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2008年8月 3日 (日)

「張りボテ」の街

 今日(2008年8月3日:オリンピック開幕まであと5日)の北京は、朝から雲ひとつない快晴でした。今日(8月3日)の北京の大気汚染指数は35で、3日連続で50以下の「優」となりました。ただ、午後になってだんだんと汚染が戻ってきた感じで、ややかすんだ感じが強くなってきたので、明日(8月4日)の大気汚染係数はたぶん60~70程度になるでしょう。それでもまだ昼間は太陽を見ると「まぶしくて正視できない」という状況なので、「昼間、肉眼で日食観測ができる」状態の日が多いいつもに比べれば、大気汚染はかなり改善されているのは間違いないと思います。ただ、雨が降らないと大気中の汚染が蓄積されていってしまうので、開会式の8月8日に空気が澄んだ感じになるためには、もう一回くらい雨が降って汚染を洗い流してもらった方がいいと思います。

 昨日(8月2日)、開会式の2回目の「ドレス・リハーサル」がありました。8月1日には、北京-天津間の高速鉄道(最高時速350km)も開業しました。オリンピックの準備は万端整った、という感じです。北京の街の上空をヘリコプターなどが飛ぶことは普段は滅多にないのですが、ここ数日間は、結構、上空を飛んでいるヘリコプターの音を聞きます。上空からの警戒も強めている模様です。

 この週末から、街に「ボランティア・ステーション」が店開きし、学生らしい若いボランティアの人たちが、道順を教えたり、簡単な通訳サービスをしたりする活動を始めています。今日行ったホテルでは、ホテルに入る際に、金属探知器でボディチェックを受け、荷物の中身をチェックされたりしました。ただ、オリンピック取材のための外国人報道陣らしき人々もちらほら見掛けるようになりましたが、外国人観光客が増えた、という感じは、少なくとも私が見た感じではほとんどありません。街のボランティア・ステーションも、私が見ていた限り、利用する人はなく、ボランティアの人たちは手持ち無沙汰の様子でした。中国各地から中国人観光客が北京に集まっている、という雰囲気もありません。

 「新京報」の報道によると、このオリンピックで働くボランティアは総勢170万人なのだそうです。オリンピックを見に来る外国人客は約50万人と見積もられていますので、それに比べたら、圧倒的な数のボランティアです。ボランティアも「関係者」としてカウントすれば、この北京オリンピックは、観客よりも「関係者」の方が数が多い、ということになるのかもしれません。

(参考1)「新京報」2008年8月2日付け記事
「170万人のボランティアが各人それぞれの持ち場に就いた」
http://www.thebeijingnews.com/news/olympic/2008/08-02/011@084201.htm

 オリンピックのための準備として、大きな通りの歩道の脇の緑地帯のところには、たくさんの花が植えられたりして、かなりきれいです。大きな通りの街灯にはオリンピックの旗がはためき、多くの店では紅灯(赤いちょうちんのようなもの)をぶらさげたり、国旗(五星紅旗)を掲げたりして、雰囲気を盛り上げています。

 北京市内の建設工事は、粉塵を巻き上げないように、ということで、7月1日以降、中止されています。一部、工事が間に合わなかったところでは、7月になっても工事を続けていたところがありましたが、8月に入ったら、建設工事は完全に停止状態になっているようです。基本的に、作業を停止した工事現場では、工事中のゴミゴミしたところが道路から見えないように、オリンピックのスローガンなどが書かれた大きな「目隠しの覆い」で覆われています。ビル自体、工事の途中であっても、できるだけ「外壁」だけは完成させるように、との「指示」が出ていたようで、多くのビルでは、骨組みができたところで、内部の工事をやる前に外壁だけ先に設置するという工事をやっていました。

 ただ、それでもオリンピックが近づいて工事停止期間になるまでに外壁設置工事が間に合わず、現時点でも外壁が完成していないビルがいくつかあります。下記の写真はいずれも昨日(2008年8月2日)に撮影したものです。これらのビルは、パラリンピックが終わるまで、基本的にこのままの状態が保持されることになるのだと思います。

(参考2)外壁が一部しか完成していないビル
http://homepage3.nifty.com/itaru_watanabe/HEX/ichibukansei.jpg

(参考3)外壁はほとんど完成しているが、最上部だけが未完成のビル
http://homepage3.nifty.com/itaru_watanabe/HEX/saijoubu.jpg

(参考4)外壁設置がほぼ完了した中国中央電視台の新しい本社ビル
http://homepage3.nifty.com/itaru_watanabe/HEX/cctvshinhonsha.jpg

※中国中央電視台の新しい本社ビルは、斜めに傾いた四角柱がねじれた位置でくっつている、という非常に奇抜な格好をしています。内部も含めたビルの完成は2009年になるとのことですが、このオリンピック期間中、この新しいビルの一部を早くも使い始めるとのことです。

 中身がまだ完成していなくても、外面だけきれいにして、見た目を美しくしてお客様をお迎えする、というのが中国的美学なのだそうです。これを「メンツにこだわる」と見る人もいますが、「文化の違いの問題」なので、あまり批判はできないと思います。しかし、建設途中のビルについては、外壁だけくっつけた「張りボテ」なのがミエミエです。私の個人的な感覚からすると、こういった「張りボテ」がいくつかあると、本当は中身がきちんとしているものについても、「どうせ張りボテだろう」と軽く見られてしまい返ってイメージを損なうのではないか、と思ってしまいます。

 中国は、今回のオリンピックを迎えるにあたっての北京の街並みに限らず、いろいろな面に関して、「(中身はともかく)表面に見えるところをきちんとする」という傾向があります。これについては、その表面を見て中身もきちんとしていると思ってしまう人は中国の能力について過大評価してしまうし、表面を見て「どうせ表面だけで中身はないのだろう」と思ってしまう人は中国の能力について過小評価してしまうと思います。いずれにせよ、中国は、外部から正しく理解されない、という結果になってしまいます。

 オリンピックを控えて、外国メディアが中国についていろいろ報道していますが、普通の国のメディアは「まず疑ってかかる」ところから始まりますので、外国の報道陣には、上記の分類でいうと後者の見方をする人の方が多いと思います。そのため、本当は中国はきちんとやっているのに「きちんとやっていないのではないか」という疑いの目で見た報道がなされることが多いと思います。これは中国にとって損だと思います。街のビルを「張りボテ」状態にして、いかにも「完成した」かのように見せるよりも、普段着のそのままの北京を見てもらった方が、「世界に中国を理解してもらう」という観点では、得だと私は思います。

 上記(参考1)の「新京報」の記事によると、ボランティア170万人のうち20万人は「応援団」(中国語で「拉拉隊」)なのだそうなのです。彼らのことを「ボランティアの応援団」と呼ぶか、「会場を盛り上げるためのサクラ」と呼ぶかは人によってマチマチだと思いますが、これも一種のオリンピック会場における「張りボテ」の一種と言えるかもしれません。

 これからオリンピックが始まって、北京と中国のいろいろな面が世界に報じられると思いますが、そうした中国報道を受け取る世界の人々の側にも、それが「張りボテの表面」なのか、本当に中国の真の姿なのか、を見極める「目」が要求されることになると思います。

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