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2008年10月 9日 (木)

乳製品へのメラミン混入最高限度値

 中国政府(衛生部)は昨日(10月8日)、乳製品に対するメラミンの混入最高限度値を発表しました。

(参考1)「新京報」2008年10月9日付け記事
「乳製品に含まれるメラミンの最高限度値」
http://www.thebeijingnews.com/news/guonei/2008/10-09/008@023831.htm

 これによると、今回発表された乳製品に対するメラミン混入最高限度値は以下のとおりです。

・乳児用粉ミルク:1kgあたり1mg

・液体牛乳:1kgあたり2.5mg

・乳製品を含む食品:1kgあたり2.5mg

 これは国際的に一般に用いられているメラミンの耐容一日摂取量(Tolerable Daily Intake = TDI)、具体的にはアメリカでは体重1kgあたり0.63mg、ヨーロッパでは体重1kgあたり0.5mg、中国では体重1kgあたり0.32mgという値を用いて、例えば成人なら体重60kg、こどもなら体重2kg、乳児ならば体重7kgで計算して、標準的な毎日の食品摂取量を考慮し、TDIを十分に下回るように設定した、とのことです。

 メラミンは工業用原料であり、生産の過程で食品に混入することはあり得ないが、昨日の中国衛生部の発表では、メラミンは非常に広い範囲に利用されており、例えば食品を包装する容器から転移することもあるし、プラスチック材料が廃棄されることなどを通じて環境中にも存在しており、食品にメラミンが微量に混入する可能性はゼロではない、として、基準として「検出されないこと」を要求しなかったと説明しています。

 また、中国の衛生部は、これは「混入最高限度値」であって「許容値」ではないことを強調しており、この値が設定されたからと言ってそれ以下ならば食品に混入させてもよい、というものではなく、メラミンは食品に混入させてはならない物質であるので、食品の中にメラミンを混入させることは違法行為であり、刑事責任が追及される犯罪であることを強調しています。

 最近は、化学分析の精度が高くなっているので、分析すればごく微量な量でもあれば検出されてしまうので、メラミンは、工業用原料で食品には使わない物質ではあるものの、猛毒の物質ではなく、一定の量を定期的に摂取しなければ健康上の影響は出ないと見られていることを考慮して、「検出されないこと」を求めるのは現実的ではない、と中国政府は判断したものと思われます。

 乳製品へのメラミンの混入問題は、消費者の問題であるとともに、出荷ができなくなってしまった生産者の問題でもあります。消費者の方は赤ちゃんなどを除けば別の食材を探すことで我慢できますが、牛乳生産農家にとっては牛乳が出荷できないことは死活問題です。今回、中国政府が「メラミン混入最高基準値」を設定して基準を満たした商品であれば販売することを認めることにしたのも、そういった生産者側の立場も考慮したためと思われます。中央電視台の報道によれば、財政部と農業部は今日(10月9日)、特に困難に陥っている牛乳農家を臨時に援助する補助金として中央政府が3億元を計上したことを発表しました。

(参考2)「中国中央電視台」ホームページ2008年10月9日10:53アップ記事
「財政部と農業部が牛乳農家に対する緊急支援補助資金として3億元を計上」
http://news.cctv.com/china/20081009/103415.shtml

 こういう基準ができて早く全てのメーカーの牛乳が店頭に戻ってきて欲しいと思う反面、基準が「ゼロ」ではないことから、牛乳を飲むとその一部のメラミンが入っている可能性は否定できない状態が続くわけで、気分的にはあまりいい感じはしません。

 日本などは、今後とも「メラミンが検出されないこと」を追求するのでしょうか。中国で、このような「メラミン混入最高基準値」が設定された以上、中国の乳製品には基準値以下のメラミンが含まれていることは覚悟せざるを得ないので、日本が今後ともメラミンについては「食品からは検出されないこと」を追求するのであれば、中国から輸入された乳製品を原料とした食品は日本では売ることができないことを意味します。

 中国政府は、国内での混乱を収拾するために、今回「メラミン混入最高基準値」を設定したのですが、そのことが中国製乳製品の世界への輸出に相当なブレーキを掛けることになるかもしれない、と私は思っています。中国政府は、今回の「メラミン混入最高基準値」は国際的に使われているメラミンの耐容一日摂取量(TDI)を基にして設定したのだから、健康影響上は問題ない、国際的にもそれは受け入れられるはずだ、と主張するのでしょうが、世界の消費者が健康上影響があるかどうかにかかわらず「メラミンが入っていない食品」を求めるのだとしたら、中国製乳製品は国際市場から受け入れられないことになると思います。ただでさえ、世界同時不況で、中国の輸出産業は大きな打撃を受けています。こういった時期に、中国の食品関連産業は、食品安全の問題で、さらに一層厳しい試練に立たされるのではないか、とちょっと心配です。

 それから、もっと大事なことは、中国の消費者が、今後、食品安全の問題にどの程度シビアに反応するようになるのか、も重要な視点です。今回のメラミン混入問題は、赤ちゃんが飲む粉ミルクで問題が発生したことから、いつになく中国でも非常に懸念が広がりました。今回のメラミン入り粉ミルク事件は、中国の消費者の食品安全に対する見方をかなり変えた可能性があります。中国政府には、そういった自国内の消費者の意識の変化も見誤らないようにした政策決定が迫られていると思います。

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