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2017年2月25日 (土)

中国経済の公共事業頼みはどこまで

 昨日(2017年2月24日(金))の中国中央電視台夜7時のニュース「新聞聯播」のトップ・ニュースと今日(2月25日(土))の「人民日報」の1面トップの記事は、習近平主席が北京市内で2022年の冬のオリンピックに備えて工事が進む新しい北京空港の建設現場を視察した時の様子などを伝えるものでした。私の二回目の北京駐在の途中に完成した現在使用されている北京首都空港(北京市街地の北東の郊外にある)の第三ターミナルは、ターミナル・ビルの全長が3kmにも及ぶという巨大なものだったので、最初に行った時にはその大きさに圧倒されたのですが、今、北京市街地の南郊外に建設中の新しい空港の建設現場は、テレビの画面で見てもその巨大さに驚くような規模のものでした。

 2008年の北京オリンピックを前にして完成した北京首都空港第三ターミナルは、非常に巨大なものでしたが、北京首都空港は滑走路はその時点で既に「満杯」状態で、私も北京首都空港から出発する時、飛行機の扉が閉まってから滑走路が空いて離陸するまで長時間待たされることなどしょっちゅうありました。今、東京には成田空港と羽田空港があり、上海には浦東空港(主に国際線)と虹橋空港(主に国内線)がありますが、北京には今は大型機が使える空港は北京首都空港一つしかないので、北京にもう一つ空港を建設する、というのは、中国の経済発展の状況を考えればある意味当然の話だと思います(むしろ「遅すぎた感」すらある)。

 とは言え、新しい北京空港の巨大な建設現場の様子をテレビのニュースで見て、私は、「中国ではまだまだ巨大な公共事業の工事があちこちで進んでいるのだなぁ。だとすると中国で鉄鋼の需要が強い(従って、鉄鉱石や製鉄に使う原料炭の値段が上がる)のは無理もないよなぁ。」と思ったのでした。「新聞聯播」では、同じく現在建設中の港珠澳大橋(香港とマカオをつなぐ海上の道路橋)の建設の様子も節目節目で紹介していますが、この工事も私は「とんでもない巨大公共事業」だと思います。

 1997年に完成した東京湾横断道路(東京湾アクアライン)は全長15.1kmで、私は相当巨大な公共事業だったと思うのですが、現在建設中の港珠澳大橋はトンネル部分も含めると全長55kmです。中国には、他にも2008に完成した杭州湾海上大橋(全長35.7km)、2011年に開通した青島膠州湾大橋(全長41.6km)など「巨大公共事業」はいくつもありました(なお、日本の青函トンネル(1988年開通)は全長53.9kmです)。

 そもそも公共事業には、「巨大な道路や橋を完成させることにより、その後の経済発展の基盤を作る」という意味と、「建設作業に巨額の資金を投じることにより、建設時点での経済の活性化と雇用の維持を図る」という目的とが存在します。公共事業については、経済発展効果に比べて投下される資金が膨大過ぎて「建設会社にメシを食わせるために事業をやっているのではないか」などと批判されることは、どの国でもある話です。日本でも、例えば、本州四国連絡橋は3つのルートの全てを建設する必要があるのか、といった議論もありましたし、青函トンネルも、新函館北斗まで北海道新幹線が開通したのが去年(2016年)であったことを考えれば、急いで1988年のタイミングで開通させる必要はなかったのではないか、といった議論もなされることがあります。

 こういった「公共事業を巡る議論」は、中国に限らず、どの国でもある話ですが、私の感覚では、中国では「野党による政権与党に対する批判」もないし「報道機関による政府批判」もないので、中国の公共事業においては、「完成することによる経済基盤としてのメリット」はあまり重要視されず「建設工事を進めることによる経済の活性化と雇用の創出」を主な目的とするものがかなり多いのではないかという印象を持っています。2009年前半、リーマン・ショック対応の公共事業が始まった頃、私は北京の街で、前年オリンピックのためにきれいに整備された歩道をまた掘り返して透水性舗装に変える工事をやったり、1980年代の私の前回の北京駐在の時に新築されたアパート群を2009年の時点で取り壊してまた作り直す工事をやっているところなどを目の当たりにしたので、特にそういう印象があるのかもしれません。

 今、中国政府は、今年(2017年)秋に開かれる中国共産党大会の開催までは、経済の水準を維持して、失業者を大量に発生させるようなことは絶対に避けたいと考えて、経済実態とは関係なく、大量の公共事業を行っているように見えます。経済効果をあまり生まない公共事業は、資金や資源の無駄となるばかりでなく、将来、経済発展に伴う税収増がないのに維持費ばかりかさんで、結果的に国全体の経済の重荷になる可能性をはらんでいます。また、共産党大会が終了したとたんに公共事業をやめてしまう、というようなことになるのだったら、党大会が終わる2017年秋頃から中国経済は急速に減速してしまうことになるでしょう。適切な批判と監視がない状況で進む「公共事業頼みの中国経済」は、問題を抱えたまま肥大化することになります。中国のそうした状況を理解しないで、例えば、2016年半ばから2017年に掛けて、今、中国経済には回復の兆しがあるのだ、と認識するのは危険かもしれません。

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コメント

(* ̄ー ̄*)中国も国造りの踊り場に入ってますね。
何処に向かうのか注目です。

投稿: 根保孝栄・石塚邦男 | 2017年3月11日 (土) 13時43分

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