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2010年3月14日 (日)

3-4-2:【コラム:「日中国交正常化」「台湾当局」という表現について】

※「中国現代史概説」の目次全体及び参考資料については、下記の2010年1月4日付けの発言を御覧下さい。

「中国現代史概説~中国の新しい動きを理解するために~」目次
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2010/01/post-a953.html

【中国現代史概説】

第3章:改革開放に至るまでの中華人民共和国の歴史

-第4部:文化大革命(後半:ニクソン訪中から四人組追放まで)

--第2節:日中国交正常化

【コラム:「日中国交正常化」「台湾当局」という表現について】

(1)日中国交「正常化」という言い方について

 1972年9月29日に日中の国交が「回復した」という表現もあるが、中華人民共和国との国交が樹立するまで、日本は台湾にある「中華民国」と外交関係を持っていたので、日本と「中国」との外交関係は継続的に存在していた、従って、「回復」という表現はおかしい、という主張が成立しうる。そのため、多くの場合、日中国交正常化、という表現を使う。

 ただし、台湾の人々から見れば、この表現は、裏返しの意味として、1972年9月29日以前の日本と「中華民国」との関係が「異常だった」ことを示すことになるので、使う場所によっては注意が必要である。

 なお、中国と台湾の「中華民国政府」(「国民政府」という意味で「国府」と呼ぶ場合がある)との関係については、大平外務大臣が日中共同声明発表後の記者会見で次のように述べている。

「最後に,共同声明の中には触れられておりませんが,日中関係正常化の結果として,日華平和条約は,存続の意義を失い,終了したものと認められる,というのが日本政府の見解でございます。 」

 日華平和条約は「破棄された」のでも「廃止された」のでも「失効した」のでもなく、自然な流れとして「終了した」というのは、ある意味、「政治家的な言い回し」と言ってもよいであろう。

(2)「台湾当局」という言い方について

 日中共同声明に基づけば「台湾を実効的に統治している組織は中国の政府ではない」「日本政府は、台湾は中国の一部であるという中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重する」というのが日本政府の立場である。従って、台湾を実効的に統治している組織を「国としての政府」と呼ぶのは日本政府の立場からするとおかしい。従って、日本政府部内の文書では「台湾政府」とは呼ばずに「台湾当局」という表現を使うのが一般的である。

 また、日本政府は「台湾」を「国」と認識しているわけではないので、日本政府の立場に立てば、統計データの表を作る際に「台湾」を書く欄に「国名」と書くのは適切ではない。書くとすれば「国・地域名」である。同じ理屈で、何かの会合の挨拶の時に「貴国は・・・」などと表現するのは、日本政府の立場と一致しない。従って、このような時には「貴方は・・・」と表現すべきである。

 さらに、日本政府が「中華人民共和国が中国の唯一の政府である」と認識している、即ち、中華民国という国家は、歴史上の国家としては存在しているが現在は既に存在していない、と認識している以上、日本政府は「晴天白日旗」を「現在存在している国の国家」とは認めていないことになる。従って、国際会議などの場で、国家の名称として「中華民国」という「国名」を使用したり、「国旗」として「晴天白日旗」を掲げることは、日本政府の考え方と異なる認識を示すことになる。台湾にいる人々は、こうした態度を快く思っていないが、日本政府の立場と同じ認識に立つ、という前提に立てば、「国名」と「国旗」については上記のような使い方をせざるを得なくなる。

 以上は、私が1982年7月に中国関連の部署に異動した時に、大陸側と台湾側との双方との間で良好な関係を維持するために必要な「最小限の常識」として最初に教わった事柄である。

 なお、大陸と台湾との経済関係の深化等により、大陸と台湾との人的交流は活発化している。2009年には北京・上海等の大陸の主要都市と台湾とを結ぶ定期航空路も開設された。従って、大陸と台湾との人の交流や実質的な協力関係については、現在の政治状況をそれほど気にする必要はない。しかし、中国は(大陸側も台湾側も)「メンツの国」であるので、「メンツ」の象徴である「国名」や「国旗」について誤った使い方をすると不必要な問題を惹起することになるので、注意を要する。

 多くのスポーツ大会等では、台湾のことを「Chinese Taipei」「中華台北」などと表記することによって大陸と台湾の両方の選手の参加を可能にする、など、話し合いにより、それぞれ大陸と台湾の双方の「メンツ」をつぶさないような形で実質的な対応が図られている。

(注)漢字表記の場合、「中華台北」ならばよいが、「中国台北」という表記は「台湾は中国の一部ではない」と主張する一部の台湾の人々にとっては受け入れられない表記である、といった問題を含むなど、名称問題は、いつも神経質な問題であるので、取り扱いには慎重を要する。

 現在、日本側には財団法人交流協会、台湾側には亜東関係協会という「民間機関」が存在し、交流協会は台湾に、亜東関係協会は日本に事務所を構えて、渡航に関する事務(ビザの発行など)を行っている。これらの「民間機関」は、実質的には大使館業務と同じことをしているが、日本と台湾とは、これらの機関はあくまで「民間機関」であって、政府は関与していない、という立場を取ることで、双方の「メンツ」を保ちながら、実質的には人の交流や経済的な関係については、中華人民共和国との「国交正常化」の後も、従前と同様の関係を続けている。

以上

次回「3-4-2:【コラム:日中国交正常化時のエピソード】」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2010/03/post-b020.html
へ続く。

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