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2010年1月29日 (金)

2-3-3:【コラム:三大規律と八項注意】

※「中国現代史概説」の目次全体及び参考資料については、下記の2010年1月4日付けの発言を御覧下さい。

「中国現代史概説~中国の新しい動きを理解するために~」目次
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2010/01/post-a953.html

【中国現代史概説】

第2章:辛亥革命から抗日戦争、中国共産党による革命へ

-第3部:日本による大陸進出と中国による抗日戦争

--第3節:中国共産党による「長征」と毛沢東による指導体制の確立

【コラム:三大規律と八項注意】

 「長征」は極めて困難な移動であり、ゲリラ戦的戦闘で多くの兵士が死傷し、また多くの人々が脱落していった。しかし、この大移動の過程で、中国共産党は、抗日を唱え、地主階級から土地を取り上げて貧農に与えるという土地改革を実施することを通じて、多くの農民の支持を得る基盤を内陸部に残していったのも事実だった。毛沢東は、それまでの経験に基づき、革命は大多数を占める農民が自らの意志で参加するものでなければ成功しないと考えていたし、コミンテルンからの派遣者やソ連留学組の「革命のエリート」が難しい革命理論を振りかざしても農民たちはついて来ないことをよく知っていた。純朴な中国の農民を革命に立ち上がらせるためには、抗日を唱え、土地の分配というわかり易い政策を実行するとともに、共産党の軍隊(工農紅軍)の規律を確立し、農民が自ら進んで紅軍に参加するようにする必要があった。このため、毛沢東は紅軍に対し、非常に単純でわかりやすい指示を与えていた。1927~1928年頃、江西省の井岡山を根拠地にしていた頃から指示を始めていた「三大規律と八項注意」がその典型例である。

 三大規律とは次の3つである。
・いっさいの行動は指揮に従う。
・大衆からは針1本、糸1筋も取らない。
・ろ獲品は全て公のものとする。

 八項注意とは次の8つである。
・話はおだやかに。
・買い物の支払いは公正に。
・ものを借りたら返す。
・ものを壊したら弁償する。
・人をなぐったり、どなったりしない。
・農作物を荒らさない。
・婦人をからかわない。
・捕虜をいじめない。

 こういった簡単でわかりやすい指示で、毛沢東は紅軍の規律を維持した。また、紅軍は兵士であると同時に、戦闘のない時は農作業を手伝う存在でもあった。規律の維持と農作業に対する協力により、紅軍は各地で農民からの支持を獲得していった。昔から中国では、「良い鉄はクギにはしない。良い人間は兵隊にはならない。何になってもよいが兵隊にだけはなってはいけない。」と言われていた。この時代まで、軍隊の兵士は、金で雇われており、戦闘に伴う略奪行為などは日常茶飯事であり、兵隊は多くの民衆から嫌われていた。そういった中国における「兵隊」に対するイメージを変えたのが毛沢東が指揮する紅軍であった。「何よりも大衆・農民の支持を得ることが第一だ。」というこの考え方は、「一般大衆からの支持を失ったら自分たちの存立基盤がなくなる」という中国共産党のバックボーンとなっている認識であり、これは現在まで続いている(はずである)。

(注)「三大規律と八項注意」は、今でも人民解放軍の基本規律である。2008年5月の四川大地震の後、災害出動した人民解放軍のある兵士が、被災者からの勧めを断り切れずに食事をもらったことに対し、軍はこの兵士を処分した、ということが伝えられた。これに対して、被災者の側からは、処分を撤回して欲しい、という嘆願書が出された、とのことである。こういったニュースが報道されるのは、当局側が「今も、昔と同じように人民解放軍の厳しい規律は守られている」ということを人々に伝えたいからだと考えられる。

 上で「遵義会議」において毛沢東が中国共産党の中心的指導者になったのは、その軍事的指揮官としての能力を認められたからであって、「遵義会議」の時点で思想家としての毛沢東の革命思想が認められたからではない、と書いた。ただ、この時点で既に毛沢東は「優れた政治家」であった、と言うことはできる。なぜなら、「優れた政治家とは、わかりやすい言葉で人々に語り掛け、人々の支持を集めることのできる人物である」と定義することができるとすれば、「遵義会議」の時点で、既に毛沢東が「優れた政治家」であったことは間違いがないからである。

以上

次回「2-3-4:西安事件と第二次国共合作」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2010/01/post-b53b.html
へ続く。

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