« イギリスのEU離脱と香港2047年問題 | トップページ | トルコの軍事クーデター事件で思い出すもの »

2016年7月 9日 (土)

習近平主席による「李克強はずし」が始まったのか

 6月27日に開催された「中央全面深化改革指導小組25回会議」(習近平氏が主宰)に李克強氏(小組の副組長)は欠席でした。今年3月26日付けのこのブログの記事にも書いたのですが、3月22日に開かれた第22回会議でも李克強氏は欠席しています。3月の第22回会議の時は、李克強氏は、海南島で開かれた中国・メコン川周辺諸国首脳会議とボアオ経済フォーラムに出席するために海南島へ行っていたために欠席だったのですが、6月27日の第25回会議は、天津で開かれていた世界経済フォーラム(通称「夏季ダボス会議」)に出席したことによる欠席でした。

 世界経済フォーラムは、民間団体主催のフォーラムですが、李克強氏は毎回出席しており、世界の経済界も「中国の国務院総理の生の発言を聞く機会」として重要視していたと思います。特に今年はスケジュール的にイギリスのEU離脱を決めた国民投票の直後であっただけに、世界は李克強氏の発言に注目していました。世界経済フォーラムが開かれた天津市は北京に隣接しており、今は高速道路もありますから、車で1時間程度で移動できますので、天津での会議と北京での会議を掛け持ちすることはいくらでも可能した。それを考えると、6月27日の「中央全面深化改革指導小組25回会議」は、李克強氏が世界からも注目されている「夏季ダボス会議」に出席しなければならないタイミングをわざと狙って開催されたように見えます。

 さらに、昨日(2016年7月8日)、習近平主席は「経済形勢専門家座談会」を開催しましたが、この座談会には副総理で党政治局常務委員の張高麗氏や中国人民銀行の周小川総裁らが出席したのに、国務院総理の李克強氏は欠席でした。この日は、先に亡くなった中国共産党老幹部のお葬式や国務院常務委員会が北京で開かれ、李克強氏はこちらには出ていますので、この日は李克強氏は間違いなく北京にいました。なのになぜ「経済形勢専門家座談会」に欠席したのでしょうか。まぁ「経済形勢専門家座談会」は、一種の「勉強会」であって、何か重要な政策を決定する会議でもないので、李克強氏が出席しなくても構わない会議なのだ、という見方もできますが、イギリスのEU離脱決定など様々な国際経済情勢が複雑化するなか、中国の経済政策運営をどうするのか、極めて重要なタイミングで、国家主席が主催する「経済形勢専門家座談会」に経済運営の実務を担当する国務院総理の李克強氏が出席しないというのは、どう考えても不自然です。

 李克強氏が欠席した3月22日の「中央全面深化改革指導小組22回会議」、6月27日開催の「中央全面深化改革指導小組25回会議」、7月8日開催の「経済形勢専門家座談会」の全てには、副総理の張高麗氏(党政治局常務委員序列7位)は参加していますので、ほとんどこれは習近平主席による「李克強はずし」と言えるのではないでしょうか。こうした会議は、誰が出席したかも含めて、「人民日報」や中国中央電視台の夜7時のニュース「新聞聯播」でトップニュース扱いで報じられていますので、李克強氏の会議欠席は「単なるスケジュール調整上、都合が合わなかったことによる欠席」ではなく、「経済政策に関する会議からは李克強氏ははずします」というメッセージを意図的に発しているものと理解すべきなのではないでしょうか。

 今週月曜日(2016年7月4日)、胡錦濤総書記時代の中国共産党中央弁公庁主任(党の「事務局長」のようなもの)だった令計画氏が汚職の罪で無期懲役の判決を受けました(令計画氏自身、上告しないと宣言したので、おそらく刑はこれで確定)。胡錦濤氏、李克強氏、令計画氏は、中国共産主義青年団出身で「団派」という派閥の一員である、とよく言われます。中国共産党内部の権力闘争は、「習近平主席と団派との争い」といったような単純な形で議論することはできない複雑なものだと私は想像していますが、まるで「李克強はずし」に見えるような最近の李克強氏の会議での欠席と令計画氏の無期懲役判決は、一連の動きとして繋がっているように見えてしまいます(複数の話を単純化して「一連のもの」として理解するのはよくない、と私は常々思っていますが)。

 例年ですと、7月末~8月上旬頃に、中国共産党の引退した幹部と現役幹部が一同に回する「北戴河会議」が開かれます。来年(2017年)秋には中国共産党大会が開かれて、習近平政権の二期目の人事が議論されますので、今年(2016年)の「北戴河会議」では、そのための「根回し」が行われるのではないかと見られています。9月には浙江省杭州でG20首脳会議が開かれますので、その前に人事に関する重大な情報が漏れ出てくることはないと思いますが、「イギリスのEU離脱決定」「アメリカでトランプ大統領誕生の可能性は?」といった不安材料が山積する中、中国の政治状況は穏やかであって欲しい、と祈るばかりです。

 なお、一部、来年(2017年)の党大会で李克強氏は全人代常務委員会委員長になる(つまり国務院総理をはずれる)といった観測も流れているようですが、ちょうど10年前(2006年頃)、「温家宝氏は2007年の党大会で国務院総理をはずれるのではないか」といったウワサがあったことを思うと、そういった類の「ウワサ」はアテにはなりませんので、情勢は慎重に見守っていくことが必要だと思います。

|

« イギリスのEU離脱と香港2047年問題 | トップページ | トルコの軍事クーデター事件で思い出すもの »

コメント

南沙諸島の人工島建設を強行している中国に対して、国際的な審判が下った。「治癒動くのやり方は違法な強権行為だ」とするもの。中国はこれをどう受け止めるのか。国際的な裁定を虫するなら、中国は国際社会で孤立することは避けられない。pout

投稿: 根保孝栄・石塚邦男 | 2016年7月13日 (水) 02時24分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« イギリスのEU離脱と香港2047年問題 | トップページ | トルコの軍事クーデター事件で思い出すもの »