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2013年7月27日 (土)

李克強改革の改革の「程度」

 今日(2013年7月27日)付けの「人民日報」に、7月18日に出された規制緩和に関する「国務院令」が載っていました。この国務院令の冒頭の説明書きのところでは、政府の役割を、できるだけ事前審査許可制から事業中の検査及び事後検査制に移行させるために、関連規定を整理した、とされています。内容は、1994年に制定された「石炭生産許可証管理弁法」を廃止するほか、25件の行政規定を変更する、というものです。

 中で、私が興味があったのは「衛星テレビ放送地上受信設備設置管理規定」の改正です。中国は、今では相当の山奥の村々にも衛星テレビ受信設備が普及しています。しかし、中国で販売されている衛星テレビ受信設備は、外国の衛星放送は受信できないシステムになっています。これは人から聞いた話ですが、中国で売られている衛星テレビ受信チューナーでは、画面の隅に表示されるチャンネルのロゴをイメージ認識し、中国大陸部から発信されたもの以外のチャンネルは映らないようなシステムが組み込まれている、とのことでした(この技術は相当なハイテクだと思います。中国のインターネットやテレビなどの「検閲技術」はおそらくは世界最高水準だと思います)。

 今の中国には、外国人等が多く利用するホテル、アパートメント、オフィス・ビル等には、CNN、BBCやNHK国際放送等の外国の衛星テレビ放送が見られるところが数多くあります。そういったところにあるテレビは、衛星からの電波を受信してから約30秒後に映像が配信されるシステムになっており、チベット問題、ウィグル問題や中国の人権活動家に関するニュース等が流れると、検閲当局から信号が送られて来て画面が真っ黒になるシステムになっています。私は、ラジオにおける妨害電波を徐々に廃止し、1988年の時点では北京で台湾からの短波ラジオの英語放送が聴けるほどに「オープン」に変化しつつあった1980年代の中国を知っているので、2007年に初めてテレビの「検閲ブラックアウト」を見た時は「時代が完全に逆行してるじゃないか」と相当のショックを受けました。

 私は、2007年~2009年の北京駐在期間中に、寧夏回族自治区や甘粛省、青海省など内陸部に行ったことがありますが、そういった内陸部のホテルのテレビでも、100チャンネル以上のテレビが見られるものがありました。ただ、その100チャンネルの全てが中国大陸部で制作されたチャンネルばかりで、大いにがっかりしたことがあります。

 なので、今回、「衛星テレビ放送地上受信設備設置管理規定」が改訂される、との「人民日報」の記事を見て、「お、中国でも、ついに外国の衛星テレビが見られるように規則が改正されるのか」と最初はちょっと興奮してしまったのでした。2007年~2009年に北京に駐在していた頃、携帯電話にしょっちゅう「CNN、HBO(映画専門チャンネル)などが見られる衛星テレビ受信設備をお売りしますよ」といった広告メールが飛び込んできました(これは、もちろん中国では違法な商売です)。もし、仮に、中国政府が公式に外国衛星テレビが見られる衛星チューナーの販売を許可したら、おそらくは中国国内で1億台以上売れる巨大なビジネスとなるでしょう。しかも、現在の中国の工業力を持ってすれば、衛星テレビチューナーは中国国内で生産できますから、最も効果的な中国国内の電子産業活性化策となるでしょう。

 ですが、もちろん、今の中国政府がそんなことを許可するわけはありません。「衛星テレビ放送地上受信設備設置管理規定」の改正部分をよく見ると、今までは「衛星テレビ放送地上受信設備は、政府が指定した機関以外では生産及び販売をしてはならない」となっていたものを「主管部門から許可を受けた企業が生産し、許可を受けて設立されたサービス会社にしか売ってはならない」に変更する、とのことです。つまり、生産と販売を「政府が指定した会社」に限定していたものを「許可制」にする、ということです。確かに「規制を緩和した」ことにはなるのでしょうが、たぶん、実質的には何も変わらないと思います。ましてや、衛星チューナーを生産する企業の活性化策などには、全くならないでしょう。

 ということで、「経済構造改革」といったって、おそらくはこういった「改革の格好はしているけれども、実態的には今までとほとんど変わらない」という類の「改革」のオンパレードが続くのかもしれません。こうした調子だと、中国経済の活性化、など、まだまだ先の話、ということになるような気がします。

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