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2013年7月26日 (金)

中国人民銀行周小川総裁の「人民日報」への寄稿

 今日(2013年7月26日)付けの「人民日報」では、中国人民銀行の周小川総裁による文章が掲載されています。タイトルは「穏健な貨幣政策を継続させ、小型イノベーション企業に対する金融サービスの改善を図る」というものです。

 中国経済の減速が懸念され、大型景気刺激策を期待する人も多いのですが、周小川総裁は、ここでも今までの方針である「穏健な貨幣政策を維持する」を再度強調し、景気刺激のための金融緩和政策は採らないことを明言しています。一方で、周小川総裁は、「影の銀行行為」取り締まりにより、今まで正式な銀行ではないところから資金を調達していた中小企業が調達難に陥っていることから、イノベーション系の小型企業(中国語では「創新小微企業」)に対する金融サービスの強化を図る方針であることを明示しています。

 これらは今までもいろいろなところで表明されてきたことで、新しい内容ではありませんが、次々と改革を打ち出す李克強総理や中国人民銀行の周小川総裁が「人民日報」に自分の考えをハッキリと掲載していることは、経済-金融政策の「ど真ん中」の舵取りは、李克強-周小川ラインでしっかりやってますよ、という中国人民と世界に対する強いメッセージになります。

 李克強総理は、景気減速懸念に対して、「底線は守る」、即ち、経済成長の最低ラインは割らないようにする、と発言して、景気刺激対策を求める勢力の意向も取り入れた意向を示しています。私は、李克強総理が景気刺激策を求める地方の共産党幹部らを基盤とする「守旧権益集団」に押し切られたのではないか(経済政策の舵取りの実権を失ったのではないか)と心配したのですが、「人民日報」の記事を見る限り、中国共産党中央の経済政策は、李克強-周小川ラインがまだきちんと掌握しているようです。

 今、マーケット関係者が気にしているのは、李克強総理が「守る」と言っている「底線」とは、経済成長率にすると何%なのか、ということでしょう。7.5%が今までの公式見解でした。楼継偉財政相がワシントンで「7%を切ることはない」と発言して、すぐに新華社が「7%ではなく、7.5%」と訂正しました。でも、今年の中国のGDP成長率は、第一四半期が7.7%、第二四半期が7.5%で、今、経済は減速傾向ですから、通年で7.5%は無理なのではないか、と多くの人が考えています。

 今日(7月26日)付けの「人民日報」に掲載されている別の経済解説記事「我が国の経済成長は『ハード・ランディング(中国語で「硬着陸」)』することはない(経済情勢の専門家が語る)」という論文(国務院発展研究センター研究員の張立群氏が書いたもの)では以下のように述べられています。

「市場条件やコスト構造の変化により、我が国経済の潜在的な成長率は低下しつつあるが、基本的な経済的条件を支持することにより、依然として経済成長のスピードを7~8%の水準に保つことは可能である。」

 この「7~8%の水準」という数字は、この文章で別の場所でも使われています。この文章が今日付の「人民日報」に掲載されている、ということは、李克強総理が考えている「底線」とは7%なのでしょう(この論文は、別の見方をすると8%を越えることになるような大型な景気刺激策は打たないよ、という意味とも取れます)。

 「中国政府が発表する経済統計の数字は信用できない」とよく言われます。その意味では、中国でビジネスを行っている外国企業の決算発表が中国の経済の現状を最も正確に現していると言えます。日米とも今4-6月期の企業決算発表のシーズンですが、今まで発表になった日米の企業の決算発表における中国でのビジネスの状況を見ると、中国経済の現状はやはりかなり厳しいものがあるようです。

 今日の「人民日報」で、中国人民銀行の周小川総裁が「穏健な貨幣政策を継続する」と明言し、同じ紙面に掲載された国務院発展研究センター研究員の論文で「7~8%の経済成長は可能」と述べられていることを考えると、中国政府としては、急激な経済の落ち込みは防ぎつつ、今の程度の経済成長スピードを維持して(年ベースでは最低でも7%は保つようにして)、根本的な経済構造改革を進めていく方針であることは、変わりないと思います。ですので、中国経済は、今年下半期以降も、「回復」するのではなく、しばらくは(私は5年以上のオーダーで続くと思いますが)現在のような厳しさが続いていくものと思われます(もちろん「大きな政治変動がなければ」というのが大前提です。「大きな政治変動」があれば、経済はもっと極端に下振れしてしまいます)。

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