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2017年4月29日 (土)

中国共産党政治局で金融安全について議論

 中国共産党中央は4月25日(火)に政治局会議を開きましたが、同じ日に開催された「集団学習会」において、金融安全を維持するための政策についての議論も行われました。中国共産党中央は、政治局会議を開催してなにがしかの決定を行った同じ日に、「集団学習会」を開いて、特定の政策トピックに関して議論することがよくあります(というか、それが通例)。取り上げた政策トピックについて、政治局員どうしで認識共有を図る、という意味もあるのでしょうが、議論されたことを報道することによって、現在、党中央がどういう政策トピックについて関心を持って議論しているかを全国人民に知らせる、という意味もあると思います。

 その意味で「金融安全を維持するための政策」が議論され、そのことがテレビや「人民日報」で報道されたことは重要だと思います。中国共産党中央が国内に対し「党中央は金融リスクに対して十分に議論しており、必要があれば適切な政策を採る用意がある」とのメッセージを出した、と考えられるからです(実際、この報道を受けて、株に関する管理監督が強化されるのではないか、との懸念から、一時、上海総合指数が下げる場面がありました)。

 この「集団学習会」においては、中国人民銀行総裁、中国銀行業監督管理委員会主席、中国証券監督管理委員会主席及び中国保険監督管理委員会主席が報告を行い、議論が行われました。

 「人民日報」の4月26日付けの記事によれば、この「集団学習会」で習近平総書記は以下のように述べた、とのことです。

○2012年の第18回党大会以来、我々は繰り返し金融リスクをコントロールすることに重要な位置付けを与えることを強調し、システミック・リスクを発生させないという最低限のラインを断固として守り、一連の金融監督管理強化の措置を採り、金融リスクを防ぎ・緩和させ、金融の安全と安定を維持し、発展の大勢を維持しなければならない、と強調してきた。

○総体的に見て、我が国の金融状況は良好であり、金融リスクはコントロール可能である。同時に、国際経済・国内経済において下押し圧力要素が存在するという総合的な影響の下、我が国の金融の発展は、少なからずリスクと挑戦に直面している。経済のグローバル化がさらに深化し発展している今日、国外に影響を与える金融危機が突発するという国際金融リスクは依然として小さくない。ひとつの国の貨幣政策・財政政策の調整が外国に影響を与えるリスクとなり、我が国の金融安全に対して外部からの衝撃を与えることになる可能性もある。金融リスクが存在するという点について、我々はしっかりと認識し、リスクに備える意識を強めなければならない。

 ここの部分については、今、アメリカFRBが利上げを続けようとしており(量的緩和で拡大したFRB資産の縮小についても議論が始められており)、量的金融緩和を続けるヨーロッパ中央銀行においても資産縮小の議論がそのうち始まるかもしれず、量的質的金融緩和を続ける日本銀行も(黒田総裁はいまだに「時期尚早」と言い続けているが)そのうち「出口」を議論せざるを得ない状況になるだろうという現時点において、そうした状況を中国もよくわかっており、外国の金融政策が中国に与えるインパクトに対しても中国共産党は十分備えている、と表明している点で、極めて重要だと私は思います。

 習近平総書記は、この「集団学習会」で、金融安全に関する下記の6項目の対策を指示しています。

○金融改革の深化、金融業会社のガバナンス改革など

○金融に対する管理・監督の強化

○リスク対策処置の実施(レバレッジ率のコントロール、市場における違法・規律違反行為の取り締まりの強化など)

○実体経済のための良好な金融環境の創造

○指導幹部層の金融政策能力の向上

○党による金融政策に対する指導の強化

 具体的に何をやるかはあまり明確ではないのですが、上の四つは、日本を含めた「普通の国」の金融のための政策とそれほど違うものではないと思います。一方、最後の二つは中国ならではのものだと思います。「指導幹部層の金融政策能力の向上」とは、地方政府や国有企業の幹部が金融リスクを顧みずに「ハイリスク・ハイリターン」の投資を行わないようによく勉強させることを意味しているのだと思うし、最後の「党による金融政策に対する指導の強化」は、地方政府や国有企業が党中央の意志に反して金儲けのためにハイリスクの政策運営・企業経営をやらないように党中央がしっかり監視するぞ、という意味だと思います。

 最後の2項目に関して、地方政府との関係については、習近平総書記が最後に述べた次の表現に凝縮されていると思います。

「各レベルの地方の党委員会と地方政府は、中央の決定に従って、それぞれの地区の金融の発展と安定のための政策をうまくやらなければならず、それぞれの地域に対する責任を持って、全国全体としての金融リスク防止体制を形成しなければならない。」

 要するに、各地方政府(及び地方の中国共産党幹部)は、各地方の利益のために勝手に動かないで、きちんと党中央の言うことを聞けよ、ということです。これは、逆に言えば、今、各地方が党中央の言うことを無視して勝手に動いていて困っている、という現状を表しているのだと思います。

 総論の中で習近平総書記は、外国の金融政策変更が中国に与えるインパクトについて指摘していますが、個々の項目の中に「レバレッジ率のコントロール」なども含まれていることを考えると、この日の「金融安全に関する集団学習会」開催の背景には、中国国内における経済のバブル化に対する危機意識があったことは間違いないと思います。それを考えると、今回の「集団学習会」で習近平総書記が示した「6項目の指示」は、私には、1990年3月に日本の大蔵省(当時)が出した「土地取引に関する総量規制」の行政指導がだぶって見えます。1990年3月の「土地取引に関する総量規制」の行政指導は、バブル対策だったのですけれども、後から見ると日本のバブルをはじけさせる切っ掛けであったとも言われています。

 今日(2017年4月29日(土)から、中国ではメーデーの春の連休期間に入ります。中国共産党が金融安全に対する集団学習会をメーデーの連休期間の直前というタイミングで開いたのは、金融機関や企業が休みになるのであわてて過激な反応することのないタイミングで「バブル対策をやるぞ」というメッセージを出すことにより、市場が冷静に受け止める時間を稼いだ高等戦術だった、と言えるかもしれません(たぶん、それは考え過ぎだと思いますけど)。

 いずれにせよ、秋の党大会へ向けて、いかにバブルをはじけさせることなく、やわらかくバブルの過熱を防ぐ方策を採っていくか、中国共産党にとっては、非常に微妙な舵取りを余儀なくされる難しい日々が続くと思います。

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