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2017年3月19日 (日)

中国不動産バブルと中国共産党大会のタイミング問題

 3月15日(水)、中国の今年の全人代が終わりましたが、私の印象は「今年の全人代はインパクトがないなぁ」というものでした。去年(2016年)の全人代では過剰生産設備削減問題と「ゾンビ企業」に対する対処がかなり強調されていましたが、それに対応するようなものが今年は見当たりません。全人代で採択された「政府活動報告」の中でも「ゾンビ企業の措置」という文言は一ヶ所で出てきただけでした。

 一方、私が気にしているのは、不動産バブル問題です。一昨年(2015年)12月の中央経済工作会議では、過剰な不動産在庫に対処する問題が議論されました。去年(2016年)12月の中央経済工作会議の段階では「政策の効果が上がって不動産の在庫が減った」というような報道がなされていたのですが、今回の全人代の最中になされた発表では、不動産投資は再び増え始め、不動産在庫も結局は増加傾向になっている、とのことでした。

 3月15日に「人民日報」ホームページ「人民網」の財経チャンネルにアップされた「経済参考報」の記事「不動産開発投資は再び8%以上に増加し、在庫も反転増加している」では、前日3月14日の国家統計局が発表した数字を基にして次のような内容を報じています。

○2017年1-2月の全国不動産開発投資の名目増加率が8.9%で、昨年同期より2%増加している。

○住宅施工面積は2.1%増、住宅新規工事開始面積は14.8%増、住宅竣工面積は15.3%増だった。

○中小都市(中国語で「三四線級城市」)については、在庫削減政策の効果が上がって不動産販売は明確に加速しているが、一方で、昨年は企業が続々と開発に参入し、新規に工事を開始したプロジェクトが明確に増加している。

○中原地産の首席アナリストの張大偉氏は、「住宅在庫は数ヶ月持続的に減ってきていたが、ここへ来てまた増加傾向が出てきていることに注意する必要がある」と述べている。国家統計局の数字によると、2月末現在、販売用不動産待機面積は70,555万平方メートルで、昨年末比1,015万平方メートル増であるが、そのうち住宅販売待機面積が468万平方メートル増加、オフィスビル販売待機面積が155万平方メートル増加、商業営業用不動産販売面積が260万平方メートルの増加である。

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 こういった中国の不動産市場の状況について、3月14日(火)に放送された日経CNBCの番組「夜エクスプレス」に出演していた第一生命経済研究所の嶌嶺義清氏は、次のような趣旨のことを述べていました。

「中国の一二線級都市では不動産価格が上がりすぎたために三四線級都市の不動産価格が割安に見えてしまい、『三四線級都市の価格も今後は上がるだろう』との見込みの下、新規マネーが三四線級都市に入って来ているようだ。日本のバブル期の経験を振り返ってみれば、これはバブルの末期症状だと言える。」

 中国政府は、農民工に都市戸籍を与えて三四線級都市に住まわせたいと考えているので、「頭数」の観点では三四線級都市の住宅需要は強いはずなのですが、農民工の収入と現実のマンション価格の差は明らかで農民工がマンションを買えるとはとても思えないので、現在三四線級で建設が進んでいるマンション群の多くは、例え一旦は投機を目的とする人に売れたとしても実際に住む人は現れず、結局は今までも中国各地に出現してきた「鬼城」(住んでいる人のいないマンション群)となる可能性が大きいと私は思っています。

 さらに、3月18日(土)に中国国家統計局が発表したところによれば、主要70都市のうち2月の新築住宅価格が前月比で上昇した都市が56となり、1月の45より増加した、とのことです。中国政府は住宅価格を抑制したいと考えて、住宅ローンに対する規制を掛けたりいろいろな方策を採っていますが、効果は一時的で住宅価格の上昇の圧力はまだまだ強いようです。

 おそらくは、これは中国人民が「中国共産党は秋の共産党大会まで不動産価格が下落するような局面は作りたくないはずだから、少なくとも秋まではまだ不動産価格は上がるはずだ」と考えているからだろうと思います。

 前回の中国共産党大会のあった2012年は、リーマン・ショック後の四兆元の大規模経済対策が効いていた時期なので参考にならないのですが、その前の2007年の状況を振り返ってみると、中国共産党大会があったのが2007年10月で、不動産価格がピークを打ったのは2007年12月頃でした(上海株のピークは10月だった)。10年前は2008年に北京オリンピック、2010年に上海万博を控えていた時期でしたが、今(2017年)は、そのようなビッグ・イベントは予定されていません(2022年の冬季オリンピック・パラリンピック北京大会がありますが、まだ時間的に先)。なので、私は今回は共産党大会の前に不動産価格がピークを打ってしまうのではないか、と心配しています。そうなると、社会的・政治的に不安定な状況になり、中国経済全体が今までにない変調をきたすことになる可能性があります。

 中国の不動産市場の状況は、鉄鋼需要を通じて、鉄鉱石や石炭の国際価格に影響します。また、中国不動産に投資している中華マネー(中国本土、香港、台湾、シンガポール等の資金)は日本やアメリカ・カナダ・オーストラリア・イギリス等にも投資していると思うので、中国の不動産バブルがもし崩壊すると、他の先進国の不動産市況に影響を与える可能性も懸念されます。

 「中国の不動産バブル」は10年以上前から「危ない、危ない」とウワサされているけれども「バブルが崩壊して大混乱」といった状況にはなっておらず、完全に「狼少年状態」なのですが、中国経済が世界経済の中に組み込まれている度合いは以前に比べて格段に大きくなっているので、中国の不動産を巡る状況については、今後とも十分な注意を払ってウォッチしていく必要があると思います(今まで大丈夫だったから、今年も大丈夫だろう、と安易に考えるのは危険だと思います)。

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