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2014年10月22日 (水)

「香港雨傘革命」が中国経済バブル崩壊の切っ掛けとなる可能性

 昨日(2014年10月21日)、香港行政府の幹部と民主化選挙を求めるデモ隊のリーダーとの間の「対話」が行われました。事前に予想された通り、双方の主張は平行線で、事態は進展していません。

 「中国政府が香港行政長官選挙において民主派候補者(=中国共産党に反対する可能性のある候補者)の立候補を認める可能性は100%ない」一方で「民主派候補の立候補を認めない限りデモ隊側は『占拠』をやめない」ことは明らかなので、この問題には以下の二つの解しかありません。

(1)中国政府が武力(=人民解放軍)を投入してデモ隊を強制排除する。

(2)デモ隊側が非暴力に徹し、香港市民の日常生活への影響を最小限にする形で抗議活動を続け、香港行政府と中国政府も警察力または人民解放軍による「力での排除」は自制することにより、長期にわたり「平和的な抗議活動」が続く。

 武力によるデモ隊の強制排除は、国際金融センターとしての香港の機能を喪失させるとともに、「将来は『香港方式』により台湾も統一したい」という「一国二制度」を採用したそもそもの出発点を自ら潰すことになり、中国政府側にとっても最も希望しない選択肢なので、起こらないと私は信じています。

 ただ、10月19日付けの「人民日報」4面に掲載されていた「『自主』から『占中』の背後にある『香港独立』の陰謀が見える」と題する評論では、今回の運動の背後に「台湾独立派」がおり、香港の独立を狙っている、とかなり激しく批難しています。もし仮に本当に「『占中』運動」が「香港独立運動」ならば、人民解放軍が動く大義名分となるわけですから、この評論は相当にきつい「恫喝」です。

 「国際社会からの制裁があることを考えれば、中国共産党もそれほどバカではないので、人民解放軍による武力鎮圧はないだろう」と多くの人は思っているでしょう。「第二次天安門事件」の時、私も1989年6月3日まではそう思っていました。しかし、そういう私の考えが甘かったことは事実が証明しています。予断は許しません。

 一方、今回は中国共産党が最大限の自制心を働かせて、上記(2)の「平和的な抗議運動の継続を認める」方針を採ったとしても、混迷の長期化による香港からの外資の引き上げが、中国の経済バブル崩壊の切っ掛けとなり、世界に大激震を走らせることになる可能性は否定できません。

 現在、中国経済バブルがほとんど「臨界点」に近づいていることは多くの人が認めているところです。「ハードランディング」を避けるため中国政府が綱渡り的な経済政策を採っている中で、今回の「香港雨傘運動」に起因する外国資本の香港からの引き上げが中国政府が行っている「綱渡り的政策」を壊してしまう可能性があるからです。

 昨年来、世界の多くの人々が心配するようになった「影の銀行」や「理財商品」の問題は、基本的には中国国内の金融システムの問題なので、アメリカのサブ・プライムローンのように、中国国内の金融バブル崩壊が世界経済に伝播する程度は小さい、という見方は多いと思います。しかし、下記の大和総研の神尾篤史氏のレポートでは、外国からの香港への外貨投資が香港を中継として中国国内の「理財商品」に流れている可能性があることから、中国国内のバブル崩壊が世界に伝播する危険性について警鐘を鳴らしています。

(参考URL)大和総研金融調査部兼経済調査部神尾篤史氏のレポート
「理財商品等と増加する中国企業の外貨資金調達~外国子会社等の外貨建て債券の発行増加がもたらす可能性~」(2014年3月24日)
http://www.dir.co.jp/research/report/capital-mkt/20140324_008358.pdf

 今、世界のマーケットではボラティリティ(変動率)が非常に大きくなっています。最近ニューヨーク株式市場のダウは、毎日のように100ドルを超える(時として200ドルを超える)乱高下を続けていますし、東京株式市場の日経平均株価も一昨日(2014年10月20日)から今日(10月22日)まで対前日比で、578円高、306円安、391円高と連日300円を超える乱高下を続けています。

 今は、様々なデリバティブ(金融派生商品)があり、多くの投資家がレバレッジを効かせて(テコのように少ない元手で多くの収益が得られるようにして)いるので、ちょっとの切っ掛けで相場が大きく変動することがあります。本来は、商品先物などは、将来の価格変動による損失を少なくするためのものですので、多くのデリバティブは市場の変動を抑制する効果がありますが、ブランコで力を入れるのと同じように、タイミングがずれると、逆に振り子の振動を極端に大きくしてしまう可能性もあります。

 今年前半、様々な市場ではボラティリティが異常に少なかったのですが、8月下旬以降、逆にボラティリティが急激に拡大してきています。この変化は、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)が量的金融緩和第三弾(QE3)をこの10月末にも終了する予定であり、一方で、ECB(ヨーロッパ中央銀行)が量的緩和を始めようとしている(日本銀行は「異次元の金融緩和」を継続中)ことから、市場関係者が各国の金融政策の変更に対応しようと動いていることが原因のひとつと考えられています。

 従って、現在のマーケットのボラティリティの急激な拡大は「香港雨傘革命」の運動とは直接的な関係はありません。しかし、同じタイミングで起きているこの二つの動きが「偶然の共鳴現象」を起こす可能性があります。

 具体的にはアメリカFRBによるQE3の終了と利上げ観測の具体化で、香港を含めた新興国に投下されてきた資金のアメリカへの引き揚げが始まった時、香港については「雨傘革命」の長期化を嫌気した外交投資家により従来想定していたより大きな額の資金の引き上げが起き、それが香港経由で中国国内に流れ込んでいた投機資金の中国からの流出を招き、中国国内での一時的な流動性の欠乏を招いて、理財商品のデフォルト(現金化不能)を起こす、といった「ドミノ倒し」が起こる可能性が否定できないからです。(実際は中国人民銀行がうまくコントロールすると思いますが)。

 今日(2014年10月22日)付の日本経済新聞朝刊3面には「バブルに踊り覚めて大損 現代版『邯鄲(かんたん)の夢』」と題する記事が掲載されていました。この記事では、最近の住宅価格低下により、河北省邯鄲市で不動産開発会社の経営者が失踪し、高利回りに引かれて開発資金に投資した住民が投資資金の回収ができなくなっている状況を報じています。「邯鄲の夢」とは、昔、邯鄲の若者がお粥を炊いてもらう際、まどろんでいる間に立身出世する夢を見たが、夢から覚めたらまだお粥が炊きあがっていなかった、という有名な故事です。「現代版『邯鄲の夢』」は、面白い話ではありますが、シャレになりません。

 「香港雨傘運動」に参加する若者は純粋に香港の民主化を望み、FRBはアメリカ経済の順調な回復を見て金融政策の「正常化」を図る、というそれぞれの全く至極まっとうな希望に基づく行動が、たまたま同じタイミングで起きることにより、中国経済バブルの崩壊とそれによる世界的な経済危機、という大きな結果をもたらす可能性がある、ということは注意する必要があります。なので、私は10月4日のこのブログで「香港『雨傘革命』:日本の関係者の状況認識は甘過ぎないか」と書いたのでした。

 学生らと香港行政府の「対話」が不調に終わり、一方で日本の株式市場で非常識な乱高下が続いているので、多くの市場関係者は既に認識していると思いますが、「シートベルト着用サイン」が出ているという注意喚起の意味で改めて書かせていただきました。

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コメント

 中国は日本の十倍以上の人口を抱え、優秀な人材も十倍いるが足を引張る人材も十倍いる。そういった中国が人口1/10の日本のGDPを抜いたとしている(いまだ統計上疑念がある。)。平均的な人間の生産性が1/10しかないということは平均的な人々の活躍を1/10にしている歪んだ社会機構があるということで、決して威張れることではない。
 民主化が重要であるが、前提となる連邦制の枠組みを決定することは今の中国共産党にはできない仕事である。

投稿: 新連邦委員会 | 2014年11月17日 (月) 23時29分

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