« 「人民日報」の改革開放30周年評論(後半) | トップページ | 「南方周末」の改革開放30年記念特集 »

2008年12月21日 (日)

改革開放30周年記念日が終了

 2008年12月18日は、改革開放政策を決めた中国共産党第11期中央委員会第3回全体会議(第11期三中全会)から30年目の日、ということで記念式典が行われ、胡錦濤中国共産党総書記・国家主席が重要講話を行いました。

(参考1)「新華社」ホームページ2008年12月18日15:06アップ
「胡錦濤総書記による党の第11期三中全会30周年記念大会での講話」
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2008-12/18/content_10524481.htm

 講話の内容は、「今後も中国の特色のある社会主義の路線を守って、改革開放を進めていこう」ということで、新しい内容を含むものではありませんでした。前々日と前日に「人民日報」に載せられた「任仲平」署名の論評と同じ路線と言ってよいと思います。

(参考2)このブログの2008年12月16日付け記事
「『人民日報』の改革開放30周年評論(前半)」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2008/12/30-3c83.html

(参考3)このブログの2008年12月16日付け記事
「『人民日報』の改革開放30周年評論(後半)」
http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2008/12/30-b9ef.html

 私としては、30年を回顧する中で、1989年の事態をどのように捉えるのか、に関心がありました。今回の胡錦濤総書記の講話では、「東ヨーロッパの激変」「ソ連の解体」「厳しい国内の政治風波」などを例に挙げて、これらに対して党と人民が心を一つにして対処してきた、と述べています。1989年の事態に触れているのはここだけです。「国内の政治風波」という表現で触れていますが、胡錦濤主席が1989年の事態に触れることはこれが初めてではなく、2004年8月22日に開かれたトウ小平氏生誕100周年記念大会での演説の中でも同じような表現で述べているとのことです。

(参考4)「MSN産経ニュース」上の伊藤正(産経新聞中国総局長)「トウ小平秘録」
「第1部:天安門事件(2)格差と腐敗の中華振興」
http://sankei.jp.msn.com/world/china/070216/chn0702160357022-n1.htm

 一方、昨日(12月19日)から12月30日までの予定で、北京市内で「中国対外開放30周年回顧展」が開かれています(主催は、中国商務部、中国共産党対外宣伝弁公室、中国共産党中央分権研究室、新華社通信社)。この回顧展は、商務部の主催なので、この30年間の対外貿易や中国国内の経済の発展などが展示の中心なのですが、展示の導入部分のところに30年間の大きな流れを解説する部分ばあります。この導入部では、この30年間を三つの部分に分けて説明しています。第一は「トウ小平の時代」で1978年から1980年代の部分、第二は「江沢民の時代」で1989年~2002年までの部分、第三は「胡錦濤の時代」です。

 第一の部分で、1989年に関する部分としては、1989年6月9日(事態平定の5日後)にトウ小平が首都戒厳部隊幹部に接見した時の写真が掲げられており、トウ小平氏がこの時「中国は鎖国してはならず、鎖国政策はわが国にとって極めて不利になる」と述べたとの解説があり、トウ小平氏は、一貫して改革開放路線を推進してきたことを強調しています。この展示で、1989年6月に北京に戒厳令が敷かれていたことはわかるのですが、それ以上の情報はこの展示を見ただけでは何もわかりません。

 そのほか、1980年代の部分では、改革開放を進めるべき、とするトウ小平氏のいろいろな場面での発言が紹介されています。一方、1987年の第13回党大会で「中国は現在社会主義の初級段階にあり、改革開放を進め、対外的な経済的交流を進めなければならない」とする初級段階論が打ち出されたことも紹介されています。この「初級段階論」では、「社会主義の初級段階は少なくとも中華人民共和国建国後100年間(つまり2050年頃まで)続く。その間は発展のための努力を続けなければならない」とされており、(参考1)で述べた今回の講話の中で胡錦濤総書記も同じことを言っています。

 1987年の第13回党大会で「社会主義初級段階論」を打ち出したのは当時党書記だった趙紫陽氏でした。しかし「中国対外開放30周年回顧展」の展示では、現在の胡錦濤総書記も踏襲している「社会主義初級段階論」の路線を打ち出したのが誰なのかの説明が全くありません(トウ小平氏の発言については、発言を掲げた後「~トウ小平~」と書いてあり誰の発言であるのかを明確にしてあるにも係わらず、です。この「回顧展」では、1980年代のいろいろな写真が展示されていますが、趙紫陽氏(国務院総理、1987年1月以降は党総書記)や胡耀邦氏(1987年1月まで党総書記)の写真は全くありません。胡耀邦氏は、1986年末の学生運動に対する対処が適切でなかったとして1987年1月に失脚し、趙紫陽氏は1989年の戒厳令が敷かれた事態に対する対処が適切ではなかったとして失脚しているからです。

 というわけで、胡錦濤総書記の講話でも、「中国対外開放30周年回顧展」の展示でも、「政治風波があった」「首都に戒厳令が敷かれていた」ということは示されていますが、それが何であって、何があったのか、その過程でどういう人物がいたのか、については全く触れていません。胡錦濤総書記の講話でも「30年周年回顧展」でも、トウ小平氏、江沢民氏(党総書記、国家主席)の功績については触れていますが、1989年の事件の以前の党と国家の指導者であった胡耀邦氏、趙紫陽氏には全く触れておらず、まるで1980年代には党の総書記も国務院総理もいなかったかのような扱いです。

 何か問題があるのであれば「こういう問題があった」と批判的立場から回顧することも可能だと思うのですが、そうではなく「全く触れていない」のです。当時を知らない今の若い人たちは、これをどう感じるのでしょうか。

 なお、「中国対外開放30周年回顧展」は入場無料ですが、入り口のところで身分証明書のチェックがあります。身分証明書を提示すると、無料の入場券をくれるのです。ショッピング街の中にある展示場でやっているのですがガラガラでした。

 来年は1989年の事件から20年目の年であり、また中華人民共和国成立60周年の記念の年でもあります。過去の歴史の大きな事件について「触れない」「触れはするけれども何も説明しない」という態度(これは「何もなかったことにする」という態度に通じます)がどこまで通用するのか、党や政府のそういった態度を中国の人々がどう思っているのか、2009年はその答のひとつが現れる年になるかもしれません。

 改革開放30周年記念の行事が終わったことで、本当にいろいろなことがあった中国の2008年もいよいよ終わりです。静かな年の瀬になることを祈りたいと思います。

|

« 「人民日報」の改革開放30周年評論(後半) | トップページ | 「南方周末」の改革開放30年記念特集 »

中国の民主化」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 「人民日報」の改革開放30周年評論(後半) | トップページ | 「南方周末」の改革開放30年記念特集 »