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2016年7月23日 (土)

「李克強はずし」にはなっていない現状

 二週間前のこのブログに「習近平主席による『李克強はずし』が始まったのか」と書きました。最近、習近平主席が主宰する「中央全面深化改革指導小組」に「副組長」であるはずの李克強氏が欠席する例があったほか、7月8日に開かれた習近平氏主宰の「経済形勢専門家座談会」に李克強氏が欠席したからでした。

 しかし、7月11日には李克強氏が主宰する「経済形勢専門家と企業家による座談会」(習近平氏は出席していない)が開かれたことが報道されました。「国家主席と国務院総理とがバラバラで経済形勢専門家との座談会をやってどうすんの。やるなら一緒にやってよ。」と思いますが、こうした報道を見ると、少なくとも李克強氏が経済政策から「はずされた」という状況にはなっていないようです。

 そうした中、昨日(7月24日)に開催された「中央全面深化改革指導小組第26回会議」(習近平氏が主宰)には李克強氏も出席しました。これを見ても、今は「李克強はずし」の状態にはなっていないようです。それどころか、今日(7月24日)から四川省成都で開催されているG20財務大臣・中央銀行総裁会議に先立って昨日北京で開かれた「『1+6』円卓対話会議(中国と6つの国際経済金融機関との会議)」では、李克強氏がIMFのラガルド専務理事ら国際経済金融機関の幹部とにこやかに会談する場面がニュースで流れていました。このニュースは、まるで「李克強氏こそが中国政府の経済政策の中心人物なのだ」と内外に宣言しているように見えました。李克強氏は、こうした国際会議に数多く出るので、国際的な場面から見ると、むしろ李克強氏が政府の中心におり、習近平氏の方が「はずされている」ように見えることすらあります。

 おそらくは、まもなく開かれる中国共産党の現役幹部と老幹部(引退した幹部)が集まる会議「北戴河会議」を前にして、今、習近平氏と李克強氏の間でいろいろな「駆け引き」が行われているのだと思います。ただ、ちょっと心配なのは、今年は揚子江流域を中心に相当にひどい豪雨が続いていて、広範な地域で洪水や土砂崩れの被害が出ており、そんな中で北京の中枢部で「権力争い」や「来年の党大会で決まる人事を念頭に置いた駆け引き」なんかやっていていいのか、と多くの中国人民が感じているのではないか、ということです。「権力争い」や「駆け引き」は通常「見えないところ」でやるものですが、現在の中国共産党指導部に関しては「権力争い」や「駆け引き」が行われていることが外部から(ということは中国人民から見ても)ミエミエなのですが、これは問題だと思います(「見えないところでやるよりも透明性があってよろしい」という意見もあろうかと思いますが)。

 中国に関しては、南シナ海問題で既成事実を積み上げている問題とか、中国軍による「偵察」の問題とか、外交上非常に微妙な問題に対して軍や国防部の幹部が対外的に発言することがよくあり、「北京の指導部中央は軍の現場を完全にコントロールしているのか」(いわゆる「シビリアン・コントロール」が確立しているのか)といった懸念もあります(現在の制度上、国家主席で中国共産党軍事委員会主席の習近平氏には人民解放軍(=中国共産党の軍隊)の指揮権はありますが、李克強総理には軍の指揮権はありません)。中国の指導部が「権力争い」や「駆け引き」をやっていることが外からミエミエになっている現状は、中国国内政治の観点でよくないだけではなく、国際情勢の観点でも不安定要素になるので、なんとかして欲しいと私は思っています。 

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コメント

日本の労働市場は、新しい形を構築しなくては、世界に伍した国づくりができないと思いますね。

投稿: 根保孝栄・石塚邦男 | 2016年8月 4日 (木) 15時14分

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