« 女性農民工についてのルポ | トップページ | 農民工の失業ショックには政府の支援が必要 »

2008年11月 6日 (木)

重慶市のタクシー・ストライキ

 11月3日(月)朝から重慶市のタクシー運転手が一斉にストライキに入りました。運転手に支払われる給料等の問題のほか、各タクシー会社だけでは解決できない問題もあったため、市全体のタクシー運転手が意志を統一させて一斉にストライキに入ったものだったようです。

 重慶市のタクシー運転手が要求していたポイントは以下の点です。

○運転手の手取り収入の値上げすること(必要があればタクシー料金自体を値上げすること)。

○(重慶のタクシーは天然ガスで動くのだが)天然ガス・スタンドの数が少なすぎ、ガスを補給するために長時間待たされることが多く、そのため稼働率が低下して、運転手の収入が減る結果になっている。これを解決すること。

○規則が多過ぎ、取られる罰金が多過ぎる。これを何とかして欲しいこと。

○「黒車」(不許可タクシー:日本で言う「白タク」)が多く(新華社の報道によれば、市内に「黒車」が3,000台あるという)、正規のタクシーの営業が妨害されている。これを何とかして欲しいこと。

 タクシー運転手側は、要求が入れられなければ、週明けの11月3日(月)からストライキに入るという意向を示していましたが、交渉が妥結せず、11月3日(月)早朝から重慶市のタクシーは実際に一斉ストライキに入りました。

(参考1)「新華社」(重慶支社)ホームページ2008年11月4日09:58アップ記事
「関心を集める重慶のタクシー・ストライキ事件」
http://www.cq.xinhuanet.com/2008-11/04/content_14821909.htm

 新華社の報道がアップされた時間を見ればわかるとおり、このストライキは実際に行われるまでは報道されなかったため、月曜日の朝になってタクシーが動いていないことを知った多くの市民は相当に困惑したようです。

 重慶市当局も問題を重視し、タクシー運転手側と交渉を行い、以下のような動きをし、いくつかの約束もしました。

・重慶市当局がタクシー会社側を呼んでタクシー運転手の収入が下がらないようにして欲しいと要請した。

・重慶市当局は、現在36か所ある天然ガス・スタンドを2年以内に60か所に増やすことを約束。

・重慶市当局は、「黒車」(不許可タクシー)の取り締まりには全力を上げることを約束。

 以上により、タクシー運転手側もストライキを解除し、11月5日(水)午前8時の時点で、重慶市内のタクシーの運行は正常に回復した、と11月5日午後5時に行われた重慶市当局による記者会見で発表されました。この場で、重慶市当局は、タクシー料金自体については、今後も検討を続けるが、当面は値上げしないことを発表しました。

(参考2)「新華社」(重慶支局)2008年11月5日付け記事
「重慶都市部タクシー運行の回復状況及びそれに関連する状況に関する重慶市政府の記者会見」
http://www.cq.xinhuanet.com/2008/czc/

 さらに今回の事態を重視した重慶市当局は、11月6日、重慶市党委員会の薄熙来書記が直接タクシー運転手の代表と話し合う場(中国語では「座談会」と表現)を設けました。重慶電視台とラジオのニュース・チャンネルはこの場の様子を生中継しました(詳細は不明ですが、タクシー運転手側がストライキを解除する条件として、このような場を設け、それをテレビ・ラジオで生中継するよう要求した可能性があります)。

 この「座談会」の場では、一部の運転手代表は、上記に出していた要求のほか、警察がタクシー運転手の写真を撮影してそれを交通取り締まりに使っていることに対する反発を示しました。

(参考3)「新華社」(重慶支局)2008年11月6日付け記事
「薄熙来書記、タクシー運転手、市民代表による座談会」
http://www.cq.xinhuanet.com/2008/czczt/

 この重慶市のタクシー・ストライキ事件は、中央でも重大な関心を寄せたと見えて、11月6日の夜の7時のニュース・天気予報に毎日放送される報道特集番組「焦点訪談」でこの件を取り上げて伝えていました。

 中国では、許可なくデモ行進をやったら違法になりますが、ストライキは違法行為ではありません(ストライキまで違法にしてしまったら、社会主義の国とか、共産党が政治を行う国とか言えなくなってしまいます)。従って、市民生活に多大の影響を与えたとは言え、今回のタクシー・ストライキについては、タクシー運転手側を非難するような報道はありません。

 今回の重慶市のタクシー運転手の一斉ストライキは、権利を侵害されていると思った同じ立場に立つ人々が団結すれば、物事を変えることができる、ということを示したと思います(労働者の国・社会主義国である「はず」の中国で、こういうことを「新しいこと」のように思うこと自体本来はおかしいのですが)。中国では、新聞を勝手に発行したり、印刷物をばらまく自由はありませんが、今は携帯電話というツールがあるので、携帯電話のメール等を使えば、数多くの人が団結の意志を固めることは可能です。インターネットの掲示板でストライキを呼びかけることも可能ですが、インターネット掲示板は掲示板運営者にその発言を削除される可能性があります。携帯電話のチェーン・メールを当局(または当局の意向を受けた者)がコントロールすることは実態的に不可能です。

 今回の重慶のタクシー・ストライキは、中国における新しい流れを示すできごととして注目してよいできごとだったと思います。

|

« 女性農民工についてのルポ | トップページ | 農民工の失業ショックには政府の支援が必要 »

中国の報道機関」カテゴリの記事

中国の民主化」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 女性農民工についてのルポ | トップページ | 農民工の失業ショックには政府の支援が必要 »