« 2013年8月 | トップページ | 2013年10月 »

2013年9月

2013年9月29日 (日)

「上海自由貿易試験区」の決定過程と実際

 報道によれば、今日(2013年9月29日)、「中国(上海)自由貿易試験区」の開始セレモニーが開かれる、とのことです。8月に開かれた全人代常務委員会での決定に基づき、この「上海自由貿易試験区」内では「外資経営企業法」「中外合資経営企業法」「中外合作経営企業法」の規定が一時的に停止される、とのことです。

 そこで、この「上海自由貿易試験区」の決定過程と実際に今後どのようなことがなされるのか、私の個人的な見方を書いておきたいと思います。

1.「上海自由貿易試験区」の決定過程

 「上海自由貿易試験区」の中で具体的にどのような施策が行われるか不明な点も多いのですが、1978年に決まった「対外開放政策」のひとつの柱である「外資経営企業法」「中外合資経営企業法」「中外合作経営企業法」の規定を暫定的に停止する、とのことですので、中国式の改革開放政策からさらに一歩踏み込んで自由主義経済的な政策を採ることが見込まれています。

 もしそうであれば、中国共産党による経済政策としては、哲学的にかなり大きな変革です。中国共産党の基本理念に係わるような政策決定の場合、通常は、例えば中国共産党三中全会(第三回中央委員会全体会議=各期(5年ごと)の政策の重要指針を決める会議。通常、党大会の開かれた翌年の秋に行われる)で方針を決め、次の全国人民代表大会(通常、毎年3月に開かれる)で関係法律を通してから、実施に移る、という手順になります。

 ところが、「上海自由貿易試験区」については、まず7月に開かれた国務院の会議で方針が決められ、8月下旬に開かれた全人代常務委員会で「関連法律の暫定的停止について国務院に授権する決定」が行われて、法律を決める権限を持つ全人代は国務院に関連する法律の暫定停止権限を行政府である国務院に「丸投げ」してしまいました。そして、「上海自由貿易試験区」は、今日(9月29日)、開始セレモニーが開かれ、10月1日から実質的にスタートします。内容については、2013年9月18日に国務院が「中国(上海)自由貿易試験区総体方針に関する通知」を出しています(9月27日付けの「人民日報」ホームページ「人民網」にこの「通知」の全文が掲載されています)。今後11月に開かれる三中全会でもこの「上海自由貿易試験区」については議論されることになっていますが、中国共産党内での議論の形式を踏む前に実態が先に進んでいる、という点で、かなりの「唐突感」(言い換えれば「強引さ」)」を感じます。

 おそらくは8月上旬に開かれた北戴河会議(夏休み期間中に河北省北戴河で開かれる中国共産党幹部(役職上は引退した老幹部も含む)が集まった会議)で議論がなされ既に了承は得ているのだと思いますが、一般の中国共産党員からすれば、党の正式決定会合である三中全会の前に既成事実だけがどんどん進んでいる状況は、面白くないのではないかと思います。おそらくは、李克強総理のリーダーシップに基づいて「改革派」が保守派に有無を言わせない形でどんどん政策を進めているのだと思います。

 かなり強引な進め方をしている感じがするので、今後、11月の三中全会までの間や、その後の実施段階において、「保守派」からの巻き返しがあり、実際の運用がうまく進まなくなる可能性もあるのではないか、と私は思っています。

 また、「上海自由貿易試験区」で進めようとしている政策は「政府の役割を小さくして市場に任せる」「特に金融部門においては、民間資本(外資も含む)の導入を図り、金利の自由化を図る」という意味で、より「非共産主義化」「自由主義経済化」を進めるものですが、このベクトルは、習近平総書記が8月19日の「重要講話」で強調した「マルクス主義を堅持しよう」という方向とは、一般人の目からすると全くの逆ベクトルです。中国人民の中には「我が党・我が政府はいったいどちらの方向に進もうとしているのか」と迷う感じを抱く人も多いのではないかと思います。

 現指導部は「マルクス主義の根本理念、即ち、持たざる者(=プロレタリアート)の利益を確保することを保持した上で、経済の市場化・自由化を進めるのだ。政策としては矛盾していない。」と主張するのだと思いますが、指導者の言動と実際に打ち出される政策の方向性が一致していないように見えるので、非常にわかりにくいと思います。この「わかりにくさ」は、おそらくは中国共産党内部での路線対立が表面化しているからだと思いますが、一般人民には非常にわかりにくい状況であることは間違いないと思います。

2.「上海自由貿易試験区」で今後実際に行われること

 「中国(上海)自由貿易試験区総体方針に関する通知」を読んでも、必ずしもこの「試験区」で何ができて、何ができないのか、よくわからないのですが、「外資経営企業法」「中外合資経営企業法」「中外合作経営企業法」が暫定的に停止される、とのことですので、中国資本と外資との合弁企業の設立に当たっては、中国政府の許可は必要にならないことになる(中国資本と外資との合弁は、会社側の自由意志で決められる)のかもしれません。ただこれは、私にとっては「ほんとかなぁ」と思わせます。例えば、今、重要産業である自動車製造業においては、中国資本と外国資本が合弁会社を設立する場合、外資側がマジョリティを取ること(外資側が資本比率を50%以上とすること)は認められていません(食品産業など他の業種では、外資側がマジョリティを取る、または外資側が100%負担する(いわゆる「独資」)も認められている分野もある)。そういった業種別の外資参入規制が「上海自由貿易試験区」では「撤廃される」とは思えません。

 ただ、国務院の「総体方針に関する通知」では、民間資本や外資を導入した金融機関について全面開放する、とされており、「試験区」の中では外資及び中外合資による銀行の設立を認めるとしています。また、金融市場の利率の市場化も図る、としています。少なくとも金融業については、外資規制を緩めることは間違いないと思います。

 ちょっと気になるのは、「上海自由貿易試験区」とその外側との境界線をどのように管理するのか、という点です。1980年代初め、深セン、珠海、スワトウ、厦門(アモイ)の四つの「経済特区」が作られたとき、「経済特区」と特区外との間には検問所が設けられ、人の出入りに際しては身分証(外国人の場合はパスポート)のチェック、荷物については税関を通るのと同じような検査が行われていました。このため「経済特区」と特区外との境界線は「第二国境線」と呼ばれていました。今、報道されている「上海自由貿易試験区」の出入り口の写真を見る限り、「国境線」のような厳しい人や貨物のチェックはなされないようです。施行される法律が異なる区域間では政府による適切なチェックが行われないと「ヤミ取引」を行うことによって利ざやを稼げる可能性が生じるので、「国境線」のようなチェックを行う必要があると思うのですが、どうするのでしょうか。

 また、「上海自由貿易試験区」の大きな「目玉」が金融業だとすると、金融取引は、現在ではほとんど全てが電子決済なので、それをどうチェックするのかも課題だと思います。現金や小切手などの「もの」をやりとりするわけではないので、当局による違法な電子決済の取り締まりは、ほとんど不可能だと思うのですが、どうするのでしょうか。特に「上海自由貿易試験区」は、ひとつの区域ではなく、現在、別々の場所に四つ存在する保税区を合わせて「上海自由貿易試験区」に指定する、とのことですので、「試験区」の内外のネット上の情報通信を当局がチェックすることは物理的には無理だと思います。

 今、インターネット上では、中国大陸部(中国のうち台湾、香港、マカオを除いた部分)には外部との情報交流をチェックするファイアー・ウォール(いわゆる「グレート・ファイアー・ウォール・オブ・チャイナ」(「金盾」とも呼ばれる))がありますが、中国大陸部のインターネットは数カ所の「関所」を通じて「外部」とつながっているとされており、そこで情報コントロールがなされているようです。「上海自由貿易試験区」の周囲に同じようなファイアー・ウォールを設置することは技術的には相当難しいと思われます。また、「試験区」は上海の市街地のすぐそばにあり、無線によるネット・アクセスもできると思われることから、「上海自由貿易試験区」をネット上「隔離」することは不可能だと思います。一部に、「上海自由貿易試験区」においてツイッターやフェースブックの解禁を期待する報道も見受けられますが、私は、このようなネット上の技術的事情により、「上海自由貿易試験区」において「ネットの自由」を求めるのは無理だと思っています。

 また、「上海自由貿易試験区」において金利の自由化を認めるのだとしたら、「試験区」の内外の資本の移動をどのように規制するのだろうか、という疑問も湧きます。「試験区」内の銀行がもし高い預金金利を設定できるのだとしたら、試験区外部からの資金の流入を認めれば、多くの「試験区外」の個人・企業が試験区内の銀行に預金をしようとするだろうと思うからです。

 実際に何が起こるのかわからない「上海自由貿易試験区」ですが、少なくとも方向性としては「自由化」の方向へ前へ進もうとしているのですから、その健全な発展には期待したいと思います。

| | コメント (0)

2013年9月12日 (木)

人心が離れていることを自覚している中国共産党

 今日(2013年9月12日)付けの「人民日報」4面に「マルクス主義執政党はいかにして大衆からの離脱を避けるべきか(人民論壇)」と題する評論文が載っていました。筆者は、陳俊宏氏です。通常、記事の中には筆者の役職が書かれるのですが、今回の評論には書かれていません。ネットで調べたら陳俊宏氏は「人民日報」の副編集長のようですね。この評論のポイントは以下のとおりです。

------------------

2013年9月12日付け「人民日報」4面
「マルクス主義執政党はいかにして大衆からの離脱を避けるべきか(人民論壇)」
(陳俊宏)

○中国共産党は、人民に由来し、人民に根ざしている。党の政権獲得後、大衆から離脱する危険性は大きく増大してきており、それが最大の危機であると言える。

○党が執政を始めて以後、大衆から離脱する危険が増大している主な原因は以下の通りである。

(1)一般に国家権力は、社会に対して大きな強制力を持つものであり、本来は社会大衆のために社会秩序の維持を図るのが基本任務であるが、一方で、社会大衆から離脱し、大衆の利益から離れて大衆に損害を与える方向に向かう傾向がある。中国共産党員もその傾向から逃れることは難しい。いわゆる「権力の魔力の効果」である。

(2)我が国には長期にわたる「官本位」の文化的歴史遺産があり、一部の中国共産党員の中には、この文化的背景により、市場において、権勢で人を圧し、権力を利用して私益を図る現象が見られる。

(3)中国共産党が政権を取って以降、多くの党員は厳しく鍛えられる経験を経ておらず、人民のために尽くすという基本意識が頭に入っておらず、人民の利益を最終目的とする執政理念がいまだ確立されていないために、大衆と利益を争い、大衆の利益を損なう事態がたびたび発生している。

○これらの原因は依然として存在し、その影響を与え続けており、党が大衆から離脱する危険性を増加させるだけでなく、これが今後も続けば、党と大衆との関係を破壊し、最終的には中国共産党の執政を担当する地位を侵食しかねない。

○経済のグローバル化、社会の情報化、利害の多様化が進む現在、大衆から離脱するという危険性は切迫しており、全力を挙げて重要な課題を解決する努力を堅持する必要がある。そのためには以下を考えなければならない。

(1)党の路線の方針と政策を人民大衆の願望と時代の進歩する時代の潮流に合致するようにしなければならない。人民に政策を問い、人民の要求を問い、人民の意向を計り、民主的・科学的で秩序あるプロセスを経なければならない。これが党の政権担当の基礎を固め、執政の使命を計る根本的な決め手である。

(2)政府機関にいる党員は党の規約と法律を遵守し、人民のために権力を正しく用いなければならない。「権力を制度の籠の中に入れる」という要請に基づき、合理的に権力の限界を設定するとともに、権力の制約と監督システムを完全なものにし、越権行為や権力乱用をしてはならない。権力行使の透明性を確保し、人民による権力の監視を効果的なものにし、「権力のマイナス効果」を防止するシステムを確立しなければならない。

(3)党の基盤組織は、大衆との連携を緊密にしなければならない。大多数の大衆の信頼を獲得し、党と大衆の血肉との関係を確固なものとし発展させるために絶え間なく新しい活力を注入しなければならない。

(4)党員は大衆の具体的な要請を担う者にならなければならない。

○中国共産党が政権を担当しているのは、もともと与えられたものではなく、「一度苦労すれば永遠に楽ができる」というものでもない。大衆との関係を明確にし、大衆に緊密に連携して初めて、党は不動の地位を築けるのである。今実施している党の大衆路線教育実践活動は、全党の同志の精神的洗礼であり、新しい情勢の下における大衆との連携の伝統を発展させ、思想政治と制度において大きな成果を得られると信じている。

---------------------

 この手の「人民日報」の評論にはありがちなのですが、「危機感」については正しく認識しているものの、それに対する具体的対応方策が示されていません。今、中国共産党中央は、「大衆路線教育実践活動」と称して、地方の共産党幹部がタウン・ミーティングのようなものを開催して「面対面」で一般大衆と意見交換するような運動を展開しています。中国中央テレビの夜7時のニュース「新聞聯播」では、連日、タウン・ミーティングをやっている地方共産党幹部の状況を紹介しています。しかし、そんなことで「大きな成果が得られる」とは私には思えません。地方の共産党幹部は、一般大衆の意見に反した政策を採っても、クビにならないからです。

 日本やアメリカなどの民主主義国家では、国会議員などは、毎週週末地元(選挙区)に帰って、有権者との会合などに参加して、現在の政治に対する不満などを聞いています。これは日本などの政治家が偉いからではなく、単純に、そうした「地元への気配り」をしないと、次の選挙で落ちてしまうからです。こういった「地元活動」は、俗に「田の草取り」など呼ばれていて泥臭い活動だと思われていますが、実は、「政治家が常に直接有権者の意見を聞いている」という意味では、非常に重要なのです。

 上記の「人民日報」の評論文のように、原因を分析して「党員の心掛け」を徹底したりしても、おそらくは事態は改善しませんが、「大衆の意見を聞かない政治家は選挙に落ちる」というシステムを導入すれば、すぐに改善できる問題だと思います。でも、今の中国共産党は、地方末端組織においてすら住民による選挙を導入するとは思えません。

 ただ、上記の評論文で「『権力を制度の籠の中に入れる』という要請に基づき、合理的に権力の限界を設定する」と主張している点は、「憲法に基づき中国共産党の権力を縛る」という発想であり、今年初めに広東省の新聞「南方周末」が主張しようとして検閲でボツにされた「憲政の夢」に通じる話です。

(参考URL)このブログの今年(2013年)1月9日付け記事
「『南方周末』の『中国の夢、憲政の夢』の日本語訳」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2013/01/post-e578.html

 今日(2013年9月12日)付けの産経新聞オピニオン欄に掲載されていた石平氏のコラム「China Watch 『中央党校』から反乱ののろし」によれば、中国共産党中央党校の教授の中にも「憲政こそ国家安定維持の大計」と主張する人もいるそうです。中国共産党の中にも、「中国共産党の権力を一定の範囲内に縛らなければ、むしろ中国共産党による政権維持自体が危機に瀕する」と考える人も多くなっているのかもしれません。

 私は、1980年代においては、地方政府レベルで選挙制度を導入すれば、自由選挙をやっても中国共産党は勝てると思っていました。中国共産党は、「文化大革命の誤り」を自分で修正し、改革開放政策により、経済成長を軌道に乗せ、1980年代に入って、人民の生活は明らかに向上していましたから。だけど、今(2013年)ならば、国家レベルでも地方レベルでも、選挙をやっったら中国共産党は完敗するでしょう。私としては、中国共産党は、既に民主制度を通じて自らの権力掌握を正当化するタイミングを失してしまったと思っているので、今更党内で「憲政を導入すべき」などと議論しても無駄な話だと思っています。今回紹介した「人民日報」副編集長の評論文も「問題意識の提起」としては評価すべきなのでしょうけど、これからもたぶん現実には何も変わらないと思います。

 ただ、この評論文は、「中国共産党の中には、まじめに考えている良識派もいるのだ。全ての党員が私利私欲で動いているわけではないのだ。」ことを示している、とは言えるのでしょう。

 なお、この評論文のタイトルが「マルクス主義執政党はいかにして大衆からの離脱を避けるべきか」となっているのは、「中国共産党はいかにして大衆からの離脱を避けるべきか」とすると、あまりにも露骨に中国共産党の危機感を表現してしまうことになると考えたからだと思います。

| | コメント (0)

2013年9月 8日 (日)

習近平主席らの外国訪問中に改革方針をアピールする李克強総理

 9月の第一週の後半、習近平国家主席は、ロシアのサンクト・ペテルブルクで開催されたG20首脳会議等へ出席し、中央アジア諸国を公式訪問しました。当然のことながら、「人民日報」や中国中央電視台(CCTV)の夜7時のニュース「新聞聯播」では、これら習近平国家主席の会議出席や次々にこなす各国首脳との会談を連日大きな扱いで報道しました。特に今回のG20首脳会議に際しては、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の首脳会議も開催され、ロシアのプーチン大統領とともに習近平国家主席の国際舞台での重要性が目立ちました。

 一方、李克強総理は、北京で、今後の経済改革制度に関する会議に出席しました。習近平国家主席の派手な外交活動の陰に隠れて、「人民日報」でも「新聞聯播」でも扱いは小さかったのですが、中身では、結構、今までの中国の政策をがらりと変える改革の方向性を打ち出しています。習近平主席が外交面で目立っている一方、李克強総理が「内政は自分が中心」と言わんばかりに、その辣腕振りを発揮しているように見えます。実は、同じ時期、江沢民派と言われる劉雲山政治局常務委員もベラルーシ訪問中であり、あたかも「鬼の居ぬ間に既成事実を作っておく」といった李克強総理の動きでした。

 私が注目した二つの会議は、以下の二つです。

【注目した会議その1:2013年9月6日に開催された国務院常務会議】

 この会議では、国務院が全国商工連合会の実施した民間投資政策に関する第三者委員会による評価を聴取しました。意見を聴取しただけで、何かを決定したわけではないのですが、内容は、今までの中国の経済政策と比べると、革命的に斬新な内容を含むものでした。2013年9月7日付け「人民日報」1面が伝える9月6日付け新華社電によると、ポイントは以下の通りです。

○民営企業は、市場参入に当たって、体制面及び政策面において少なからず障害に直面している。実施細則が具体的ではなく、運用がやりにくく、高い参入障壁があり、現実的な執行において困難が生じている。政策に関して、監督と評価が欠乏しており、一部の法律上の規定では時代の流れにあった調整がなされていない。

○この会議は、民間投資は、市場活力を発揮させ、就業や創業を促進し、改革を促進する重要な力がある、と指摘した。「微動だにしない二つの原則」(注)を堅持した上で、民間投資を活用して発展させ、改革の深化を通じて、体制システムの障害を打破し、生産資源の利用や市場競争への参加、法律による保護、社会に対する責任における平等を作り出し、社会資本が持つ巨大な潜在能力をもって中国経済発展のレベルアップのための転換の持続力を増強しなければならない。

(このブログの筆者注:「微動だにしない二つの原則」とは、「公有経済を断固として発展させること」と「非公有経済の各種形態の活動を断固として発展させること」の二つ。この部分は、「国有企業の優遇をやめ、市場競争での平等原則を確立する」というのがポイントですが、「微動だにしない二つの原則」を堅持した上で、とわざわざ言っているのは、保守派に配慮して「国有企業をなくすことはしない」ことを明示するためだと思われます)。

○会議は、思想の解放を継続し、理念の転換を果たし、民間投資を導入し奨励する各種の政策を全面的に実施すべきことを強調した。具体的には、以下のとおり。

・第一は、問題が抽出された点について、期限を切って実施細目の改善を実施する。

・第二は、市場システムが調整できる事項については、政府が許認可を行うことはしないようにする。許認可を実施する場合にも、プロセスと期限を明確にし、民間投資にとって「(通れるように見えて通れない)ガラスのドア」「(一時的に開いてもすぐに閉まる)バネつきドア」「(入れるように見えて実際は入れない)回転ドア」にならないようにする。

・第三は、金融、石油、電力、鉄道、電信、資源開発、公益事業において、民間資本の指向する方向が一致し、レベルアップのための転換に有効なプロジェクトに対しては、コスト・アンド・ベネフィットのモデルを構築し、機構改革の中において混合所有制経済(公有経済と民間所有経済の混合)を発展させる。

・第四は、民間投資に関連する行政法規を整理し、明晰で、透明性があり、公平公正で、市場参入がしやすい規則とする。

・各部門が実施する各種政策において、状況の評価を強化し、社会の能力を利用した第三者評価を導入し、各方面から監督を受けるようにし、政府による「自画自賛」をできないようにする。

---ブログの筆者によるコメント---

 中外合資経営企業法などが制定されたばかりの1980年代を知っている私としては、特に金融、石油、電力、鉄道、電信、資源開発、公益事業といった「社会主義のコア」の産業に「混合経済」とは言え民間資本を導入する考え方は画期的だと思います。

 党の会議ではなく、国務院の会議で、「思想の解放を継続し」と言っている部分は、1980年代の感覚から言ったら、相当に「革命的」です。1980年代前半は「精神汚染防止キャンペーン」と称して、胡耀邦総書記が失脚した1987年には「ブルジョア自由化反対」と称して、改革開放政策の導入による自由主義思想の導入を極度に警戒していましたので。

 中国では、解放前の半植民地的状況の苦い経験を踏まえ、1980年代の改革開放当初は、中国政府は、鉄道、電信、資源開発等に外国資本が参加することは絶対に認めない、という強い意志をもっていました(解放前は、鉄道や電信などを外国資本に握られ、それらの外国資本を保護する、という名目で列強各国の軍隊の駐留を許してしまいましたからね)。現在では、既に香港が中華人民共和国の一部になり、香港資本をはじめ、台湾資本やシンガポールなど多くの中華系外国資本が中国の経済活動を支えており、これらを活用しない手はないと考えているのでしょう。台湾資本を活用することについては、むしろ、将来、経済面から台湾を取り込むことを可能にする、という思惑が働いているのかもしれません。

 また「市場参入における公平原則(国有企業を優遇しない)」という主張は、最近摘発が相次いでいる石油開発関連会社幹部の汚職摘発と相まって、「国有企業だけが経済成長の甘い汁を吸っている」「国有企業が優遇されすぎて、市場経済化が進まず、民間企業の活力が削がれている」という多くの人民や民間企業家の不満を背景とした「李克強改革」の「キモ」と言える部分だと思います。

 習近平主席や劉雲山政治局常務委員が外国にいる間にこういった会議を開催するというタイミング設定には、私は李克強総理の「挑戦的意図」を感じました。

-------------------

【注目した会議その2:新型都市化路線の進め方について科学的に論証し検討するための中国科学院、中国工程院の専門家との座談会(「最近行われた」とだけ記されているので、正確な開催日は不明)】

 この会議は、李克強総理や張高麗副総理らが中国科学院と中国工程院の専門家を中南海(中国共産党本部のある場所)に呼び、「新型都市化」について意見を聞いた座談会です。「座談会」であって、何かを決定する会議ではありませんが、「新型都市化」に対する重要なポイントを議論しています。2013年9月8日付け「人民日報」1面が伝える9月7日付け新華社電によると以下の点がポイントです。

○中国工程院が行ったサンプル調査によると、現在、「80后」(1980年代以降生まれ)及び「90后」(1990年代以降生まれ)の新世代の農民工の多くは故郷に帰って農業に従事する意志はなく、都市住民になることを切望している。都市化は既に逆転不可能な趨勢となっている。

○座談会の中で、多くの参加者は、最近の中国の都市化は大きく進んだが、問題点も確実に存在し、科学的な計画が欠けている問題がある、最も大きい問題点は、1億人以上の農民工が都市に流入したが、都市住民と同じような公共サービスを享受できておらず、これらは「半都市化」と言わざるを得ない、と指摘した。李克強総理は、改革によって、都市を人々が真に安住し仕事をできる場所にしなければならないと述べた。

---ブログの筆者によるコメント---

 中国科学院、中国工程院の専門家は、都市化にあたっては、農村戸籍を持った農民工に都市戸籍を与えて、都市に住む農民工にも都市住民と同じような公共サービスを受けられるようにすることを提案しているように見えますが、それに対して李克強総理は言質を与えていません。農村戸籍・都市戸籍(非農村戸籍)という「二重戸籍制度」の是非については、たぶん、中国共産党内部でもいろいろな意見があり、改革派の李克強総理としても、まだうかつなことは言えないのでしょう。ただ、上にの二番目の李克強総理の発言からすると、どちらかというと李克強総理も二重戸籍制度を廃止すべき、と考えているようなニュアンスが伺えます。

-------------------

 上記の二つの会議で述べられた「企業活動の公平化(国有企業優遇の廃止)と鉄道、電信、資源開発等への民間資本の導入」「新型都市化に伴う二重戸籍制度の問題」は、いずれも中国共産党の「政策の基本方針の哲学」に関する問題であり、本来は総書記たる習近平氏がリードして中国共産党の中で議論すべき問題です。そういった基本方針(哲学)の変更を、本来は中国共産党の決めた政策方針に従って実務を進めるのが仕事であるはずの国務院総理の李克強総理がリーダーシップをとってどんどん進めていることが、現在の習近平-李克強体制の特徴と言えるでしょう。私が知っている1980年代の「胡耀邦総書記-趙紫陽総理の体制」、2000年代の「胡錦濤総書記-温家平総理の体制」、もっとさかのぼれば「毛沢東党主席-周恩来総理の体制」においては、基本方針は党の総書記(主席)が決め、国務院総理はそれに従って実務を実行する、という形でまとまっていました。ところが現在の習近平総書記-李克強総理の体制ではそうなっていないのです。

 これが、中国の新しい統治のあり方、を示すのか、路線を巡る指導部内の今後の混乱を予想させるのか、については、私はまだわかりません。もう少し様子を見る必要があると思っています。

| | コメント (0)

2013年9月 3日 (火)

中国の不動産バブルの現状を「人民日報」がレポート

 ここのところ、社会の問題点を率直にレポートする記事が目立つ「人民日報」ですが、今日(2013年9月3日)付けの紙面では、内外の注目を集める中国の不動産バブルの状況について、実例を交えた痛烈なレポートを掲載しています。

 2008年前半(北京オリンピック直前)、北京に駐在していた私は、多くの「人民日報」の記事で、不動産バブルを警戒するようなレポートを読みました(2008年前半に書かれたこのブログの記事をご参照ください)。当時の中国政府は、北京オリンピック終了に伴うバブルの崩壊を懸念しており、オリンピック開催前から、バブルの「ガス抜き」を図っていたのです。ところが、2008年5月に起きた四川大地震と2008年9月のアメリカ発のリーマン・ショックにより、中国政府がやろうとしていた「バブルが大きくなる前にガス抜きする」という方針は実行できないままになりました。

 下記に紹介する記事は、「マンション不動産バブル」(中国語で「房地産泡沫」)という言葉を明確に使っているほか、現状について「不動産バブル蔓延の懸念は既に現れている」と表現し「どこかの時点で崩壊するおそれがある」といった専門家の意見を紹介するなど、2008年当時と比べても、強い危機感に基づく記事となっています。

 今日付「人民日報」の1面には「盲目的な『都市建設』(中国語で「造城」)は断固として抑制しなければならない」というこの記事に関連した「人民日報」評論員による社説も載っており、この記事が党中央の意向を受けて書かれていることは明白です。この記事は、李克強総理が進める経済構造改革のひとつの柱である「都市化」が結局は「空き室だらけのマンション群」を建設するだけで終わるようであってはならない、という党中央の危機感を表しているのだと思います。

 このレポート記事のポイントは以下の通りです。

--------------

【2013年9月3日付け「人民日報」9面】
「『都市建設』ではどれくらいのバブルが吹き出ているのか(焦点の解読・調査)」
(本紙記者:丁志軍、楊彦、魏賀、智春萌、方敏、楊遠帆)

○最近記者が取材した「新都市プロジェクト」の中には、ややもすると数十平方キロもの広さの新しい都市圏が計画されているものもあった。都市化が進めば人々の生活は便利になるが、合理的な計画に欠ける「新都市」は少なくなく、それらは「空都市」になっている。これらからは、不動産バブルが蔓延するリスクや土地資源を浪費している影の部分、土地財政に過度に依存している懸念が浮き上がってきている。

○8月28日、記者は某海浜小都市に行った。東西21.3kmの海岸の山沿いの場所に、200棟以上のビルが建っているが、海浜リゾート地のような人の流れや賑わいはない。

○ある地区に入ってみると、ゲーム店、ケーキ屋、理髪店は全部閉まっていて、不動産仲介業者だけが店を開いていた。一人の店員に聞いたら、5,000戸あまりの住宅のうち、入居率は20%に満たないという。近くの地区でも入居率は3割に満ないという。「秋冬期の入居率が20%の入居率なので、数年住んでいるがずっと集中地域暖房がない」とのことだった。

○記者が行った東部のある省のある県にある5平方キロの新築の区域では、住宅地区が建築後5年経っているのに入居率は3割に満たず、商店街は建築後8年経っているのにほとんどの店は閉まっていた。

○某海浜地区で不動産仲介業者の徐さんが記者に言うには、海岸の景色のいい場所の開発が過度に行われたため、不動産価格の上昇が緩慢になり、ここ二年で、投機目的でマンションを買っていた客が大量に投げ売りし、老後に過ごすためや休暇で過ごすために購入していた一部のマンション所有者も、インフラ設備が不十分であるために、みんな投げ売りをしてしまった、とのことだった。

○似たような状況は、ある北方の「中国最高のエコ都市」と呼ばれる新しい地区でも起きている。数年前にマンションを買った曹女史は「マンションを買って死ぬほど後悔した。付近にはインフラ施設が何もなく、売りたくても売れない。」と言っていた。

○この「エコ都市」は、80平方キロの計画で、世界一流のエコ住宅都市、と銘打って作られた。8月28日、記者がここを訪れた時、一部の未完成の別荘地区は既に工事が停止されており、鉄でできた柵には錆が点々と付いていた。建築資材が乱雑に置かれている場所は、計画では2010年には学校や病院ができることになっていたが、まだ何もない。

○このエコ都市に仕事に来ているある銀行職員は「地方政府のもくろみは間違っていた。地方政府は土地を造成すれば高い値段で売れると思っていたのだろうが、人が生活するという根本のところを考えておらず、結果として巨額の資金を無駄にして無人島を作ってしまった。」と言っていた。

○記者は、新都市建設において、ひとつの開発モデルがあることに気がついた。土地を売却して資金を得ることを見込んで銀行から借款を得、あるいは土地を抵当にして融資を受ける、つまり一切が土地に由来しているのである。

○ある県の例では、新都市開発が2005年に起動した。計画面積は14平方キロだが、このほか別に2.97平方キロの埋め立て地区の計画があり、16億元(約250億円)が投入された。このプロジェクトは2011年に許可され、2012年に工事が開始された。今までのところ全て地方政府の投資により行われている。この県の幹部の話によれば、このプロジェクトはある国有企業の融資によるもので、インフラ設備を建設した後、土地を開発する方式であるとのことである。

○この県の幹部は次のように記者に話した。「旧地区にある地方政府ビルの土地は、1ムー(15分の1ヘクタール)あたり100万元であるが、新地区は1ムー40万元である。土地を交換すれば、新しい地方政府ビルを建設する資金の問題は解決する。」「埋め立て地の面積は4,500ムーであるが、このうち3,000ムーが売れれば、1ムー100万元で売れるとして計算すれば、30億元の収益が見込めるので、資金回収の問題は生じない」。この幹部は非常に自信を持っていた。

○新都市を建設するためなら、債務を負うことをいとわない地方政府は多い。専門家の分析によれば、地方の利益とGDP崇拝が「都市建設」の重要な動機である。新しい都市の建設が地価の上昇を招き、地方政府に多額の土地売却益をもたらす。大規模なインフラ建設を合わせて行えば、GDP増加をもたらし、素晴らしい行政成績となる。

○ある専門家は次のように言う。「あなたが現在の市長だったとして、多くの人が建設プロジェクトを見たとしても、いくら金を使ったとか、いくらお金が足りないのか、といったことは誰も追究しない。」「前任の市長が行ったプロジェクトについては、誰もインフラについて整備しようとせず、後任の市長は係わりたくないと考えており、後任の市長はただ、別の新しいプロジェクトを始めようとする。こうして『新都市』は次々大きくなるが、インフラ設備は不完全なままとなる。」

○中国改革基金会国民経済研究所の常務副所長でベテラン研究員の王梅氏は次のように言う。「地方政府の役人にとっては、新都市建設は財政収入や銀行からの借款で行われるのであって、自分のお金を使うわけではない。現在のように輸出が低迷し、消費が短期間のうちに拡大することが難しいような状況においては、投資のGDPを引き上げる役割がキーとなっている。このため、地方政府が投資に対して傾倒する傾向が大きくなっている。一部の地方政府の役人は、投資についてわかっておらず、プロジェクトが科学的な分析を経ずに動き出し、多くの『頭の中だけで考えられた』新都市が建設されている。」

○ある地方政府幹部は、記者に対して、「都市建設」の資金は土地財政に頼りすぎていて、新都市建設から数年が過ぎても、商工業が発展してこず、住民の入居率が低く、資金が環流してこないので、地方の圧力は極めて大きくなっている、と言っている。

○王梅氏は、「合理的な需給の前提がないままで、建設のための建設や、いわゆる『メンツ・プロジェクト』により、効果のない投資が行われ、資源が浪費され、経済発展の潜在能力を先食いしてしまい、地方政府の債務を高止まりさせている」と言っている。

○審計署(会計検査院)が先日発表した調査結果によると、地方の土地収入の増加率は低下しており、地方の借金の償還圧力は大きくなっている。2012年末現在で、4つの省クラス、17の省都クラスの地方政府において、土地売却収入を償還に充てている債務の元金・利息合計額は2,315億元に上っており、これはこの年の土地売却収入の1.25倍に当たっている。

○不動産バブル蔓延の懸念は既に現れている。記者が調査したうち、一部の3級、4級都市では、投資が巨大であるのに産業は空であり、市場の需要が不足している未完のプロジェクトがあった。

○国家発展改革委員会都市・農村都市改革発展センター主任の李鉄氏は、「一部の3級、4級の都市では、今でもこのようなマンション不動産発展モデルに頼っているところがあり、どこかの時点で崩壊するおそれがある。」と言っている。

○王梅氏は、「新都市の成功例としては、上海の浦東地区が挙げられるが、一部の中西部の都市や3級、4級の都市は、人口が流出している地方であり、こういった地方で、まだ新しい都市建設をやるのは、浪費ではないのか?」と言っている。

○「上の地方政府が傘下の地方政府の管理する土地を売っている」といった現象も一部の地方では起きている。また、ある専門家は、一部の地方政府が、新都市建設の名目で、大量の農業用地を建設用地に変え、土地の使用効率を下げ、耕地を侵食し、農民の利益を侵害しているという状況も発生している、と指摘している。

○記者が気付いたのは、多くの地方において、新都市を建設するに当たって、意識的か無意識のうちにかに係わらず、「都市化」を、土地の囲い込み、ビルの建設、ビル群地区の造成だと理解している。多くのインタビューで専門家が指摘しているのは、こういった方法は、「都市化」の本来の意味では決してない、ということである。

○だいぶ以前に開催された中国共産党中央政治局会議で、積極的かつ穏やかに「人を核心とする新型都市化」を提唱した。党中央が何度も強調しているように、「都市化」は、工業化、情報化、農業の現代化と歩調を合わせて計画しなければならない。

○李鉄氏は「都市化の核心は改革であり、投資ではない」としている。

○新都市建設にあたっては、「人を基本とする」の路線に立ち戻るとともに、産業計画と結合させ、現実的な需給と未来の発展を総合的に考慮しなければならない。

○王梅氏は、次のように述べている。「理性的ではない新都市建設を抑制するためには、まず、透明な政策決定システムと監督システムが必要であり、土地資源の開発には適切な監督を受ける必要がある。」「次に役人がGDPを主要な成績評価目標にしているのをやめさせ、政府機能の効率性を成績評価の核心にしなければならない。」

○「都市化」は盲目的な「都市建設」ではない。記者がインタビューした中で、多くの専門家は「大きくてスピードのある盲目的な『都市建設』を求める風潮は巨大なリスクと浪費を生み出すので、タイミングよくうまくコントロールする必要がある」と指摘している。

---------------------------

 李克強総理が、経済構造改革のひとつの柱として「都市化」を掲げていることについて、私を含め、多くの人が「地方政府は、また『都市化』という新しい錦の御旗を得て、工場の建たない工業団地や誰も住まないマンションを作ってしまうことになるのだろう」と心配しているわけですが、この記事を書いた「人民日報」の記者も同じ懸念を持っているようです。

 一方、専門家の発言とは言え、「一部の3級、4級の都市では、今でもこのようなマンション不動産発展モデルに頼っているところがあり、どこかの時点で崩壊するおそれがある。」「3級、4級の都市は、人口が流出している地方であり、こういった地方で、まだ新しい都市建設をやるのは、浪費ではないのか?」といった発言を紹介しているのは、表現としては刺激的で、「人民日報」としては、結構「大胆な」記事だと思います。

 この記事は、現在の中国における問題点を率直に認めており、一定の「健全さ」を感じますが、一方で、この記事は、一般中国人民に対して、不動産バブル崩壊の危機を認識させ、それらへの投資に使われている「理財商品」に対する警戒感を改めて喚起することになるのではないかと思います。9月末は、四半期末なので、多くの「理財商品」の換金化が行われると思いますが、中国では10月1日から国慶節の大型連休があるので、9月末は1年の中でも「理財商品」の換金化請求が多い月末だと思われます。危機感を喚起するのはよいのですが、現在発行されている「理財商品」の換金化請求が多く行われ、一方で新たな「理財商品」の販売が順調に行われないと、多くのデフォルト(換金化不能)が発生するおそれがあります。そういったおそれもあるなか、このような現実を直視した記事を掲載する「人民日報」には敬意を表したいと思います。

 問題は、この記事が示す「問題意識」に対する具体的対応策、即ち地方政府が「都市化」の名目で「人の住まないマンションの建設」などをやらないようにするには、どうするか、です。報道の自由化を図り、市や県の幹部を選挙で選ぶようにすれば、報道や地方住民による地方政府の監督は容易にできるはずなのですが、今の中国共産党には、そこまで期待するのは無理でしょう。

 ただ、「人民日報」がこうした結構鋭い現実の問題点をえぐる記事を掲載することは、多くの新聞社の記者の「ジャーナリスト魂」を喚起することになり、同じような社会を批判する記事が多くの新聞に掲載されるようになるかもしれません。また、ネット上の多くのブロガーも、「人民日報」の記事のような内容をブログで書いていいのだ、と感じれば、ネット上での「問題提起ブログ」も多く書かれるようになるでしょう。

 このようにして、結局は、「不動産バブル」の崩壊が防止され、同時に中国の社会システムも少しづつ前進していくことを期待したいと思います。(ことは、そう簡単ではないと思いますが)。

| | コメント (0)

2013年9月 2日 (月)

江沢民氏が元有力者の葬儀に参列せず

 どの新聞社・通信社も特段に報じていないので、深い意味はないと思うのですが、この時期、タイミング的に「微妙」な意味合いがある可能性があるので書いておきます。

 昨日(2013年9月1日)、去る8月25日に亡くなった元人民最高検察院院長の劉復之氏の葬儀が行われました。この葬儀には、習近平国家主席、李克強総理ら現役の政治局常務委員7名と江沢民、胡錦濤の両元国家主席から花輪が献じられました。また、政治局常務委員7名と胡錦濤前国家主席は葬儀に参列しましたが、江沢民元国家主席は葬儀には参列しませんでした。

 事実関係はそれだけです。江沢民氏は87歳の高齢ですので、花輪を献じただけで葬儀には参列しなかったのは、全く不自然ではなく、深い意味はないと思うのですが、私が感じたことを書いておきます。

 まず、今日(2013年9月2日)付けの「人民日報」が報じた劉復之氏の経歴によれば、氏は1917年生まれで、1938年に中国共産党に入党し、抗日戦争、国共内戦、中華人民共和国建国期に活躍し、文化大革命期に迫害を受け、文革終了後、復権して、1983年に公安部長に就任、1988年には最高人民検察院検察庁に就任したとのことです。主に、法律、公安、検察関連の仕事をしておられたようです。1988年には私は北京にいましたが、私は名前は存知上げていませんでした。

 実際に、抗日戦争や国共内戦を戦い、96歳で亡くなった長老の方でしたので、現在の指導部の方々が深い弔意を表されてもおかしくない方だと思います。ただ、私の感覚からすると、政治局常務委員の経験があるわけでもないので、現在の政治局常務委員全員と胡錦濤前国家主席が葬儀に参列し、葬儀の様子が「新聞聯播」や「人民日報」で大きく報道されるのは、扱いとしては異例の大きさかなぁ、という感じがしました(お前が知らなかっただけで、党内では大物だったのだ、と言われれば、それまでですが)。

 私はこの手のニュースには「うがった見方」「深読みのしすぎ」をするクセがあるのですが、今回の劉復之氏の葬儀の報道は、「新聞聯播」や「人民日報」を使って「江沢民氏が葬儀に参列しなかった」ことを全国人民に知らせることが目的だったのではないか、と思ってしまったのです。江沢民氏が高齢のために葬儀に参列しないことは全く不自然ではないのですが、政治家にとって健康問題は非常にセンシティブな問題です。

 江沢民氏の政治的立場に気を使うのだったら、事実を淡々と伝えればよく、テレビのニュース「新聞聯播」で習近平国家主席、李克強総理、胡錦濤前国家主席や他の現役政治局常務委員の参列の様子を長々と放映して、江沢民氏がその場にいないことを強調するような映像の作り方にはしなかったのではないかと思います。「人民日報」の方では、劉復之氏の経歴を紹介するページで、江沢民元国家主席と劉氏が一緒に映っている写真を掲載して、江沢民氏の立場にも気を使っているように見えました。

 私が、「江沢民氏が葬儀に参列しなかった」ことを全国人民に知らせることが目的だった、などと「うがった見方」をしている理由は、以下に掲げるように、今が非常に微妙なタイミングであることにあります。

○習近平総書記が現在展開している「ぜいたく禁止令」「開会式などで派手な演出をすることをやめるように」というキャンペーンは、一般に「江沢民プロジェクト」と考えられている北京の国家大劇院など派手な建築物の建設や「ど派手」な北京オリンピックの開会式のイメージに対する批判につながり、それはややもすると習近平総書記が「江沢民批判」をしているように見えてしまっています。

○現在、中国石油天然ガス集団(CNPC)の副社長だった王永春氏、李華林氏が「規律違反の疑い」で取り調べられているほか、昨日(9月1日)には、新華社が、現役の閣僚である国務院国有資産監督管理委員会の蒋潔敏主任について「重大な規律違反」の疑いで調査が始められた、と報じています。彼らはいわゆる「石油閥」と呼ばれるグループですが、その背後にいたのは前政治局常務委員の周永康氏と言われています。先ほどネットで見た時事通信の報道によると、周永康氏は既に党中央の管理下にある、との情報もあるようです。日本での報道によれば、先頃裁判が行われた薄煕来元重慶市書記の事件についても、周永康氏は最後まで薄煕来氏を擁護していた、と言われています。2007年の党大会の時、政治局常務委員は7人になるのではないか、と言われていた中、周永康氏らが加わって9名になった、という経緯の背景には江沢民元国家主席の意向があった、と言われています。

 こうした中、「江沢民氏が今どういう状況にあるのか(例えば、長老幹部の葬儀があったら参列できるような状態なのか)」といった情報は極めて「敏感な情報」であるはずです。「葬儀に参列できないような健康状態である」という情報そのものが、政治家の政治力に影響を与えかねないからです。そういった「敏感な情報」をあえて強調するような報道を「新聞聯播」や「人民日報」がなぜしたのか、が気になるのです。

 私の感覚から言ったら、劉復之氏のような経歴の方の葬儀には、政治局常務委員全員と江沢民氏、胡錦濤氏から花輪が献じられ、葬儀には政治局常務委員の誰かが参列すれば、十分に礼は失しないと思います。あえて言うなら、葬儀に現役の政治局常務委員全員が参列してもおかしくないのですが、胡錦濤氏が参列する必然性はなかったと思います。高齢で葬儀への参列が難しい江沢民氏の状況を知った上で、胡錦濤氏が意図的に葬儀に参加して江沢民氏が葬儀に参列できないことを際立たせた、のだとしたら、それは胡錦濤氏の意図的な判断だったのかもしれません。

 といったことは、おそらくは私の勝手な「深読み」で、実際はあまり深い意味はなかったのだ、と考えるのが普通でしょう。そもそも葬儀への参列は、単なる政治家としての序列などの問題に加えて、個人的に親しかったかどうか、といった問題も関係してきますので、あまり深く立ち入って詮索するのは、故人や葬儀に参列した方々に失礼に当たるのかもしれません。でも、たぶんそうだから「書きたいけど書かなかった」通信社などもあったと思うので、私はあえて故人や葬儀参列者等に対する失礼をお詫びした上で、私の感じたことを書かせていただきました。

| | コメント (0)

2013年9月 1日 (日)

中国の低所得者用公共住宅の問題点:「人民日報」の指摘

 低所得者用公共住宅(中国語では「保障房」:社会保障的性格の強い住宅の意味)の建設の促進は、今、李克強総理が経済構造改革の一環として進めている「都市化」の中の大きな柱の一つです。低所得者用公共住宅の建設は、中国政府はこれまでも強力に進めてきていますが、2013年8月30日付けの「人民日報」では、今まで建設が進められてきた低所得者向け住宅について、大きな問題があることを指摘しています。以下にポイントを紹介します。

---------------

【2013年8月30日付け「人民日報」17面記事】
「低所得者用公共住宅がなぜ『野ざらし状態』になっているのか(民生からの視線)」
~住宅に住めない人がいる一方で、人の住んでいない住宅がある~

○低所得者用公共住宅において、建設資金の不足が指摘される中、一方で人の住んでいない低所得者用公共住宅が空き家のまま放置されている状況が、再び社会の関心を集めている。

○北京南第六環状路の馬駒橋の近くにある草地の中に広仁家園地区の高層建築群が見える。この住宅プロジェクトは、北京市中心から30kmの場所にあり、去年10月末に入居が開始された。ここの住民が言うには、この地区の北側の第1棟から第4棟までは、主に北京市西城区の住民向けに建設されたものだが、現時点では空室率が50%以上であり、かつ入居している人のうち多数がこの住宅の所有者ではなく、所有者が付近の村民に賃貸しているものである、とのことである。

○記者が北京市西城区までの通勤経路を実際に移動してみたが、この地区のバスは15分間隔で、最寄りの地下鉄の駅までバスで15分、バスを降りてから地下鉄に乗り換えるのに20分近く掛かる。結局、大きな荷物を持っている場合、住居から地下鉄の駅まで小一時間掛かり、この地区から西城区へ行くのにバスと地下鉄を乗り継いで、2時間ないし3時間掛かる。誰が通勤に毎日5~6時間も掛かる場所に住むというのだろうか?

○低所得者用公共住宅建設では、予算が限られているため、郊外に建設されることが多い。北京の場合、2012年に提供された各種の低所得者用公共住宅のうち77%が第5環状路の外側であり、かつその半分以上は地下鉄が未開通の地区である。南京においては、今年初に提供された二つの低所得者用公共住宅は中心部から20km及び35kmの場所にあり、合わせて6,000戸以上が募集を行ったが、申し込んだのは数百人しかいなかった。

○低所得者用公共住宅は、場所が遠く、交通などのインフラが整っておらず、病院、学校など公共サービス施設がないものが多い。「郊外に一戸の家を持つより、むしろ市内にベッドがひとつあった方がいい」と言う申請者も多い。去年雲南省で提供された2万3,000戸の低所得者用公共住宅は、建物は良い建て付けになっているが、道路が完成していなかったり、電気・ガス等が全部完成していなかったりした。ある地方の低所得者用公共住宅建設プロジェクトにおいては、1~2kmの範囲内に、スーパーマーケット、八百屋、薬局やバスの停留所がないところもあった。

○低所得者用公共住宅のうち、都市郊外のゴミ処理工場、下水処理場、工業団地などに近接しているものが少なくない。ゴミ処理工場の煙の問題で、住民と騒動になったところもある。

○今年8月初めに広東省深セン市で最大の低所得者用公共住宅プロジェクトで抽選が行われた。ここは賃貸であるが、家賃は1平方メートルあたり16.5元(約260円)で1戸40平方メートルの物件の家賃は約660元である。これは周辺の同じような一般住宅に比べて3分の1の家賃である。しかし、最初に入居を申し込んだ人のうち、物件を見た後で45%が辞退した。

○江蘇省出身のある女性は大学卒業後に深センに来て就職したが、この家賃は彼女の月収の半分以上だった。しかも、深センの低所得者用賃貸住宅に申請するには、深センの戸籍があり、少なくとも三年以上社会保険費を支払った者でないと申請できない。彼女は申請ができないのだった。

○申請資格において、流動人口(いわゆる「農民工」など、その都市以外の戸籍を持つ人)は、低所得者用公共住宅の配分の枠外に置かれている。上海においては、低所得者用公共分譲住宅に夫婦で申し込むためには、夫婦ともに連続して7年以上の上海都市部戸籍を持つ必要があり、申請する区の戸籍を5年以上連続して持っている必要がある。北京においては、低所得者用公共賃貸住宅、低所得者用公共分譲住宅、中所得者用公共分譲住宅に入るには北京戸籍を持っている必要がある。杭州においては、家族のうち少なくとも一人以上が杭州市の都市戸籍を5年以上持っていなければならない。これらは、住宅に困っている人たちの中で大きな割合を占めている大量の流動人口あるいは卒業後一定年限に達していない大学卒業生を排除していることになる。

(このブログの作者注:大学生は、農村戸籍出身・非農村戸籍出身に係わらず、大学生になった時点で一旦「暫定戸籍」扱いとなる。卒業後、就職が決まった時点で、就職先が都市であれば、その都市の都市戸籍を取得できる。従って、農村出身の学生にとっては、大学入学と就職は農村戸籍から離脱できる大きなチャンスである。中国の農村出身の学生が必死に勉強に励んで大学に入学し入学後も都市部の企業に就職できるように努力するハングリー精神に富んでいるのは、こういった制度が背景にある)。

○中原不動産市場研究部総監の張大偉氏は、提供対象者の範囲の狭さが、低所得者用公共住宅の高い空室率の主要な原因であると分析している。特に、北京のような大都市においては、ごく少数の低所得者層を除いて、その都市の戸籍を有している家庭の大部分は既に住宅を持っている。彼らもより条件のよい公共住宅を欲してはいるが、低所得者用公共住宅を欲しいと思っている人の7割は流動人口(その都市の戸籍を持っていない者)である。だから、低所得者用住宅の空室率が高く、一方で、流動人口で住宅を欲しいと思っている人が住宅を取得できないのである。

○需要と供給の不一致が高い空室率を招いていることは数字上明白である。北京市最大の賃貸公共住宅プロジェクトである京原家園では、今年年初、抽選で当たった家庭の三割が辞退した。辞退した家庭は、分譲住宅を購入したいと思っていたのである。深セン、杭州、武漢などの都市においては、賃貸住宅の抽選において当選者辞退の比率が5割に達しあるいは5割近くになっている。

○価格が不合理であることも、低所得者用公共住宅で空室が多いひとつの原因である。2012年、山東省においては、4つの市、40の県の1万2,900戸の低所得者用公共住宅が空室であった。そのうち4つの市、22の県の4,870戸が6か月以上空室のままである。去年末の時点で、青島城陽白沙湾片区の1,848戸の中所得者用公共分譲住宅では、143戸しか申し込みがなかった。周辺の一般販売住宅と比べて、中所得者用公共分譲住宅は1,000元以上安いが、間取りの設計や景観などで見劣りがし、将来の転売についても制限が多いことから、多くの人は、公共分譲住宅の方が一般販売住宅より価格が有利であるかどうかは明確でない、と言っている。

○建設基準も不合理なため、低所得者用公共住宅が競争力を失っている。例えば、ある低所得者用公共分譲住宅では、住居内面積が約45平方メートルであるが、入居基準は当地で一人あたり15平方メートル以下の住宅に住んでいる人に限られている。つまり3人以上の家庭では、お金を使ってこの低所得者用公共住宅を購入しても住宅環境の改善にはならないのである。

○低所得者用住宅の入居基準が厳しいことについては、いろいろな議論がある。多くの地方政府は「余裕のある人に政府が補助をしている」と世論から批判されることを恐れている。また、財政的限度のため、低所得者用公共住宅の面積は最低限のものにせざるをえず、そのため申請できる家庭の収入が低く抑えられている、という問題もある。2012年において、二人家庭向けの北京の低所得者用公共分譲住宅の申請資格は、家庭の年収が36,300元未満であった。これは一人あたり月収1,513元以下を意味するが、この年の北京の最低賃金基準は月収1,260元である。これでは申請できる家庭は相当に限られてしまうことになる。

○北京西城区の候さんは、過去数年間の年収は36,000元だったが、ここ数年努力して月給が約200元増えた。そうしたら、低所得者用公共分譲住宅の申請基準を上回ってしまった。候さんは「努力しなければ住宅を買えない。努力したら入居基準を超えてしまった。低所得者用公共住宅の申請条件は厳しすぎる。政府は多くのお金を使って住宅を建設して、いったい人に住んでもらおうと思っているんでしょうかね?」と言っている。

○専門家は、新しく建設された低所得者用住宅への入居を容易にするために、住宅補助金政策を採ることを提案している。また、住宅・都市建設部門の責任者は、さらに調査を進めて、2013年年末までに、一定以上の規模の都市に安定的に就業している外来労働者(その都市の戸籍を持たない労働者)を低所得者用住宅の対象に含めることを検討している、という。また、多くの市では、低所得者用住宅の空室率を行政成績の審査の際の考慮事項にするという政策を実施している。

○中国社会科学院社会学研究所の唐鈞研究員は「都市管理の観点から見ると、低収入の人たちが同じ場所に集まって住むのは、あまり理想的ではない」と指摘している。唐鈞研究員は、低所得者住宅の多くは都市の郊外地区に建設していることから、そういった場所では治安状況が比較的悪くて、「貧民街」を作ってしまう可能性が増大する、としている。

○唐鈞研究員は、政府が賃貸料を補助して、空室となっている二番手住戸(所有者が住んでいる住戸以外に投機目的で所有している住戸)を低収入家庭が借りられるようにする、という政策を採ることも可能であろう、と指摘している。

○唐鈞研究員は、空室率の高低は、低所得者用住宅の計画が合理的であるかどうかを反映している。我々の計画は、経済的論証、環境面での論証の前に社会的論証を受ける必要があり、低所得者用公共住宅の対象者に対して調査を行い、彼らに政策決定者に対してどのような地域社会を作るべきなのかを言わせなければならない、と指摘している。

--------------------

 「人民日報」は、時として、社会問題を鋭く追究するルポ記事を掲載することがあります。私もいろいろ「人民日報」の「鋭い記事」を読んだ経験がありますが、その中でも上記の記事は、なかなか秀逸だと思います。また、李克強総理が「都市化」を強力に進めている現在、グッド・タイミングな記事だと思います。要するに、今までも政府は低所得者用公共住宅をたくさん作ってきたけれども、地方政府は「数を作ればいいんでしょ」という態度であり、入居しやすい条件整備をしてこなかった、ということなのでしょう。特に戸籍による入居制限が問題を複雑にしていることを指摘していることは、今後の戸籍制度議論に大きな材料を提供していると思います。

 特に、最後の「低所得者用住宅の対象者に対して調査を行い、彼らに政策決定者に対してどのような地域社会を作るべきなのかを言わせなければならない」の部分は、地方政府の政策決定に受益者たる住民の意見を反映させなければならない、という意味で、政治の民主化を主張しているわけであり、それが「人民日報」に載った意味は大きいと思います。

 こういった記事を中国共産党機関紙の「人民日報」が掲載した、ということは、党中央としても、李克強総理は経済構造改革の一環として「都市化」を進めているけれども、結局はそれが今までと同じような「コンクリートのハコモノ作り」で終わってしまうことを警戒していることを示しているのでしょう。

 ただ、今までも、私もいろいろ「『人民日報』もなかなかいいこと指摘するなぁ」という記事はたくさん見てきましたが、あんまり実態は改善されてきていません。是非、政策を実行する地方政府は、この「人民日報」の指摘を真摯に受け止めて、李克強総理が進める「都市化」政策が強力に進められた後の何年後かには、地方に多数のガラガラ空室ばかりの低所得者用公共住宅群が墓標のように林立している、というような事態にはならないようにして欲しいと思います。

| | コメント (0)

« 2013年8月 | トップページ | 2013年10月 »