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2015年11月28日 (土)

中国発の世界経済の乱気流はこらから「本番」が始まるのか

 昨日(2015年11月27日(金))、上海株式市場の上海総合指数は、対前日比で5.48%下げ、3,436.3ポイントで引けました。8月25日(火)以来の大幅な下げだったので、多くの人には再び「チャイナ・ブラック・マンデー」の不安がよぎったと思います。この日の上海株の下落は、その後取引された欧米の株式市場には大きく影響を与えませんでしたが、これは感謝祭のため市場参加者が少なかったことが原因であった可能性があり、週明け(11月30日(月))以降の世界のマーケットの反応が注目されます。

 「中国発の悪夢再び」と思わせるような株価の下落を意識したからなのかどうかはわかりませんが、今日(2015年11月28日(土))付けの「人民日報」1面には、「中国経済の四つの『変わらない』」と題する評論が載っていました。この評論では「中国の経済発展が長期的にはよい方向に向かっているという基本的な面は変わっていない」「中国経済の強靱さ、潜在力、転換の余地は大きいという基本的特徴は変わっていない」「中国経済の持続的な成長を支えるための基礎的条件は変わっていない」「中国の経済構造調整の向上前進の勢いは変わっていない」と指摘し、中国経済について心配することはない、と主張しています。

 私は「人民日報」を「ひねくれて」読むクセが付いているので、「人民日報」が「心配することはない」と主張する時が「最も本当は心配する必要がある時なのだ」と思ってしまいます。この「人民日報」の評論は、「中国経済を巡る情勢は何も変わっていないのだから、心配する必要はない」と言っているのですが、むしろ本当は「中国経済の基礎条件に変化がない(進歩がない)ので心配だ」と考えるべきなのでしょう。

 ここから年末まで、中国経済を巡っては、いくつかの「不安要素」が続きます。

○11月30日:IMFが人民元のSDR基準通貨入りを正式決定する見込み

 人民元のSDR基準通貨入りで、世界の人々が人民元に対する信用を高めるのならば人民元高に動くでしょうが、世界の人々(中国の人々も含む)の人民元に対する信用がそもそも低いのならば、人民元のSDR基準通貨入りで人民元の流動性が高まると、返って人民元安に動く可能性もあります。今年8月の状況を見ればわかるように、人民元を巡る為替レートの変動は、中国経済に対する不安を高める可能性がありますので、人民元のSDR基準通貨入り後の人民元為替相場の動向は注視する必要があります。

○中国の株式市場でのIPO(新規株式公開)の再開

 株価の暴落で7月初旬に停止されていたIPOが来週(11月30日の週)にも再開される見込み、とのことです。新規の株を買う資金を得るために手持ちの株を売る人が出るので、IPOの再開は株価の下げの要因になる、と言われていますが(昨日(11月27日)の株価の下げも、IPO再開を目前に控えたことによる下げ、との見方もある)、中国の投資家の心理状態がIPO案件をこなせるほどに回復しているのかは、まだ見えないところです。

○12月15~16日:アメリカFRB(連邦準備制度理事会)がFOMC(連邦公開市場委員会)を開いて利上げをするかどうかを決める

 既に多くの人々が今度の12月会合でアメリカは利上げをするだろう、と見込んでいますが、実際に利上げが行われた後、新興国や中国の市場がどう動くかはなかなか予測ができません。中国については、アメリカで利上げが行われると、中国企業の米ドル建て負債の金利負担が増えるので、アメリカの利上げの実施により、ただでさえ「借金漬け」の心配がある中国経済をさらに冷やしてしまうと心配する人もいます。

○年末に迫る中国の地方政府や企業の債務、理財商品の償還期限などがうまく乗り切れるか

 中国の地方政府や企業が抱える「借金」については、かなり前から問題視されているので、中国当局は「借り換え」や「返済先延ばし」等で「しかるべく対処」が行われているので、心配するほどのことにはならない、と一般的に考えられています。ただ、今年春頃までは時々ニュースになった企業のデフォルト(債務不履行)の話が、その後あまり聞こえてこないので、逆に「実際にはデフォルトになりそうなものはあるのに報道規制をして情報が伝わっていないだけではないのか」と勘ぐる人もいます。

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 一方、中国の政治状況を見てみると、習近平主席による「全権掌握」の動きは、ほぼ完成の域に達したようです。報道によれば、11月26日まで開かれていた中国共産党中央軍事委員会改革工作会議で、習近平氏(党中央軍事委員会主席でもある)が人民解放軍の大規模改革を行うことを表明した、とのことです。これは習近平氏が、軍の内部においても江沢民元主席の息の掛かった幹部を排除し、自らの支配体制を確立したことを表していると言えます。

 習近平主席への「一点権力集中」が進むことは、政治的には「安定化」するのでしょうが、私は、「一点権力集中」によって、リアルタイムで経済状況をウォッチしている経済実務担当者が自分の判断で動いて処罰されることを恐れて「指示待ち」状態になって、実際の経済運営がスムーズに行かなくなるのではないか、と心配しています。

 先日、中国中央電視台の夜のニュース「新聞聯播」で、「反腐敗闘争」の一環として、中国人民銀行の周小川総裁が中国人民銀行の職員の訓示する姿が放映されていました。「中国人民銀行職員と言えども『反腐敗闘争』の対象外ではあり得ない」ということを中国人民に示すためのニュースだと思いますが、私は「こんな『締め付け』をやったら中国人民銀行(中央銀行)の職員は時々刻々と変動する金融動向に応じた臨機応変な対応ができなくなるのではないか」と感じました。

 この懸念は、今年8月11日から三日間、中国人民銀行が不可解な「人民元安方向への為替水準の変更」をしたのは日々の金融動向とは関係ない「人民元をSDR基準通貨入りさせるため」という政治的動機で行われたのではないか、との疑念と相まって、中国の金融当局は、市場の流れと関係なく中国政府(=中国共産党)の意向を反映したオペレーションをするのではないか、との懸念を私に抱かせています。

 中国における習近平主席への「一点権力集中」は、「自由な経済活動が基本である国際経済秩序」の中では、むしろ「不安定な波乱を呼ぶ要因」になる可能性があります。

 これらのことを考えると、今年夏の「中国発の世界経済の乱気流」は単なる「序幕」に過ぎず、「本番」はむしろこれから始まる、と考えた方がいいのかもしれません。昨日(2015年11月27日(金))の上海株式市場の大幅な下げは、その「きざし」であったのかもしれません。

 今日(2015年11月28日(土))の日本経済新聞朝刊19面に「銅急落、陰の主役は中国 上海先物、個人が大量売り」と題する記事が載っていました。この記事では、ロンドン金属取引所(LME)の銅相場は今週6年半ぶりの安値を付けたが、これは上海市場で個人が大量の先物売りをしたから、との見方を紹介しています。こういった「相場」には「はったり」もつきものですので、相場の動きと実際の中国の経済情勢は一致していないのかもしれませんが、中国の銅需要が増える見通しなのだったらこういう「売り仕掛け」はしにくいと思うので、中国の投資家自身、中国経済の低調は今後も続く、と見ているのでしょう。

 中国の大規模景気対策が2008年のリーマン・ショック後の世界経済の立ち直りを引っ張ったのは事実ですから、「リーマン・ショックからの立ち直りはアメリカの金融政策がうまくいったからだ」「アメリカが利上げした後に世界経済が混乱するのは中国経済が低迷しているからだ」という「良いことの原因はアメリカにあり、悪いことの原因は中国にある」といった見方はアンフェアだと思いますが、「世界経済の大変動」を防ぐためには、中国は、中国経済の現状の「真の姿」を透明性を持って世界に説明して、不要な「疑心暗鬼」を解消すべきだと思います。

 なお、多くの企業経営者や個人の中には実際「アメリカの利上げ後、中国発の世界経済の乱気流があるのではないか」との懸念を持っている人も多いと思います。そういった懸念が設備投資や消費にブレーキを掛けている、という見方も、日本の経済政策を進めていく上でも重要な観点だと私は思っています。

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コメント

中国にこけてもらいたくない。中国がおかしくなったら、日本はおろか世界がだめになることを新倍している。
中国は憎たらしいので、ダメになればいい、と考えたくもなるが、冷静に考えると、せっかく経済が上向きな日本なのに、世界の工場と言われる中国経済が停滞すると、日本経済もブレーキがかかる。

m9(^Д^)プギャー

投稿: 根保孝栄・石塚邦男 | 2015年12月 4日 (金) 17時06分

中国経済の先行きが心配されている。
アメリカが風邪を引くと世界中が病気になる、とかつて言われたが、現在は中国がコケルと世界がこけることになる。
なぜなら、中国は世界最大の工場だからだ。
中国を良く思っていない日本人は、中国が不況だと「ざまぁ見ろ」と溜飲を下げがちだが、中国経済かおかしくなると、日本だって大きな余波をかぶることになるのだ。

投稿: 根保孝栄・石塚邦男 | 2015年12月12日 (土) 01時31分

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