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2008年8月20日 (水)

中国経済はまた大型公共投資依存に戻るのか

 今日(8月20日)の中国大陸の株価は、一昨日(8月18日)の下げを回復する以上に上昇したようです。日本のネットのニュースによれば、オリンピック後、中国政府が大型の景気刺激策を打ち出す見通し、との報道がなされたことが株価上昇の原因だ、とのことです。景気刺激策とはどういう政策を採るのでしょうか。また、大型の公共事業に投資をしたりするのでしょうか。

 私も、中国の経済が収縮してよい、とは思っていませんが、人民元高や原油高などの構造的な原因で、輸出産業の不振が続く中、経済全体を支えるために、大型の公共事業に投資して雇用を創出する、といった政策がいつまでも続けられるとは私には思えません。私は、北京に赴任してから1年4か月、中国国内のいろいろな工業団地などを見ましたが、公共インフラの多くは、既に「過剰」のレベルにまで達していると思っています。現在、開発が終わった、あるいは開発中の全ての工業団地の全ての土地に工場が建つとはとても思えないからです。もし、今後また従来型の公共投資主導型の景気刺激策を採るのであれば、地方ベースでは、今後とも、農地がつぶされ、工業団地が建てられる、というタイプの事業が続けられる可能性があります。それだと、去年あたりから採っていた「バブルは小さいうちにつぶしておく」という政策を、また「バブルをさらに膨らませる政策」に逆戻りさせてしまうことになります。

 構造改革には常に「痛み」を伴いますが、今、中国政府にとっては、輸出企業の倒産による失業者の増大や不動産や株のバブルの崩壊による富裕層の資産の消滅のような「痛み」を伴う政策は怖くて採れないのかもしれません。しかし、景気が悪くなりそうになったら、公共投資で景気を刺激する、といった政策を繰り返していくと、中国の企業はそれに甘えてしまい、本当の意味での国際競争力を付けることができなくなります。いつまで経っても労働集約型産業への依存から脱却できません。それに、不動産や株が下がりそうになったら、政府が何らかの策を講じて下支えしてくれる、といった経験を何回も繰り返すと、投資家の中に自己責任をもって投資するというマインドが育たないと思います。

 中国の金メダル・ラッシュもようやく山を越え、オリンピックも残すところあと4日となりました。今回のオリンピックは、スポーツの面では、中国の人々の能力が非常に高いことを証明しました。経済の面でも、中国の人々の能力をうまく引き出し活用させることができれば、大型の公共投資に頼らずに経済成長を続けることはできると思います。既に中国の大学への進学率は22%を超えており、中国でも高学歴化が進んでいます。このまま大型公共事業と労働集約型産業への依存を強めた経済運営を続けていくと、人々の「働きたい」という欲求と雇用の場の提供とが、数の上では一致しても、質(要求する賃金など)の面でミスマッチが大きくなります。中国政府は、単に数字的に経済を失速させない、ということばかりでなく、中国の人々が自分たちの生活をどうしたいのか、という「思い」をうまくすくい上げるシステムを作り、それによって人々の欲求を的確に把握できるようにする必要があると思います。

 このブログの直前の記事で書いた人民日報のホームページにあった110mハードルを棄権した劉翔選手を励ますポップ・アップは、今日(8月20日)の朝の時点ではあったのですが、夜の時点では既になくなっていました。そろそろ「劉翔選手の棄権ショック」も治まってきただろう、と判断したのだと思います。このようにして、官製メディアが沸騰するネット議論の「ガス抜き」に気を使わなければならないこと自体、中国に人々の気持ちを吸い上げるシステムができていない証拠です。少しづつでよいので、時代の流れに合わせて、中国も変わって行って欲しいと思います。

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