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2017年5月 6日 (土)

中国のマンション市場に「状況変化」の気配

 人民日報ホームページ「人民網」の「財経チャンネル」では、メーデー連休期間中のマンション販売動向に関するいくつかの記事が載っていました。例えば以下の二つです。

○2017年5月2日アップ:経済参考報の記事「四つの制限がメーデー連休期間中のマンション市場を二分化:大都市(第一線都市)は様子見、中小都市(二、三線級都市)は依然としてホットなまま」

○2017年5月3日アップ:人民日報海外版の記事「マンション市場の『冷熱』局面が静かに逆転 『悪循環』の打破が招くもの」

 記事末の「編集責任者」の欄に同一人物の名前が載っているので、これらは同じ系統の記事だと思います。

 これらの記事では、概ね以下のような点を報じています。

○マンション・バブルを防ぐための政策(「購入制限」「住宅ローンに対する制限」「価格制限」「販売量の制限」の「四限」)により、メーデー連休期間は北京のマンション市場にとっては冷めた連休期間となった。

○中国のマンション市場は「両高」:即ち、一方で大都市(一二線都市)ではマンション価格が高い一方、中小都市(三四線都市)ではマンションの在庫レベルが高い、という状況だった。しかし、今年のメーデー連休期間は、この「氷と火」の局面に逆転現象が起きている。

○例えば、北京やアモイでは様子見状態(中国語で「観望」)になりマンション成約が減った一方、鄭州では寝袋を持ってマンション販売に並ぶ行列が連夜見られた。

○あるデータによれば、2017年第一四半期、大都市(一線都市)の新築マンション成約数は対前年同期比16.3%減少したのに対し、小都市(三線都市)では35.84%増加した。価格については、3月17日にマンション販売規制が強化された北京では、18か月間で初めて下落したのに対し、3月のマンション価格は(中小都市である)広東省清遠では18.28%上昇し、福建省ショウ州(「ショウ」はさんずいに「章」)では15.76%上昇した。

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 このように、現在の中国では、マンション市場が過熱した地域では政策的な制限が掛けられて熱が冷めつつある一方、在庫が多い中小都市では販売の過熱と価格の上昇が同時に起きているようです(この記事では、例として、江蘇省の南京都市圏にある鎮江では、まだマンション政策が相対的に緩やかであるため、多くの専門家が鎮江地区のマンション価格は今後上昇すると見ていることを紹介しています。北京に二回、合計四年以上駐在していた私ですら名前を聞いたこともない小さな都市のマンション価格が急上昇している、という現状は、やはり「大丈夫かなぁ」と思わせますね)。

 このような状況について、北京科技大学管理学院経済貿易系の何維達主任は、各地方ごとの状況に応じた対応政策について、「一つの都市ごとに一つの政策といった『対症療法的服薬』が必要である」と述べています。

 一方、あるアナリストは、「引き締め」と「緩和」を繰り返す周期的な政策の変化は短期的な応急手段に過ぎず、マンション市場の周期的な「悪循環」から抜け出すためには、真に長期的に効果のある規制が必要である、と述べています。これに関して、何維達主任は、「長期的に効果のある規制」とは何かあるひとつの政策を指すのではなく、全国的な不動産情報ネットワークの確立や金融政策・財政税制政策の総合利用を含む一連の系統的な政策群である、と述べています。

 記事の最後では、「例えば、固定資産税のような科学的な徴税によって投機のためのコストを収益よりも大きくすることによって、マンションを『(投機のためのものではなく)真に住むためのもの』に回帰させなければならない」と述べています。

 この最後の文章に見られるように、記事は極めて冷静で「まとも」なのですが、3月の「全人代」では「固定資産税(マンション保有税)」については議論されませんでした。「全人代」で票決を行う「全国人民代表」は「全国の人民の代表」ではなく、その多くがマンション所有者で、マンション保有税には反対だと思われるので、たぶん何年待っても「マンション保有税」はできないと思います。なので、いくら経済学者や「人民日報」の記者が「まともな」議論を展開しても、中国のマンション市場の問題を解決する政策はいつまで待っても出てこないと思います。

 中国のマンション・バブルの問題を考える時、「最も有効な手段はわかっているが、その有効な手段は講じられることはない」という現状を改めて認識する必要があると思います。

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 上に書いたように、この記事では、このメーデー連休期間中、北京やアモイでは「様子見状態」(中国語で「観望」)になっている、と指摘されています。私が「観望」という単語を知ったのは、2007年の北京駐在時のマンション・バブルの時期でした(このブログの2007年12月22日付け記事「中国の不動産ブームはピークを越えたのか?」参照)。

 2007年の頃も「今の中国のマンション市場はバブルではないのか?」と言われていました(2007年12月頃に一度ピークを打ってその後価格は下がったが、ほどなく上昇に転じ、「バブル的状況」は現在に至るまで続いている)。2007年の頃と今(2017年)の違いは以下のとおりです。

○2007年前後のマンション価格のピークは、党大会(2007年10月)後の2007年12月頃だったが、今(2017年)は、秋に開かれる予定の党大会の半年前の時点で既に一部の地域でピークを打つ兆候が出ている。

○2007年のマンション市場の過熱は北京や上海などの大都市に関するものであり、中小都市(三四線都市)ではマンション建設は問題とはなっていなかった。一方、2017年は、大都市(一二線都市)と中小都市(三四線都市)の両方で、事情が異なる中、マンション市場が過熱化しており、マーケット状況は非常に複雑化している。

○2007年の時点では、翌2008年に北京オリンピック、2010年に上海万博を控えており、マンション以外にも投資先がたくさんあった。一方、人民元には先高感があり、外国から中国への資金流入圧力が強かった。2017年は、鉄鋼業・石炭産業等において過剰生産設備が問題となっているなど、中国国内の有望な投資先は少ない。2017年は、人民元には先安感があり、中国から外国への資金流出圧力が強いが、急激な人民元安と資金の海外流出を防ぐため、当局が資金流出規制を強力に実施しており、行き先のない資金がマンションや株などの市場に滞留している。

(注)中国共産党が先に打ち出した河北省の新副都心「雄安新区」のプロジェクトは、10年前にあった北京オリンピックや上海万博のような「投資案件」を作り出そうとする意図が背景にあると思われます。実際、上記に紹介した記事では、「雄安新区」設置の発表後、充電した携帯電話の電池パックを1日で2個使い切ってしまったという河北省の不動産業者の話を紹介しています。

○(この点が最も重要)2008年の北京オリンピック終了の後にはバブルがはじけるのではないかという懸念があったが、たまたまこの時期にアメリカで発生したリーマン・ショックによる世界的経済危機対応のため、中国政府は2008年11月に四兆元の大規模経済対策を打ち出したため、2007年前後の「バブル的状況」ははじけることなく「先送り」となった。しかし、2017年は、おそらく2008年にあったような「バブル的状況を先送りすることを許す状況」は起きないだろうと思われる。

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 上に述べたように、10年前の中国共産党大会があった2007年頃の「バブル的状況」と比較して、今年(2017年)の中国共産党大会を前にしての「バブル的状況」の危険性は格段に大きいと言えます。今日(2017年5月6日(土))付け日本経済新聞朝刊の1面トップ記事は「中国バブル再び 資本規制、マネー氾濫 上海住宅・年収の20倍超 最盛期の東京上回る」でした。おそらく日本経済新聞社の方々も「中国バブルの危険性」について、相当に危機感を持っているのでしょう。

 明日(2017年5月7日)、フランス大統領選挙の決戦投票がありますが、今年2017年は今までいろいろありましたが、やはり世界経済の最大のリスク要因は、フランス大統領選挙でも、トランプ大統領でも北朝鮮問題でもなく、「中国経済のバブルがどうなるか」なのかもしれません。目先の不安要素に右往左往することなく、もう一度中国のバブルの状況をチェックしよう、というのが、おそらくは今日の日経新聞1面トップ記事の意図なのだと思います。

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