書きました。先週このブログを書いた後も、「人民日報」では下記のような「金融」に関する評論文が連日掲載されました。

☆1月21日付け「人民日報」1面右側「金融の高レベルの対外開放を推進しよう~習近平総書記の省部クラス幹部研究会における重要講話の学習貫徹を論ずる~」

☆1月21日付け「人民日報」1面右側の二番目「新時代の金融政策の新しい局面を絶え間なく切り開こう~省部クラス幹部に対する金融の質の高い発展に関する研究会に学んだ人たちは習近平総書記の重要講話を深く学習した~」

☆1月22日付け「人民日報」1面右側「中国の特色のある金融文化を積極的に育成しよう~習近平総書記の省部クラス幹部研究会における重要講話の学習貫徹を論ずる~」

☆1月22日付け「人民日報」1面右側二番目「強国の建設と民族の復興という偉業のためにさらに金融の力量を貢献させよう~省部クラス幹部に対する金融の質の高い発展に関する研究会に学んだ人たちは習近平総書記の重要講話の共通認識を集め、力量を集約させた~」

☆1月22日付け「人民日報」1面右側三番目「金融政策の機能をいかに活用し、その効能を向上させるか(政策問答:2024年の中国経済をどのように進めていくのか)

☆1月23日付け「人民日報」1面右側「自信を固いものにし、このやり方を使っていけば、歩めば歩むほど道は広くなる(習近平総書記の省部クラス幹部研究会開会式での講話を細かく観察する)

☆1月23日付け「人民日報」1面右側二番目「新しい時代の金融の答案を書き写す~省部クラス幹部に対する金融の質の高い発展に関する研究会傍聴記~」

☆1月23日付け「人民日報」2面「金融の高い品質の発展の新しい章を書き起こす~習近平総書記の省部クラス幹部研究会開会式における重要講話は確信を強化し方向性を明確にした~」

☆1月24日付け「人民日報」1面下「金融の品質の高い発展をもって強国建設と民族の復興という偉業の助けとしよう」

☆1月25日付け「人民日報」6面「中国人民銀行が示した~経済運行のために良好な貨幣金融環境を創造する(権威発布)」

☆1月27日付け「人民日報」1面トップ「マクロ政策が質の高い発展のための有力な支えとなる」

 これだけ連日の「金融政策は重要だキャンペーン」が何のために行われたのか私にはよくわかりません。「人民日報」で様々な論評が数多く掲載されるのは結構なことですが、この一週間、伝えられた具体的な金融に関する政策は以下の通りです。

○1月24日、中国人民銀行は預金準備率を0.5%引き下げて2月5日から適用すると発表した。同時に地方と小規模企業向け再貸出金利と再割引金利を1月25日から0.25ポイント引き下げることも発表した。

 これとは別に、1月23日、ブルームバーグが低迷する中国の株式市場の救済策として、国有企業が本土外に持つ口座にある2兆元(約40兆円)を原資として株価の安定化基金を設置することを検討していると報じました。これらを受けて、この一週間、上海と香港の株価は急速に持ち直しました。

 こういった動きについて、世界の経済関係者はどう見ているのかなぁ、と私は感じています。

 私の感想は「連日、『人民日報』で大々的な金融に対するキャンペーンをやっているのに対し、具体的に出てきた政策は『預金準備率の引き下げ』という『いつもと同じ対策』だった(0.5%の引き下げ幅は『いつも』よりは大幅だったようですが)」「国有企業の資金を使って株価を下支えするというのは、露骨なPKO(Price Keeping Operation)であり、株価下落に対して何の根本対策にもなっていない」「こんなやり方では『中国政府は経済低迷に対して効果的な手段を打つつもりはありません』と内外に向けて宣伝しているようなものだ」というものです。

 もうすぐ春節(今年の旧暦元旦は2月10日)ですので、おそらくはこのまま春節の大型連休に突入していくのでしょう。1月29日(月)に行われる予定の香港の裁判所における恒大集団の清算審理がどのような結論を出すのか、それが中国経済にどのようなインパクトを与えるのかは私にはわかりません。ただ、上に書いた一連の動きを見ていると、これからも「人民日報等で『金融政策は大事だ』というキャンペーンが大々的に展開されたとしても、効果的な大きな具体策は出てこないだろう」ということが想像されます。経済の低迷に対して中国政府は具体的な対応策を出さないだろう、という見通しそのものが中国経済に対する不安を増長させるのではないか、と私は心配しています。

 もしかすると、これから金融に関する大物が反腐敗闘争の一環として摘発される、といった事態が起こるのかもしれませんが、そういった話は、政治的には意味があるのかもしれませんが、低迷する中国経済をプラスに持って行く、という観点では何の効果もありません。「習近平氏はそもそも低迷する中国経済を何とか上向かせようという意思があるのか」という根本的な部分に疑問を持つ人が中国の内外で増えて行くのではないかと私は考えています。

 最近、中国中央電視台夜7時のニュース「新聞聯播」では「3820戦略」に関するシリーズ報道をやりました。習近平氏が福建省福州市の党書記だった1990年代前半、習近平氏が「3年後、8年後、20年後を見据えて戦略を立てよ」と指導して、その結果福州市は発展した、という「報道」で、習近平氏の若い頃の功績を讃えるものでした。私は1980年代から断続的に「新聞聯播」を見ていますが、こういう「個人崇拝」を宣伝するような報道の仕方は習近平氏より前にはなかったことです(そもそも毛沢東時代の反省の上に立ってトウ小平氏は個人崇拝の傾向を強く否定していた)。

 「中国中央電視台では習近平氏に対する個人崇拝を煽るテレビニュースが流れ」「人民日報には空虚な(中身のない)金融に関する論文が大量に掲載され」「経済低迷に対する具体的で効果的な政策は全く出てこない」という三点セットを見せつけられると、ハッキリ言って私は「中国はこれで大丈夫だろうか」と感じてしまいます。「中国の人たちはどう感じているのかなぁ」というのが、現在のところ私が最も心配しているホンネです。

 

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