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2013年7月19日 (金)

昨今の中国の経済状況はバブルか

 「変に危機感を煽ってはいけない」という配慮からなのか日本のテレビではあまり報道されてこなかった中国の「影の銀行行為」(シャドウ・バンキング)問題ですが、昨日(2013年7月18日(木))19:30からNHK総合テレビで放送された「クローズアップ現代:新興国経済に異変~マネーの逆流で何が~」で、この問題は大きく取り上げられていました。

 この番組で私が改めて知ったのは以下の点です。

○個人宛に理財商品の購入を勧める勧誘メールが送られていること(番組で紹介されたメールでは、発信者である具体的銀行名や具体的予定利率(6~6.4%)が示されていました)。

○先月(2013年6月)、蘇州のある銀行(番組では銀行名も明示していました)において理財商品(財テク商品)の償還不能があり、投資者からの抗議活動があったこと。(日本経済新聞等では昨年12月にある銀行が販売した理財商品の償還不能があり、それに対する投資者の抗議活動があったことは報じられていましたが、銀行間貸出金利(SHIBOR)が乱高下した先月にも実際にそれがあったことは私は初めて知りました)。

 この番組の冒頭では、内モンゴル自治区オルドス市にできた巨大な売れ残りマンション群が紹介されていました。売れないので、建設が途中で中止されたマンションの様子も映像で紹介されていました。売れ残りのマンション(または利用されていないオフィス・スペース)が中国のあちこちに存在していることは、秋や冬の夜に中国の都市を歩けばすぐにわかります。2007年10月に北京に駐在していた頃に書いたこのブログの下記の記事にもそれが書かれています。

(参考URL)このブログの2007年10月17日付け記事
「夜8時半過ぎの北京のビルの稼働率」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2007/10/post_7335.html

 こういった中国の経済状況を「バブル」と呼ぶのかどうか、は、人によって違うと思います。一方、なぜ「売れないマンション」が作られてしまうのか、という問いに対しては、売れても売れなくてもマンションを作ればGDPが上がるから(それに伴って建設している期間中は雇用が生まれるから)というのが答です。そういった現在の中国の経済状況に関して、今日(2013年7月19日)の「人民日報」に下記のような解説記事が載っていました。

(解説記事1)我が国の経済発展の状況は依然として比較的良好な状態を保持している(経済情勢の専門家は語る):祝宝良国家情報センター経済予測部主任

 この解説記事の中に「最近の我が国の経済状況の中に出現した新しい状況と問題点」と題する段落があります。そこにはポイントとして以下のようなことが書いてあります。

「金融が経済成長を支える割合が低下してきており、金融リスクがある程度増大している。現在、地方金融平台と過剰生産能力を抱える業種が「新しく借りて昔のものを返す(中国語で『借新還旧』)」を行うことによって作り出した大量の資金を使って、多くの市民が理財商品と不動産に投資し、多くの企業が金融投資している。一部の資金は理財商品を通じて金融機関同士で持ち合っており、実体経済に利用されておらず、しかも資金の償還期間はマッチしていない。資金供給量は増大しているのに、経済成長のスピードと物価上昇スピードは鈍化している。総体的に見て、金融リスクは増加し、金融が経済成長を支える割合は減っている。」

 こういう経済状態って、普通の言葉で言えば「バブル」ですよね? バブル(中国語では「泡沫」)とは書いてないけど、上記を解説している祝宝良主任は、現在の中国に「バブル」が存在することを明確に認識しているわけです。で、それがハッキリと「人民日報」上で語られていることの意義は大きいと思います。最近の「人民日報」の文章を見ていると、読んでいてすっとわかりやすい、極めて素直な文章が多いので、現在の中国の経済状況はかなり危機的な状況ではあるとは思うのですが、関係者がそれを率直に認識していてうまく対処することはできるのではないかと思えるからです(「人民日報」が率直に事態について解説しているのは、中国人民に対しても、そうした「当局は事態を率直に理解しており、今、対処しているところだ」ということを伝えたいからなのでしょう)。

(解説記事2)政府機能の転換をどのように取り扱うか(マクロ経済情勢と政策措置をどのように取り扱うか):中国行政体制改革研究会副会長、国家行政学院教授汪玉凱氏を訪ねて

 この中で汪玉凱氏は次のようなポイントのことを言っています。

○行政が行う許認可が多すぎる。

○政府部門が自らの部門の利益のために政府の職能を変えてしまっている。ある人はこれを「権力部門化、部門利益化、利益個人化または個人利益の法定化」と言っている。

○地方政府の役人の考え方が政府の職能の変質に関して重要な要素となっている。即ち、一地方のGDPの増加がその役人の昇進に大きく影響している。党の政治指導理念の中にあるGDPに過度に頼る一部の考え方が思わず知らずに地方政府に経済に過度に頼る考え方をさせている。

(注)私の個人的感覚としては、党の指導理念の一部について批判しているこの部分は、「『人民日報』でここまで言うか。時代は進んだなぁ。」と思わせる部分です。

○政府は市場及び社会に対して権利を与え、中央政府は地方政府に権限を与え、政府による機能の役割をハッキリさせ、マクロ経済コントロールの仕方を改善し、政府が管理すべき基礎的部分を確立させることにより、具体的な改革内容とロードマップが明確になるのである。

 ここの部分は、私がこのブログの7月3日付け記事「影の銀行行為対策:長い困難な変動の始まり」で書いたこと、即ち、「今回の金融制度改革をやり遂げるためには、中央から地方の末端までに至る中国共産党による支配構造を変えなければならない。」と言葉は違うけれども、中身は同じであり、それが「人民日報」に書かれていることの意味は重大だと思います。中国共産党中央は、権益構造で凝り固まった中国共産党地方組織について、今、本気で「上からの改革」をやろうとしていると思われるからです。できるかどうかは別問題ですが、中国共産党中央は、少なくとも、1980年代後半にソ連共産党においてゴルバチョフ氏がやろうとしていたことを「理念としては」やろうとしているのだと思います。

 その意味で、1980年代末~1991年に掛けてソ連が大変なことになった(1991年12月にソ連が解体した)ことを考えると、中国でも、これから大変なことが起きる可能性があると私は思っています。

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