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2013年9月 2日 (月)

江沢民氏が元有力者の葬儀に参列せず

 どの新聞社・通信社も特段に報じていないので、深い意味はないと思うのですが、この時期、タイミング的に「微妙」な意味合いがある可能性があるので書いておきます。

 昨日(2013年9月1日)、去る8月25日に亡くなった元人民最高検察院院長の劉復之氏の葬儀が行われました。この葬儀には、習近平国家主席、李克強総理ら現役の政治局常務委員7名と江沢民、胡錦濤の両元国家主席から花輪が献じられました。また、政治局常務委員7名と胡錦濤前国家主席は葬儀に参列しましたが、江沢民元国家主席は葬儀には参列しませんでした。

 事実関係はそれだけです。江沢民氏は87歳の高齢ですので、花輪を献じただけで葬儀には参列しなかったのは、全く不自然ではなく、深い意味はないと思うのですが、私が感じたことを書いておきます。

 まず、今日(2013年9月2日)付けの「人民日報」が報じた劉復之氏の経歴によれば、氏は1917年生まれで、1938年に中国共産党に入党し、抗日戦争、国共内戦、中華人民共和国建国期に活躍し、文化大革命期に迫害を受け、文革終了後、復権して、1983年に公安部長に就任、1988年には最高人民検察院検察庁に就任したとのことです。主に、法律、公安、検察関連の仕事をしておられたようです。1988年には私は北京にいましたが、私は名前は存知上げていませんでした。

 実際に、抗日戦争や国共内戦を戦い、96歳で亡くなった長老の方でしたので、現在の指導部の方々が深い弔意を表されてもおかしくない方だと思います。ただ、私の感覚からすると、政治局常務委員の経験があるわけでもないので、現在の政治局常務委員全員と胡錦濤前国家主席が葬儀に参列し、葬儀の様子が「新聞聯播」や「人民日報」で大きく報道されるのは、扱いとしては異例の大きさかなぁ、という感じがしました(お前が知らなかっただけで、党内では大物だったのだ、と言われれば、それまでですが)。

 私はこの手のニュースには「うがった見方」「深読みのしすぎ」をするクセがあるのですが、今回の劉復之氏の葬儀の報道は、「新聞聯播」や「人民日報」を使って「江沢民氏が葬儀に参列しなかった」ことを全国人民に知らせることが目的だったのではないか、と思ってしまったのです。江沢民氏が高齢のために葬儀に参列しないことは全く不自然ではないのですが、政治家にとって健康問題は非常にセンシティブな問題です。

 江沢民氏の政治的立場に気を使うのだったら、事実を淡々と伝えればよく、テレビのニュース「新聞聯播」で習近平国家主席、李克強総理、胡錦濤前国家主席や他の現役政治局常務委員の参列の様子を長々と放映して、江沢民氏がその場にいないことを強調するような映像の作り方にはしなかったのではないかと思います。「人民日報」の方では、劉復之氏の経歴を紹介するページで、江沢民元国家主席と劉氏が一緒に映っている写真を掲載して、江沢民氏の立場にも気を使っているように見えました。

 私が、「江沢民氏が葬儀に参列しなかった」ことを全国人民に知らせることが目的だった、などと「うがった見方」をしている理由は、以下に掲げるように、今が非常に微妙なタイミングであることにあります。

○習近平総書記が現在展開している「ぜいたく禁止令」「開会式などで派手な演出をすることをやめるように」というキャンペーンは、一般に「江沢民プロジェクト」と考えられている北京の国家大劇院など派手な建築物の建設や「ど派手」な北京オリンピックの開会式のイメージに対する批判につながり、それはややもすると習近平総書記が「江沢民批判」をしているように見えてしまっています。

○現在、中国石油天然ガス集団(CNPC)の副社長だった王永春氏、李華林氏が「規律違反の疑い」で取り調べられているほか、昨日(9月1日)には、新華社が、現役の閣僚である国務院国有資産監督管理委員会の蒋潔敏主任について「重大な規律違反」の疑いで調査が始められた、と報じています。彼らはいわゆる「石油閥」と呼ばれるグループですが、その背後にいたのは前政治局常務委員の周永康氏と言われています。先ほどネットで見た時事通信の報道によると、周永康氏は既に党中央の管理下にある、との情報もあるようです。日本での報道によれば、先頃裁判が行われた薄煕来元重慶市書記の事件についても、周永康氏は最後まで薄煕来氏を擁護していた、と言われています。2007年の党大会の時、政治局常務委員は7人になるのではないか、と言われていた中、周永康氏らが加わって9名になった、という経緯の背景には江沢民元国家主席の意向があった、と言われています。

 こうした中、「江沢民氏が今どういう状況にあるのか(例えば、長老幹部の葬儀があったら参列できるような状態なのか)」といった情報は極めて「敏感な情報」であるはずです。「葬儀に参列できないような健康状態である」という情報そのものが、政治家の政治力に影響を与えかねないからです。そういった「敏感な情報」をあえて強調するような報道を「新聞聯播」や「人民日報」がなぜしたのか、が気になるのです。

 私の感覚から言ったら、劉復之氏のような経歴の方の葬儀には、政治局常務委員全員と江沢民氏、胡錦濤氏から花輪が献じられ、葬儀には政治局常務委員の誰かが参列すれば、十分に礼は失しないと思います。あえて言うなら、葬儀に現役の政治局常務委員全員が参列してもおかしくないのですが、胡錦濤氏が参列する必然性はなかったと思います。高齢で葬儀への参列が難しい江沢民氏の状況を知った上で、胡錦濤氏が意図的に葬儀に参加して江沢民氏が葬儀に参列できないことを際立たせた、のだとしたら、それは胡錦濤氏の意図的な判断だったのかもしれません。

 といったことは、おそらくは私の勝手な「深読み」で、実際はあまり深い意味はなかったのだ、と考えるのが普通でしょう。そもそも葬儀への参列は、単なる政治家としての序列などの問題に加えて、個人的に親しかったかどうか、といった問題も関係してきますので、あまり深く立ち入って詮索するのは、故人や葬儀に参列した方々に失礼に当たるのかもしれません。でも、たぶんそうだから「書きたいけど書かなかった」通信社などもあったと思うので、私はあえて故人や葬儀参列者等に対する失礼をお詫びした上で、私の感じたことを書かせていただきました。

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