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2016年2月27日 (土)

中国の生産能力過剰問題対策に対する本気度

 先ほど上海で開かれていたG20財務大臣・中央銀行総裁会合が閉幕し、共同声明が発表されました。これに対して、世界のマーケットがどう反応するかは、週が明けてみないとわからないところです。

 この会合では、中国の生産能力過剰問題も議論されたようですが、おそらく中国自身は、かなり本気でこの生産能力過剰問題に対処しようとしていると私は思っています。具体的な方針は、3月5日から開かれる全人代で議論して「全人代で決まった事項だ」との形式的な「お墨付き」を得た上で、具体的な「ゾンビ企業」(赤字を出しながら生産を続ける国有企業)のリストラに取り組んでいくのだと思います。

 中国当局の決意を示す一つの例として、今日(2016年2月27日)付け「人民日報」5面に失業問題に対する記事が載っていました。「我が国の雇用は総体的に安定している 一部に一定規模の失業のリスクはあるが、第13次五カ年計画の末には、第三次産業が雇用を吸収している」と題する評論記事です(中国の第13次五カ年計画は2016~2020年)。この記事は、人民日報の記者が人力資源・社会保障部科学研究所の鄭東亮所長に話を聞いて書いた格好になっています。「2016年、生産能力に関して『ゾンビ企業』を処置することは大規模なリストラ失業を引き起こすのだろうか? 潜在的失業が顕在化するリスクはあるのだろうか?」という疑問から書き起こしており、明確な問題意識の上に立って書かれています。

 この記事で鄭東亮所長は「中国の現在の雇用は総体的に安定しており、この安定的な状況は今年を通じて続くが、一部の地区、一部の業界においては、一定規模の失業のリスクはあり、この点は更に重視していく必要がある」「中国では既に『失業の風潮』が出現していると称する説があるが、これは現実とは合致していない」と述べています。

 この記事で、鄭東亮所長は、以下の理由により、経済の下向き圧力は持続的に大きくなっているものの、今年の雇用情勢について引き安定的な状況が続く、と指摘しています。

○経済が安定的に発展しているという基本的状況は変わっていないこと。

○中国では第三次産業が拡大しており、第三次産業の雇用が増大していること。

○行政の簡素化により、起業が奨励されていること。

 ただ、鄭東亮所長は、今年、生産能力過剰問題の解決のために「ゾンビ企業」の処置が実施段階に至った場合、一部地区、一部の業種で一定規模の失業が発生するリスクがあることも指摘しています。例えば、東北地方(黒竜江省、吉林省、遼寧省)、山西省、河北省等の、産業構造が比較的単一で生産能力削減が重点的に行われる都市で、鉄鋼、石炭等の業種に主に集中することになる、としています。鄭東亮所長は、中国の東部地区は、経済が比較的活発で雇用吸収力もあるので、仮にいくつかの企業が集中的にリストラを行っても、明確に失業が出現することはないだろう、とする一方で、一部の単一の産業に偏っている地方では、リストラされた労働者、特に中年年齢層や一定の技能しか持たない労働者の再就職に対する圧力が比較的大きくなる可能性がある、とも指摘しています。

 この記事は、「総体的には雇用は安定」とはしていますが、具体的な地域や業種を掲げた上で、リストラされた労働者の再就職が難しくなる場面もあり得る、と指摘している点で、「そうした状況になることも覚悟して欲しい」と「人民日報」が警告しているわけで、その点は軽くみるべきではないと私は思います。「人民日報」は、「中国共産党の舌と喉」ですから、こうした「甘くない現実」を正直に述べていること自体、中国共産党の相当の覚悟を表していると受け取るべきでしょう。

 特にG20財務大臣・中央銀行会合の当日、全人代開幕の10日前である今日(2016年2月27日)この記事が「人民日報」に掲載された、というタイミングも重要視すべきでしょう。先週(2016年2月20日付け)のこのブログで書いたように、最近の報道機関に対する締め付けの強化とも合わせて考えれば、これらの一連の動きは「一部の地区、一部の業種でリストラによる失業が出現するかもしれないけれども、生産能力過剰問題対処のために『ゾンビ企業』のリストラは断固として進めていく」という中国共産党中央の断固とした決意と受け取ってよいと思います。

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