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2016年10月

2016年10月29日 (土)

「習近平同志を核心とする党中央」という表現の意味

 中国共産党の六中全会(第18期中国共産党中央委員会第六回全体会議)が2016年10月24~27日に開催されました。この「六中全会」の公報(コミュニケ)で「習近平同志を核心とする党中央」という表現が使われていることについては、日本の各マスコミも報道しています。多くの日本のマスコミは「○○○同志を核心とする党中央」という言い方は、毛沢東、トウ小平、江沢民の時代には使われたが、胡錦濤前総書記の時代には使われなかった(胡錦濤時代は「胡錦濤同志を総書記とする党中央」と表現していた)ことから、今回「核心」という表現を復活させたことは、習近平総書記が胡錦濤時代の集団指導体制をやめて、それ以前の特定個人に権力を集中させた時代に時計の針を逆戻しさせようとしていることを意味している、と指摘しています。

 今回の六中全会の結果について、中国共産党宣伝部は、昨日(10月28日)、内外の記者を集めた記者会見を開きました。その席で中国共産党宣伝部自身がこの「習近平同志を核心とする党中央」という表現の意義を強調していました(かつ、中国中央電視台の夜7時のニュース「新聞聯播」でも中国共産党宣伝部の記者会見のこの部分を取り上げて報じていました)。中国共産党宣伝部自身、日本のマスコミが指摘しているように今回の六中全会によって習近平氏への権力集中が進んだことを「宣伝」したかったのだと思います。

 しかし、「公報」(=中国共産党中央委員会委員のコンセンサスを得た公式文書)を客観的に見れば、確かに「核心」という表現は用いられているものの、一方で、集団指導体制を維持し、一人の個人が党運営を左右することがないよう党内民主をしっかりと維持すべきこともうたわれており、「公報」を読む限りにおいては明示的に「習近平総書記への権力集中を強化した」というふうには読めません。従って、私は、「習近平総書記への権力の集中」については、中国共産党宣伝部はその方向に進んでいるふうに記者会見で述べてはいるが、それは中国共産党中央のコンセンサスかどうかは怪しい、と判断しました(このことは、習近平総書記と党宣伝部の意志が多くの党中央委員の意図とずれているかもしれないことを意味しており、結構コトは重大だと私は思っています)。

 私がそう判断する理由は「公報」の中に以下のような部分があるからです。少し長くなりますが「公報」のひとつの段落を全訳して紹介します。

「全体会議は以下の点を打ち出した。党内民主は党の生命であり、党内政治生活を積極的かつ健康的にするための重要な基礎である。党内での決定、執行、監督等の作業は、必ず党の規定が明確に定めている民主的原則とプロセスにより行われなければならず、党のいかなる組織・個人も、党内民主を抑圧し、党内民主を破壊してはならない。中央委員会、中央政治局、中央政治局常務委員会及び党の各レベルの委員会が重大な決定を行う場合には、必ず深く調査研究を展開し、各方面の意見と提案を聴取しなければならない。党員の主体的地位は尊重されなければならず、党員の民主的権利を保障し、党員の知る権利、議論に参加する権利、選挙権、監督権を守り、すべての党員が平等に持っている党の規定が認める党員の権利を保障し、党の規定が定める党員の義務を履行し、党内の民主的で平等な党員同士の関係を堅持しなければならない。党のいかなる組織もいかなる党員も党員の民主的権利を侵害してはならない。党員が討論に参加するという事務的プロセスを通して党員の意見を伝える道筋を広くし、党内における民主的討論のための政治的雰囲気を造成しなければならない。党員は党に対して責任を持って事実を暴露し、いかなる組織、いかなる党規則違反・法律違反をも摘発する権利を有しており、実名を上げて通報することを提唱する。」

 ここで「公報」の一部を紹介したのは、「習近平総書記への権力の集中」というイメージとは対極をなす上記の文章が「公報」、即ち中央委員のコンセンサスによって作成された公式な文書の中に存在することを多くの方に知って欲しかったからです。おそらくは、習近平総書記を始めとする「総書記への権力集中」を目指したい勢力が「習近平同志を核心とする党中央」という表現を「公報」の中に書き込むことに成功し、それに反対する勢力が上記の文章を明記することに成功した、というのが実情でしょう。従って、「習近平総書記に権力を集中させることに賛成か、反対か」の議論については、今回の六中全会では「両論併記」であって、結論は来年(2017年)の第19回党大会まで持ち越された、というのが現時点での実情だと思います。

 一方、今年の六中全会の直後にちょっと気になる動きがありました。というのは、六中全会が終わった翌日の昨日(10月28日)、政治局会議が開催され、経済政策についての議論がなされたからです(去年(2015年)の五中全会の直後には政治局会議は開催されていない)。この政治局会議では「積極的な財政政策を有効に実施し、財政の合理的支出を保証し、特に困難に直面している地区と困難な省に対する支援を拡大する」ことを決めました。この決定は全人代で決めた(=李克強総理が政府活動報告の中で何回も指摘した)「ゾンビ企業の処置」よりも景気下支えを優先することを意味しており、今年(2016年)の中国の経済政策においては重要な決定だと思います。

 私が「気になる」と思ったのは、「重大な経済政策の決定」を行ったこの政治局会議に李克強総理が出席していたかどうか不明だからです。昨日(10月28日(金))の中国中央電視台の夜のニュース「新聞聯播」では、この政治局が開催されたことがトップニュースだったのですが(映像なし)、二番目のニュースが8月16日に行われた六中全会での議題に関する党外人士との座談会のニュースでした(映像付き)。このように二か月も前に開催された会議を今更報じるのは「中国共産党の中央委員会全体会議で議論する議題については、事前に中国共産党以外の有力者の意見もきちんと聞いていましたよ」ということを示すための毎年恒例のことです(昨年の五中全会の直後にも同様のニュースが報じられました)。

 ところが今年8月16日に開催された「党外人士座談会」には、習近平主席のほか数人の政治局常務委員が出席していますが、李克強総理は参加していません。従って、「政治局会議を開いて経済政策を議論した」というニュースの直後に李克強総理が参加してない「党外人士座談会」の映像が流されると、たぶん多くの人は「今回の政治局会議では重大な経済政策の決定がなされたのに李克強総理は出席していないのだな」と感じたと思います(実際に今回の政治局会議に李克強総理が出席していたかどうかは、現時点では私には確認できていません)。

(注)なお、昨年(2015年)の五中全会の直後に伝えられた昨年8月21日の「党外人士座談会」には李克強総理は参加しています。つまり、去年と今年を比べると、党としても重要な会議であるはずの「党外人士座談会」に李克強総理は去年は出席していたが今年は欠席だったことがこのテレビ・ニュースの報道で確認されたわけです。

 一方、昨日(10月28日)の「新聞聯播」では、「習近平主席が中国漢方医学学会設立60周年を祝賀するメッセージを出した」というニュースと「李克強総理が中国漢方医学会設立60周年を祝う指示を発した」というニュースを続けて伝えています。結局「新聞聯播」は、六中全会が終わった後も、以下のようなメッセージを中国人民に対して発出し続けているようです。

○経済政策を決定する中国共産党の重要な会議に李克強総理は出席していないらしい。

○習近平主席と李克強総理のお二人は「自分が中国政府の中心人物である」と張り合っているらしい。

 今、中国経済では、「マンション価格が高騰してバブル状態である」「マンション建設を支えるためにゾンビ企業であるはずの鉄鋼工場では住宅用ステンレスを量産しているらしい」「一方で石炭産業では生産調整を強力に進めているため石炭の受給バランスがひっ迫して石炭価格が高騰している(鉄鋼の生産には石炭が必要なので)」という相当に「いびつな」状態が生じています。このような経済の状況の中、中国政府のトップ2の習近平主席と李克強総理の関係が「よくわからん」関係になっていて、中国政府は来年後半の党大会まで経済運営をうまくやっていけるのだろうか、と心配になります。特に、来年(2017年)3月26日には香港行政長官選挙が行われますが、それを前にして北京政府と対立する立場の行政議会議員を巡って、今、香港情勢が混沌としています。マンション・バブルの崩壊や香港での反北京市民運動の激化などが起きた場合、中国政府はうまく対応できるのだろうか、とさえ思ってしまいます。

 こうした危機感は、おそらくは日本の多くの人(特に中国で混乱が起きた場合に直接影響を受ける可能性のある日本の経済関係者)も共有していると思います。日本経済新聞もそういった「危機感」を持っているようで、今日(2016年10月29日)の日経新聞朝刊2面の社説のタイトルは「中国・習主席への集権で経済は大丈夫か」でした。

 目下のところ、まずは11月8日のアメリカの大統領選挙(クリントン対トランプ)が世界の注目の的ですが、それが終わると来年後半の党大会が終わって次の体制が固まるまで(=李克強総理が国務院総理を続投するのかどうか決まるまで)中国情勢から目が離せなくなりそうです。

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2016年10月22日 (土)

「神舟十一号」打ち上げ時に習近平主席は外国訪問中

 中国の有人宇宙船「神舟十一号」が2016年10月17日に打ち上げられました。中国としては、六回目の有人宇宙船の打ち上げです。今回は、既に打ち上げられていた無人の実験室「天宮二号」とドッキングして、宇宙飛行士が30日間宇宙空間に滞在して、将来の中国版宇宙ステーション完成に向けての様々な実験等を行うことになっています。

 今回は中国にとって六回目の有人宇宙飛行であり、最初の頃に比べると注目度は低くなっているかもしれませんが、それでも有人宇宙飛行は中国にとって二年に一度程度の国家的大イベントです。ですが、今回の「神舟十一号」の場合、最終的に打ち上げを発表した日(10月16日)に習近平主席はBRICS首脳会談に出席のためインドにおり、習近平主席が北京に戻ったのは打ち上げ後の翌10月17日の夜でした(打ち上げは北京時間10月17日の朝の7時半に行われた)。

 打ち上げのタイミングで習近平主席が甘粛省酒泉近くにある発射場に出向くのは物理的に無理でした。実際の打ち上げでは、李克強総理と劉雲山政治局常務委員が現場に出向き、打ち上げの様子を見守りました。

 ロケットの打ち上げは、機器の点検の具合や最終的には打ち上げ場付近の気象条件も関係するので、政治家のスケジュールに合わせてピンポイントで「この日」と指定することは困難です。なので、打ち上げ日の最終決定発表日と打ち上げ当日が「たまたま」習近国家主席の外国訪問期間中にぶち当たってしまったことについては「習近平主席は運が悪かった」のだと思います。でも、昨今、習近平主席と李克強総理との「主導権争い」が目に付いているだけに、有人宇宙船打ち上げ時に「習近平主席は外国訪問中」であり「李克強総理が現場で立ち会った」という現実を見ると、「習近平主席は有人宇宙船打ち上げのタイミング調整において影響力を発揮できなかったのではないか」という「うがった見方」もしたくなってしまいます(前の週は習近平主席は北京にいたわけですからね)。

 中国の三回目の有人宇宙船「神舟七号」の打ち上げ(2008年9月25日:中国初の宇宙遊泳を実施)の時、私は北京に駐在していたので、打ち上げ及び宇宙遊泳そのものを北京で中国中央電視台の生中継で見ました。そこで「神舟七号」と「神舟十一号」の違いについて、下記に書いてみたいと思います。

○「神舟七号」

打ち上げ日の発表:2008年9月7日に「9月25~30日の間に日を選んで打ち上げる」と発表

(注)この打ち上げタイミングは「北京オリンピック・パラリンピック終了後で、国慶節の連休(10月1日~)の前」という中国人民の注目を集めやすいタイミングでした。

打ち上げ前日:酒泉衛星発射センターで行われた「宇宙飛行士出発式」に胡錦濤国家主席が参加。胡錦濤主席は直接宇宙飛行士に対し激励の言葉を掛けた。

打ち上げ当日:胡錦濤主席は管制センターで打ち上げの様子を視察。打ち上げ成功後、管制センターのスタッフと握手して打ち上げ成功を祝した。

国家主席と宇宙飛行士との直接通信:北京に戻った胡錦濤主席と宇宙遊泳を実施し終わった「神舟七号」の宇宙飛行士とが直接通信。胡錦濤主席は中国で初めて宇宙遊泳を成功させた宇宙飛行士をねぎらった。

○「神舟十一号」

打ち上げ日の発表:2016年10月16日に「翌10月17日午前7時半(北京時間)に打ち上げる」と発表(ただし、ドッキングする「天宮二号」は9月15日に既に打ち上げられており、宇宙飛行士を乗せた「神舟十一号」が10月中旬に打ち上げられる予定であることは周知の事実だった)。この時、習近平国家主席はインド滞在中。

打ち上げ前日:酒泉衛星発射センターで行われた「宇宙飛行士出発式」には、習近平主席も李克強総理も出席せず。

打ち上げ当日:李克強総理と劉雲山政治局常務委員が酒泉衛星発射センターの管制センターで打ち上げを視察。打ち上げ成功後、習近平主席がインドから打った祝賀電報を現場指揮官が読み上げた。李克強総理と劉雲山政治局常務委員はスタッフと握手して打ち上げ成功を祝した。

国家主席と宇宙飛行士との直接通信:打ち上げ6日目の今日(10月22日)現在、習近平主席と宇宙飛行士との直接通信は行われていない(ただし、今回は30日間の長期滞在なので、どこかのタイミングで習近平主席と宇宙飛行士との直接通信は行われることになるものと思われる)。

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 ちなみに「神舟十一号」が打ち上げられた10月17日夜7時からの中国中央電視台のニュース「新聞聯播」のトップニュースは、習近平主席が出席したBRICS首脳会談関連のニュースで、「神舟十一号」打ち上げのニュースは二番目でした。「新聞聯播」では、トップニュースは習近平主席関連のニュース、李克強総理関連のニュースは二番目、と順番が決まっているのでこういう順番になったのですが、たぶん中国人民の一般的感覚から言ったら「神舟十一号打ち上げの方がトップニュースでしょうに!」と思うでしょう(ちなみに、翌10月18日の「人民日報」の1面トップ記事は「神舟十一号打ち上げ」で1面の題字右側のスペースに習近平主席のBRICS首脳会議関連のニュースが載っていました)。

 「胡錦濤前主席に比べると、習近平主席は有人宇宙飛行に冷たいなぁ」というのが私の率直な感想でした。でも、「神舟十一号の打ち上げ」を報じた10月17日の「新聞聯播」の後半では「貧困地域支援対策」のニュースをやっていたところを見ると「宇宙開発に金を掛ける余裕があるのだったら、もっと国内の貧困地域対策に力を注いで欲しい」といった党内世論に配慮したのかもしれません。

 今週(2016年10月17日の週)は、習近平主席は17日(月)夜にインドから帰国した後、18日(火)には北京でウルグアイの大統領と会談、20日(木)には北京でフィリピンのドゥテルテ大統領と会談、21日(金)には人民大会堂で行われた「長征勝利80周年記念大会」に参加、といった北京で行う重要なスケジュールが目白押しだったので、「神舟十一号」の打ち上げが数日前後したとしても酒泉衛星発射センターに行って宇宙飛行士に直接声を掛けたり打ち上げを見守ったりする時間的余裕は習近平主席にはありませんでした。なので、「神舟十一号」の打ち上げが習近平主席が外国訪問中に行われた、というのも、スケジュール調整上、やむを得ない判断だったのかもしれません。

 ただ、有人宇宙船の打ち上げには常に「打ち上げ失敗」のリスクがありますから、打ち上げの瞬間に国家主席で中国共産党軍事委員会主席の習近平氏が中国国内にいなくてリスク管理上問題なかったのか、という疑問は残ります(中国の場合、宇宙開発を行っているのは軍の一部門です)。酒泉衛星発射センターに行く時間はなくても、少なくとも打ち上げは国家主席(=党軍事委員会主席)が北京にいるタイミングにすべきだったのではないか、と私は思います。

 習近平主席と李克強総理の「主導権争い」が目立っている昨今の状況を踏まえれば、「神舟十一号」の打ち上げ時、酒泉衛星発射センターの現場にいたのが習近平主席ではなく李克強総理だった、という事実は、結果論的に言えば、中国人民に対して、宇宙開発を担当している軍の部門の指揮は習近平主席ではなく李克強総理がとっているのですよ、というようなイメージを与える効果があったのではないか、と私は思っています。

 来週、10月24日から「六中全会」(第18期中国共産党中央委員会第六回全体会議)が開かれます。「党内規律の厳格化」が議論される、とされていますが、来年(2017年)秋の党大会へ向けて、人事や党内ルールの変更も議論される、という観測もあります。10月19日付けの日本経済新聞朝刊1面に掲載されていた連載記事「習近平の支配(3)闘争再び」では「最高指導部である政治局常務委員制度の廃止、大統領制に似た権限の集中」というような「憶測」も飛び交っていることが指摘されています。記事では「さりげなく」書かれていますが、これが本当に実現するなら「中国共産党の歴史上最大の党内クーデター」だと私は思います。毛沢東時代ですら、中国共産党内部には毛沢東に反対する勢力が常に存在し、毛沢東への全権限の集中はできていなかったのですから(文化大革命には「毛沢東による党内の反毛沢東勢力に対する大衆を動員した大反撃」という側面がある)。

 今回の「神舟十一号」の打ち上げのタイミング設定を見る限り、現時点において、習近平主席が党内のすべての勢力(軍も含む)をすべてコントロールできているわけではない、と見るのが妥当だと思います。「金を使いすぎる」などの批判はあるのでしょうが、少なくとも有人宇宙飛行は中国人民には人気のあるプロジェクトだと思います。それを考えると、今回、(胡錦濤前主席の「神舟七号」の時と比較して)習近平主席が有人宇宙飛行プロジェクトに冷淡であるかのように見えたことは、今後、習近平主席が自分への権力集中を進めて行こうとする時に「中国人民からの反発」「宇宙開発を進めている軍の内部からの反発」を招く可能性があるので要注意だと私は思いました。

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2016年10月15日 (土)

またまた李克強総理が欠席のままで重要会議開催

 中国共産党の習近平総書記は、10月11日(火)、「全国国有企業における党建設に関する工作会議」を開催し、国有企業における中国共産党の指導を強化することについて議論しました。また、習近平総書記は、同日、「中央全面深化改革指導小組28回会議」を開催し、減災・防災、高齢者介護サービス産業の推進方策、産業安全の推進等について議論しました。この日、中国共産党ナンバー2で国務院総理の李克強氏はマカオ出張中だったので、これらの会議は欠席しました。中国共産党ナンバー3で全国人民代表大会常務委員長の張徳江氏もこれらの会議には欠席でした。

 もはや中国共産党の重要会議に李克強総理が欠席する状況に「慣れっこ」になってしまいましたが、やはりこれはおかしいです。もし仮に、李克強氏が来年(2017年)秋の党大会で党内で人事異動することが決まるのだとしても、国務院総理の交代が決まるのは党大会の次の全人代、つまり2018年3月になりますから、それまでの間のあと一年半、党の重要会議に国務院総理が参加しないような状況が続くのであれば、中国政府の行政執行はスムーズに行かなくなると思います。もし李克強氏を中国共産党の意志決定の中心からはずす方針なのであれば、今すぐにでも国務院総理を別の人に替えるべきでしょう。現在の任期中(2018年3月まで)は李克強氏に国務院総理をやらせるつもりなのであれば、李克強氏をはずしたままで党の重要会議を開催することは国の内外に「中国政府はレイムダック化している」と宣伝しているのと同じですので、中国自身にとって大きなマイナスだと思います。

 一方、10月12日(水)の産経新聞9面に「香港で権力闘争『場外戦』」という記事が出ていました。この記事では、香港の親中紙「成報」が全人代常務委員長の張徳江氏や香港の梁振英行政長官ら4人を「四人組」として批判するキャンペーンを張っている、と伝えています。「四人組」と銘打った批判が権力闘争を意味しているは誰の目にも明らかなのですが、この記事によれば、批判されている張徳江氏は、江沢民元国家主席に近く、梁振英行政長官は張徳江氏に近いのだそうです。だとすると、最近、習近平総書記が李克強氏(党のナンバー2)と張徳江氏(党のナンバー3)が欠席のままで党の重要会議を開いているのは、習近平氏が党内の有力グループを排除して自分に近い人たちだけで権力の集中化を図ろうとしていることを意味しているのかもしれません。

 また、習近平総書記が李克強氏と張徳江氏が欠席のまま二つの重要会議を開催した10月11日、北京市内の国防部の前で迷彩服を着た約千人の退役軍人が抗議デモを行いました。国防部は、北京のど真ん中を東西に通る長安街に面した場所(天安門から約6km西)にありますので、そこで迷彩服を着た人が千人も集まれば相当に目立ちます。実際、日本を含め多くの外国のメデイアがその様子を報道しました。

(注)国防部の建物周辺は「軍事禁区」となっており写真撮影等は禁止されています。観光旅行者や留学生・現地駐在員の方々などは興味本位でスマホ等で撮影したりしないようにしましょう。もっとも「軍事禁区」である国防部は地図には掲載されていないし、国防部の建物には「看板」がないので、知らない人にはどの建物が国防部であるのかわからないのですけどね。

 そもそも中国では許可されないデモは禁止ですが、近年、化学工場反対など環境問題に関連して周辺住民等が行う「集団散歩」は時々ありますし、理不尽な土地収用に反対する住民が地方政府の回りに集まる、といったことはしょっちゅう報道されます。しかし、北京の中心部にある国防部の前(当然、警備は厳しい)に迷彩服着用という目立つ格好で千人規模の人が集まるなんて、少なくとも私は聞いたことがありません。10月13日にBS日テレ等で放送された「深層NEWS」の中でも指摘されていたのですが、軍の中に今回の抗議デモを動員した人、あるいは積極的に動員したわけではないにしても黙認した者がいるのはたぶん間違いないと思います。中国の場合、公安当局の側に「デモは許さない」という考え方があれば、千人規模の人が参加するデモは、ネット等でデモへの参加を呼び掛けた段階で当局の手が入って、そういったデモは事前に事前に抑圧されるだろうと考えられるからです。

 この退役軍人の抗議デモについては、中国のメディアは報じていないようですが、今はネット社会ですので、中国人民も、外国メディアが伝える迷彩服の退役軍人のデモの様子を目にする機会はあったと思います。

 上に書いた、産経新聞が報じている香港の親中紙「成報」の「四人組」批判キャンペーンも、たぶん現在の北京の「相当に変な状況」を表しているのだと思います。「親中紙」であるはずの「成報」が中国共産党中央の序列ナンバー3の張徳江氏や党中央が任命した梁振英行政長官を批判することは、中国共産党中央の内部がバラバラ状態であることを示している可能性があるからです。

 「中国共産党は、最初から『内部はバラバラな状態が続いている党』だったのであり、毛沢東やトウ小平がいた頃はそれがオモテに見えなかっただけなのだ。今は、毛沢東やトウ小平のようなカリスマ的な指導者がいないので、党内の『バラバラ状態』が素直に外に見えてしまうのだ」という見方が正しいのかもしれません。しかし、中国共産党は外部からはタテマエ上「党中央に一致団結している」と見えていたからこそ中国人民はガマンして「中国共産党の指導」に従って来たのです。ですから「党内がバラバラであることが外からよく見える中国共産党」では中国人民は「ガマンして付いていく(付いていくふりをする)」ことをやめてしまうのではないか、と心配になります。

 今日(2016年10月15日)の中国中央電視台の夜7時のニュース「新聞聯播」では、「習近平主席は第120回中国輸出入商品交易会の開幕を祝するメッセージを寄せた」というニュースと「李克強総理は第120回中国輸出入商品交易会の開幕を祝賀する指示を出した」というニュースを並列して報じています。交易会の関係者には失礼ですが、国家指導者のトップ2のお二人が「この程度のこと」で張り合うのはいかがなものかと私は思います(というか、たぶん、多くの中国人民も「いい加減にして」と感じていると思います)。

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2016年10月 8日 (土)

結局中国の構造改革は先送りの気配

 国慶節の連休期間が終わり、今日(2016年10月8日(土))から中国は「通常モード」に戻ったようです。今日の中国中央電視台の夜7時のニュース「新聞聯播」のトップニュースは「習近平主席がポルトガルの総理と人民大会堂で会見した」、二番目は「習近平総書記の『胡錦濤文選報告会』での重要講話が単行本として出版された」、三番目は「李克強総理が国務院常務会議(定例会議)を開催した」という「いつもと同じようなニュース」でした。習近平主席、李克強総理ともに「特に変わった様子はなくニュースに登場した」ということで、ひとまずは安心しました。

 で、ちょっと気になったのは今日の国務院常務会議の内容でした(通常、国務院常務会議は水曜日開催ですが、今週は国慶節の連休だったため、特例として土曜日の開催となったようです)。規制緩和の一環として投資案件の許可権限を下部に下ろす、という内容なのですが、「国家標準に基づくものであれば」という前提付きですが、投資事業の許可を省クラスの地方政府にゆだねること、中国鉄道総公司は鉄道、橋梁、トンネルの工事を自らの判断で実施できること、を決めた、とのことでした。「これって『規制緩和を進める』という名目の下、国家レベル、党中央レベルのインフラ投資に対するコントロールを放棄する、ってことではないんですかね? この決定を受けて、来年秋の党大会へ向けて、各地方政府や中国鉄道総公司はそれぞれ勝手にインフラ投資のアクセルを強烈にふかすことになるのではないですかね?」と私は思いました。

 中国共産党は「一党独裁」とは言われますが、幹部については地方や企業にいる党の代表による選挙で決めることになっているなど「党内民主」の制度ができています。地方政府や国有企業への締め付けを強め過ぎて各組織の党代表の反発を受けては来年(2017年)秋の党大会を乗り切れないので、党大会が終わるまでは「構造改革は一時お休み」にするのかもしれません。インフラ投資のアクセルがふかされれば、鉄鋼、セメント等の「ゾンビ企業」の国有企業も一時的に息を付くことができ、労働者をリストラせずに済む、というわけです。ただし、これは単なる問題の先送りに過ぎないので、来年の党大会が終わった後、より大きくなったツケが中国経済に回ってくることになるのだろうと思います。

 「選挙が目の前にあるので痛みを伴う構造改革は一時的に『棚上げ』だ」といった話はどこかの国の事情と全く同じじゃないか、とは思いますが、中国の場合、後に先送りされた「ツケ」の大きさは半端じゃないと思うので、来年の党大会が終わった後、中国経済がどうなるか相当に心配です。

 前にも書いたことがありましたが、私が北京に駐在していた前々回の2007年秋の党大会の後、2008年の春節あたりに掛けて、中国経済では、不動産市況や沿岸部の製造業で変調が起きました(当時の上海株は党大会開催中の2007年10月をピークにして急落)。前回の党大会があった2012年の頃はリーマン・ショック後の4兆元の大規模経済対策が打たれた後でしたので党大会後の「バブル崩壊感」はなかったのですが、2013年6月頃には「影の銀行」だの「理財商品」だの、4兆元の経済対策による巨大投資に関連する金融関係の不安感が高まりました。

 今回(2017年秋の党大会の後)は、2007年~2008年の経済変調の規模を巨大化させたものと2013年半ば頃の金融不安が合わさったようなものが中国経済を襲うおそれがあることは今から覚悟しておいた方がよいと私は思っています(もちろん、2017年秋の党大会へ向けての人事抗争が中国共産党内部の権力基盤の不安定化に繋がれば、党大会の前(2017年前半)にも中国経済が不安定化する可能性はあります)。要は、仮に2017年秋まで中国経済の指標が順調に推移したとしても、その後何が起こるかわからない点については最大限の注意を払っておく必要がある、ということです。

(注)世界の多くの企業家は同じような見通しを持っているのかもしれません。だからこそ多くの企業家が「投資をするより中国経済で『とんでもないこと』が起きるかもしれないことに備えて手元に資金を持っておこう」と思っているのだと思います。世界第二位の経済大国である中国の政治システムの透明性が確保されない限り、「中央銀行が大規模な金融緩和をしようと、政府が企業のお尻を叩こうと、企業家は『中国リスク』に備えて資金を貯め込むだけで、投資が伸びず、経済成長率は高まらない」といった状況は続くと思います。

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2016年10月 1日 (土)

習近平主席と李克強総理の「抗争」いまだ結論見えず

 今回も中国の習近平主席と李克強総理の「主導権争い」について書きます。というのは、中国共産党のトップ2の二人の「抗争」は、その結論によっては極めて重大な変化をもたらすことを中華人民共和国の歴史は教えてくれるからです。

 古くは1960年代初期の毛沢東中国共産党主席と劉少奇国家主席の路線の争いは、1966年からの文化大革命を招きました(劉少奇にしてみれば、毛沢東と「争っている」という認識はなかったかもしれませんが、結果的に劉少奇は不遇の死を迎えることになりました)。

 1978年~1981年の華国鋒中国共産党主席とトウ小平氏の「主導権争い」(トウ小平氏側から言わせれば「すべて派」との争い)は、1981年6月、華国鋒氏が党主席を平和的に辞任することでトウ小平氏側の勝利となり、現在の「改革開放路線」が確定しました(華国鋒氏は2008年8月に死去。葬儀は「党への功績者」として敬意を持って執り行われました)。

 1987年の党大会で総書記になった趙紫陽氏と翌年3月の全人代で国務院総理になった李鵬氏とは、「改革派」と「保守派」として対立していたようです。ただ、私は当時北京に駐在していましたが、二人の対立は表立って目に見えるようなものではありませんでした。結局は、二人の対立は1989年4月に始まった「第二次天安門事件(六四天安門事件)」の運動に対する対処方法の対立となり、結局は趙紫陽総書記の辞任と人民解放軍による武力鎮圧で終わりました。趙紫陽氏は、その後、軟禁状態となり、2005年に失意のうちに死去しました。現時点においても趙紫陽氏は名誉回復がなされていません。

 何回も書きますが、習近平主席と李克強総理の「抗争」は、上記の三つの例とは異なり、「誰の目からも明らか」なことです。それだけに、上記三つの例とは異なり、それほど深刻なものではなく、単なる政策路線の違いであって、どの国のどの党の内部にもある一種の「派閥争い」に過ぎない、という見方もできます。ただ、「中国共産党はトップ(昔は主席、現在は総書記)を中心に団結している」という「タテマエ」が長く続いてきているだけに、あからさまなトップ二人の「主導権争い」を見せつけられると、諸外国のみならず、中国人民自身が相当程度とまどっていると思います。

 中国共産党の中国人民に対する「広告塔」である中国中央電視台夜7時のニュース「新聞聯播」は今週も、はからずも習近平主席と李克強総理の「抗争ぶり」を全国の中国人民に知らせる役割を果たしていました。今週の「新聞聯播」の報道ぶりを以下にまとめてみます。

○2016年9月27日(火):トップニュースは、中国共産党政治局会議が開かれ、六中全会(中央委員会第6回全体会議)を10月24~27日に北京で開催することを決定し、六中全会で議論する党内規律の厳格化について議論されたことでした。二番目のニュースはキューバ訪問中の李克強総理が9月25日夜キューバ政府の首脳とともに劇場に赴き「演芸の夕べ」を楽しんだことでした。私は、このニュースの伝え方を見て、率直に「李克強氏は中国共産党の議論の中心からはずされた」との印象を受けました。

○9月28日(水):トップニュースは27日に開かれた中国共産党幹部による「集体学習会」で習近平総書記が「重要講話」したことでした。この「集体学習会」の様子は映像で紹介され、習近平総書記のほか、政治局常務委員の兪正声氏、劉雲山氏、王岐山氏、張高麗氏が映っていました。つまり、政治局常務委員のうち李克強総理と張徳江氏はこの場にはいないことが明示的に示されたわけです。この日、李克強総理はキューバにおり、張徳江氏も外国訪問中でしたので、この場にいないのは当然なのですが、この種の「集体学習会」は通常政治局会議と同じ日に開催されるので、この映像は「李克強氏と張徳江氏は政治局常務委員ではあるが党政治局会議は欠席した」と中国全人民に伝える意味があったと判断できます。この日、李克強総理が28日午後に北京に戻ったことが報じられましたので、27日の政治局会議に李克強総理が出席していなかったことが確認されました。

○9月29日(木):トップニュースは、この日午前、「『胡錦濤文選』を学習する報告会」が開かれ、習近平総書記が「重要講話」を行ったことでした。この報告会には、党政治局常務委員7名がすべて出席し、李克強氏が司会を務めた、とのことでした。胡錦濤前主席は、李克強氏と同じ中国共産主義青年団(共青団)出身なので、この報告会は、胡錦濤氏を讃えることで共青団出身者(団派)を重要視していることを示す会であった、と言えます。一方で「胡錦濤文選」を讃えることで「胡錦濤前主席はもう過去の人物なのだ」という印象を与える効果もあったと思います。この報告会のニュースは、李克強氏が司会をし、習近平総書記が「重要講話」を行い、政治局常務委員全員が出席している様子を映像として伝えることで、中国人民に「党中央はみんな団結していますよ」というメッセージを送りたかったんだろうなぁ、と私は感じました。

○9月30日(金):トップニュースは習近平総書記をはじめ政治局常務委員全員が天安門広場にある人民英雄記念碑に花輪を捧げる行事が行われたことでした。この行事は、毎年国慶節(10月1日)の前日に行われるもので、特段、例年との違いは感じませんでした。二番目のニュースは、これも毎年恒例の行事ですが、国慶節を前にして行われる各界代表者(外国の大使等も含む)を招いて開く国務院主催のレセプションの様子でした。これにも政治局常務委員は全員参加していますが、国務院主催なので、挨拶は国務院総理の李克強総理でした。国慶節の御祝いの宴会なんですから、習近平主席もにこやかな表情を見せてもよいところですが、李克強総理が挨拶をしている間、習近平主席は無表情(私の印象では不機嫌な表情)でした。

 この次のニュースは、中国を訪問しているベラルーシの大統領と李克強総理との会談のニュースでした(ベラルーシの大統領は、前日に習近平主席や張徳江全人代常務委員長と会談しています)。

 次のニュースは、国慶節レセプションに際して、李克強総理が宴会に参加した新任の各国大使を一人づつ迎えて言葉を交わすシーンでした。この宴会は国務院主催なのですから、国務院総理の李克強氏が参加者の各国大使を一人づつ迎えて挨拶するのは別におかしくはないのですが、映像のイメージは、新任の各国大使から信任状を受け取るセレモニーと全く同じです。新任大使からの信任状の受け取りは国家主席である習近平氏の仕事であり、実際、習近平主席による新任大使からの新任状受け取りは「新聞聯播」でもしょっちゅう報じられます。なので、この李克強氏による新任大使一人一人との挨拶を見ていると、まるで李克強氏が国家主席であるかのように見えるので、私は「李克強総理は明らかに習近平主席と張り合っているなぁ」との印象を受けました。

 その次のニュースは、中国との友好関係強化に貢献した外国人に与えられる「中国政府友誼賞」の授与についてでした。このニュースでは、李克強総理が中国政府を代表して受賞者の外国人と懇談し記念撮影をする様子が報じられました(習近平主席はこのニュースには登場しません)。これら一連のニュースを見ていると「やっぱり中国政府代表は(習近平主席ではなく)李克強総理だよね」という印象を持ってしまいます。

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 ということで、9月27日の党政治局会議に李克強総理が出席しなかった時点で、李克強氏は党の議論や決定から完全に「はずされた」と私は思ったのですが、一昨日(9月29日)と昨日(9月30日)の「新聞聯播」を見ると、李克強氏は党中央から「はずされた」などということは全くない、というふうに見えてしまいます。

 そもそも9月28日に李克強氏が帰国することがわかっていながら、なぜ9月27日に政治局会議が開かれたのか、が全くナゾです。この日程の組み方は、「李克強氏は党中央の意志決定からはずされた」ことを意味するのか、そうでなければ「今回の党政治局会議は党のナンバー2の李克強氏やナンバー3の張徳江氏が欠席でも構わない程度のそれほど重要性の高くない会議なのだ」ということを意味するのか、のどちらかです。ただどちらをとっても、中国人民には「今の党中央は政治局が全体で一致団結して党内規律の問題を議論する六中全会を開こうとしているわけではない」という印象しか残らなかったのではないでしょうか。

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 今日(10月1日)から中国は国慶節の連休なので、10月の最初の一週間は中国に関しては、何も動きはないと思います。ただ、休み明け、以下の二つの点については、どう動くか注意しておいた方がよいと思います。

○今日(2016年10月1日)、人民元がSDR(IMFの特別引き出し権対象通貨)入りしました。SDR入りを前にして、急激な人民元安が進まないように、中国人民銀行は為替を安定させるように介入を行っていた模様です(9月30日付け日本経済新聞夕刊5面コラム「アジア・ラウンドアップ」「中国『国際通貨』でもやまぬ流出」参照)。中国経済の先行き不安、アメリカの追加利上げ観測などを踏まえて、中国国内からの資金流出圧力は依然として強いと考えられます。人民元のSDR入りを通過した後に中国当局による為替介入が弱まると、ジリジリと人民元安が進む可能性があります(去年(2015年)8月の状況を思い出せばわかるように、人民元安が急激に進むと、世界同時株安が発生する可能性があります)。

○マンション販売業者による国慶節期間の販売促進が不動産価格の急騰を招くおそれがあったことから、いくつかの中国の地方政府は今日(10月1日)からマンション購入時の頭金割合規制を強化するなどの対策を導入しました。9月中はそれを前にした「マンションの駆け込み購入」もあったようです。中国政府の価格急騰対策が効きすぎると、中国の不動産価格は今がピークとなり、これから下落に転じる可能性があります。上に書いたように、経済全体で資金流出懸念が強い中、不動産バブルも崩壊するとなると、人民元安と不動産価格の下落がお互いに共鳴して加速させ合うことになる可能性もあることには注意が必要だと思います。

 私は、習近平主席と李克強総理の「抗争」が実際に経済政策にマイナスの影響を与える可能性があるならば、それを察知した「事情通」は既に今の時点で株を売り始めるだろうから、上海の株価を見ていれば、「本当に危ないかどうか」はわかるだろうと思っていました。ところが、国慶節前の上海の株価は、あまり動かず、連休前日の昨日(9月30日(金))は、3,004.703で引けました。心理的節目の3,000ポイントをわずかに上回った値で引けたことについて「うまくできすぎているよなぁ」というのが私の正直な印象です。

 「オモテ」に見えている習近平主席と李克強総理の「不仲さ加減」は、たぶん表面的なものであろうと思う一方、毎日「新聞聯播」を見るたびに「やっぱり不仲なんだ」「でもどうやら大丈夫そうだ」と見方がコロコロ変わるような状況は、やはり「正常」ではないと思います。アメリカの民主党クリントン氏と共和党トランプ氏による大統領選挙も世界経済の不安定要因だとは思いますが、やはりこの秋は中国の政治と経済の状況が最も大きな世界経済の不安要素だと私は思っています。

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