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2016年2月 7日 (日)

2008年のデジャブー:リーマン・ショック再来に備える世界

 安倍総理は、2017年4月の消費税再増税に関して、「リーマン・ショック級の危機が来ない限り、消費税再増税の再延期はしない」と繰り返して述べています。最近、この安倍総理の言葉について、多くの人は、まるでマクベスに出てくる魔女の予言のように、今年後半「リーマン・ショック級の危機が来たので消費税再増税は再延期します」と語ることになる安倍総理自らの決断を自ら「予言」しているように聞こえる、と感じているかもしれません。

 昨年(2015年)8月の「中国発世界同時株安」や今年(2016年)に入ってからの世界の株式市場の急落状況を見て、いろいろな新聞・雑誌等で「2007年8月のパリバ・ショックからリーマン・ショックの起きた2008年に掛けての状況に似ている」との指摘がなされています。リーマン・ショック直前は原油価格の「異常な高騰」があり、今は原油価格の「異常な低迷」の状態なので事情は異なりますが、「何かおかしい」という感覚は共通しているのでしょう。

 よく「アメリカで二期続いた大統領が替わる大統領選挙の年=オリンピックのある年」に経済危機が来る、という話があります。2000年のITバブル崩壊、2008年のリーマン・ショックがそうだったからです。で、次は、今年(2016年)というわけです。

 上海の株価がリーマン・ショックの約1年前の2007年10月にピークを付けた後に急落したことを思い出すと、上海の株価が今回2015年6月にピークを付けた後急落したのは、2007年の再現のように見える、と感じている人も多いと思います。

 2008年の北京オリンピックの時、私は北京に駐在していました。北京オリンピック前後の中国経済の状況とリーマン・ショック襲来とが相互に関係していた、といった見方はあまりありませんが、私の北京駐在の経験を踏まえると、北京オリンピック直前の中国経済は、明らかに「バブル状態」でした。実際のオリンピックによる経済効果はそれほど大きくなかったため、2008年に入って「オリンピックに期待し過ぎた投資の過剰感」が意識されるようになった、との記憶があります。2008年は、2月の春節後、中国経済がなんとなく変調を来すようになり、初夏以降、中国国内航空便で航空チケットの「激安化現象」が起き、ホテルも供給過剰状態になった、という印象があります。

 中国経済における「北京オリンピックに対する過剰な期待」とアメリカ発のリーマン・ショックが関係していたのかどうかは、私にはわかりませんが、タイミング的には何らかの関係があったことは否定できないと思います。

 2008年の北京オリンピック直前の時期にホテルや中国国内航空で「過剰感」が出てしまった背景としては、2008年5月にあった四川大地震による中国国内の旅行自粛ムードがあったと思います。それと比較して考えると、今年8月にオリンピックがあるブラジルで、今(2016年2月時点)、ジカ・ウィルスの蔓延が問題になっているのも、何か2008年との共通性を感じさせます。

 2008年の北京オリンピック前の中国は投資過剰気味でほとんど「バブル状態」であったのに対し、今のブラジル経済は2年前のサッカー・ワールドカップの頃から既に「低迷状態」に入っており、「オリンピック終了後にバブルがはじける」というような状況ではありません。なので、2008年の中国と2016年のブラジルとでは明らかに状態が違うのですが、「オリンピックを機会に何かが変わるのではないか」という感覚については共通しているように思います。

 2008年9月に表面化したアメリカ発の世界経済危機であるリーマン・ショックに見舞われた世界は、同年11月に中国が打ち出した「四兆元の緊急経済対策」で、ある意味救われました。2016年の世界において問題なのは、2008年の中国のような「世界的経済危機を救う国」がどこにも存在しない、ということです。逆に、2016年は、中国が「世界的経済危機の出発点」になる可能性すらあります(次の世界経済の牽引役としてはインドがある、という考え方もありますが、経済発展の程度からして、インドに過大な期待を寄せることには無理があると思います)。

 シリア内戦とそれに起因するヨーロッパへの大量の難民の流入、「イスラム国」やイエメン情勢、サウジとイランの対立といった中東の混乱やロシアと欧米との政治的対立といった状況を踏まえれば、今(2016年)の世界情勢は2008年よりは条件はよくないと思います。中国経済自体の「ハードランディング」は避けられたとしても、中国経済の低迷に起因するブラジル等の新興国での経済危機が世界的経済危機に発展する可能性は否定できません。

 唯一の救いは、私が感じているように、今、世界の多くの人々が「2016年にリーマン・ショックの再来のような世界的経済危機が来るかもしれない」との警戒感を持っていることでしょう。2008年当時、アメリカのサブ・プライム・ローンについては問題視する意見もありましたが、多くの人は危機感までは抱いていませんでした。今は、多くの人が「危機感」を持っています。ヨーロッパ中央銀行のドラギ総裁の追加緩和示唆発言や日銀のマイナス金利導入は、世界経済危機に対する「予防的措置」と見ることもできます。

 世界経済にとって最も重要なのは、全ての地域で内戦等の紛争が終わり、全ての人々が普通に生活し、普通に経済活動を行える状況を確保することです。各国の中央銀行の金融政策や中国の経済政策等に注目が集まりますが、最も基本的なことは「世界全体での平和な状態の確立」でしょう。リーマン・ショック後の世界的経済危機が原油の需要減退をもたらし、その需要減退がもたらす原油価格の低迷が中東の政治的不安定さやロシア・プーチン大統領の政治的強硬姿勢を招いた、という側面もあるように、経済と政治とは常に互いにリンクしています。2008年の「リーマン・ショックの教訓」を知っている世界は、2008年とは違う対応ができるはずだ、と私は考えたいと思います。

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