« ゾンビ企業対処の正念場 | トップページ | G20における李克強総理の出番 »

2016年8月27日 (土)

「健康中国2030計画」の意味するもの

 今日(2016年8月27日(土))付けの「人民日報」1面トップ記事によると、昨日(8月26日)、中国共産党政治局は会議を開いて「健康中国2030計画」について審議した、とのことです。先週の発言でも書きましたが、今年の夏休み明けの中国指導部が一同に会した最初の「仕事」は「全国衛生健康大会」への出席でした。中国の政権指導部が中国人民の健康増進のために努力するのは大変よいことであるし、医療保険制度、食品や薬品の安全、健康を守るための環境保護問題などが中国における喫緊の政策課題であることは間違いないので、党政治局が「健康中国2030計画」について議論することは、別に「おかしなこと」ではないと思います。

 ですが、「いつもひねくれた目で中国指導部の動きを見てしまう」傾向のある私としては、「なぜ北戴河会議明けの最初の党政治局会議で議論する課題が『健康』なのか」「この手の実務的な政策の決定は国務院マターであって、重要な政治路線を決める場である中国共産党政治局会議で議論するような案件ではないように見える」と思いました。また「2030年」というタイミングについて、「なぜ『2030年なのか」「何か腑に落ちないなぁ」「ウラがありそうだなぁ」と思ってしまうのでした。

 人民日報の記事によると、「健康中国2030年」は、昨年(2015年)中国も賛同して国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を実行するためにも重要、とのことでした。でも「『国連の持続可能な開発のための2030アジェンダ』と中国人民の健康増進計画とを結びつけるのは、ちょっと強引過ぎませんか?」と私は思いました。また「計画」にはあまり具体的な政策決定事項が盛り込まれていないようで、党政治局会議で扱う案件にしては中身が薄すぎる、という印象を持ちました。

 それで、この「健康中国2030計画」に関する党政治局会議での議論の本質は、健康そのものではなく、習近平氏が主導する政権が2030年まで計画の遂行を担当する、つまり習近平主席は慣例に従って2022年の党大会で引退することはせず2030年過ぎまで政権を担当することの是非についての議論だったのではないか、と私は思ったのでした。

 今までの慣例に従えば、2012年の党大会で総書記になった習近平氏は2022年までの10年間が任期で、2022年には次の中国のトップが決まることになります。そうであれば、来年(2017年)秋に予定されている次の党大会で「2022年に党総書記(=国家主席)になる候補者(場合によっては複数)」を政治局常務委員に任命しておくことになります。過去の例でも2002年に総書記になった胡錦濤氏は1992年に政治局常務委員になっていますし、現在の国家主席の習近平氏と国務院総理の李克強氏は2007年の党大会で政治局常務委員になっています。

 今の政治局常務委員7名のうち、習近平氏と李克強氏以外の5人は年齢的には従来の慣例では来年(2017年)の党大会で引退となります。現在国務院総理の李克強氏が2022年の党大会で総書記になる可能性があるのであれば話は別ですが、そうでなければ2022年に習近平氏が次世代の指導者にバトンタッチをするつもりならば、次期トップの候補者を来年(2017年)の党大会で政治局常務委員に任命して経験を積ませる必要があります。ただ、もし、習近平氏が従来の慣例を変更して2022年以降もトップの座に居続けたいと考えるならば、来年2017年の党大会では政治局常務委員には「総書記・国家主席にはなりそうもない人物」だけを任命することになるでしょう。

 中国人民の健康に関する議論は重要な議論だと思いますが、今のタイミングでやらなければならない議論でもないと思います。今のタイミング、つまり来年(2017年)の中国共産党人事の根回しが行われたであろう今年の北戴河会議の後に行われた中国共産党政治局会議で議論されたというタイミングから、私は「健康中国2030計画」に関する議論とは、実は習近平氏の政権が2030年まで継続してよいかどうかの議論だったのではないか、と考えたのでした。

 中国人民の健康は政権安定の基盤であり、中国指導部の動きをなんでもかんでも「権力闘争を反映したもの」と考えるのはあまりに偏狭な見方だ、という御批判もあろうかと思います。私も「考え過ぎかなぁ」とも思うのですが、まぁ、こういう見方もある、という意味で紹介してみました。日本の新聞は、「健康中国2030計画」なんて、あまり関心を持たずに記事にすることもないだろうと思ったので。

|

« ゾンビ企業対処の正念場 | トップページ | G20における李克強総理の出番 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« ゾンビ企業対処の正念場 | トップページ | G20における李克強総理の出番 »