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2017年5月13日 (土)

「一帯一路国際フォーラム」の後に来るもの

 明日(2017年5月14日)から二日間、北京で「一帯一路国際フォーラム」が開催されます。28か国から首脳級が参加する他、日本を含め代表団を派遣する国は130か国を越えているようです。

 経済力が大きくなった中国が「陸と海のシルクロードの復活」という概念の下、中央アジアや東南アジアのインフラ投資に協力し、これらの地域の経済発展を図る、という発想は悪くはないですし、特に中央アジア諸国については、旧ソ連崩壊後、ロシアの支援が弱くなっていますから、中央アジア諸国の経済発展を支援することは、間接的に貧困から来るイスラム過激派の勢力拡大を食い止めることになり、中国自身の安全保障上プラスになるだけでなく、世界にとってもよいことだと思います。

 一方で、旧ソ連の崩壊で中央アジアの面倒まで見られなくなったロシアや混迷するヨーロッパ、「自国第一主義」になってしまったアメリカを尻目にして、国際社会の中で発言力を強化しようという中国の意図がミエミエなのは気になります。1970年代、80年代にトウ小平氏が「中国は絶対に超大国にはならない」と何回も繰り返していたことをよく覚えている私としては「話が違うんじゃないの?」という気分にもなります。

 それにしても習近平氏は「世界各国から首脳を招いて行う巨大国際イベント」が相当にお好きなようですね。2008年の北京オリンピックや2010年の上海万博のようなものが当面ないので、無理して自分で作っているように見えます。2014年11月には「APEC首脳会議」を北京で、2015年9月には「抗ファシスト勝利70周年記念軍事パレード」を北京で、2016年9月には「G20首脳会議」を杭州で開いたのに引き続いての今回の「一帯一路国際フォーラム」です。これまでの「国際イベント」と同じように、ここ数日、「人民日報」や中国中央電視台夜7時のニュース「新聞聯播」では、「一帯一路国際フォーラム」自体とフォーラムに参加するために中国を訪問している各国要人と習近平氏との会談の様子を連日大々的に報じています。

 ニュースを見ていていて感じるのは、これまでの「APEC首脳会議」「抗ファシスト勝利70周年記念軍事パレード」「G20首脳会議」と比べて、李克強氏と各国首脳との会談の様子なども結構多く報じられているなぁ、という点です(去年9月の「G20首脳会議」の時は李克強氏はニュースに全く登場しなかった)。秋の党大会を前にして、習近平氏と李克強氏の間では一定の手打ち(合意)ができているのかもしれません(例えば、李克強氏は国務院総理を退き全人代常務委員会委員長になるが、李克強氏と同じ中国共産主義青年団出身の胡春華氏(現・広東省党書記)を政治局常務委員にすることで、習近平氏と李克強氏は既に「手を握っている」とか)。

 もし今回の「一帯一路国際フォーラム」が習近平氏のリーダーシップを示すと同時に、習近平氏と李克強氏が「お互いに協力して今後とも仲良く中国の政権運営を担当していきますよ」ということを内外に示す場となるのだったら、それはそれでハッピーなことなのかもしれません。

 ただ、ちょっと気になるのは、中国経済の現状です。中国の不動産バブルが相当危機的状況になってきていることは、累次このブログでも書いてきたところです。それに加えて私が気になっているのは以下の点です。

○上海株式市場の上海総合指数のグラフを見ると、4月上旬、河北省に建設される新副都心「雄安新区」プロジェクトの発表を機に急騰した上海の株価が、「投機的な動きは許さない」という当局の姿勢を受けて急落に転じ、日々のグラフを見る限り「相当に危なっかしい格好」をしていること。ここ数日は、大きく下げそうになると「まるで誰かが買い支えているかのように」下げ幅を縮めたり、前日比わずかに上昇して引けたりしており、「一帯一路フォーラム」を前にして、「国家隊」(政府系ファンド等)による買い支えが行われているのではないかと思われること(もしそうなら「一帯一路フォーラム」が終わって「買い支え」がなくなると株価はさらに下落する可能性がある)。

○海外への資金流出圧力は弱まっていないと思われるにも係わらず、今年(2017年)2月~4月の中国の外貨準備はわずかに増加し「3兆ドル」という心理的節目を前にして「わざとらしいくらい」減少がストップしていること。これは政治的な意図により経済的な状況を無視して資金の中国外への送金を強制的に抑制していることが原因である可能性がある。もし資金の外国への送金を無理に規制しているなら、国際的企業の中国でのビジネス活動にブレーキを掛けてしまうことになる(今日(2017年5月13日(土))付け日本経済新聞夕刊1面の記事によると、麻生財務大臣はイタリアで開かれているG7財務相・中央銀行総裁会合でIMFに対して中国の資本規制への監視を強めるよう要請したとのことです。麻生財務大臣のこうした要請の背景には、中国当局の国外への送金規制に困惑する日本企業の怨嗟の声があるのだと思います)。

○需要の面で中国が世界最大の割合を占めている鉄鋼の原料(鉄鉱石と原料炭)や銅の価格がここへ来て急落している(つまり中国の需要が減っている(または投資家が中国の需要は今後減るという見通しを立てている))こと。(参考:日本経済新聞5月10日(水)付朝刊22面「銅の国際価格5%安 直近高値比 中国の需要減観測で」、5月13日(土)付朝刊24面「製鉄原料が一段安 豪の供給トラブル解消」

 これらの状況は、「中国経済はこれまで不動産やインフラ投資で景気が下支えされてきたが、中国当局が投資の過熱で経済がバブル化することを懸念してブレーキを掛け始めたため現実の景気は減速傾向にある。一方、直近の『一帯一路フォーラム』と秋に開かれる党大会を前にして中国当局が『意図的な株価の下支え』と『人民元安阻止と外貨準備減少阻止の同時実現のための資金の国外流出に対する強制的な規制』を強めている。」ことを表している可能性があります。今のところまではなんとか「もたせる」ことができていますが、このような「株価の下支え」や「強制的な資本規制」を秋の共産党大会まで続けることは相当に難しいのではないかと思われます。

 これらの懸念は、上記に日経新聞の記事をいくつか紹介しことでもわかるとおり、単に「私が気になっている」のではなく、日本経済新聞も同様の懸念を持っているようです。「日本経済新聞の懸念」を示す典型的な記事が昨日(2017年5月12日(金))の夕刊5面に並んで掲載されていました。ひとつは「アジア・ラウンドアップ」にあった「上海株、監督強化に揺れる」(NQN香港:柘植康文氏)とその下の「十字路」の欄にあった「日本のバブルと中国のバブル」(中前国際研究所代表中前忠氏)です。

 今、足元では上海株が連日「年初来安値」を続ける一方、香港ハンセン指数は「年初来高値」を続けています。本来、上海と香港の株式市場は両方とも同じように中国の景気動向を反映するならば株価も同じような動きをするはずですが、今は、上海と香港で株価が全く逆の動きをしているのです。この点について、上記の「上海株、監督強化に揺れる」の記事の中では、「当局の規制が及びにくい香港市場に資金を移す投資家は増えているようで、上海からの香港株の買越額は増加している。」と指摘されています。「日本経済新聞の懸念」と書きましたが、もしかすると中国人投資家自身も同じような懸念を持っているのかもしれません。

 「日本経済新聞の懸念」即ち「市場動向を無視した政治的意図による無理な『下支え』の継続は難しく、2017年後半は、秋の党大会というビッグ・イベント前後を切っ掛けとして中国経済が大きく後退する」という懸念は、かなり広く共有されているのかもしれません。今日(2017年5月13日(土))付け日経新聞朝刊7面の日本の企業の決算の状況を伝える記事においては「企業、中国景気に懸念」という見出しが付いていました。

 報道によれば、「一帯一路フォーラム」に参加する日本の代表団のヘッドである自民党の二階幹事長は、明日(5月14日(日))、習近平主席と会談できるよう最終調整の段階にある、とのことです。二階幹事長は、安倍総理の親書を携えて行っているようですし、会談できれば日中関係にとってよいことだと思います。冒頭に書いたように中国が「一帯一路国際フォーラム」を成功裡に開催すること自体は悪い話ではないと思います。ただ、中国が「一帯一路国際フォーラム」というイベントをうまく成功させるために、無理をして株式市場を支えており、無理を承知で資本規制で外貨準備を減らさずに人民元安を防いでいるのだとしたら、後から来る「市場からのしっぺ返し」には警戒しておく必要があると思います。特にこうした「無理」を秋の党大会まで続けることは非常に難しいと思うので、「無理がたたった市場からのしっぺ返し」が党大会の前に発生して、党大会へ向けて中国が政治的に混乱する、というようなことにはなって欲しくないと思います。

 私の場合、ちょうど10年前には北京に駐在していたので、どうしても「10年前(2007年)と今(2017年)を比較した話」が多くなります。今、一番重要なのは、2008年にアメリカ発のリーマン・ショックで世界経済が危機に陥った時、中国は四兆元の大型経済対策で世界経済を救いましたが、もし2017年に中国発の世界経済危機が発生したとしても、アメリカには世界経済を救う力はない(というか「アメリカだけよければ」の発想で世界経済を救うつもりはない)だろうということです。もっとも、それよりも最悪なのは「中国経済がコケる前にアメリカのトランプ大統領がコケること」ですが、それだけはぜひとも避けて欲しいと思います。

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