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2013年2月10日 (日)

2013年:春節以降の中国経済

 今日、2月10日は、旧暦の元旦(春節)です。

 月刊誌「中央公論」の最新号(2013年3月号)にアジア経済研究の大御所である渡辺利夫氏(拓殖大学総長・学長)が「日本企業は対中投資戦略を再考せよ~中国経済ハードランディングの危機~」と題する論文を掲載しています。

 中国経済は、1978年の改革開放政策開始以降、「世界の工場」としての地位を確立し、農業生産や工業生産において、実体経済としての実力を強大なものにしてきたのは事実ですが、一方で、中国共産党が支配する社会主義的土地制度に基づいて、農民が使用している農地等を安い賠償金で接収し、その土地を工業団地やマンション等に開発することによって多額の利益を得るという「土地成金」的性質も多大に含むものであることが長年指摘されてきています。渡辺利夫氏も、現在の中国経済における投資の占める比重が大きすぎ、家計の占める大きさが少なすぎることを指摘して、投資効率の低い過大な土地への投資が「バブル」として崩壊する危険性を指摘しています。

 同様のことは私もこのブログで過去に書いたことがあります。

(参考URL1)このブログの2008年11月28日付け記事
「『史上最大のバブル』の予感」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2008/11/post-793d.html

 昨年あたり、多くのメディアでも、「中国土地バブル崩壊(特に地方政府によって設立された金融機関の土地に対する投資に起因する金融バブルの崩壊)」の懸念が指摘されてきました。

(参考URL2)ニュースウィーク日本語版2012年10月18日付け記事
「不良債権 中国金融が抱える時限爆弾」
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2012/10/post-2728.php

 最近では、中国が発表する統計データなどを基にして、この「土地バブル」の規模がどの程度かを推定する試みもなされています。

(参考書籍)「データで読み解く中国経済~やがて中国の失速がはじまる~」(川島博之著:東洋経済新報社)(2012年11月22日発行)

 「中国経済はバブルなのではないか」「中国経済のバブルはまもなくはじけるのではないか」といった話は昔から何回も繰り返されてきました。「2008年の北京オリンピックがが終わったらはじける」「2010年の上海万博へ向けての建設ブームが終わったらはじける」とも言われましたが、実際ははじけませんでした。従って、中国経済はバブルのように見えているのですが、本当にはじけるのか、はじけるとして、それがいつなのかは、誰にもわかりません。ですが、上記に掲げた記事や書籍・論文等に見られるように、今年は「そろそろ危ないのではないか」と思う人が増えてきているように思えます。

 私は、今年2013年については、春節明け(2月下旬~3月上旬)がひとつの「節目」だと思っています。その理由は以下の三つです。

(1)ヨーロッパ経済危機のあおりを受けた輸出不振から成長率が鈍っていた中国経済も2012年8月頃を底にして回復基調にあるが、2012年9月以降の日本との関係悪化によって日本との間の経済関係が冷え込んでいる。日本からの投資にブレーキが掛かるほか、反日デモに見られるような動きを「中国リスク」と捉えて、欧米各国も対中投資に慎重になる可能性がある(※)。

※下記のレポートによれば、2012年の中国の外資利用は、既に対前年比マイナス3.7%になっているとのことです。

(参考URL3)日中産学官連携機構特別研究員田中修氏の2013年1月28日付けレポート
「2012年の主要経済指標」
http://www1a.biglobe.ne.jp/jcbag/tanaka_report130128.pdf

(2)2012年末以来、日米欧の株式市場が明確に回復基調にあり、日米欧の経済が不振であるために中国に流れ込んでいた投機マネーが日米欧に復帰し、その結果として、中国に対する外国からの投資の引き上げが起こる可能性がある。このことは、中国において長年にわたり続けられてきた(特に2008年のリーマン・ショック対応で打ち出された4兆元の投資により更に加速された)土地開発投資によって造成された工業団地等に外資による工場が建たなくなることを意味する。これは、土地開発のために融資された資金が不良債権化することを意味し、同時に、補償金をもらって農地を手放した大量の農民が就職口を得られなくなることを意味する。

(3)3月の全人代で、行政組織のトップが交代するとともに、2000年代の中国マクロ経済の舵取りを担ってきた中国人民銀行の周小川総裁も交代する。中国のマクロ経済マネジメントは、優秀な官僚組織によってコントロールされているので、トップが交代しても変わらないという見方もできるが、新しい指導者たちの政治的な手腕が未知数である現時点においては、中国マクロ経済の舵取りの方向性も未知数であると言わざるを得ない。

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 私は2008年の北京オリンピックの年には北京に駐在していました。この年(2008年)の春節明けには、内陸部での経済発展に伴い、春節で帰京した農民工がそのまま地元企業に就職してしまい、春節が明けても沿岸部に戻って来ず、沿岸部では「人手不足現象」が起き、沿岸部における人件費が高騰して、沿岸部を中心に立地した中国の輸出産業が打撃を受けた、ということがありました。「春節」は、毎年恒例の年間行事のひとつですが、経済活動の変質のひとつのきっかけにはなり得ると思います。また、毎年、全人代が3月上旬に開かれますから、春節明けから全人代までの期間は、今後の中国を見通すに際して、注目すべきタイミングだと思っています。

 今、日本経済にとって、中国は、部品等の大きな輸出先であるし、多くの企業にとって消費財の大きな市場です。中国経済が混乱することは、日本経済に直接的な打撃となります。

 一方、上記の田中修氏のレポート中にもありますが、中国は1兆1,701億ドルのアメリカ国債を有しています。これは世界第一位です(第二位は日本の1兆1,328億ドル)。この金額は、外国で保有されるアメリカ国債の約2割に当たります。中国経済が混乱し、中国政府が保有するアメリカ国債を大量に売りに出すような事態になれば、アメリカの財政にも大きな影響を与えます。従って、アメリカにとっても中国経済が混乱することはぜひとも避けねばなりません。

 ただ、1990年代後半に金融危機に見舞われた日本に続き、2008年にリーマンショックに襲われたアメリカ、2009年以降経済危機に翻弄されているヨーロッパを考えれば、中国経済だけが何も起きないとは考えにくいところです。

 冒頭に書いた「中央公論」2013年3月号における論文「日本企業は対中投資戦略を最高せよ」の中で、渡辺利夫氏は、「新規投資にはよほど慎重たるべきだろう。」とまで述べて警告を発しています。

 日本経済は、安倍内閣発足をきっかけにして、株高・円安の方向に動いていて、回復の方向に向かいつつように見えますが、中国経済が混乱して回復の足下をすくわれないようにする必要があります。上にも書きましたが、今や世界は相互に関係し合っており、誰かが混乱すると、みんなが被害を被る状況になっていますから、渡辺利夫氏が指摘するような「中国経済ハードランディングの危機」が急激に起こらないように(できるだけ時間を掛けてゆっくりとランディングできるように)、日本もアメリカ等と協調して、中国との関係をコントロールしていくことが重要だと思います。

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