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2013年8月14日 (水)

ぜいたく禁止令と上海ディズニーランド

 中国の習近平政権は、3月に正式に発足して以来、矢継ぎ早に各レベルの政府による豪華な宴会の禁止、今後5年間の党機関・政府機関の建物の建設禁止などの倹約令・ぜいたく禁止令を出しています。まるで、松平定信の寛政の改革のようですが、今日(2013年8月14日)付けの「人民日報」の1面トップに載っていたのは、施設のオープン・セレモニーなどによくやる豪華な演出(文芸会)を禁止する「お触れ(通知)」でした。これは中国共産党中央宣伝部、財政部、文化部、審計署(会計検査院)、国家新聞出版ラジオ・テレビ総局の連合通知で、豪華な「見栄張り」を禁止し、セレモニーをやる際には倹約するように提唱するものです。

 この通知によれば、最近、政府関係機関や国有企業が行うオープン・セレモニーや開会式などの中には、豪華な演出をし、高いお金を払って「スーパー・スター」を出演させるような派手なものが多く、ぜいたくの風潮や「見栄張り浪費現象」が顕著なので、それをやめるように、とのことです。

 多くの人民が党や政府や国有企業が行う派手なセレモニーの演出などに反感を持っているのはわかるのですが、「寛政の改革」じゃあるまいし、21世紀の大国の中央政府が「お触れ」を出さなくちゃいけない性質のものなのかなぁ、人々に反感を持たれないようにするのはどういう組織であっても「常識」じゃないの、つまりは中国の政府関係機関や国有企業はやっぱり「常識」がないのかなぁ、というのが私の素直な感想です。

 一方、同じ今日(8月14日)付けの「人民日報」12面では「金融特集」が組まれており、そこに中国農業銀行の党書記・薫事長(理事長)の蒋超良氏が書いた文章が載っていました。「『三農』のサービスに立脚し、大衆とともに歩む路線を実践する」というタイトルです。「三農」とは、農民、農村、農業を指し、農民を助け、農村を活性化し、農業を発展させることです。「三農」に対する金融は、通常の都市部の金融と比べて、コストが高く、リスクが大きく、収益が低く、状況は複雑であるが、大衆の路線を貫徹し、積極的に「三農」のための優良な仕事をしなければならない、と蒋超良薫事長は述べています。

 一方で、インターネットでの報道によれば、8月12日付けの香港の英字新聞「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」は、中国農業銀行が上海ディズニーランド建設等のために上海市に巨額の資金を融資することを決定した模様で、その金額は2,500億元(約4兆円)に上る、とのことです。

 この金額は、とんでもない巨額なものだと思います。私が以前に聞いた話だと、東京ディズニーランドの建設費は、ざっくり言って2,000~3,000億円程度らしいです。東京ディズニーランドの建設費も巨額だと思いますが、もし香港の英字紙の報道が事実だとすれば、4兆円という数字は、とてつもない巨額だと思います。

 なお、この報道の影響なのか、昨日(8月13日)の香港株式市場での中国農業銀行の株価は対前日比で約5.6%急騰しています。この点について、今日(8月14日)に放送された日経CNBCの番組「アクロス・ザ・マーケット」に出演していた解説者は、中国政府は、景気刺激のために、少しづつではあるが政策を繰り出しつつある、と解説していました。やはり上海ディズニーランド建設への融資決定は、「政府による景気刺激策」として、市場では捉えられているようです。

 上記の中国農業銀行による上海市への巨額融資決定の話が事実とすれば、今日付の人民日報に掲載された「セレモニーなどでのぜいたく禁止・倹約のお触れ」や中国農業銀行理事長による「農民・農村・農業のための融資の充実」といった話とは、全くアンバランスな話です。ディズニーランドは、エンターテイメント・ビジネスであって「ぜいたく」ではない、という議論はあると思いますが、一般人民的感覚から言ったら「言ってることとやってることが全然違うじゃないか」と多くの人は思うと思います。少なくとも、中国農業銀行の使命は「三農」(農民・農村・農業)への融資であって、ディズニーランド建設とは関係ないはずです。

 今日(8月14日)の「人民日報」の紙面で、「三農に対する融資をきちんとやる」と強調した中国農業銀行トップの記事が載っていたのは、「おかしいんじゃないの」と疑問に思っている中国人民に対して「党中央としては倹約令・ぜいたく禁止令を出しているし、中国農業銀行は農民・農村のための融資活動をちゃんとやっていますよ」ということを「人民日報」で強調したかったのでしょう。

 上海ディスニーランドの建設はひとつのビジネスですから、別にとやかく言う筋合いではないと思いますが、やはり、中央政府の「お触れ」や中国農業銀行の党書記・理事長の言っていることと、実際にやっていることが全然違うじゃないか、というイメージを中国人民に与えてしまったのは否定できないと思います。もしかすると、これは、党中央及び中央政府が各地方政府や各国有企業を全くコントロールできていない(習近平政権が全く求心力を失っている)ことを示しているのかもしれないので、要注意事項なのかもしれません。

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