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2017年1月14日 (土)

習近平国家主席の2017ダボス会議出席の意味

 毎年スイスのダボスで開かれる世界経済フォーラム(通称「ダボス会議」)は、今年は1月17日から開かれますが、中国からは今回は習近平主席が参加します。今までは国務院総理の李克強総理が参加していたので、今回初めて習近平主席が出席することについて、様々な憶測を呼んでいます。

 昨日(1月13(金))放送されたテレビ東京の「Newsモーニング・サテライト」の中の「中国 Now Cast」のコーナーでは、今回、習近平主席がダボス会議に出席することにした背景には次の二つがあると指摘していました。

(1)今回のダボス会議には就任直前のアメリカのトランプ新大統領は出席できないので、習近平主席が出席して自由貿易の重要性を主張することにより、世界経済における中国の存在感を世界にアピールすることができる。

(2)今年秋の中国共産党大会に向けて、中国国内向けに、習近平主席のリーダーシップをアピールする狙いがある。

 (1)については、「保護主義を掲げるアメリカのトランプ新大統領に対抗して、中国の習近平主席が自由貿易の重要性を世界にアピールする」というのは、ほとんど「あべこべの世界」のように思えますが、現状を考えれば、これは「あり」でしょうね。11日のトランプ次期大統領の記者会見の様子を見ていると、「アメリカのトランプ新大統領より中国の習近平主席の方が世界をリードしていく政治指導者として立派に見える」というのは客観的に言って事実だと思いますので。

 (2)については、テレビ東京はツィッター発信とは違って責任ある報道機関ですので、「ウラの取れないウワサの類は放送しない」という考え方に基づきハッキリは言わなかったのでしょうが、「習近平主席のリーダーシップをアピールする狙い」とは「毎年ダボス会議に出席していた李克強総理はもはや経済政策において中国を代表する人物ではありませんよ、とアピールする狙い」と言い換えても間違いないことは明らかだと思います。

 去年秋の六中全会以降、李克強総理が中国共産党の重要会議を欠席する、といったことはなくなりましたが、習近平主席と李克強総理が協調体制にない、という状況は続いています。昨年末、香港とマカオの行政長官が年末恒例の北京政府への状況報告を行いましたが、この時も、香港・マカオの行政長官は、習近平主席に報告した後、全く同じようなスタイルで李克強総理にも報告しています(その様子は中国中央テレビのニュースで伝えられました)。まるで「北京政府のトップ」が二人いるような雰囲気でした。

 一方、今中国を訪問中のベトナム共産党書記長との会談に関しては、一昨日、習近平氏が会った後、昨日には、李克強氏、張徳江氏、王岐山氏が会っています。このスケジューリングは習近平氏が他の政治局常務委員(李克強氏も含む)に比べて一段と「エライ」のだ、ということを強調しているように見えます。

(注)なお、李克強氏は国務院総理(党内序列二位)、張徳江氏は全人代常務委員長(党内序列三位)なので、ベトナム共産党書記長がこの二人に会うのは特段不自然ではないのですが、ここで序列第六位の王岐山氏が会っているのは、ちょっと「不自然」です。王岐山氏は腐敗撲滅運動の先頭に立っており、本来、この秋の党大会では年齢上は引退するはずなのですが、こういった扱いは王岐山氏が年齢に関する慣例を破って政治局常務委員として続投する「含み」があるのかもしれません。

 習近平主席は、もし自分の第二期政権(2018年の全人代(3月頃)~2023年の全人代(3月頃))まで李克強氏に国務院総理を続けてもらって経済政策を担当させるつもりならば、今年のダボス会議にも李克強氏を派遣したと思います(ダボス会議は「世界経済フォーラム」なんですから)。そうしなかった、ということは、習近平氏は自分の二期目の政権においては、李克強氏に国務院総理をやらせるつもりはない、と考えている可能性があります。というか、今回、ダボス会議に李克強氏ではなく習近平氏が参加することになったことを受けて、世界の多くの人がそう感じたと思います。

 今年(2017年)、中国経済は下記の二つの点で大きな試練を迎えます。

○アメリカにトランプ新大統領が誕生することにより、中国にとってはアメリカから厳しい貿易上の要求を突きつけられることになる可能性がある。

○今年秋の中国共産党大会を前にして、地方政府幹部が国有企業のリストラを嫌がり、むしろ公共事業を拡大することによって無理矢理経済の水準維持を図っていることから、党大会の前後にその「ツケ」が回って来る可能性がある。特に在庫が大量にあるのに建設が進められているマンション等不動産の価格は、おそらくは去年(2016年)10月~12月期がピークであり、今後は価格の低迷が進み、コントロールを誤ると不動産バブルの崩壊を招く可能性がある。

 こうした難しい経済政策が求められている中で、仮に国務院総理を李克強氏から別の人物に替えるとなると、中国は経済の難しい局面を乗り切れなくなる可能性があります。もっとも、に国務院総理が交代するとしても、今年秋の党大会での方針決定を受けて、毎年3月頃に開かれる来年(2018年)の全人代で正式決定することになるので、今から人事交代の準備をしておけば、それほど混乱なく国務院総理の交代は可能かもしれません。ただし、そのためには、国務院総理交代の方針を早めに示すとともに、李克強氏も納得ずくであることを内外に示して無用の混乱を避ける必要があると思います。

 もしかすると、今回のダボス会議の出席者が李克強氏ではなく習近平氏であるということ自体、「国務院総理のスムーズな交代」のひとつのプロセスである可能性があります。その意味で、今回のダボス会議に習近平氏が出席することの意味は、非常に大きいと考える必要があると思います。

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