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2016年9月24日 (土)

李克強-オバマ会談のテレビのニュースは一日半遅れ

 中国の李克強総理は、ニューヨークでの国連総会での演説を終え、次の訪問国であるカナダに移動しました。で、結局は、私が知る限り、アメリカにいる間、李克強総理はアメリカのメディアの単独インタビューは受けなかったようですね。アメリカのメディアに「あなた(李克強総理)と習近平主席は不仲だとの見方があるが、実際はどうなのか」と質問してもらい、李克強総理がそれにどう答えるか知りたかったんですけどね。

 もし、李克強総理と習近平主席の関係が「不仲」ではなく、全く問題のない関係なのだとしたら、メディアへの露出の多いアメリカ滞在中にむしろ積極的にメディアのインタビューを受けて、「不仲なんてとんでもない。私(李克強総理)は、習近平総書記を中心とする中国共産党中央の一員として、他の党員とともに、一致団結して諸問題に取り組んでいます。」と世界にアピールするチャンスだったと私は思うのですが。そういうチャンスを活かさなかったところとみると、「不仲説」は、たぶん事実なのでしょう。

 私は、李克強総理のアメリカでの行動を中国のメディアが中国国内でどう伝えるかに興味を持っていました。李克強総理が国連本部等で「中国政府代表」として活躍する姿は、「中国政府の中心は私だ」と考えている習近平主席にとっては「面白くないもの」のはずですから。

 事実関係を書くと以下のとおりです(日時は全て北京時間(=日本時間-1時間))。

○9月20日朝、ニューヨークでオバマ大統領と李克強総理が会談。

○9月20日10:30頃、オバマ-李克強会談について、新華社が写真入りで記事を配信。「人民日報」のホームページにも掲載される。写真は二枚で、オバマ大統領と李克強総理が歩きながらにこやかに談笑する写真と両国国旗の前で両者が握手する写真。

○9月20日の中国中央電視台の12:00からの「中国新聞」(お昼のニュース)と19:00からの「新聞聯播」(夜7時のニュース)では、李克強-オバマ会談については伝えず(同日行われた李克強総理の難民関連の会議での演説やニュージーランドの総理との会談については伝えた)。この日の「新聞聯播」のトップニュースは、杭州でのG20首脳会談開催を担当した関係者を顕彰するセレモニーで習近平主席が担当者たちを褒め称える祝辞を送ったことだった。

○9月21日付け「人民日報」は1面(トップ記事ではない)で、オバマ-李克強会談について伝えた。写真は両国国旗の前で二人が握手する場面のもの。この時点で「人民日報」ホームページに掲載されている記事は、前日に掲げられていた新華社の二組の写真を使ったものから、「人民日報」に掲載されたものと同一のものに差し替えられていた。

○9月21日19:00からの「新聞聯播」では、二番目のニュースとして、オバマ-李克強会談について伝えた(この時点で、実際に会談が行われてから1日半が経過している)。会談の映像を流し、アナウンサーが会談の内容を伝えるものだったが、オバマ、李克強両氏のしぐさを見る限り、10秒程度の短い映像を何回も繰り返して使用していた。会談後、歩きながら談笑する両氏の様子も放映したが、映像の様子はプロが撮った映像ではなく、まるで随員が撮影した映像のように手ぶれが入っていた。

○9月21日朝にニューヨークで行われた李克強総理とフランスのオランド大統領との会談についても、9月21日の「新聞聯播」では伝えられず、9月22日の「人民日報」の1面に掲載された後、9月22日夜の「新聞聯播」で伝えられた(会談後1日半が経過していた)。ただし、映像の様子は通常の首脳会談のニュースと同様にプロが据え置き式カメラで撮影したような、手ぶれのない映像だった。

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 「新聞聯播」はテレビのニュースですから「速報性」はあります(やろうと思えばできます、の意味)。北京時間18時頃に起きた日本の桜島の噴火の様子を直後の19時からの「新聞聯播」で報じたこともあります。しかし、実際の「新聞聯播」は、国家指導者の地方視察などについて「習近平主席は最近○○を視察しました」などと伝えるなど、「終わった話」を伝えることがほとんどです。なので、中国人の中には「『新聞聯播』には『新聞』はない。『旧聞』ばかりだ。」という人もいます。

 でも、もし李克強総理がオバマ大統領と会談したニュースについて「アメリカも中国を重要視している証(あかし)だ」と中国人民に伝えたいのであれば、できるだけ早く伝えたでしょう。李克強総理がアメリカのオバマ大統領やフランスのオランド大統領と会談したことを伝えたのが1日半も経過してからだった、というのは、「李克強-オバマ会談」「李克強-オランド会談」はいずれもそれほど重要な会談ではないのだ、というメッセージを中国人民に伝えたかったのだ、と考えるべきなのでしょう。

 しかも、李克強-オバマ会談のニュースの直前に「杭州でのG20首脳会談開催を担当した関係者を顕彰するセレモニーで習近平主席が担当者たちを褒め称える祝辞を述べた」というニュースを長々と流したのは、中央電視台は明らかに「中国政府の中心は習近平主席であって、李克強総理ではない」というメッセージを中国人民に発したかったのでしょう(少なくとも見ていた私はそういうメッセージだと思った)。

 一方で、今週は、「人民日報」が「胡錦濤文選」の出版を伝えるなど「共青団派」にも配慮した動きが見られました(胡錦濤前主席と李克強総理はともに「中国共産主義青年団」出身で「団派」と呼ばれる)。もし現時点で、既に習近平主席が李克強総理を凌駕するほどに権力を自分に集中させていたのだったら、そもそも李克強総理を国連総会に派遣することを認めなかったはずです。ですから、習近平主席と李克強総理との関係は対立して勢力争いをしているが、まだどちらも完全に勝ったと言えるほど決着は付いていない、と考えるのが正しいのだと思います。

 私が感じたのは、激しく争うトップ2に対して、中央電視台や人民日報の編集担当は、紙面の大きさや順番などについて、相当神経を使っているだろうなぁ、ということです。私の感覚では、「人民日報」の方は、習近平主席と李克強総理の双方との距離を測りながら、バランスよく記事を掲載しているように思えます。それに対して、中央電視台の方は、やや「習近平主席が主役で、李克強総理は脇役に過ぎない」という感覚で編集しているように見えます。中央電視台も人民日報も、しょせんはサラリーマンが動かしている組織体ですから、「エライ人」の顔色を見ながら、怒られないように記事を取捨選択・編集しているであろうことは容易に想像できます。

 問題は、こうした「トップ2の争い」は、中国自身にとって全くプラスにならないということです。アメリカのオバマ大統領もフランスのオランド大統領も、つい3週間前に杭州で習近平主席と会談していますが、今回、またニューヨークで李克強総理と会談したのは、アメリカもフランスも「今、中国のトップ2は抗争しており、機会があれば、その両方に同様にコンタクトしておくべきである」という配慮が働いたからだと思います。これは中国が諸外国に足元を見られていることを意味しており、中国の外交政策上よくないと思います。

 また、中央電視台や人民日報の職員が「二人のエライ人」の顔色を伺いながら毎日仕事をしているのだとしたら、中国のその他の国有企業の職員も同様でしょう。そういう状態なら、国有企業改革のための困難な業務に対して職員が真剣に取り組める状態だとはとても思えません。ここまで習近平主席と李克強総理との対立関係が国際的にも国内的にも明らかになった以上、習近平主席政権の後半(2018年3月~2023年3月)も李克強氏が国務院総理を務めることは、もう現時点では想像できなくなった、と言えるかもしれません。一方で、李克強総理の後任の総理になりそうな人物は今の中国共産党政治局常務委員の中にはいませんから、もし李克強氏が総理を続けないのであれば、今後人事で相当揉めることになるでしょう。

 中国経済は「ハードランディング」はないとしても、長期低迷の状態は相当長い期間続くことになるのかもしれません。

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