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2015年5月23日 (土)

日本国内企業は今「中国経済バブル」の上で楽しんでいないか

 私は、中国株は4月末頃をピークにして調整に入ると思ったのですが、上海総合指数は昨日(2015年5月22日(金))には4,657.596と更に年初来高値を更新しました。「バブルだと思っていても、みんなで上げてしまう」という「止められないバブル状況」になっているようです。

 2007年の上海株バブルの時もそうなのですが、中国の投資家には、バブルだとわかった上で「自分はバブルをチャンスにして儲けられる。自分は絶対ババを引かない。」と思って取引しているタフな人が多いようです。

 それに反して、日本の投資家、企業家は、中国関連のビジネスに関しては、以前から、よく言えば「慎重」、悪く言えば「リスクを取らない」と言われてきました。

 私は1980年代、中国との貿易通商関係の仕事をしたり、1986年10月~1988年9月に北京に駐在したりしていましたが、「日中経済交流拡大期」だった1980年代ですら、「日本企業は中国市場の外にある左足に重心を置いたまま、右足の親指だけ中国市場に入れて湯加減を見ている」などと揶揄(やゆ)されていました。

 中国はビジネスに関してはしたたかですから、改革開放が始まったばかりの1980年代当時ですら、「これからは日中友好の時代です!」と顔ではニコニコしながら、「合弁期間は20年間で終了」「製品は全量輸出、部品の半分以上は中国国内産品を使うこと」など様々な厳しい条件を付けて日本企業と交渉してきました。なので、日本企業の中には合弁契約を断念することもあったのですが、欧米企業には将来の中国市場の有望さを見込んで、中国側が示す「無理難題の条件」を飲み込んで合弁契約するケースも多くありました。

 その結果、例えば、1980年代には北京市内では輸入された日本車を多く見かけたのに、2000年代には中国国内生産のドイツ系ブランド(フォルクスワーゲンやアウディなど)の車が目立つようになった、といった状況になりました。

 2007年4月から私が二度目の北京駐在をやっていた時期にも、中国側から「日本企業は中国ではバレーボールをやっているだけだ。欧米企業は、中国でサッカーをやっており、中国ゴールまで果敢に攻め込んでくるが、日本企業はネットの向こうの自陣からスパイクを打つだけで、中国の陣地に入ってこようとしない。」とよく批判されました。

 「チャイナ・リスクを強く意識し、中国を重要なビジネス展開の場とはするが、中国に頼り切ることはしない」という日本企業の慎重な姿勢は、結果的によかったのか悪かったのかわかりませんが、一つの「見識」ではあるのでしょう。

 ただ、上記の「中国に対して慎重な姿勢」を続けている日本企業は「中国国内を生産拠点にしている製造業」「中国国内に製品を販売する製造業」「中国国内で事業を展開するサービス業」に関するものです。「中国人による『爆買い』などインバウンド需要を当て込む日本国内の小売り業・サービス業」「中華圏(大陸及び香港、台湾系を含む)からの投資を見込む日本国内の不動産業」については、日本企業はあまり「チャイナ・リスク」を意識していないように見えます。

 「中国からのインバウンド需要の急増」や「中華経済圏からの日本国内不動産への投資」は、2012年末のアベノミクス開始以降の急速な円安や中国人観光客に対するビザ発給制限の緩和などの結果であり、2014年、2015年の対前年比の急増が今後もずっと続くとは思えません(2015年4月の訪日外国人客数は対前年同月比43%増。うち中国人については対前年同月比2倍に急増)。

 一方で、もし今後「中国経済バブル」が崩壊するとすると、中国を資金源とするインバウンド需要や日本国内への不動産投資は急激に冷え込むリスクを含んでいると言えます。

 よく「理財商品等の『影の銀行』や中国株に大量に投資しているのは中国国内の投資家であり、『中国経済バブル』がはじけても、日本など外国に与える影響は限定的」と言われます。たぶんそれは間違いではなく、「中国経済バブルの崩壊」がアメリカ発のリーマン・ショックのように直接的に日本経済に影響を与えることはないと私も思います。しかし、日本の特定の産業(あるいは特定の地域経済)が中国からのインバウンド需要や中華圏経済からの不動産投資に支えられているのだとすると、「中国経済バブルの崩壊」はインバウンド需要の急減や日本国内への不動産投資の急減(または投資の引き上げ)という形で、大きなマイナスのインパクトを日本経済に与える可能性があります。

 また、私が気にしているのは、最近、オーストラリアやロンドンを中心とするイギリス、ニューヨーク等のアメリカの大都市圏で不動産価格が上がっていることです。リーマン・ショック後、先進各国の国民の所得の向上はようやく始まったばかりですので、これら各国の不動産価格の上昇は、ぞれぞれの国民の投資意欲が向上したから、というよりは、中国からの資金の流入が背景にある可能性があると思われるからです。中国国内の不動産市況が停滞していることが、リターンを求める中国の国内資金を海外の不動産に向かわせているのかもしれません。

 従って、「中国経済バブルの崩壊」は、外国に対してはリーマ・ショックのような直接的なマイナスの影響を与えないにしても、不動産投資の急減(または投資の引き上げ)によって世界各国に波及していく可能性は小さくない、と思っています。

 1980年代末の日本のバブルを知っている人は、「財テク」に走った日本の企業がニューヨークの不動産や海外の美術品を買いあさったことを覚えていると思います。当時は「爆買い」という言葉はありませんでしたが、今考えれば、日本のバブル期、日本発の「爆買い」が世界で起きていたと言えます。

 今、日本国内で中国人の「爆買い」の恩恵を受けている人は多いと思いますが、中国人の「爆買い」や中華圏からの日本国内の不動産への投資は「中国経済バブル」の結果である可能性があることには注意しておく必要があると思います。

 中国に工場を建てたり、中国で製品を売ったりしている企業は、「チャイナ・リスク」をいやおうなしに認識させられ、慎重になりがちですが、インバウンド需要や中華圏からの不動産投資の恩恵を受けている日本国内の業界(地域)の中には「チャイナ・リスク」を認識していないところが多いのではないかと心配です。中国経済が巨大化し、日本経済が中国経済の影響を大きく受けるようになった現在、日本にいる全ての人が「チャイナ・リスク」について注意を払う必要があると思います。

 そもそも経済状況について「バブル」という言葉を最初に使ったのは、ガリバー旅行記を書いたスウィフトだと言われています。「バブル」という言葉の古さは、人類が18世紀以降、何回も「バブル」を経験していながら、懲りずに繰り返し「バブル」を経験してきたことを示しています。直近の例でも、2008年、原油価格が1バーレル140ドルを超え、多くの人が「これはバブル的だ」と感じましたが、結果的にリーマン・ショックというバブル崩壊を防ぐことはできませんでした。今、中国の経済の状況や株価も、多くの人が「バブル的だ」と思っているのですが、崩壊を防ぐことはたぶんできないのでしょう。だとしたら、各企業や各個人が来たるべき「中国株バブル崩壊・中国経済バブル崩壊」に備えて、少しでも被害が少なくなるように対策を講じておくしかないのだろうと思います。

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コメント

まさにその通り
日経も上海と連動してるしアベノミクス自体、チャイナのバブルに支えられている感じがします
バブリーな日経平均に平気で年金をぶっこむGPIFや日銀はアホかと思います
黒田総裁が期待感だけで外部要因に反応しなくなったらバブルだといってますが上海に連動して日経もまさにそんな状態
弾けるのは時間の問題ですが日経新聞、フィスコ、モーニングスターやYahoo掲示板などは浮かれるばかりでなんの警戒もありません
まさにこれがバブルなのでしょう、、、

投稿: | 2015年5月26日 (火) 13時32分

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