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2015年5月16日 (土)

「人民日報」が「中国経済の新しい明るい点」を指摘する意味

 今日(2015年5月16日)付の「人民日報」は、1面トップと6面で「中国経済の真の価値は更に向上している(中国経済の「新亮点」(新しい明るい点))」と題する評論を載せています。

 6面の記事では「この4月の社会電力消費量は前年同月比0.9%の伸びだが、そのうち第二次産業用は0.8%マイナス、第三次産業用は7.9%プラスだった。また、この4月は、鉄道輸送量のうち、貨物輸送量は対前年同月比9.2%マイナスだったが、旅客輸送量は8.3%のプラスだった。」との事実を指摘した上で、これは中国経済が鉄鋼業などの第二次産業から第三次産業に比重が移ってきているという産業構造の変化を表している、と評価しています。

 こういった産業構造の変化を「新亮点(新しい明るい点)」と表現することは間違いではないと思います。しかし、この記事で紹介しているこの4月の鉄道貨物輸送量が対前年同月比マイナス9.2%、昨年(2014年)の石炭消費量が対前年マイナス2.9%、昨年の石炭生産量が2000年以降初めて低下、今年(2015年)第一四半期の全国石炭販売量が対前年同期比マイナス4.7%、という数字は、「中国経済の構造変化を表している」というより、素直に「中国経済全体が減速していることを表している」と受けとめるべきなのではないでしょうか。

 先週日曜日(2015年5月10日)、中国人民銀行は貸出基準金利と預金基準金利の引き下げを発表しました。昨年11月から半年間で5回目の金融緩和策(3回の利下げ、2回の預金準備率引き下げ)であったことから、この追加再利下げは、中国の国内外に「中国当局も中国経済の減速に対する危機感を強めている」との印象を与えました。人民日報が1面トップで「中国経済の真の価値は更に向上している」と題する記事を掲げるのも、中国人民に対して「中国経済は、指標上は減速しているが、方向としてはよい方向に向かっている」と訴えたいからでしょう。

 一方、今日の「人民日報」では、前日行われた国務院の記者説明会で中国人民銀行副行長が「ローンの資産証券化の市場の潜在力は巨大である」と解説したことが紹介されています。中国人民銀行副行長は、個人向け住宅ローン等のローンの資産証券化の発展は、今後進めるべき方向のひとつである、としています。「再証券化をさせないことを原則とする」「リスクきちんと防ぐ」といった注意すべき事項もきちんと説明していますが、どうしても「ローンの資産証券化」と聞くと、アメリカのサブ・プライム・ローンの証券化を連想してしまいます。それなのになぜ中国人民銀行の副行長がこのタイミングであえてこういった発言をしたのか、を考えると、まるで、中国人民に「最近、リスクを気にする人が増えて理財商品の売れ行きが落ちているけど、理財商品のような金融商品は今後も発展するので、安心してもっと買ってね」と勧めているように思えてしまいます。

 最近の中国の株価の急上昇は、「中国経済全体の減速」→「不動産事業等に対する投資を基にした理財商品のリスク上昇」→「個人マネーが理財商品から株式市場への移動している」が背景にあるとの見方があります。

 中国当局も株式市場の過熱を気にしているようです。今日の「人民日報」の記事は「中国経済の指標上の減速は構造変化の表れであってよいことだ」「当局はローンの資産証券化の拡大を望んでいる」と表明することによって、理財商品を離れて株式市場に集まる個人マネーにブレーキを掛けようとしているのかもしれません。

 先日の日本経済新聞の記事で、中国では「株で勝ちたいなら『人民日報』を読め」との合い言葉が流行っていると紹介されていました。その意味では、今日の「人民日報」の記事は「当局はこれ以上の株高は望んでいない」と読めます。中国の投資家の方々はこのメッセージをどう受け取るのでしょうか。中国国内の資金の流れがどうなるのか、まだ先の読めない状況が続きそうです。

 それにしても「人民日報」が「ローンの資産証券化の市場の潜在力は巨大である」といった記事を掲げることに対しては、どうしても「危ういなぁ」という印象を持ってしまいます。

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