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2014年11月16日 (日)

香港雨傘革命対処と衆院解散総選挙判断は共鳴するか

 報道によると、香港警察は明日(2014年11月17日)以降、「香港雨傘運動」においてデモ隊が占拠している地区の強制排除を行う予定、とのことです。偶然ですが、明日からの週は、日本でも安倍総理による消費税増税見送りと衆院解散総選挙の判断がなされる見通しです。この全く関係のない二つの動きが同時に動くことによって「共鳴現象」を起こして、予想外の「大激動」を引き起こさないか心配しています。

 明日(2014年11月17日(月))にはいろいろなことが予定されています。

○香港警察による「香港雨傘運動」占拠地区の一部の強制排除の実施(ただし、報道によれば、強制排除が予定されているのは九龍半島の旺角(モンコック)と香港島の中環(セントラル)だけで、デモ隊の最大拠点である香港行政府前の金鐘(アドミラルティ)は今回の強制排除の対象にはなっていない、とのことです)。

○香港株式市場と上海株式市場の相互流通の開始(中国本土の投資家は上海市場を通して香港の株を買えるようになり、外国人投資家は香港市場を通して上海の株を買えるようになる:10月にも開始予定だったが「香港雨傘運動」の状況を踏まえて中国政府側が「待った」を掛けていた、と言われている)。

○安倍総理が来年10月からの消費税増税(8%→10%)を実施するかどうかを判断するための経済指標の一つである7-9月期のGDP速報値が発表される。

 香港でのデモ隊の強制排除は、私は、APEC終了後、G20首脳会談開始前の11月13~14日にも行われるのではないか、と思っていたのですが、行われませんでした。強制排除で多数の逮捕者が出たり流血の事態になったとすると、習近平主席がG20の場で窮地に立たされますので、G20終了までは強制排除は行わないことにしたものと思われます。

 先週(11月9日)、習近平主席と香港行政府の梁振英長官が北京で会談した際、習近平主席は改めて香港のデモ隊には妥協しない強硬姿勢を示し、この会談直後に11月17日からの香港・上海株式市場の相互直通開始が発表されました。これは「ここは株式市場の相互直通を認可するが、それはデモ隊の動きを鎮静化することが条件だ。ビジネスの邪魔をさせたくないと思うなら、香港のビジネス界はデモ隊を鎮静化させることに協力しろ。」という香港ビジネス界に対する習近平主席の強いメッセージである、と読むことができます。

 それを考えると、「強制排除」は株式市場が開く前の11月17日(月)未明にも行われる可能性もあります。

 もうひとつ心配なのは、10月31日の黒田日銀のサプライズ追加緩和とGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による株式比率の増加、という「ダブル・バズーカ」に加えて、先週サプライズ的に急速に高まった「消費増税先送りと衆院解散の観測」のトリプル効果により、東京の株価が異常な高騰を示していることです。11月14日(金)の日経平均株価の終値は1万7,490円83銭で、25日移動平均上方かい離率は10%を超えましたが、こうした状況は昨年(2013年)5月22日以来です。この翌日の昨年5月23日に東京の株価は大暴落しました。

 昨年4月4日の日銀による「異次元の量的・質的金融緩和第一弾」の後の株価急騰後、5月23日に株価の大暴落があったことは関係者の記憶に新しいので、みんな警戒感を持って対応しているので、去年のような暴落はない、と見る人が今は多いようです。しかし、一方で同時進行中の香港情勢により「香港雨傘革命の占拠地の強制撤去」→「大量の逮捕者が出たり流血の事態になったりする」→「国際社会が中国に対して経済的制裁をせざるを得ない政治状況になる」→「ただでさえ失速気味の中国経済に大ブレーキが掛かる」→「中国経済の減速予測を改めて嫌気して株価が暴落する」というリスクは、もはや「テイル・リスク」(発生可能性は極めて低いが実際に起きたら影響は極めて大きい)ではなく、かなりの発生確率のあるリスクであると認識した方がよいと思います。

 だいたいニューヨークや東京の株価が急騰している一方で、原油の国際相場が急落して、ドル高が進んでアメリカ国債が買われている(金利は低下している)のは、アメリカ以外(中国、ヨーロッパ、日本、新興国)の経済減速を懸念して、世界中の投機資金が原油や商品市場、新興国から引き上げて、ドルを買い、アメリカ国債を買っているからだ、という見方もかなり強くなっています。通常リスク回避局面で買われるはずの金の価格が上がらないのは、ロシアや中国の中央銀行が手持ちの金を少量づつ売っているからだ、という見方も可能です(ロシアの中央銀行はルーブルを買い支えるため。中国人民銀行は債務利履行になりそうな理財商品を買い支えるため)。

 「第二次天安門事件」での武力弾圧と日本経済のバブル絶頂期が重なった1989年をリアル・タイムで経験している私としては、現在の「香港雨傘革命」の状況と日本の株価の現状(去年ある週刊誌は「AKB相場(=安倍・黒田バブル相場)」と表現した)が1989年当時とだぶって見えてしまうのです。

 下記に、1988年、最初の北京駐在を終えるに当たって書いた私のエッセイへのリンクを掲げて起きます。安定成長期に入る一方で「財テク」に走っていた当時の日本経済の一端を知ることができるでしょう(後から見れば「財テク」は「バブル」だったことがわかるわけですが)。

(参考URL)「北京よもやま話」
「北京で考えたこと」(1988年9月9日)
http://homepage3.nifty.com/itaru_watanabe/beijing/kangaeta.html

 1988年の当時、私には「日本経済がバブル期にある」との認識もなかったし、翌1989年に「第二次天安門事件」が起きて中国の経済発展に急ブレーキが掛かることも全く予期していませんでした。当時、日本経済における中国経済の比重は小さいものでしたが、上の私のエッセイに垣間見えるように、日本経済のバブル的成長が「将来における中国市場の急速な発展への期待」を念頭に置いていたことは間違いありません。従って、後から考えれば、「第二次天安門事件」の武力弾圧が中国経済発展への期待を縮小させ、バブル崩壊のひとつの要因になったことはおそらくは間違いはないと思います。

 過去の例を見ると、解散から総選挙投票日に掛けては「新しい政策への期待」から株価が上昇することが多いのだそうです。ただ、今回の解散は「来年は経済が停滞しそうだから、来年以降に選挙をやるより、まだ好調を保っている今やった方が得」という「目論見」からなされる、との見方が一般的ですが、そうであれば、解散を判断する総理自身が「来年はジリ貧になる」と予想していることを意味しています。「総理自身が来年はジリ貧になる」と認識している日本の株を外国人投資家が今後も買い続けるかどうかわからないし、日本の有権者が「来年はジリ貧になる」と考えている総理の率いる与党に投票するかどうかもわかりません。

 最も重要なのは、解散詔書が発せられれば、総選挙が行われて新しい内閣が組閣されるまでの期間、日本の内閣は一時的に「選挙管理暫定内閣」になることです。そのタイミングで「香港雨傘革命の武力弾圧に起因する中国の大激動」が起きた場合、日本政府が的確に対応できるのだろうか、という問題が生じます。アメリカ・サイドでも、先の中間選挙で共和党が上下両院で勝利したことにより、オバマ大統領の政権も残り2年の任期中は「レイム・ダック化した」と言われています。またアメリカ議会は選挙結果を受けて新しい議員が任命される来年1月1月までは「レイム・ダック・セッション」になります(落選した議員はまじめに議論に参加しなくなる)。こうした世界の政治状況の中で、中国で大激動が起きては困ります。

 「リスクを恐れて何も行動しないのが『デフレ・マインド』なのだ。今は、リスクを取ってでも打って出るタイミングなのだ。」というが正解なのかもしれません。中国情勢・香港情勢については、安倍総理や黒田日銀総裁は私より情報を持っていることは間違いないので、「香港・中国リスク」を認識した上で「第二次追加緩和」「衆院解散総選挙判断」は行われた(行われる)のだと思います(ただし、黒田日銀総裁は安倍総理が「消費増税先送り」「衆院解散総選挙」を判断することは予想していなかったと思われ、「アベノミクス」の「キモ」である「総理と日銀総裁の信頼関係」が崩れたことが表面化したことはよろしくなかった、と思います)。

 私の心配(香港発の中国経済の混乱→世界経済及び日本経済の大変調)が現実化しないことを祈りたいと思います。

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