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2016年5月28日 (土)

今夏の中国はまた「大都市不動産バブル崩壊」か

 通常「バブル」というと、熱狂の最中には「バブル」とは気がつかないが、はじけた後で振り返ってみて「あれはバブルだったのだ」と反省することが多いものです。しかし、中国経済に限って言えば「バブル」はいつも「今、これはバブルだ」とハッキリわかります。バブルが崩壊した後は「やっぱりね」とみんなで言い合うだけで、誰も懲りずにまた次のバブルが始まります。そんなパターンが何回も繰り返されてきています。

 多くの国ではバブルを経験すると多くの人は懲りて慎重になるものですが、中国の方々はそんな「やわ」な方々ではありませんので、前のバブルで打撃を受けたとしても、また次のバブルが始まると「今度のバブルでは自分は頂点で売り抜いてみせる」とみんなで再び参戦するようです。このタフさ加減については他の国の人々ももう少し見習う必要があるのかもしれません。ただ、度重なるバブルで、中国経済の内部には、相当の「ダメージ」が見えない形で蓄積されていると思います。

 中国の過去のバブルは大きなものとしては「2007年の株バブル」「2013年の不動産バブル」「2015年の株バブル」が記憶に新しいところです(2007年の「プーアル茶バブル」など、小さなバブルはこのほかにも山ほどあった)。今年(2016年)に入って中国の株の方は、上海総合指数で3,000ポイント以下のところで低迷し、売買代金もバブル状態だった去年(2015年)の今頃の十分の一程度に減っているようです。その分、今年(2016年)は深セン、北京、上海、南京などの大都市の不動産がバブル状態になっているようです。この点については、5月27日(金)朝にテレビ東京で放送された「Newsモーニングサテライト」で三菱東京UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘氏が指摘していました。

 現在の上記四都市の不動産価格の推移は、そのグラフの形からして、数ヶ月以上もつとはとても思えませんので、9月に浙江省杭州で行われるG20首脳会議の前に今の中国の大都市不動産バブルは崩壊してしまうかもしれません。過去のバブルでは、それが崩壊した時点で、中国当局は、情報コントロールを行うとともに2015年の株バブル崩壊時に見られたなりふり構わぬ株価買い支え策など、全体経済に影響が波及しないような策を講じてきました。そのため、中国の数々の過去のバブル崩壊は、中国経済全体を崩壊させるようなことはありませんでした。ただ、過去のバブル崩壊のキズは、不良債権等のような形で先送りさせて表面上は見えないだけなのだと思います。また、おそらくは過去のたび重なるバブルで経済的に没落した人々が多数いるはずなのですが、中国の場合は、強力な情報規制により、そういった人々の存在が表面上は見えていません。

 しかし、今回の(2016年の)中国の大都市不動産バブルは、その頂点とアメリカの再利上げのタイミングとが一致する可能性があり、「アメリカの利上げ観測の高まり」→「人民元の先安感の再上昇」→「投資家による不動産の投げ売りと資金の外国への逃避(人民元売り・ドル買いの活発化)」→「対ドル人民元レートの急落とそれに対抗する為替介入による中国の外貨準備の急減」という形で進むことによって、世界経済に恐怖の連鎖が広がってしまう可能性があります。

 さらに、9月のG20首脳会議で、パナマ文書で問題が表面化したタックス・ヘイブンに対する規制強化が議論される可能性があります。パナマ文書の公開で明らかになったように、タックス・ヘイブンの恩恵を受けている者の中に数多くの中国人や中国企業が含まれています。これらの中国人や中国企業がG20でのタックス・ヘイブン規制強化の動きの前に投資資金の「店じまい」をしたいと考えるのならば、この夏が対中国国内投資を引き上げて外国の他の場所へ資産を移すちょうどよいタイミングとなります(それがわかっているので、G20の議長国である中国は、タックス・ヘイブン問題について、本気では規制強化をしようとはしないかもしれません)。

 また、グラフの形状からすると、中国大都市の不動産バブルは年内にもはじけることは必至だと思いますが、中国政府は、大規模インフラ投資の拡大で(2008年のリーマン・ショック対応の時と同じように)バブル崩壊を先送りしてしまうかもしれません。

 既に、5月11日、中国の発展改革委員会は「交通インフラ設備重要プロジェクト建設3年行動計画」を発表しています。これは、2016~2018年の3年間に鉄道、地下鉄、空港、道路などに4.7兆元(今のレートで約78兆円)を投資しようというものです。金額や期間で見ると2008年11月~2010末までの2年強の間に4兆元(当時のレートで約60兆円)を投じたリーマン・ショック対応の大規模投資と同じような規模ですが、2008年の4兆元投資の中にはこの年5月に起きた四川巨大地震等の復興費用約1兆元も含まれており、交通インフラだけに限ってみれば、今回の方が格段と規模が大きいと言えます(2008年の4兆元投資の内訳では「鉄道、道路、空港、都市の電力網」の分は約1.8兆円とされていましたので、これと比較すると今回の投資の規模は2倍以上ということができます)。

 また、今日(2016年5月28日)付けの「人民日報」1面トップ記事によると、中国共産党は昨日(5月27日)、中央政治局会議を開いて、北京での副都心建設と北京・天津・河北省共同発展プロジェクトについて検討したとのことです。過密化する北京の都市問題を解決するため、北京の首都機能と非首都機能を分離するために副都心を建設することを検討したとのことです。詳細はまだ不明ですが、おそらく今後これに関する大規模建設プロジェクトの話が出てくると思います。本件は「北京の都市問題解決」という大義名分がありますが、別の一面として経済対策としての大規模インフラ投資の意味があると思います。

 3月の全人代で「ゾンビ企業を処置する」と繰り返し述べていた構造改革政策はどこへ行ってしまったのだろう、という感じがしますが、おそらくは来年(2017年)秋に予定されている中国共産党大会で各種の人事が決定されることなどを考慮して、習近平政権首脳部としても、党内の支持を得るために「構造改革よりも大規模財政出動」に舵を切らざるを得なかったのかもしれません(選挙を前にしてどこかの国の政権も同じようなことをやるのでしょうから、中国だけを批判することはできないと思います)。

 だとすると、もし仮に、今年の夏、中国の大都市での不動産バブルでの「急激な崩壊」が避けられ(または不動産価格が下落したとしても経済全体へのインパクトは大きく出ないようにコントロールされ)たとしても、経済構造の改革がなされないまま大規模投資で経済成長率だけは維持される状態が続くことになります。問題は、鉄道にしろ道路にしろ、建設した後には必ず一定の維持費用が掛かることです。かつて日本で高度経済成長が終わった後のタイミングで国鉄の多くの路線が重荷になってしまったように、中国における必要以上に急速な交通インフラ投資は、将来の中国に大きな重荷を残すことになると思います。

 今年の夏は、「イギリスはEUを離脱するのか」「アメリカでトランプ大統領候補が誕生するのか」が「大きな心配事」ですが、それらが「なんとかなった」と思ったら、気がついたら中国経済で大変なことになっていた、という状況になるかもしれません。中国の株価があまり上下に変動しないからと言って中国経済に対する警戒感を緩めてはいけないと思います。

 安倍総理は、先週行われた伊勢志摩サミットで「今はリーマン・ショック直前の状況に似ている」と再三発言して警戒感を示しましたが、多くの人から「消費税再増税延期を決めるための理由付けとしてそう言いたいのはわかるが、客観的に言って、現在の状況を『リーマン・ショック直前と似ている』とまで大げさに言うのはいかがなものか」と批判されています。この夏、中国の不動産バブル崩壊を発端とする世界経済危機が起きて、「安倍総理の『予言』は正しかった」ということには絶対なって欲しくないと思います。

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