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2009年3月21日 (土)

自作自演記者会見の疑惑

 相変わらず痛快な記事や評論の多い広州で発行されている週刊紙「南方周末」(日本語表記では「南方週末」)ですが、今週号の評論もなかなか鋭いものがありました。

(参考)「南方周末」2009年3月19日号評論欄「評論方舟」
「記者会見がどうして一人芝居になってしまうのか」(本紙評論員:郭光東)
http://www.infzm.com/content/25621

 筆者の郭光東氏は、先日終わった両会(全国人民代表大会と中国政治協商会議)の際に行われた2つの記者会見について指摘しています。

 ひとつめは「財経」の記者が伝えている3月6日に行われた四川省代表団の記者会見についてです。この記者会見では、質問しようとした記者がいくら手を挙げても、司会者が一番前に陣取っている「官製主体メディア」にばかり質問させ、しかも彼らは机の上に置いてあるメモを見て質問しているようであり、答える四川省関係者も用意した紙を読み上げているようであり、一切の質問と答えが「用意されたもの」のように見えたというものです。

 もう一つは「新快報」の記者が伝えている3月7日に行われた雲南省代表団の記者会見です。この記者会見では、事前に関係者が顔見知りの記者に質問のレジメを渡して、質問番号に応じて質問させており、人々の間で関心の高い「目隠し鬼ごっこ事件」については一切質問がなく、一問一答が事前に準備されていたことは明白だった、としています。

※「目隠し鬼ごっこ事件」については、このブログの2009年2月24日付け記事
「監獄内の『目隠し鬼ごっこ』で死亡」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2009/02/post-bcc5.html
参照

 また、3月8日に行われた四川省大地震の災害復旧状況についての記者会見について、多くのネットワーカーが内外の記者の質問水準の違いについて指摘している、とのことです。具体的には、境外の(外国及び香港、マカオ、台湾の)記者は人々が知りたいと思う問題について質問しているのに対し、中国大陸の記者は、往々にして「塩辛くも酸っぱくもない質問」や大してニュース性のない質問ばかりし、甚だしいものにあっては役所で発表されている公式発表文を見ればわかるような問題について質問して、質問時間をつぶしていた、とのことです。

 さらには、多くの記者にとって、事前に質問事項の許可が必要であり、許可されていない質問については聞いてはいけないかのように思わせるような記者会見もあった、とのことです。この評論の筆者である郭光東氏は「嗚呼! またしてもこの種の人を愚弄するような感じを受けるとは、何と悲しいことか」と嘆いています。そして、郭光東氏は、政府機関がこのような自問自答するような記者会見をセットして、外見だけ民主的であるように見せかけることは、公務員としての職業道徳に違反しているばかりでなく、そもそも人間が持つ基本的な倫理、即ち、「誠実さ」に反している、と怒っています。

 中国にいて多くの人が感じるのが、今の中国の社会は「誠実さ」が全く尊重されていない「モラルハザード」の状態にある、ということです。先日書いたニセ薬やニセモノのテレビの話もそうですが、人間が社会で活動する上で最も重要視すべき「誠実さ」が今の中国にはないのです。よく多くの日本の人が勘違いしますが、現在の中国社会に蔓延している「不誠実さ」は中国の伝統でも中国の人々が昔から持っている性質でもありません。本来、中国の人々は、純朴で、人なつこく、親切で、誠実な人たちばかりです。「不誠実さ」が蔓延しているのは、「不誠実」でも罰せられない、むしろ「不誠実にうまく世の中を渡った方が得をする」という現在の社会システムのせいなのです。

 もともと中国共産党は、まじめさ、純真さ、誠実さ、をもって人々の心を捉え、革命を成功させたのでした。それがなぜ今こういう社会になってしまったのでしょう。上の評論でわかるように、多くの中国の人々もそうした「誠実さ」のない社会の問題点について「改善すべし」という声を挙げ始めています。こういった人々の「改善すべし」という声が、実際にシステムを改善させる方向で結集され、実際にシステムが改善されるようになることを期待したいと思います。

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