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2015年10月 3日 (土)

国慶節の「爆買い」とバブル崩壊の時間差問題

 今、中国の国慶節で、日本各地に中国人観光客がやってきて「爆買い」をしている様子がテレビ等で報道されています。「今年6月の株価暴落にも係わらず『爆買い』の意欲は衰えておらず安心した」という見方と「こうした『爆買い』は一種の『ブーム』であり長続きするはずがない」という身構えた見方と両方があるようです。

 10月1日(木)夜に放送されたNHKニュースウォッチ9の特集が端的にそれを表していました。この特集は、この日発表された日銀短観で大企業の製造業の景気判断指数が+12ポイントと3期ぶりに悪化する一方、大企業の非製造業の景気判断指数が+25ポイントと1991年11月以来の24年ぶりの高水準になったことに関して、以下の状況を紹介していました。

○国慶節の連休で、中国人観光客相手の販売店が非常に活況であること。

○中国人観光客の増加で観光バスが足りない状態となっており、あるバス製造会社では昨年比80%増の注文が入って、フル生産状態にあること。

○しかし、このバス製造会社では、中国での株価急落と経済指標の悪化などを踏まえて、今後ともバスの注文が継続するかどうかわからないため、本格的な設備増強のための投資には踏み切れないでいること。

 最近のアメリカの経済指標でも、非製造業関連は比較的順調に推移しているのに対し、製造業関連の指標が悪化しつつあることから、同じような状況がアメリカでも起きている可能性があります。

 日本やアメリカの経済状況の変化の原因を全て中国経済の変調に求めることは正しくないと思いますが、「これまで資源や設備を『爆買い』していた中国経済の減速」→「先進国から中国への輸出の減少+ブラジル等の資源国・新興国から中国への輸出の減少を通じた資源国・新興国での経済減速と先進国からそれらの国々への輸出の減少」→「先進国では非製造業は順調だが、輸出を中心とする製造業が不調」といった現象が生じていることは間違いないと思います。

 昨日(2015年10月2日)に発表されたアメリカの2015年9月の雇用統計が事前予想に比べて非常に悪く、ニューヨーク株式市場の株価は乱高下しました(結局、FRBによる利上げ観測の後退でニューヨーク・ダウは対前日比200ドル以上上がりましたが)。「中国発の世界経済の後退」が既にアメリカにも影響を及ぼしているのかもしれません(中国発の経済減速が直接アメリカに影響しているという実体面だけではなく「これから中国発の世界経済減速がアメリカ経済に及んでくるかもしれない」という不安により経営者が雇用を増やすことに慎重になっているという心理的な面もあると思います。ただ「景気は心理」なので、例え影響が心理面によるものであったとしても軽視すべきではありません)。

 ポイントは、経済減速は様々な分野において「時間差」をもって影響を及ぼす、ということです。日本の「平成バブル」の時を考えても、日経平均株価のピークは1989年12月30日の大納会でしたが、地価のピークは1991年頃でした。バブル崩壊に伴う不良債権問題が1996年の住専問題や1997年の山一證券や北海道拓殖銀行の破綻に至るまでには8年近い時間が掛かりました。

 中国経済の減速については、中国政府が発表する統計数字が信用できないので、あまりハッキリしたことは言えないのですが、原油価格や中国の外貨準備等を考えると、中国経済は2014年半ばから急減速が始まった、と見るのが妥当なのではないかと思います。中国の株バブルがはじけたのが今年(2015年)6月でした。これから、「ハードランディング」のような急激な変化は起こらないとしても、中国経済の減速は今後数年から場合によっては十年オーダーの時間を掛けて、世界全体の様々な方面に影響を及ぼすことになるのだと思います。

 今の国慶節期間の「爆買い」の継続を見て「6月の株価急落の影響は限定的」と見る見方も可能ですが、これは単に「時間差」の問題であって、現時点では株価急落の影響が中国人観光客の「爆買い」にはまだ影響が及んでいないのだと思います。おそらくは、上記のNHKの番組でバス製造会社の人が心配していた「注文増がいつまで続くかわからない」と考えるのが一般的な見方なのだと思います。

 しかし、一方、そうした「先行きに対する心配」により、日本国内に染みついた「デフレ・マインド」が残り、企業は内部留保を従業員への賃上げの回さずに「いざという時の備え」として留保し続けている、というのが現状なのだと思います。日銀の黒田総裁は「インフレになる~、インフレになる~」というおまじないを唱え続けていますが、中国経済の大減速が時間差をもって日本にも押し寄せてくるという恐怖感がある限り、日本国内においてリスクをとって投資しようという「インフレ・マインド」が戻ってくるのは難しいと思います。

 上記で紹介した10月1日放送のNHKニュースウォッチ9の特集では、もうひとつ重要な点を報じていました。それは、中国における不動産市場の不調と株価急落により、中国の個人投資家が日本等の先進国の不動産投資に資金を振り向けていることを報じている点です。「中国における不動産市況の不調」→「中国株式市場の急落」は1年程度のタイムラグで起きましたが、今後、それが一定の時間差をもって、中国人観光客による「爆買い」の減少や中国人投資家による先進国不動産からの投資資金の引き上げへ移っていく可能性を予見している点で、この報道は重要だと思いました。

 今、「アメリカFRBは利上げできるのか」や「黒田日銀は追加緩和をやるのか」が話題になっていますが、FRBも日本銀行もECB(ヨーロッパ中央銀行)もそれぞれに国・地域の中央銀行であって、世界の中央銀行ではなく、自分の国(地域)以外には手も足も出せない、という問題がクローズアップされてきています。これから「中国発世界同時不況」が起きるかもしれない、という状況において、「中国はケシカラン」「中国政府は何とかしろ」と中国を非難していただけでは何も解決しません。幸い、リーマンショックを契機としてG20という枠組みができているので、G20で協調して世界経済の運営を図ってもらいたいと思います。

 なお、全く関係ないですが、AKB48はなかなか鋭いと思います。8月26日発売の最新シングル「ハロウィン・ナイト」(秋元康作詞)は、明らかに「平成バブル期」の1980年代に最高潮に達したディスコをイメージしています。この楽曲は、当然、8月24日の「チャイナ・ブラック・マンデー」の世界同時株価暴落が起きる前に制作されたわけですが、制作者は世の中に既にあった「バブルっぽい」雰囲気を感じていたのかもしれません。(AKB48は2013年秋の「恋するフォーチュン・クッキー」(これも秋元康作詞)でも「そんなネガティブにならずに」とアベノミクスのポイント(デフレ・マインドの払拭)を歌っており「あなどりがたい」と私は思っています)。

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コメント

中国経済の低迷で、日本に来る中国人の爆買いが減少するのではないか、と心配しているが、私は心配ないと思っている。中国の富裕層は四千万人。一度は日本に来たいと思っている層だ。
向こう十年は大丈夫だろう。年間最低でも五百万人の中国人が日本にやってくるだろう。

投稿: 根保孝栄・石塚邦男 | 2015年11月 6日 (金) 16時01分

・爆買いという言葉の凄まじさを目の前にする札幌駅前デパート    一首献上

爆弾が破裂したような凄まじさ・・という意味なのだろうが、すっかり中国人の買い物風景は日本の文化になってしまった感じで、さまさまですね。中国からの旅行者を中心に東南アジアの新興国からの来客を合わせて、東京オリンピックまでには、年間三千万人の外国人旅行者となりそうな嬉しい悲鳴です。

人口減少で国内の消費が落ち込む傾向が続く中で、日本への旅行者が前年比で30パーセント以上増え続けている現実は大歓迎です。年間三千万人の外国人旅行者といえば、パリなみですか。フランス全土では現在年間何人の外国人旅行者なのでしょうか。後に調べてみます。

投稿: 根保孝栄・石塚邦男 | 2015年12月 8日 (火) 20時25分

日中関係がぎくしゃくしているのに、中国から爆買いの客がぞくぞくと絶えないのは嬉しいことです。国内の消費が低迷している折に、またとないボーナスですね。
中国のみなさんに感謝ですね。lovely

投稿: 根保孝栄・石塚邦男 | 2015年12月11日 (金) 19時33分

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