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2010年2月20日 (土)

3-2-3:【コラム:中国における社会的セーフティ・ネット】

※「中国現代史概説」の目次全体及び参考資料については、下記の2010年1月4日付けの発言を御覧下さい。

「中国現代史概説~中国の新しい動きを理解するために~」目次
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2010/01/post-a953.html

【中国現代史概説】

第3章:改革開放に至るまでの中華人民共和国の歴史

-第2部:社会主義化の深化と路線闘争

--第3節:大躍進政策と人民公社の成立

【コラム:中国における社会的セーフティ・ネット】

 人民公社がそうであったように、中国の国営企業では、従業員の住宅、保育所、学校、病院、高齢者保護施設など従業員の生活の全ての面での面倒を見ていた。病気になっても、高齢になっても、企業が全て面倒を見たのである。従って、人民公社や国営企業だけが存在していた計画経済の時代には、社会的なセーフティ・ネットの制度を作る必要はなかった。

 ところが、改革開放が進み、人民公社が解体され、国営企業が国有企業となって企業としての効率性の追求が求められるようになると、人々の住宅、教育、医療、高齢者保護などは各個人の責任で確保せざるを得なくなるようになった。改革開放により、農村や企業自体が社会のセーフティ・ネットであり得なくなった現在、中国においても社会制度としてのセーフティ・ネットが必要とされてようになってきている。住宅、教育、医療、高齢者保護などの問題は、日本や欧米でもその制度設計には難しいものがあり、選挙のたびにこれらの制度が争点になっている。中国は、改革開放路線を選択したことにより、欧米各国や日本が悩んでいるような社会的セーフティ・ネットの構築の問題に否応なしに直面せざるを得なくなっているのである。

 中国では、例えば、大学や研究所のような機関でも、計画経済時代のなごりで、今でも、従業員の住宅や保育所、学校、病院、高齢者保護施設などを抱えているところが多い。大学や研究所の中には、退官した教官や研究者がそのまま敷地内に残って住んでいるところも数多い。最近は、多くの国有企業と同じように、大学や研究所でも、独立採算性を求められるところが多いので、退職者に対して敷地から出て行くよう要請するところが多くなっている。しかし、自由に購入できる住宅が十分ではない現状において、国有企業や大学、研究所のような公的機関が退職者に敷地内から出て行くことを強制することは実際には難しい。改革開放から既に30年が経過していても、中国においては、市場経済の社会には当然の如く存在している住宅等の社会的インフラがまだ整っていないのである。

 例えば、現在でも多くの政府機関に「国際協力局」などと同じ並びで「離職退職幹部局」といった離退職者対応の専門の部署があるのはそういった理由による。

以上

次回「3-2-3:【コラム:大躍進時期の悲惨な記録に関する記述について】」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2010/02/post-985c.html
へ続く。

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