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2014年10月 4日 (土)

香港「雨傘革命」:日本の関係者の状況認識は甘過ぎないか

 先週日曜日(2014年9月28日(日))夜、私はCNNが伝える香港の状況(民主的普通選挙を要求するデモ隊への警官隊の催涙弾の使用など)を見て、「これは大変なことだ」と感じ、9月29日(月)以降の世界の株式市場は大暴落するだろうと思いました。

 ところが、9月29日(月)の東京株式市場は、前週末比で若干値を上げて終えました。29日(月)のヨーロッパとアメリカの株式市場が香港情勢を心配して値を下げて帰って来たことを受けて、東京市場では30日(火)以降、株価が下がりました。

 今、世界には様々な地政学リスクがあり(エボラ出血熱患者がアメリカでも発生したことを含む)、香港情勢だけが世界の株式市場を動かしているわけではありませんが、29日(月)の東京の株式市場の動きを見て、私は「日本の関係者は香港情勢に対する認識が甘過ぎる」と思いました。

 「雨傘革命」と呼ばれている現在の香港でデモを行っている人々が求めているのは、2017年の行政長官選挙において民主派からの立候補も可能とする選挙制度の制定ですが、立候補者を事前に絞り込むという制度は、全人代常務委員会で既に決まったことであり、北京の中央政府がそれを撤回することはあり得ません。

 従って、今回の運動では「香港当局側が妥協案を提示して打開を図る」ことが根源的に不可能なのです。今後、デモを行っている人々が仮に座り込みをやめても、2017年の選挙までは、選挙制度の改革を求める運動は続きます。従って、今の運動は、香港経済に長期間にわたって大きな影響を与える可能性が大きいのです。

 多くの人は、「まさか北京の中央政府は1989年の『第二次天安門事件』(六四天安門事件)のような武力弾圧はやらないだろう」と思っているのでしょう。でも、1989年の「第二次天安門事件」の時も、私も含めて多くの人は同じように「強硬な武力による解決はないだろう」と思っていましたが、実際は武力行使がなされました。1989年当時は、トウ小平氏というカリスマ的で老練な政治家が実権を握っていたわけですが、そのトウ小平氏すら、穏健な解決は図れなかったのです。今の習近平指導部は、トウ小平氏を上回る問題解決のための指導力を発揮できるのでしょうか。(上に書いたように、問題の根本は「選挙制度改革」ですから、香港当局に問題解決能力はなく、最終的には北京が何らかの策を講じなければ、問題は解決しません)。

 香港は中国大陸部の経済の重要な「対外窓口」ですから、香港で現在のような混乱が続くと、中国大陸部の経済活動に対して致命的なダメージを与えます。香港に投資している外国企業や投資家が香港から逃避することも懸念されます。

 今、中国大陸部の経済は、景気減速が意識され、不動産市場では「バブルが崩壊しつつあるのではないか」との心配もささやかれています。去年(2013年)表面化した「影の銀行」問題も何も解決していません。

 中国政府は、バブルの膨張を呼ぶような大規模な経済刺激策を避けつつ、「小出し」の経済政策で、綱渡りのような経済政策を進めています。今、ここで香港経済が今までのような活力を保てなくなったら、大陸部の中国経済にも大規模なブレーキが掛かる恐れがあります。

 「第二次天安門事件」の運動が始まったのは、1989年4月15日でしたが、警察力による天安門前広場からの人々の強硬排除が行われなかったことから、最初のうちは、なんとなく大学生ら若い人たちの「フェスティバル」のような雰囲気の座り込みが続きました。中国共産党中央は、4月29日、座り込みを続ける学生たちと話し合いを行いました。しかし、学生たちが納得する結論が出るわけもなく、事態は全く改善しませんでした。

 今回の香港の「雨傘革命」においては、一昨日深夜(2014年10月2日(木)深夜)、香港の梁振英長官が「自分は辞職しないが、ナンバー2の高官と学生らとの対話を行う」と発表しました。これを受けてか、2日間の国慶節休暇明けの10月3日(金)の香港株式市場のハンセン指数は、やや上げ、一時的に緩和したような雰囲気になりました。ここまでの今の香港の雰囲気の推移は、1989年の「第二次天安門事件」の推移と非常に似ていると私には感じられます。

(「第二次天安門事件」の時の詳しい経緯については、このブログの左にリンクが張ってある過去の発言「中国現代史概説」の中の「第二次天安門事件」の部分をお読みください)。

 1989年当時、中国経済の世界経済に占める割合は、まだ小さいものでした。しかし、今(2014年)の世界経済は、中国なしには立ち行きません。香港の混乱が長引けば、中国大陸部の経済に大きな影響を与え、結果的にそれが世界経済に非常に大きな影響を与えます。それなのに、日本の関係者の香港情勢に対する反応が鈍すぎる、私にはそう思えるのです。

 もちろん、外国は、中国の国内問題に口を出すべきではありませんが、世界は1989年の「第二次天安門事件」を知っているだけに、中国に対して、同様の結果にならないようにする働きかけを行う必要はあるでしょう。今年11月10~11日に北京でAPEC首脳会議が開かれます。この会議に出席する多くの首脳は、何らかの形で今回の香港の「雨傘革命」について言及せざるを得ないでしょう。

 (1989年の時も、「第二次天安門事件」の運動が始まった1か月後にソ連のゴルバチョフ書記長の初の訪中という大きな外交日程が設定されていました。運動が重要な外交日程に影響を与える可能性があった、という点でも、「第二次天安門事件」と今回の香港の「雨傘革命」運動に一種の「類似性」を想起させます)。

 香港は、中国当局のインターネット上の情報統制障壁(「金盾」とか「グレート・ファイアー・ウォール・オブ・チャイナ」とか呼ばれる)の外にありますから、中国大陸部の学生とは異なり、香港の学生は「第二次天安門事件」(六四天安門事件)のこと(その結果)はよく知っているでしょう。学生の側にも、ぜひ冷静な対応をして欲しいと思います。 

 

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