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2018年7月 7日 (土)

中国共産党下の中国経済と「公正な貿易」との関係

 昨日(2018年7月6日)、アメリカと中国は一部の品目についてお互いに「制裁関税」を発動し、ついに懸念されていた「貿易戦争」が始まってしまいました。特に私は中国側が「アメリカ産大豆」を制裁関税の対象にしていることを非常に懸念しています。例えば「ハーレーダビッドソンのオートバイ」とか「バーボン・ウィスキー」とかであれば「『いかにもアメリカ』と言える品目だけど、貿易量全体からみればそれほど大きくない言わば『見せ玉』的なもの」だと言えますが、アメリカ産大豆だと、実際の貿易量はかなり大きく、一般の中国人の日々の食生活に直接影響する品目ですので、もはや実体経済への影響や社会的影響は無視できない段階に入ったと言わざるを得ないからです。

 アメリカのトランプ大統領は「知的財産権や貿易における中国による不公正な行為」を非難していますが、中国共産党に管理されている中国のビジネス行為が自由経済主義を原則とする現在の世界経済の中で「異質なもの」であること、言い方を変えれば「不公正」と言われてもしかたのない部分があることは避けられません。1978年の中国による改革開放の開始以来、世界は「中国共産党の管理下にある」という中国経済の特異な点には目をつぶって中国経済が世界経済の中に参入することを認め、2001年にはWTO(世界貿易機関)に加わることも承認してきたのです。これは世界が、初期においては中国の安い労働力を使うことによって、次の段階では中国を巨大なマーケットとして利用することによって世界経済全体にとってプラスになるのだから「中国共産党の管理下にある」という「異質な部分」には目をつぶりプラスの面を享受しよう、と考えたからでした。労働コストが上昇し、技術的にも他国と対等に競合できるレベルにまで発展した現在の中国経済に対して、中国共産党の管理下にあることをもって今更「不公正である」と称して拒否しようとする立場は、中国側から見れば「あまりに身勝手だ」と思えるでしょう。

 1989年6月の「六四天安門事件」の後、西側諸国は中国に経済制裁を掛けましたが、同年12月には、早くも日本が制裁解除の方向性を見せ、経済協力再開への動きを見せました。私は、「中国政府は六四天安門事件で中国共産党政権に反対する動きに対しては自国民に銃口を見せるような政権なのだから、そうした国を世界経済の『仲間』として引き入れちゃダメでしょう」と思っており、こうした日本の動きには反対でした。2001年、WTO(世界貿易機構)は、江沢民政権下の中国の加入を認めましたが、この時も私は「中国は中国共産党による支配をやめる方向性には全く動いておらず、WTOが求める自由貿易主義に向かう可能性はないのだから、この段階で中国をWTOに加盟させるべきではない。」と思っていました。中国の政権の性質が全く変わらないのに(変わる可能性を全く示さないのに)世界各国が世界経済の中に中国が参加することを段階的に認めて行ったのは、自由経済主義に基づきべきだという原則よりも中国の労働力と市場を活用したいという世界各国の側の欲望の方が強かったからにほかなりません。

 今、トランプ大統領は「中国の不公正な行為」をただすために貿易戦争を仕掛けましたが、中国が「(自由経済の基準から見た)不公正な行為」を完全にやめるためには、中国共産党による経済支配をやめなければなりません。これは現時点ではあり得ない話です。なのであれば、知的財産権や貿易赤字の点で問題があるのならば、関税引き上げ合戦をするのではなく、問題になっている各点を一つ一つ交渉して、必要に応じてアメリカが世界各国と協調して中国と対峙して解決していくしか方法はないはずです。

 今回、中国がアメリカ産大豆も含めて制裁関税合戦に対応していますが、これは「中国国内に食料品価格の上昇による社会不安が起きてもアメリカとの貿易戦争は戦う」という中国側の意思表示だと見るべきです。

 トランプ大統領は、関税引き上げ合戦という誤った手段を採ったために、「中国経済を中国共産党の管理下から解放する」という世界経済が望んでいた最終目的地を返って遠のかせてしまったと私は思います。第一に、今、世界各国のみならずアメリカ国内の経済界すらトランプ大統領のやり方を批判しており、中国政府(=中国共産党)は国際世論を味方に付けてしまったからです。第二に、今後、中国が経済政策のコントロールに失敗し、中国経済バブルの崩壊から世界経済危機が起こったとしても、中国に「これは中国共産党の経済政策の失敗ではない。トランプ大統領が貿易戦争を仕掛けたからだ。」という言い訳を与えることになるからです。

 残念ながら「第一次世界大戦におけるサラエボの銃弾」「日中戦争における盧溝橋での銃弾」は発射されてしまいました。関係国がこの「一発目の銃弾という切っ掛け」をエスカレートさせないで、早期に事態を収拾させる方向に動くことを祈るのみです。

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