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2023年12月 2日 (土)

中国の不動産危機を巡る様々なニュース

 中国の不動産を巡る危機的状況については様々報道されていますが、最近日本経済新聞に掲載されたいくつかの記事をピックアップすると以下の通りです。

○2023年11月25日付け日本経済新聞朝刊16面記事

「中国投資会社が債務超過 中植企業集団、最大5.4兆円 不動産不況響く 信託商品焦げ付きか」

 中国の民営複合企業である中植企業集団が11月23日までに負債が資産を上回る債務超過に陥っていることを明らかにした、という報道です。中植企業集団の傘下の企業が投資家から預かった資金を不動産等で運用する信託商品と呼ばれる金融商品を販売していたが、不動産投資からの資金回収が難しくなり、一部の信託商品が償還停止となって、投資家が抗議行動を行う事態となっている、という話です。

 この件に関しては、公安当局が中植企業集団の系列会社の複数の関係者を違法行為の疑いで拘束した、といった続報も報じられています(12月1日付け日本経済新聞朝刊10面記事「中国企業トップ 音信不通相次ぐ 中植問題で逮捕・拘束か」)。

○2023年11月25日付け日本経済新聞夕刊3面記事

「中国不動産の万科 2段階格下げ」

 アメリカの格付け会社ムーディーズが11月24日に中国不動産大手の万科企業の格付けを「投資適格級」の下限となる「Baa3」に2段階格下げした、という報道です。

 万科については、11月6日に筆頭株主の深セン市地鉄集団(万科の株主の27.18%を保有する)から100億元を超える支援を受ける見通しだと発表されたのですが(このブログの2023年11月11日付け記事「中国共産党直轄による金融政策はうまくいくのか」参照)、ムーディーズはそれを踏まえても「格下げ」の判断をしたようです。

○2023年11月30日付け日本経済新聞朝刊17面記事

「中国恒大を子会社提訴 銀行が強制執行の資産 補填求める」

 経営再建中の不動産大手の中国恒大集団の傘下にある恒大物業集団が、11月28日、銀行に差し押さえられた資産について親会社の恒大集団に補填を求める訴訟を起こした、という報道です。

 系列企業内部での訴訟という恒大集団内部の「泥仕合」ぶりを象徴するようなニュースです。

○2023年11月30日付け日本経済新聞朝刊17面記事

「外貨建て債務再編案 中国奥園集団 債権者から承認」

 不動産開発の中国奥園集団は、11月29日、外貨建て債務の再編案について債権者から承認を受けた、と発表した、という報道です。

○2023年12月1日付け日本経済新聞朝刊10面記事

「米ドル債の償還延長同意 万達集団の債権者」

 不動産を含めた複合企業である万達集団は、2024年1月に満期を迎える6億ドルの米ドル債について、11月21日に最大11か月の償還延長を要請していたが、債権者が延長に同意したことが11月30日に香港取引場に届け出た文書でわかった、という報道です。

 最後の二つは、「とりあえず目先の借金の返済については待ってもらうことになってよかったね」ということですが、単に「解決が先送りになっただけ」であって、資金繰りが苦しいという状況は何も解決していません。

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 「お隣の国の話」なので、日本経済新聞では「この程度」しか報道されていませんが、テンセント網・房産チャンネルを見ていると、日本では報道されないような様々な不動産関連のニュースが連日中国では報じられています。例えば、江蘇省蘇州市で土地開発会社が製鉄所の跡地を買い取って住宅や小学校・幼稚園を建設したところ、後になって土壌から汚染物質が見つかり、土地開発会社が製鉄会社や蘇州市を相手取って約2,000億円の損害賠償訴訟を起こした、といった話とか、河南省鄭州市で買ったマンションが爛尾楼(建設工事が途中で止まったマンション)になり住宅ローンの返済に苦しんでいる話をネットで公開して資金的支援を募った夫婦が「違法な資金集めだ」として逮捕された事件とか、いろいろです。こういった「ひどい話」を連日聞かされている中国の人たちの多くが「今、マンションを買うのはやめておこう」と考えるようになっているのは、むしろ当然のことだと思います。

 買ったマンションが爛尾楼になってしまったが、住宅ローンの支払いは始まっているので、それに加えて今まで住んでいた賃貸住宅の家賃も払い続けるわけにもいかないので、電気や水道も通っていない未完成の爛尾楼に住み着いてしまった、といった人たちの苦労については、日本でも2021年10月にNHK-BS1で「BS1スペシャル『廃墟になったマイホーム~中国『鬼城』住民の闘い」として放送されました。こうした「やむを得ず爛尾楼に住み着いた人たち」の悲惨な状況については、中国国内でも数多くがSNS上にアップされているようです。

 今日(2023年12月2日)私がテンセント網・房産チャンネルで見た動画でも、こうした買ったマンションが爛尾楼になってしまった人々の現状をレポートするものがありました。この動画では、民間研究機関が発表した爛尾楼となっているマンションの建設面積から2022年の時点で中国全土で231万戸が爛尾楼となっていると推算していました。この動画では、「土地を売った(地方政府の)責任、マンションを完成させる(開発業者の)責任、開発業者に資金を融資した(銀行の)責任」が果たされていない、マンション開発業者や銀行は破産していないのに、マンションを買った普通の個人が「家は完成しない」「住宅ローンは支払う義務を負わされている」という意味で実質的に破産状態に突き落とされているのはおかしいと主張していました。

 あんまり地方政府等を直接的に批判するのははばかれるからか、こうした解説の途中にテレビドラマ「三国演義」の中に出てきた劉備玄徳が「私はいまだかつてこのような厚顔無恥の人に会ったことはない!」と怒っている場面が挿入されていました。

 検閲削除されてしまうような「直接的な政府批判」はありませんが、こうした一連の動画を見ていると、「地方政府が安い補償金で農民から農地を収用して、その土地使用権をマンション開発業者に売り渡して地方政府が巨額の財政収入を得ている。マンション開発業者に対しては国有銀行が資金を融資している。」という中国の経済成長を強力に推進してきた土地財政のシステム自体に対して多くの中国人民が「そんなのおかしい」と考えるようになってきていることは明らかです。こうした動画が削除されずにいるところを見ると、中国当局も、この種の動画の全てを検閲削除することはもはやできない、と考えているように見えます。

 とは言え、地方政府幹部(=中国共産党地方幹部)が自らの権限をもって農地の収用とその土地使用権の開発業者への販売を行い、自らの政治的影響力を使ってその地域の国有銀行から開発業者への融資を促し、その結果得られた財政収入によってその地方のGDPアップを図っている、という土地財政システムは、中国共産党がその権力基盤を使って強力に経済成長を促進するための大きな原動力のひとつです。その意味で、現在の中国の不動産危機は、中国共産党の権力と経済の融合に関わる基本システムと中国の人々の不満との正面衝突が社会現象として表面化しているものだと言えます。だから私は今の中国の不動産危機は中国共産党の危機だと考えているのです。

 日々報じられるマンションに関する様々なニュースの中で、中国の人々の中ではマンション開発企業に対する不信感が高まっています。人々はマンション購入に非常に慎重になっていますから、今後は、今までのようなペースでマンションが建設され販売され続けることはないでしょう。それは、関連産業も含めると中国のGDPの約三割を占めると言われているマンション関連産業が今までのペースに戻ることはない、ということを意味します。習近平政権は今後「マンション建設に頼らない中国経済」を構築しなければなりませんが、どうやってそうした経済政策の大きな方向転換を図ることができるのか、中国経済はおそらく十年単位の厳しい状況を続けることになるだろうと思います。

 中国不動産企業の中で最も危機的状況にある恒大集団について、債権者からの清算申し立てを受けて審理を続けてきた香港の裁判所は、12月4日に次回の審理を開きます。前回の10月の審理で、裁判所は次回(12月4日)の審理で具体的な再建計画の修正案を提示できなければ清算命令を出す可能性があるとしていました。今日(2023年12月2日)11:15配信のロイター通信は「中国恒大が債務再編で新提案 株式交換、清算回避狙う」と報じています。この新提案について、香港の裁判所がどう受け止め、12月4日の審理でどういう判断が示されるのかが注目されます。

 中国の不動産危機については、日々、様々なニュースが飛び交いますので、これからも私たちはそれらのニュースを注意深くチェックしていく必要があると思います。

 

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