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2018年2月 3日 (土)

中国の金融・経済の取り締まりと「黒社会排除闘争」

 去年(2017年)10月の中国共産党大会以降、減速するのではないかと思われていた中国経済は意外にハイレベルのスピード感を維持していますが、それと同時に、最近、従来から課題だった金融・経済に関する取り締まり強化とそれに呼応した是正効果がニュースになるようになりました。いくつかをピックアップすると以下のとおりです。

○中国の地方政府における財政収入やGDP統計の「水増し」の「自白」

 2017年1月に遼寧省が財政収入を、2018年1月には内モンゴル自治区が財政収入を、同じく2018年1月には天津市が域内総生産(GDP)を「水増し」していたことを認めました(参考:2018年2月2日付け日本経済新聞朝刊2面記事「中国、地方『自白』の打算 経済統計の修正相次ぐ」)

○中国銀行業監督管理委員会が不良債権の「飛ばし」を行ったとして上海浦東発展銀行に対し罰金を科した

 2018年1月25日に放送されたテレビ東京「Newsモーニング・サテライト」の「中国NowCast」のコーナーによると、中国銀行業監督管理委員会は、上海浦東発展銀行成都支店が実体のないペーパーカンパニーを1,493社設立し、約1兆3,400億円の不正な融資を行っていた、として、上海浦東発展銀行に対して約80億円の罰金を科した、とのことです。

○2017年末以降、「理財商品」の債務不履行が続いている。

 2018年2月1日付日本経済新聞朝刊10面記事「『理財商品』債務不履行続く 中国、投融資先が焦げ付き」によると、2017年末以降、少なくとも5社、50億円(900億円弱)の理財商品で元本の償還が遅れたり、約束した配当が払えなくなったりしている、とのことです。最近、当局が「理財商品」に対する規制を強めており、元本保証を禁じたことも影響している、とこの記事では指摘しています。

 これらのニュースを聞いて「やっぱり中国の経済はアヤシイ」と感じる人も多いと思いますが、別の見方をすれば、今まで表に出ていなかったことが表に出されてそれらに対する措置が採られていることは前向きに評価すべきなのでしょう。

 これらのニュースは、私は全て日本での報道で知りました。毎日見ている「人民日報」ホームページ上の様々な経済関連ニュースの中では気付かなかった点はちょっと気になります。情報としては、中国国内でも流れているはずですが、少なくとも公式メディアでは「大きなニュース」としては取り上げられていないのではないか、そうだとすると中国の人々の間でもあまりこれらの問題について認識が高まっていないのではないか、という点は心配になります。

 一方、私は、これらの動きは2018年1月25日付け「人民日報」1面トップに掲載されていた「中国共産党中央と国務院による黒社会(反社会的勢力)の排除に特化した闘争に関する通知」に示された方針と政権の政策として一貫しているのではないかと思っています。「黒社会の排除に特化した闘争に関する通知」とは、日本で言えば暴力団のような反社会的勢力の一掃を徹底させるための通知なのですが、この中では明確に「反腐敗闘争」と「反社会的勢力の排除」を結合させ、党や政府の末端が反社会的勢力の「保護傘」になっているような状態を徹底的に排除すべきことが指摘されています。

 最近、日本では「平成」が来年(2019年)終わることが決まったことから、「平成バブル」の頃の状態について「実はあの頃はこうだった」といった回顧記事をよく見かけます。それらを読むと、日本の平成バブルの背後では、暴力団等の反社会勢力がかなりの程度うごめいていたことがわかります。当時、土地価格の高騰を背景にして、嫌がる地主から無理矢理土地を買い取る「地上げ屋」が横行していましたが、その背後には金融機関と反社会的勢力のつながりもあったようです。日本における「バブルからの回復」は、一般の経済活動を反社会的勢力から完全に切り離すための「闘争」の道のりだった、ということも言えそうです。

 それから類推すると、今、中国経済ではあちこちでバブル的状況が起きていますが、その背景には銀行や地方政府が黒社会の勢力と結び付いている状況もあるのではないかと思います。それを考えると、習近平政権による「反腐敗闘争」と「黒社会排除」と「金融や経済における規制・監督の強化」とは一連の動きとして繋がっていると捉えることも可能だと思います。

 「黒社会排除」については反対する人は誰もいないと思うので、「反腐敗闘争」と「金融・経済の取り締まり」と「黒社会排除」とを一体化することによって、習近平氏は一般人民からの支持を得ながら自分に反対する勢力を排除しようとしているのだ、と考えることも可能ですが、それが中国経済の健全化のためになるのだとしたら、あながち悪い話ではないと思います。

 ただし、重慶市党書記として「黒社会との闘争」に努力したとされる薄煕来が「反腐敗闘争」の中で失脚したことを考えると、中国国内における権力闘争と「黒社会との闘争」との関係が実際はどうなっているのかについては外からはよくわからない点には注意する必要があると思います。

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