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2016年4月23日 (土)

インターネット社会と中国共産党との関係

 現在の中国とインターネットとの関係を考える上でひとつの参考となる会議が4月20日に開かれました。「ネットの安全と情報化に関する座談会」です。この座談会は、習近平総書記(国家主席)が主宰したもので、中国のネット検索トップ百度(バイドゥ)創業者・CEOの李彦宏氏(ロビン・リー氏)やネット通販最大手のアリババ集団会長の馬雲氏(ジャック・マー氏)も出席していました(国際的に活躍する中国人は英語風の愛称を自ら名乗ることがよくあります)。

 これらのネット関連企業は、間違いなく現代中国の驚異的な経済発展の一旦を支えているものであり、習近平主席も、ネット業界が今後の中国経済発展のカギを握っていると考えていると思うからこそ、こうしたネット企業トップとの意見交換会(座談会)を開いたのだと思います。

 ただ、私の個人的な印象を言わせてもらえば、ほとんど古来からの中華帝国皇帝のように権力を一点に集中させている習近平主席と国際的ビジネスシーンで活躍するネット企業トップとの関係は、なんともアンバランスで奇妙なものに見えました。

 李彦宏氏は、アメリカ留学後中国に帰国して百度を創業したのですが、既に中華人民共和国の国籍を離れてアメリカ市民権を得ています。アリババ集団の馬雲氏も、世界を飛び回っているビジネスマンで、一昨年9月にアリババがニューヨーク証券取引所に上場した時、経済専門チャンネルCNBCに出演して流ちょうな英語でキャスターと話していた姿を思い出します(この時傍らにはアリババの筆頭株主であるソフトバンクの孫正義社長もいました)。こういった国際的ビジネスマンたちと習近平主席とはどこまで仲良くやっていけるのだろうか、という印象を私はどうしても持ってしまいます(国際的な経済シンポジウムにしょっちゅう出席して世界のビジネスマンと談笑する姿を何回も見ている李克強総理の方にはそういう「違和感」は感じないのですが)。

 ネット企業に限らず、現在、中国には国際的にビジネスを展開している民間企業が多数ありますが、これら民間企業のリーダー達の思うところと中国共産党の思惑とは、一致しているところと衝突する部分の両方があると思います。中国経済の大きな部分を担っているこれら中国の民間企業の有力者たちと中国共産党とがどうやって折り合いを付け続けていけるのか、は、中国の経済社会の将来を考える上で大きな課題です。

 もうひとつ、今回の「座談会」で私の印象に残ったのは、習近平総書記がネットの政府監視機能について言及したことです。歴代の中国共産党幹部は、インターネットを使った人民による政府や中国共産党幹部に対する監視機能を肯定する発言をときどきしており、特段の新し味はないのですが、今回の習近平主席のネットを使った人民による政府の監視機能に関する発言は、かなりストレートなものだったとの印象を私は受けました。

 2016年4月21日付け「人民日報」2面の記事では、次のように紹介しています。

「総書記は、ネット上に出された善意の批評やインターネットの監督に対する意見については、党や政府の政策に対して提言されたものはもちろん、指導部幹部個人に対して提言されたものであっても、(そよ風や霧雨のように)やり方が穏やかなものであるのはもちろん、耳に痛い忠言であっても、我々は、歓迎するのはもちろん、真剣に研究し取り入れなければならない、と指摘した。この重要な論述は、我々の党のインターネット発展に対する寛大な気持ちと開放的な視野及び科学的態度を大いに体現しているものである。」

 私は、2007年~2009年に北京に駐在していて、中国当局のネット監視機構による中国共産党にとって都合の悪いサイトへの強引なアクセス遮断やネット上の都合の悪い記事や発言に対する徹底的な削除の嵐をよく知っていますので、上記のように「人民日報」が「我々の党のインターネット発展に対する寛大な気持ちと開放的な視野及び科学的態度」について述べることについては「よく言うよ」というのが率直な感想です。ただ、「人民日報」が中国共産党総書記の言葉としてこうした考え方を堂々と表明していること自体が「問題点を自分たちでもよくわかっていることを示している」という意味で、意味あることだと思っています。

 力を増す民間企業トップの人たちの意見やネット上にあふれる政策や中国共産党幹部に対するまじめな批判や提言に対してどう対処していくべきかが、中国にとって重要な課題のひとつであることを改めて象徴するような今回の「座談会」だったと思います。

 もっとも、総書記が「ネット上での提言を歓迎し、取り入れる」と宣言したとしても、実態は今後も何も変わらないだろうことは、中国人民もよくわかっていると思いますけどね。

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