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2008年8月14日 (木)

地下鉄運転時間延長と飛行機便遅延時の措置

 今日(8月14日)の北京は、午後から激しい雷雲が通過してかなりまとまった量の雨が降りました。あまり雨の激しいと北京市の道路の環状線の中には、立体交差のところで下をくぐる方の道路の排水が追い付かず、道路が冠水してしまうことがあるのですが、今日は大丈夫だったのでしょうか(仮に冠水していたとしても、こういう情報はラジオの交通情報専門局では報道するけれども、普通のテレビでは伝えないので、明日の朝、新聞を見るまで知らなかった、ということが結構あります)。ただ、雨が降ったので、2~3日は空気の汚染について心配する必要はなさそうです(マラソンは17日(日)なので、それまでに大気汚染が戻ってきてしまう可能性はありますが)。

 今日の新聞でちょっと興味深かったニュースは次の二つです。

(1)地下鉄の終電の時間を遅らせることを決定

(参考1)「新京報」2008年8月14日付け記事
「北京地下鉄、最終電車の運転時間を延長」
http://www.thebeijingnews.com/news/olympic/2008/08-14/008@025636.htm

 皆さんお気づきのように、北京オリンピックの試合の時間は、ヨーロッパやアメリカのテレビ局からの要請により、北京の日常生活の時間帯からすると、かなり変則的な時間帯に設定されています。午前中に試合があり、午後しばらくお休みがあって、北京時間の午後6時頃から順次試合をやって、球技などでは午後9時以降に開始するものがあります。一昨日のバレーボールの試合では、試合が終わったのは夜中の12時を過ぎていました。試合の終了時刻が遅いと、観客の帰りの足が心配です。そのため、北京市当局では、地下鉄の運転時間を延長し、路線によっては終電を通常より1時間以上遅くする措置を8月10日から始めたのだそうです。

 で、面白いのは、既に8月10日から実際は行われていた運転延長措置について新聞に載ったのが今日(8月14日)だ、ということです。8月10日以降、正式な発表はしなかったけれども、実行ベースで終電の遅延措置を講じていた、ということです。さらに競技が始まった8月9日からではなく8月10日から、というのも「面白い」ところです。たぶん8月9日の夜、試合が終わったのが遅くなって終電に間に合わなくなった人たちから苦情が出たので8月10日から終電を遅らせたのだと思います。

 この辺は、非常に中国的な特徴が出ていると思います。試合開始時間が遅いことは最初からわかっていたわけですから、本来ならば、オリンピック開始前に「オリンピック期間中は終電を遅くします」と決めて発表しておくべきだったのでしょう。苦情が出てから変える、というのは、良く言えば「柔軟性がある」、悪く言えば「計画性がなく泥縄式だ」ということになります。終電を遅らせることを決めても、そのことを新聞に発表しない、というのも、また中国らしいところです。規則上は終電は23:30なのだけれども、実際は地下鉄はそれより遅くまで走っていた、という状況が3日ほど続いていたわけです。「規則ではAにしなければならないのだけれども、現実にはBで行われている。だから現場に実際に行ってみないと、AなのかBなのかわからない。」ということは中国ではよくあることです。

(2)中国民航局による航空便遅延時の乗客支援に関する通知

(参考2)「新京報」2008年8月14日付け記事
「飛行機便が遅延した時には食事やホテルは無料で提供される」
http://www.thebeijingnews.com/news/olympic/2008/08-14/008@025638.htm

 通常、機体の故障など航空会社に責任がある理由で飛行機便が遅れたときは、乗客への便宜供与の責任は航空会社にありますが、天候等の航空会社の責任ではない理由で飛行機便が遅れたときは、航空会社は乗客の乗り換え便の手配や食事・宿泊先の手配等を行う義務はありません。ところが中国民航局は、13日、「オリンピック及びパラリンピック期間中は、飛行機の運航が遅れた時は、その理由に係わらず(遅延の理由が航空会社に責任がない天候上の理由であったとしても)、航空会社は乗客に対して、ほかの便への乗り換え、食事や宿泊先の提供等のサービスを無料で行わなければならない。」との通知を出した、とのことです。

 上記の「新京報」の記事によれば、中国民航局のこれまでの規定では「中国民用航空、手荷物国内運輸規則」の規定に基づき、天気等の不可抗力が原因の場合は、航空会社は乗客の食事や宿泊の手配を援助することとするが、その費用は乗客が自ら負担することとする、と規定されていたことから、今回の中国民航局の通知は、これまでの規定と明らかに異なるものなのだそうです。これは、オリンピック期間中、天候等による飛行機便の遅れにより、多くの乗客が空港に足止めになる事態を避けるためだ、とのことです。

 夏は雷雨などの影響で飛行機便が遅れることは結構あるのですが、そうしたとき、空港に大勢の人が足止めされて、空港で一夜を明かす、というような事態が生じた場合、テロ対策など乗客の安全確保の観点から好ましくないので、航空会社の責任で空港に多くの人が滞留するようなことがないようにせよ、という指示なのだと思います。これもまたオリンピックが始まってから出された指示で、いかにも「泥縄的」ですが、おそらくこれは最近発生している新疆ウィグル自治区でのテロと見られる事件などを受けて、テロなどの不測の事態を防止するために急きょ決められた決定なのだと思います。

 それにしても、中国民航局が自ら作った規定を変更するような通知を出し、それを曲がりなりにも「民間会社」である航空会社に守らせる、というような事態は通常の資本主義の国ではあり得ない話です。中国の航空会社は、株の多くはまだ国有だと思いますが、形式上は国とは独立した企業体であり、一部の株は公開されていますから、航空会社の収益は一般株主の利益にも直結します。そういった企業体の権利・義務に直接影響を及ぼす通知を、全人代(国会に相当)のような機関の決定を経ずに、中国民航局という政府機関の「鶴の一声」で決めてしまう、というところが、かなり「市場経済化」されたとは言え、中国の企業は政府の方針でどうにでもなることを示すようなできごとでした。

 上記の地下鉄の終電時刻を遅らせることや飛行機便が遅れたときの航空会社の責任を拡大させることなど、オリンピックが始まってから、やり方や規則を変える、というのは、オリンピックという今まで経験したことのないイベントに対して柔軟性を持って対応している、とプラスに見ることもできるでしょうし、予想していなかった事態に直面して右往左往して対応している、とマイナスに見ることもできるでしょう。日本の人の多くは、事前に予測すべきことは事前に予測して、きちんと対策を取って置かないとダメだ、と考えますが、中国の人の多くは、事態はどうなるか全てを事前に予測することは無理なのだから、実際やってみて、不都合があったらその都度やり方を変えればよいのだ、と柔軟な考え方をします。従って、中国の多くの人は、今回ようなオリンピックが始まってからの規則の変更は、別におかしな話だとは思っていないと思います。むしろ困った事態が生じたのに何も変更しないのだったら、その方がおかしい、と考えると思います。

 こういう融通無碍(ゆうづうむげ)で、その場その場で状況に応じて対応することに慣れている中国の人の方が、全てを事前にきちっと準備しておかないと気が済まない日本人よりも、事態対応能力は高いと思います。今回のオリンピックを見ていてつくづく思うのは、いつもとちょっと違う状況が突然出てきた時に、それでも平然としていつもと同じように試合ができる人の方がよい成績を残しているということです。ちょっと違う状況に遭遇して、それにどう対応しようか、とあわてている人は、力を発揮する前に敗れてしまっているように思います。

 規則が決まっているのに、現実の事態に応じて柔軟にその規則も変えて運用してしまう、ということが多い中国では、規則を踏まえてきちんと準備している日本人などは「えっどうして? そんなはずはないのに!」と頭を抱える場面が多いのですが、そういう場面でも平然と「よくあること」と受け流している中国人の方が結局は力を十分に発揮できるのだと思います。今回の地下鉄の終電変更と飛行機便遅れに対する対応では、そういった「いいかげんさ」と「柔軟性」が同居する中国の強さ(したたかさ)を見たような気がしました。

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