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2017年7月22日 (土)

全国金融工作会議と中国の金融を巡る現在の状況

 先週(2017年7月14~15日)、習近平国家主席が出席して全国金融工作会議が開かれました。全国金融工作会議は、1997年から5年に一度、中国共産党大会を前にして開催されています。報道によると、昨年秋にも開かれる予定だった、という話もあるようですが、今回は党大会にかなり接近した時点で開かれました(前回の2012年の全国金融工作会議は1月に開かれている)。

 この会議で、前々から問題になっていた政府の金融関係の規制組織(証券、銀行、保険を監督する委員会がそれぞれ存在する)の縦割り問題を解決するため、国務院に金融安定発展委員会(中国語では「金融穏定発展委員会」)を設置することが決まりました。私は、現在ある証券、銀行、保険を監督する3つの委員会を廃止して「金融安定発展委員会」を新たに作るのかと思ったのですが、どうも従来の証券、銀行、保険の監督委員会はそのままにして、それらを調整する委員会を上に作る、という話のようです。「屋上屋」のような組織を作って、それでうまく機能するのかなぁ、と心配になります。

 それはともかく、この会議で、習近平主席は、以下のように発言し、地方政府の債務問題に対処する決意を示しました。

○金融は国家の重要な核心的競争力であり、金融安全は国家安全の重要な構成部分である。

○システミック金融リスクの発生を防止することは、金融行政の永遠のテーマである。

○国有企業のレバレッジ率の低下は重要な課題の中でも重要なものであり、「ゾンビ企業」の処理をうまく進めなければならない。

○各レベルの地方の党委員会と地方政府は、「政治上の成績」に対する正しい見方を確立し、地方政府債務が増えることを抑制しなければならない。地方政府幹部は(任期が終わったら終わりではなく)終身にわたって業務を調査され責任を問われる。

 これらの発言は、地方の党幹部と地方政府幹部が自らの「政治上の成績」(中国語では「政績」)を上げるために、リスクを顧みず、借金をしてプロジェクトを行うとともに、失業者を出すことを恐れて赤字を垂れ流す「ゾンビ企業」を借金をして生き長らえさせていることが、地方政府の債務を拡大している、という問題点を習近平主席自らちゃんと認識していることを意味しています。

 昨年末(2016年12月)の「中央経済工作会議」の主要議題の一つは「不動産バブルのリスクの防止」でした(このブログの2016年12月18日付け記事「中国不動産バブルに関する中央経済工作会議の議論」参照)。また、今年の全人代の主要なテーマの一つも「金融リスクの防止」でした(このブログの2017年2月11日付け記事「『金融リスクの防止』は2017年の中国のキーワード」参照)。中国共産党中央も金融安全を重視して対応を議論してきました(このブログの2017年4月29日付け記事「中国共産党政治局で金融安全について議論」参照)。

 しかしながら、現実問題として、スピードは鈍ったとは言え、マンション建設への投資は続いており、高速鉄道や地下鉄等のインフラ投資は高度なレベルを維持しています。全人代で議論された今年(2017年)の経済成長率の目標は「6.5%前後」でしたが、2017年第一四半期と第二四半期の経済成長率はともに6.9%でした。たぶんこれは、中国政府が年初に想定していたものより「スピードが出すぎている」のだと思います。おそらく中国政府の現在の状況は「問題の所在は認識しているが、必ずしもその問題にうまく対処できていない(適切な程度にブレーキを掛けることができていない)」といったところだと思います。

 先々週(2017年7月8日)このブログで「またぞろ『中国の理財商品は大丈夫なのか』という話」という記事を書きました。その中に出てくる「人民日報」ホームページの「財経」のページの中にある「人民信金融」のページにある理財商品のリストのうち「定期」というジャンルのものは、先々週、このブログを書いた時に募集されていたものが売り切れた後は、新しい理財商品は掲載されていません。私みたいな者が「党の機関紙たる人民日報という権威ある公的機関のホームページ内に『理財商品』を宣伝・販売するサイトがあっていいのかなぁ」と思うくらいですから、中国内部でも問題になっているのかもしれません。もしかすると、中国共産党中央は、直属の「人民日報」の内部すら適切にブレーキを掛けることができていないのかもしれません。

 また、私は、最近、中国の巨大企業を巡る動きになんだかよくわからないものが出てきているのが気になっています。一つが、「敵対的買収」の騒動を起こされた不動産最大手・万科集団の件です(「週刊東洋経済」最新号(2017年7月29日号)の中国動態「万科の王石薫事長去る 勝者なき買収戦の結末」参照)。もう一つは、中国当局から銀行に信用リスクを調べるよう指示が出されたため借入金返済のためホテルとテーマパークの大半を売却すると発表した大連万達集団(ワンダ・グループ)の件です(2017年7月21日(金)放送・テレビ東京「Newsモーニング・サテライト」の「中国NowCast」のコーナーなどで報道された)。

 これらの動きは、中国当局が巨大企業が行うリスクの高い買収等に対して監督を強化していることを示しているのであり、政府としての健全な対応だ、と見ることもできるでしょうし、今回の一連の当局の動きにより、今まで自由奔放に活動してきた不動産関連企業(及びそこに融資してきた銀行群)が慎重になって、不動産市況に変化が出る切っ掛けになるかもしれない、と見ることもできるのかもしれません。私は新聞やテレビ、雑誌で見る報道以上のことは知りませんが、上に書いた企業は、いずれも北京駐在時に見掛けた大きなビル上に看板が掲げられているような私でも知っている有名な大きな会社なので、今、中国で何かが変わりつつあるのかなぁ、と感じてしまうのでした。

 それと、昨日(2017年7月21日)、ネット上のニュースで「中国人民銀行が7月17~21日の週、定例の公開市場操作(オペ)を通じて5,100億元の資金を市場に供給したが、この規模は1月16~20日の週以来の大きさだった」というのが流れたのも私はちょっと気になっています。1月16~20日は春節直前の時期で、この時期、各企業は従業員に「春節手当(日本の年末ボーナスに相当)を支払わなければならないし、春節前に売掛金の回収をしようと思う企業も多いと思うので、この時期に中国人民銀行が市場に供給する資金の額が膨れあがるのは不自然ではありません。でも、今の時期(7月後半)は、なんで市場への資金供給を大きくする必要があるのかなぁ、というのが私の疑問です。もしかすると、8月上旬の「北戴河会議」、その後の中国共産党大会開催日程の公表、そして秋の中国共産党大会開催へ向けて、各企業が行っているプロジェクトの進捗や従業員への給与の支払いが滞らないように、という政治的な意図の下で中央銀行による市場への資金供給が増やされているのかなぁ、などと勘ぐったりしています。

 いずれにせよ、経済の動きが、経済の自然な流れではなく「秋の中国共産党大会が終わるまで、経済に変調を来してはならない」という政治的意図によってコントロールされているのだとしたら、よくないと思います。

 また、もし仮に中国の人々の多くが「今のマンション建設投資やインフラ建設投資は中国共産党大会前後がピークで、その後は減少する可能性がある」と思っているのだとすると、この秋(中国共産党大会の開催時期)の前に償還期限が来る「理財商品」なら買いたいと思うが、償還期限がこの秋の向こう側(年末ないし来年初以降)になっている「理財商品」は買うのはやめておこう、と思うのではないか、ということが私は気になっています。今、もし仮に、過去の理財商品の利子支払いが新規で理財商品を買う人が払い込む資金でまかなわれるいわゆる「自転車操業」状態になっているのだとしたら、こうした人々の「理財商品」購入の行動パターンは「自転車操業状態」を破綻させてしまうおそれがあるのではないか、と思うからです(中国人民銀行による資金供給の増大が「理財商品の償還請求に対処するため」という理由ではないと信じたいところです。もしそれが理由ならば「バブルの崩壊」が始まっていることを意味しますから)。

 今年も「北戴河会議」(通常、8月第一週に開催)の時期になりましたが、これから実際に中国共産党大会が開催され、終了していく過程で、中国経済がどういうパフォーマンスを示していくのか、かなり注意深く見ていく必要があると思います。

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