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2017年3月

2017年3月25日 (土)

「北京のマンションは私には買えない」との記事

 「人民日報」のホームページ「人民網」の「財経チャンネル」に3月24日付けでアップされた「中国新聞ネット」の記事として「中国銀行業監督管理委員会の元副主席が語る:北京のマンションは私には買えない」というタイトルの記事が載っていました。

 この記事では、今日(2017年3月15日)から海南島で開催中の「ボアオ・アジアフォーラム2017」に参加している中国銀行業監督管理委員会元副主席の蔡ガク生氏(「ガク」は「顎」の作りの右側に「おおざと」)の語った言葉が紹介されています。記者が尋ねた時、蔡ガク生氏は、からかったように「(マンションの)販売抑制政策をやるのもいいし、やらないのもいいが、いずれにせよ北京のマンションは私には買えない。」と語ったそうです。

 ここで言う「私には買えない」の部分は、中国語では「我買不起」です。私が持っている電子辞書によると「(動詞+)不起」は「財的・肉体的・精神的などの負担能力や資格がなくてできないこと、堪えられないことを表す。」とあります。この文脈では、普通は「北京のマンションは高すぎて私には支払う財産的余裕がないので買えない」と理解するのが正しいのだと思います。しかしながら、これを語ったのが「中国銀行業監督管理委員会元副主席」ですので、この方はある程度お金は持っていると思われる一方で、マンション市場を巡る状況については一般の人に比べて格段に熟知していると思われるので、ここの部分は「北京のマンションを巡る状況はバブル的であり、今後、北京のマンションの価格が暴落する可能性は否定できないので私には恐くて買えない」というニュアンスを感じる人もいるのだろうなぁ、と私は思っています。

 おそらく、世界から経済関係者が集まる今年の「ボアオ・アジアフォーラム」では、中国の不動産バブルの問題も参加者の関心を持って議論されるのでしょう。こういった記事がネットに出ていることを見ると、中国のマンションのバブル的状況については、中国の人々の間でも「そろそろヤバイんじゃないの?」という感覚が出始めているのではないかと思います。もっとも、バブルが恐くて市場から撤退するような「やわ」な心臓の持ち主は中国では生きていけないので、みんなが「これはバブルじゃないの?」と心配しつつも、中国の人々は最後まで買い続けるのかもしれませんけどね。

 なお、昨日(2017年3月24日(金))テレビ東京で放送された「Newsモーニング・サテライト」では、韓国の不動産バブルについて報じていました。私は、これだけ国境を越えた資本移動が自由化されている現在の世界においては、各国の不動産市場は各国の中で完全に閉じているわけではなく、もしある国で不動産バブルの崩壊が起きれば、多少なりとも他の国の不動産市場に影響を与えるだろうと考えています。例えば、中国の不動産を買っている投資家は外国の不動産も同時に買っている可能性があり、中国の不動産バブル崩壊が諸外国の不動産市場におけるそうした中国系投資家の投資行動に影響を与える可能性があるからです。韓国のマンション市場の状況は、韓国自身の政治的・経済的状況に原因がありますが、仮に世界の不動産市場が一定程度繋がっているのだとすれば、どこかの国で発生した不動産バブルの崩壊が他国に伝播する可能性は小さくないと思います。

 日本でも、需給とは関係なく相続対策で建築されたアパートがバブル化しているのではないか、などの懸念はあります。日本は平成バブルを経験しているので、多くの企業や個人は不動産取引には相当に慎重になっていますので、日本の現在の不動産市場の状況はそれほど懸念すべき状況にあるとは私は思いませんが、中国の不動産市場で大きな動揺が起きるとすれば、いろいろな経路で日本へも影響を与えることになると思うので、中国の状況は注意深くモニターしていく必要があると思っています。

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2017年3月19日 (日)

中国不動産バブルと中国共産党大会のタイミング問題

 3月15日(水)、中国の今年の全人代が終わりましたが、私の印象は「今年の全人代はインパクトがないなぁ」というものでした。去年(2016年)の全人代では過剰生産設備削減問題と「ゾンビ企業」に対する対処がかなり強調されていましたが、それに対応するようなものが今年は見当たりません。全人代で採択された「政府活動報告」の中でも「ゾンビ企業の措置」という文言は一ヶ所で出てきただけでした。

 一方、私が気にしているのは、不動産バブル問題です。一昨年(2015年)12月の中央経済工作会議では、過剰な不動産在庫に対処する問題が議論されました。去年(2016年)12月の中央経済工作会議の段階では「政策の効果が上がって不動産の在庫が減った」というような報道がなされていたのですが、今回の全人代の最中になされた発表では、不動産投資は再び増え始め、不動産在庫も結局は増加傾向になっている、とのことでした。

 3月15日に「人民日報」ホームページ「人民網」の財経チャンネルにアップされた「経済参考報」の記事「不動産開発投資は再び8%以上に増加し、在庫も反転増加している」では、前日3月14日の国家統計局が発表した数字を基にして次のような内容を報じています。

○2017年1-2月の全国不動産開発投資の名目増加率が8.9%で、昨年同期より2%増加している。

○住宅施工面積は2.1%増、住宅新規工事開始面積は14.8%増、住宅竣工面積は15.3%増だった。

○中小都市(中国語で「三四線級城市」)については、在庫削減政策の効果が上がって不動産販売は明確に加速しているが、一方で、昨年は企業が続々と開発に参入し、新規に工事を開始したプロジェクトが明確に増加している。

○中原地産の首席アナリストの張大偉氏は、「住宅在庫は数ヶ月持続的に減ってきていたが、ここへ来てまた増加傾向が出てきていることに注意する必要がある」と述べている。国家統計局の数字によると、2月末現在、販売用不動産待機面積は70,555万平方メートルで、昨年末比1,015万平方メートル増であるが、そのうち住宅販売待機面積が468万平方メートル増加、オフィスビル販売待機面積が155万平方メートル増加、商業営業用不動産販売面積が260万平方メートルの増加である。

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 こういった中国の不動産市場の状況について、3月14日(火)に放送された日経CNBCの番組「夜エクスプレス」に出演していた第一生命経済研究所の嶌嶺義清氏は、次のような趣旨のことを述べていました。

「中国の一二線級都市では不動産価格が上がりすぎたために三四線級都市の不動産価格が割安に見えてしまい、『三四線級都市の価格も今後は上がるだろう』との見込みの下、新規マネーが三四線級都市に入って来ているようだ。日本のバブル期の経験を振り返ってみれば、これはバブルの末期症状だと言える。」

 中国政府は、農民工に都市戸籍を与えて三四線級都市に住まわせたいと考えているので、「頭数」の観点では三四線級都市の住宅需要は強いはずなのですが、農民工の収入と現実のマンション価格の差は明らかで農民工がマンションを買えるとはとても思えないので、現在三四線級で建設が進んでいるマンション群の多くは、例え一旦は投機を目的とする人に売れたとしても実際に住む人は現れず、結局は今までも中国各地に出現してきた「鬼城」(住んでいる人のいないマンション群)となる可能性が大きいと私は思っています。

 さらに、3月18日(土)に中国国家統計局が発表したところによれば、主要70都市のうち2月の新築住宅価格が前月比で上昇した都市が56となり、1月の45より増加した、とのことです。中国政府は住宅価格を抑制したいと考えて、住宅ローンに対する規制を掛けたりいろいろな方策を採っていますが、効果は一時的で住宅価格の上昇の圧力はまだまだ強いようです。

 おそらくは、これは中国人民が「中国共産党は秋の共産党大会まで不動産価格が下落するような局面は作りたくないはずだから、少なくとも秋まではまだ不動産価格は上がるはずだ」と考えているからだろうと思います。

 前回の中国共産党大会のあった2012年は、リーマン・ショック後の四兆元の大規模経済対策が効いていた時期なので参考にならないのですが、その前の2007年の状況を振り返ってみると、中国共産党大会があったのが2007年10月で、不動産価格がピークを打ったのは2007年12月頃でした(上海株のピークは10月だった)。10年前は2008年に北京オリンピック、2010年に上海万博を控えていた時期でしたが、今(2017年)は、そのようなビッグ・イベントは予定されていません(2022年の冬季オリンピック・パラリンピック北京大会がありますが、まだ時間的に先)。なので、私は今回は共産党大会の前に不動産価格がピークを打ってしまうのではないか、と心配しています。そうなると、社会的・政治的に不安定な状況になり、中国経済全体が今までにない変調をきたすことになる可能性があります。

 中国の不動産市場の状況は、鉄鋼需要を通じて、鉄鉱石や石炭の国際価格に影響します。また、中国不動産に投資している中華マネー(中国本土、香港、台湾、シンガポール等の資金)は日本やアメリカ・カナダ・オーストラリア・イギリス等にも投資していると思うので、中国の不動産バブルがもし崩壊すると、他の先進国の不動産市況に影響を与える可能性も懸念されます。

 「中国の不動産バブル」は10年以上前から「危ない、危ない」とウワサされているけれども「バブルが崩壊して大混乱」といった状況にはなっておらず、完全に「狼少年状態」なのですが、中国経済が世界経済の中に組み込まれている度合いは以前に比べて格段に大きくなっているので、中国の不動産を巡る状況については、今後とも十分な注意を払ってウォッチしていく必要があると思います(今まで大丈夫だったから、今年も大丈夫だろう、と安易に考えるのは危険だと思います)。

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2017年3月11日 (土)

中国経済と法的安定性との関係の問題

 今開かれている中国の全人代(第12期全国人民代表大会第五回会議)では「民法総則(草案)」の議論がなされています。報道によると中国は2020年をメドに民法典を制定する予定で、今回の「民法総則(草案)」はそれへ向けての議論の一つのステップだと考えられています。

 そもそも中華人民共和国は革命によってそれまでの社会制度を破壊した上に建国された国ですし、建国後も例えば文化大革命の時期(1966年~1976年)など法律を無視したような政治が行われてきた時期もあったので、他の国に比べて法律の体系的整備が遅れているのはやむを得ないことだと思います。

 例えば、住宅用マンションの売買などは1990年代から行われていましたが、土地の私有が認められていない中国において、購入したマンションに関する権利(土地については土地使用権)が法的に明示的に規定されたのは、2007年の全人代で制定された「物権法」によってでした。中国の場合、実態上のビジネスがまず先行し、それに合わせるように法律を後から制定する、ということがよくあります。その一環として、複雑な経済活動が発展する中、個人の財産権等を含め、様々な民事上の権利関係を整理するため、現在、包括的な民法典の制定を目指しているのだと思います。

 翻って日本を見てみると、日本で民法が制定されたのは1896年(明治29年)でした。その後、様々な具体的ケースに関する裁判の判例も積み重なっているので、日本における民法上の権利関係は社会の中で既に安定的に確立されていると言ってよいと思います(もちろん社会の変化に応じて、日本の民法も改正がなされてきていますが)。

 毎週土曜日のお昼過ぎにNHK総合テレビで「バラエティー生活笑百科」を放送しています。「笑百科」と銘打っていますが、中身は民法上のトラブルについて回答者が回答し最後に弁護士が解説する、という番組で、法律的には結構高度なものも含まれていると私は思っています。私はこの番組を見るたびに、こうした法律知識に関する案件を「バラエティー」と称して笑って勉強できるテレビ番組があることについて、「日本はテレビ番組の作り手も視聴者の側も法律問題に関するレベルが結構高いよなぁ」と感心するのでした。

 中国で暮らしたり中国の会社と仕事をしたことのある人なら誰でもわかると思いますが、中国においては、ある案件について法律上はどう判断されるのか、人によって言うことが違ったり、地域によって違ったり、時期によって違ったりします。「中国は急速に発展している最中の社会なので、法制度もどんどん変わっていくのだ」と言えばそれまでですが、中国でビジネスをやる際にはこの「法的安定性」の問題が日本と中国とでは全然違う、という点を念頭に置く必要があります。

 日本を含め、欧米型民主主義の政治体制を採る先進国にあっては、国民や会社の権利や義務に関する規定は、全て議会で議決された法律に基づきます(アメリカの大統領令など法律に基づいて大統領(行政府)に国民の権利義務に関する決定権限を委任しているケースもありますが、それは例外的なもの)。従って、個人や会社の権利義務に関する法律が変更されるためには、法律の改正案が議会に提案され、一定の時間を掛けて議会で議論がなされる必要があります。なので、権利義務に関する法律が変更される場合には、国民は一定の時間的余裕を持ってそれを前もって知ることができるので、何らかの準備をすることが可能です。

 中国もタテマエ上は法律に基づいて行政が行われ、法律は全人代が決めるのですが、国民や会社の権利義務に関する規定の多くは行政府に決定権限が委任されているほか、重要事項は全て中国共産党が決めるので、国民生活にとって重大な事項が突然中国共産党の会議で決まったりします。

(例1)日本の場合「国民の祝日」は国会の議決を経た法律で決められますが、中国の場合は行政府の一部である国務院が決めて発表します(毎年12月に翌年の祝日を発表します)。例えば、中国では、清明節、端午節、中秋節は2009年から休日になったのですが、この決定が発表されたのは2008年12月でした。なので、私の勤めていた事務所では職場の年間休日計画は毎年年末に決めていました(中国のカレンダー業者がどうしているのかは、私は知りません)。

(例2)中国の場合「議会の審議を経ないで突然決まる」ことはよくあります。例えば、2008年の北京オリンピック期間中、交通量を減らすため、ナンバープレート末尾の偶数奇数によって市内を走れる車を制限しましたが、この措置が発表されたのは実施される二週間前でした。その期間中仕事で使う車の確保に苦労したのを覚えています(中国でビジネスをやる際には、常にこうしたリスクがあることを認識する必要があります)。

(例3)日本でも報道されたとおり、「一人っ子政策の終了」(こどもは二人目までを持つことを認める)は2015年秋の中国共産党大会で決まりました(法律上は、2015年12月27日の全人代常務委員会で決まり、2016年1月1日から施行された。日本等では重要な法律の場合、一般国民が混乱しないように一定の期間「周知期間」を置いてから施行することが多いのですが、中国の場合は「決定してすぐに施行」という例が結構あるので、この点も中国でビジネスをやる際には要注意)。

(注)中国の全人代の全体会議は年一回(最近は通常3月に行われる)ですが、多くの法律は全人代常務委員会(通常偶数月の最終週に開かれる)に決定が委任されています。全人代常務委員会で決定された法律が翌年3月の全人代全体会議の前に施行されることもあるので、この点も要注意です。

 中国のこうした法律制定と施行のやり方は、「情勢の変化に迅速に対応することが可能」というメリットもあるのですが、中国でビジネスをやる観点からは「制度が予想もしていなかったように突然変更されてしまう」というリスクもあります。中国企業の経営判断の決定スピードが速いのは、こうした中国の政策決定の特性も背景にあると私は思っています。

 中国に限らず、経済・社会が発展途上にある国においては、このように「制度が突然変わってしまう」ことは結構あります(2016年11月にインドのモディ首相が突然高額紙幣の廃止を宣言したのはその一例)。発展途上にある国においてはやむを得ない面もあるのですが、やはりビジネスの観点から言ったら「法的安定性」は重要です。中国は既に世界第二位の経済規模を誇るほど大きな国になったのですから、法律を決める際には時間的余裕をもって広く告知することや、決めてから施行するまでの「周知期間」の重要性をもっと認識するようになって欲しいと思います。それも重要なビジネス上の環境整備の一環だと私は思います。

(参考)アメリカのトランプ大統領は「大統領令」を連発していますが、こうしたやり方は、アメリカ社会の「法的安定性」に疑問符を投げかけ、長期的に見れば、多くの企業に「アメリカはいつ法制度が変わるかわからないのでビジネスがやりにくい」と思わせることになり、アメリカ経済にはマイナスになると思います。

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2017年3月 4日 (土)

全人代を経て経済政策の「調整」は進むか

 明日(2017年3月5日(日))から北京で全国人民代表大会が開かれます。毎年恒例の全人代ですが、今年は事前に経済関係の政府機関のトップの人事異動がいくつか発表され、経済政策における「人事刷新」とそれに伴う経済政策の「調整」がどの程度行われるかに対して注目が集まっています。

 「人事刷新」と言えば、今年秋に予定されている中国共産党大会で党の重要人事が刷新され、政府機関幹部の人事は来年(2018年)の全人代で決まる、というのが基本的な形ですが、今年の全人代を前にした幾人かの経済閣僚の交代は、来年決まる習近平体制第二期の政府幹部人事の「刷新」を予感させるものです。

 来年(2018年)の全人代では李克強総理と周小川中国人民銀行総裁が続投するのかどうかがポイントとなるでしょう(基本的に今年秋の党大会が終わった時点で見通しは立っているはずだと思いますが)。李克強氏と周小川氏が経済政策の前面から退くと経済政策の舵取りがどうなるか心配だ、との見方もありますが、中国には優秀な人材がたくさんいるので、習近平氏が自分に近い人物だけを任命する、といった過ちを犯さすことなく、実力のある者を適切なポストに就けることができれば、中国の経済政策が迷走することは避けられると思います。

 私がそういう印象を持ったのは、3月2日に就任後初の記者会見を行った中国銀行監督管理委員会の郭樹清主席の発言が結構ポイントを突いた鋭いものだったからです。郭樹清主席の記者会見については、「人民日報」ホームページ「人民網」の銀行チャンネルにも記事が出ていますが、その記事によると、郭樹清主席は以下のように発言しています。

「各種の金融の乱れた現象は断固として管理しなければならない。目下のところ、一部で市場をまたがった金融商品が層をなして積み重なった状態にあり、下層の資産については底が見えない、最終的に向かう方向は誰も知らない、といった状況がある。この種の現象が発生しているのは、多くの程度、監督制度が欠けていることに原因がある。これはいわば『牛小屋で猫を飼うようなもの』で、完全で健全な監督制度がなければ、銀行の業務経営は必ずや厳重なリスクにさらされることになる。」

 私は、これは中国の政府機関のトップとしては非常にハッキリとしたものいいであり、今後の改革実行に期待を持たせる発言だと思いました。郭樹清主席は、「『一行二会』及びその他の政府関係機関との間で情報共有と統一的な協調を深化させることに積極的に参加する」とも語っており、彼が中国政府の金融行政に縦割り行政の弊害があることを強く認識していることを示しています。

(注)「一行二会」とは、中国人民銀行、中国銀行業監督管理委員会、中国証券監督管理委員会のこと。さらに中国保険監督管理委員会も加えて「一行三会」ということもある。中国の金融行政が複数の部署に別れて執行されており、統一的な政策執行ができていないのではないか、という問題点は以前から指摘されている。

 そもそも中国経済は、タテマエ上は全てのプレーヤーを中国共産党がコントロールしていることになっていますが、実態的には中国共産党のグリップが強い国有企業等と中国共産党による指導に従っている(たぶん「従っているふりをしている」だけの)民間企業との混合体です(このことについて、昨日(2017年3月3日(金))付け日本経済新聞朝刊29面「経済教室」の「中国経済をどうみるか(下)純粋民営企業 世界に挑む」で学習院大学教授の渡辺真理子氏は「中国経済は一つの個体に異質な遺伝子が同居する『キメラ』である。」と表現しています)。こうした中国経済をうまく舵取りしていくためには、相当に難しい(時によってはアクロバティックな)経済政策運営が必要だと思います。その意味で、今年及び来年の全人代で固まることになる経済政策担当者の人事の刷新と具体的な経済政策の「調整」は重要です。

 一方、3月1日、台湾のホンハイ精密工業とその傘下になったシャープが出資する液晶パネルメーカーによる8K対応の高画質大型液晶パネルの工場の起工式が広州で行われました。この起工式にはホンハイの郭台銘会長や広東省党書記の胡春華氏も出席したそうです。このニュースは同日夜の中国中央電視台の7時のニュース「新聞聯播」でも報じられました。このニュースは、もはや「中国共産党の指導」の枠の外にあるプレーヤーが中国経済において重要な役割を果たしていることを端的に示したものだと言えるでしょう。

 上に書いた日経新聞の記事では、渡辺真理子教授は、アリババや華為(ホアウェイ)などの純粋民間のグローバルな中国企業が中国経済の大きな部分を占めていることを指摘しています。この点は、おそらくは現在の中国が旧ソ連とは全く異なる点で、中国の現体制の強靱さを示していますが、同時に「中国共産党によるコントロール」がどこまで効くのか、という中国の現体制の根幹に関わる問題と関係してきます。「人民日報」は今でも「中国共産党による指導」という「タテマエ」を声高に強調していますが、実態的には他の資本主義諸国と同じように法令による経済主体のコントロールの重要性は今後高まっていくと思います。もしそうだとすれば、中国においても、中国共産党大会よりも法律を決める全国人民代表大会の方が重要性が増していくことになるはずです。もしそうではなく、あくまで「中国共産党大会が最強の決定機関」であり続けるのであれば、たぶんそうした体制は徐々に中国経済の実態とはかけ離れたものになっていくことになるのでしょう。

 今年と来年の全人代は、習近平主席が自らに権力を集中させる方向での「変革」を図っていくだろう、という見方もあります。経済実態が「党による統治から法による統治への変革」を求めている中国の現状において、習近平氏が「党(=総書記である習近平氏自身)による統治」へ向かうのか、それとも「法による統治」に向かうのか、今年と来年の全人代は、今後の中国の行方を占う上で、いつにも増して重要なものになると私は思っています。

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