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2017年4月22日 (土)

李克強総理のテレビ登場が減ったと思っていたら

 今日(2017年4月22日(土))の「人民日報」1面トップ記事は、習近平主席が広西チワン族自治区を視察した時の様子を伝えるものでした。昨日(4月21日(金))の中国中央電視台の夜7時のニュース「新聞聯播」のトップ・ニュースも同じネタでした。中国では、国家指導者が地方を視察し、地元住民と言葉を交わす様子が「人民日報」に掲載されたり、テレビ・ニュースで報道されたりすることは、しょっちゅうあることですが、そこでちょっと気になったのは、中国共産党ナンバー2の李克強総理の地方視察のニュースを最近見てないなぁ、ということでした。

 中国共産党政治局常務委員(現在は7人)の日々の動向の記録は、「中国共産党新聞」のホームページの「高層動態」というところに載っているので、そこでチェックできます。そこには「会議への出席」「重要講話」「視察」「外国要人との会談」などの項目が載っています。そこで李克強総理のところをチェックしたら、李克強氏の前回の地方視察は、今年1月の雲南省、その前は去年10月のアモイ、その前は去年8月の江西省、その前は去年7月の湖北省武漢でした。一方、習近平主席は、前回は今年2月の北京(北京市南方の新空港建設現場への視察)、その前は今年1月の河北省張家口(2022年の冬のオリンピック・パラリンピック準備状況の視察)、その前は去年8月の青海省、その前は去年7月の河北省唐山でした。

 回数からすると、李克強氏、習近平氏ともにそれほど違いはないのですが、李克強氏の去年10月のアモイ訪問は、何かのセレモニーのついでの視察したので、「純粋な地方視察」ではなかったのと、今年に入ってからは習近平氏の方の地方視察ばかりが続いたので、私は「最近は、地方視察は習近平主席ばかりで、李克強総理の地方視察はあまり見ていないなぁ」という印象を持ってしまったようです。

 それに、これまでは李克強総理の「指定席」のようになっていた毎年冬にスイスで開かれるダボス会議(世界経済フォーラム)には今年は習近平主席が出席したし、毎年3月に海南島で開かれるボアオ・アジア・フォーラムには今年は張高麗副総理が出席したので、李克強総理の出番が減ったなぁ、という印象を私は持ったのでした。

 李克強総理は、3月の全人代では、政府活動報告や内外記者会見をこなしたし、3月にはオーストラリア・ニュージーランド訪問をやっていますし、原則毎週やっている国務院常務委員会を主宰していますので、テレビに登場しなくなったわけではないのですが、私には、李克強氏は、なんとなく「中国共産党ナンバー2」ではなく、「習近平氏ではない政治局常務委員の一人」になってしまったように感じられるようになりました。

 もう一つ言えば、毎年恒例の「植樹イベント」に李克強氏が参加しなかったことが気になっていました。「新聞聯播」では、毎年3月下旬頃に、政治局常務委員全員が北京の郊外で青少年ボランティアと一緒に植樹するという「緑化推進イベント」のニュースを放映します。毎年この季節恒例のイベントで、単に「春になりましたねぇ」という以上のニュース価値はないと思うのですが、今年の「植樹イベント」では、李克強氏だけが欠席だったので、私は「なんか変だなぁ」と思ったのでした。李克強氏は、このときオーストラリア・ニュージーランド訪問中だったので、「植樹イベント」に欠席でも何の不思議もなかったのですが、もしこの「植樹イベント」に「いろいろ派閥争いはあるが、政治局常務委員は全員仲良く仕事をしていますよ」というメッセージを中国の全国人民に伝える意味があるのだとしたら、政治局常務委員全員が参加できる日に設定すべきだったと思います。なのに「植樹イベント」をわざわざ李克強氏が参加できない日に設定したことは、それなりの「意図」があったのだろうなぁ、と私は思ったのでした。

 私が2007年4月~2009年7月に北京に駐在していた頃は、当時の胡錦濤主席と温家宝総理は、だいたい同じくらいの頻度でテレビに登場していた記憶があるし、この二人は常に非常によいコミュニケーションを取っていて、協調して政権運営に当たっていた、という印象を私は持っていました。それに比べると、今の習近平主席・李克強総理の政権では、テレビのニュースを見ていると、だんだんに、習近平主席の比重は大きく、李克強総理の比重は小さくなってきているなぁ、というのが私の印象です。

 と、ここまで書いてきて、今、今日(4月22日(土))の「新聞聯播」を見ていたら(日本でも「スカパー!」で見られます)、トップは広西チュワン族自治区訪問中の習近平氏がこの地区に展開する軍の部隊を訪問するニュースでしたが、二番目のニュースは李克強総理が山東省を視察しているニュースでした。この二人はまたまた全く同時期に全く別の地方を視察したようです。上に書いたように、去年8月にも、習近平氏が青海省に、李克強氏が江西省に全く同じ時期に視察したことがあり、地方視察においても、「張り合う二人」の状況は変わっていないようです(胡錦濤・温家宝時代は、四川省大地震対応などの特殊な事情がある場合を除いては、二人が同時に北京を空けて地方を視察するということはありませんでした)。

 先日、「選挙」で香港行政長官に「選出」された林鄭月娥氏が北京に来た時も、習近平主席と李克強総理は別々に林鄭氏と会っており、二人の両方ともが「北京行政府のトップは私だ」と思っている状況は変わっていないようです。

 もっとも、習近平主席の広西チワン族自治区訪問については、昨日のニュースでは国家主席としての視察、今日のニュースでは中国共産党軍事委員会主席としての視察のニュースだったのに対し、李克強氏の山東省訪問についてのニュースはたぶん今日だけだと思うので、二人の間に「ニュースに登場する時間の差」は既に明らかについていると思います(ちなみに、今日(4月22日(土))の放送では、習近平氏のニュースが約6分間、李克強氏のニュースが約3分間でしたので、今の時点では既に「軍配」は習近平氏の方に上がっているようです)。

 もし、現時点で、「来年3月の全人代での李克強氏の国務院総理からの降板(おそらくは全人代常務委員会委員長(=名誉職的意味があるが行政権限としては国務院総理よりは影響力を行使できない)への転出)が「既に決まった路線」であるならば、李克強氏のテレビ・ニュースへの出方はもっと減っていると思うので、現時点では、実際、まだ決まっていないのかもしれません。だとすると、秋の党大会本番まで、まだ「揉める」可能性もあるわけで、中国の政治情勢はまだ目が離せないようです(李克強氏が来年(2018年)以降も国務院総理を続けるかどうかの「結論」については、たぶん引退した幹部らも参加する8月の「北戴河会議」が最後の「ヤマ場」になるのでしょう)。

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