« 地下鉄運転時間延長と飛行機便遅延時の措置 | トップページ | 北京オリンピック開会式演出の舞台裏 »

2008年8月15日 (金)

夏休みの時期の不動産屋さんの必死の営業

 今日(8月15日)の北京は抜けるような青空でした。昨日の雷雨で大気汚染がすっかり洗い流された上に、今日は湿度が低かったので、遠くの方までスッキリと見えました。空も青々としており、「北京でもこういう青い空が見られるんだ!」と感激しました。太陽も夕方になってかなり傾いているのにギラギラとまぶしく、真っ直ぐな強い光を放っています。「太陽ってこんなにまぶしいんだ!」という感覚は日本に帰るたんびに感じるのですが、それを今日は北京で感じることができました。今日の北京の大気汚染指数は17、即ち最もよいランクの「優」でした。多くの中国の人が「オリンピックの開会式があと1週間遅かったら、世界中の人々に北京の大気汚染についてどうのこうのと言われることはなかったのに」と思っているでしょう。あさって日曜日の朝は女子マラソンがありますが、この調子ならば、女子マラソンの時に大気汚染について心配する必要はなさそうです。

 昨日の大雨で、ボート競技やテニス、野球の試合の一部などが順延になりましたが、北京市街地の道路の水没等の影響はなかったようです。

 さて、日本でも報道されていますが、中国国内の観光地のホテルや国内航空賃、それに北京市内のホテルや短期貸し付け住宅などが、予想よりお客が大幅に少なくなっているようです。

 先週から今週に掛けて、日本企業の駐在員等を相手にしている複数の北京の不動産屋さんから営業の電話がありました。お話がしたい、として営業の方がわざわざ来て、物件リストなどを置いて行ったところもあります。普通、日本企業の多くは8月中旬はお盆の時期で休んでいる人もいるし、人事異動の季節でもないので、通常の年なら8月中旬は日本人駐在員の住居などを世話する不動産屋さんはあまり活発に商売をする時期ではありません。

 去年の後半から今年の前半に掛けて、多くのアパートメントで「8月のオリンピック期間を含む期間の賃貸契約を結びたいなら、価格はこれだけ上げさせてもらう」という大家さん側の強気の賃貸料値上げ要求があった、と聞きました。引っ越しをしたくなくて高めに設定された賃貸料を飲んだ人もいますし、「そんなの理不尽だ」と反発して別のアパートメントに引っ越しした人もいます。大家さんの方では、大幅賃貸料引き上げを要求して、店子が出て行った場合には、その部屋をオリンピック期間中の観光客目当てに短期貸しをしようともくろんでいたものと思われます。しかし、実際は、マンションの短期貸し出しはおろか、普通のホテルさえガラガラの状況で、賃貸料値上げ要求をした大家さんは、空き室を抱えて困っているのだろうと思います。そこで、多くの不動産屋さんが、多くの人がオリンピックに夢中になっている普通なら夏休みの真っ最中のこの時期に、必死の営業活動をやっているのだと思います。

 中国国内での観光客が意外に少なかったり、北京でのホテルの予約が埋まらなかったり、短期借り上げマンションにお客が付かなかったりする理由はいろいろあるでしょうが、考えられるのは以下の点です。

・原油価格の高騰により、国際航空運賃にかなりの額のサーチャージが掛かるようになったために、外国から来るオリンピック観戦客が予想外に少なかったこと(中国国内から北京に来る客に関しては中国の国内航空賃は暴落していますから、この理由は当たらないと思います)。

・四川大地震により中国全体に「観光をする雰囲気ではない」という心理が働き、中国各地から北京にオリンピック観戦をしに来る人が少なくなったこと。

・チベット騒乱、新疆ウィグル自治区でのテロの動きなどにより、外国人に対するビザの審査が厳しくなり、外国人観戦客が予想外に少なくなったこと。

(注)日本人は2週間以内ならばビザなしで中国に入れますが、現在、中国へのビザなし短期渡航が認められているのは、日本とブルネイだけです。従来、シンガポールからは短期滞在はビザなしでもよかったのですが、この7月からビザが必要になりました。中国の当局がビザの発給をどのくらい抑制しているのかわかりませんが、安全確保や中国国内でのデモなどを防ぐため、いつもより厳しくビザの発給がチェックされている可能性があります。ただし、ビザなしで入国できる日本人の観戦客も予想よりだいぶ少ないので、これはメインの理由ではないかもしれません。

・チベット騒乱、四川大地震、新疆ウィグル自治区でのテロ等で、中国国内の有数の観光地に行きづらくなり、オリンピック観戦をからめた観光旅行ツアーが組みにくくなったこと。

・北京のホテル代や短期貸し出しマンションの価格がべらぼうに高く設定されていたため、それを伝え聞いて、北京に来るのをあきらめた外国人や中国国内の人が多かったこと。

・オリンピック委員会関係者やスポンサーがチケットのかなりの部分を押さえてしまったため、一般に売り出されるチケットの枚数が少なくなり、チケットを入手できなくて北京での観戦をあきらめた人が多かったこと(オリンピックが始まってから今まで、多くの会場で空席が目立っていることを見ると、この理由はかなり大きいのではないかと思います)。

・世界的な不況で中国旅行をする余裕のある外国人が少なくなったこと。また、中国国内でも株や不動産の価格の低迷、輸出産業の不振などで経済的に余裕のある人も財布のヒモを締めてしまい、多くの人が北京での観戦はあきらめてテレビ観戦に回ったこと。

 四川大地震や原油の高騰がオリンピック直前に起きたことは中国にとって極めて不運だったと言えます。世界的な不況やそれを受けて中国国内経済にもブレーキが掛かりつつある現状も、タイミングとしては中国にとって「不運」と言えるかもしれません(ただし、オリンピック後、中国経済の中のバブル的な部分ははじけるだろうことは多くの人が予測していましたから、この程度の中国国内の経済の減速は「想定の範囲内」と言えるのかもしれません)。

 チベット騒乱や新疆ウィグル自治区でのテロは、むしろオリンピックの機会を捉えて世界の世論を喚起しようという考えに基づいて意図的に起こされたものなので、「不運」という言葉で表現するのは不適切ですし、この問題は根が深い問題で、何か措置を講ずれば事前に防げたはず、といった性質のものではないと思います。

 北京のホテルや短期貸し出しマンションの価格設定を高くし過ぎたこと、チケットを関係者やスポンサーが多く押さえ過ぎたこと、の二つは、私はちょっと「やり過ぎ」だったのだと思います。特にチケットについては、日本などでは「あんなに空席があるのだったら、観戦に行きたかった」と思った人が多いと思います。

 中国政府は、北京オリンピックを安全かつ円滑に運営し、その中で中国の選手が活躍してくれることを最大限の目標にしていますので、中国政府にとっては、オリンピックを機会に「ひと儲けしよう」と思っていた人たちの当てが外れたとしても、「そんなこと知ったこっちゃない」ということなのでしょう。

 オリンピックの時期に楽しく観戦できずに必死に営業活動をしている不動産屋さんは、ちょっと気の毒だとは思いますが、私に言わせれば、オリンピック時期のホテル価格や短期貸し出しマンションの価格の設定の仕方があまりに非常識だったので、ある程度「自業自得」の部分があると思います。オリンピック終了後、こういったホテル業界や観光業界、不動産業界の「当てがはずれた」部分をきっかけとして、中国経済全体が急激に縮小することにならないよう願っています。中国政府には、オリンピックの成功ももちろん重要なことですが、オリンピック後の中国経済がおかしくならないよう、経済運営の方もうまくコントロールして欲しいと思います。

|

« 地下鉄運転時間延長と飛行機便遅延時の措置 | トップページ | 北京オリンピック開会式演出の舞台裏 »

中国経済はバブルか?」カテゴリの記事

中国(北京)の大気汚染・環境汚染」カテゴリの記事

北京オリンピック」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 地下鉄運転時間延長と飛行機便遅延時の措置 | トップページ | 北京オリンピック開会式演出の舞台裏 »